私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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幕間 番外編 その陀 霧の中の激闘

 

一方その頃、湯口先輩側では――

 

『全く、本当にこの辺りで合っているんだろうな?こんな谷底、何も無さそうだぞ』

 

「信用してもらわなくても、俺は別に良いさ。だが、確かに僅かだが途中で遭遇した橋鬼達とは別な妖気を感じた」

 

黒狐の小言を適当にあしらいながら、俺は微かな妖気を探して谷底を進んでいく。

 

どうやら谷底の何処からか橋鬼が出現しては、椿や綾達が守っている場所へ突っ込んで行っているらしい。

 

俺も何体か道中で出くわして戦ったが、個々の強さは大した力でもないのに受けた傷の回復が早いのか執念深く攻撃してこようとする。その為に結局は妖怪の動きを封じる札で、橋鬼達の身体を硬直させて時間を稼ぐしかないのが精一杯だ。

 

「それにしても、ここまで橋鬼が厄介な奴だとはな・・・一刻も早く、何かしらの手がかりを見つけたい所だ」

 

『ふん、そんな事を言って結局は椿に早く会いたいのだろう?』

 

「まぁ、そうでもあるけどな。それに綾の方も心配だ、アイツは良く無茶をするんだ」

 

『ぐ、ぐぬぬ・・・』

 

そうやって黒狐が焼きもちを焼く所を見て、良く呑気にちょっかいを出せるものだと呆れを通り越して感心する。

 

とはいえ、橋鬼1体1体の戦闘能力ならば黒狐どころか俺でも何とか対処が出来る程度だし、連中も俺達2人よりも座敷わらしの方を優先して侵攻している。なので、実際の所は向こうが此方を見つけて襲って来るのを迎撃しているような状況だ。

 

「もう少し先に、あの謎の妖気が出ている場所がありそうだが・・・随分と霧が深くなってきたな」

 

『あぁ、下手をすれば橋鬼達から不意を突かれる可能性もある。靖よ、せいぜい足を引っ張るな――ん?』

 

深くなりつつある霧の中で、ふと黒狐が訝しげな表情をして足を止めた。

 

改めて俺達が進もうとしている先の足元を見ると、そこには俺達では完全に倒し切れなかったハズの橋鬼達が、頭や手足を無惨に切り飛ばされた死体となって転がっていたのだ。

 

「なっ、これは・・・一体、誰が」

 

『靖、気を付けろ。あの霧の向こうに、何者かの影が見える!』

 

黒狐がそう告げた瞬間に突如ゴゥと突風が吹いて、目の前にあった霧で見えなくなっていた存在の正体を露わにした。

 

『お前は、まさか――!』

 

「綾の使い魔、小次郎か!」

 

そう、そこに立っていたのは以前まで綾が呼び出す事が出来たロボットのような見た目をした使い魔である小次郎だった。

 

「ふっ・・・久しいな」

 

そして、そいつの足元にも橋鬼のバラバラ死体が転がっていた事から、小次郎が橋鬼達を切り刻んだらしい。しかも、その橋鬼達の死体は霧に溶けるようにして消えていく。

 

だが、俺にはそれよりも気になる事があった。

 

「お前は確か、滅幻宗によって綾から妖気の繋がりを切り離されたと聞いていたが・・・」

 

『ひょっとすると、奴らから無事に逃げ出せたのか?それならば、早く綾に知らせてやらなくては!』

 

「いいや、その必要は無い。拙者は"自分の意思で"滅幻宗、もとい"ある方"の下についたのだからな」

 

『馬鹿な、洗脳されたとでも言うのか!?』

 

「やっぱりな。黒狐、コイツはもう綾の使い魔なんかじゃない。滅幻宗の奴らに使役される"敵"だ!」

 

俺が叫んだと同時に、黒狐は自身の居た場所から飛び退く。すると、そこには小次郎が刀で放ったと思われる鋭い突きの跡が出来上がっていた。

 

「流石は守護神と言うべきか。今の会話をしている時に仕留めるつもりでいたのだがな」

 

『小次郎、お前・・・本気で俺達を殺す気でいるのか。今のも攻撃を警戒していなかったら、間違い無く食らってしまっていたぞ!』

 

「クソッ、単純な速さじゃ完全に向こうが上だ!だが、少しでも動きを鈍くさせられれば――爆砕符!!」

 

そこから俺は間髪入れず袖口に隠していた爆発する札を5、6枚全て放って、爆風と土煙で小次郎の動きを牽制しようと試みる。しかし・・・

 

「――飛剣"燕打ち"」

 

「そんな馬鹿なっ!?まさか、今の爆砕符を全て撃ち落とすなんて!」

 

「見立てが甘いな、この刀は"燕が獲物を獲る時の動き"を真似た技。直線的に向かってくる物を纏めて落とすなど、拙者の力ならば造作もない事よ」

 

『説明ご苦労、ならばコイツはどうだ!妖異顕現、黒雷電狐!!』

 

割られた爆砕符が後ろで爆発するよりも早く、続けて黒狐が右手を狐の形にして妖術を発動する。

その右手からは狐の形をした3つの雷がほとばしり、刀を振るった直後の小次郎を狙ってジグザグに飛んでいくが――

 

「それも遅い・・・飛剣、燕払い!」

 

なんと小次郎は振るった状態から刀を地面に弾かせたかのような動きで、その雷も全て切り払って受け流してしまった。

 

『ぬぅ!この俺の雷ですら捌き切るか!あの学校屋上の時とは別人のようだぞ!?』

 

「ぐっ、それは忘れてもらいたい話だな――と、どうやら此方は"時間切れ"のようだ。熱くなっているお前達には悪いが、ここは一度退かせてもらうとしよう」

 

『待て!俺には、まだお前に言いたい事が山ほど――うぐっ、また霧が深く・・・』

 

「逃げる気か、小次郎!今のお前を見たら、綾はどう思うだろうな!」

 

妖気となって霧に紛れていく小次郎に、俺は負け惜しみだと分かっていても叫ぶ事しか出来なかった。

 

「お前達がどう足掻いた所で、暗き過去は消せぬ。それでも綾を自分達の仲間だと信じるならば、覚悟する事だな」

 

そう小次郎は言い残して、晴れていく霧と共に姿を消してしまった。

 

すると、それと同時に上から聞こえてきたのは――

 

「黒狐さん、助けてぇ!!」

 

「すいませ〜ん!黒狐さんに湯口先輩、キャッチお願いしま〜す!!」

 

どういう訳か、谷底へと落ちてくる椿と綾の悲鳴であった・・・いや、全く本当に何があったんだ!?

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