私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾肆話 待って怪我にカウントしないで!

 

あれからも次々と私達の所へと橋鬼達は休む事なく襲撃をかけてくる。しかも、連中は1体1体わら子を狙っているとはいえ、どれだけ攻撃してもすぐさま回復してしまうのでキリが無いのだ。

 

『クソ、頭を飛ばしても動くのか。これはキツいな・・・』

 

そう零す白狐さんも、度重なる敵の襲撃で少し息が上がってきていた。

しかし、それよりも私と椿が何だか、皆から置いていかれる形で離れていっているような気がするんだけど。

 

【ちょっと2人共!流石に今は孤立したら不味いわよ。椿も綾も、さっきの妖術で結構な妖気を消費したでしょ!?】

 

「分かっています妲己さん。分かっているけれど、この数だとコレしか・・・」

 

【だからって、2回も3回も派手にぶっぱなしたら妖気切れが早まるだけでしょうが。2人共、少しは自身の燃費を考えなさいよ】

 

「うっ・・・ぐぅの音も出ません」

 

とはいえ私も椿も、これ以外の妖術では橋鬼達を少し遠ざける程度しか出来ていないのだ。

 

私は雷キックの妖術で、椿は尻尾ハンマーの妖術で橋鬼達を1体1体地面に叩き付けて埋める作戦で妖気を節約しようとしているけれど、1体を行動不能にするまでの時間はかかるわ、叩く途中で他の奴から足を掴まれて怒涛の連撃を食らわされそうになるわで余裕が無いんだよ。

 

それに氷の妖術だと大量の橋鬼を凍りつかせるだけでも妖気を馬鹿みたく消耗するし、だからといって風の妖術だと威力が足りなくて数十メートル吹っ飛ばすのが精一杯だ。椿も使える妖術が限られているようだし、さっきの物真似で分かったけど術式吸収による強化も妖気を結構消費してしまうらしい。

 

「はぁ、はぁ・・・し、しんどいよ〜」

 

「つ、疲れる・・・って、ヤバ!気付いたら白狐さん達から滅茶苦茶離れちゃったじゃん私達!」

 

それに気付いても手遅れで、今更ながら前へ出ていた皆も私達が離されている事に気付いたのか声が聞こえてくる。

 

「いけない・・・椿様、綾様!朱雀、空から2人を助けろ!」

 

「分かっている、龍花!だが、コイツら知恵があるのか大量の石を投げて私を落とそうとしてくる!くっ、避けながら炎の杭で動きを止めるだけで精一杯だ!」

 

その2人の声に白狐さんも私達の危機に気付いて、大きな叫び声を上げた。

 

『何!?椿も綾も、我の後ろに居ろと言っただろう!何処に居るんだ!!』

 

「くっ・・・ここです白狐さん!!」

 

椿もそれに合わせて声を上げたが、わら子を守らないといけない都合上すぐには誰も来られなさそうだ。こうなったら1回だけ使えるんだから、麒麟甲を呼び出して、一撃で前方を思いっきり開くしか――

 

【椿、それに綾。この後に何があるか分からないから、その神刀と神甲はまだ使わないでおきなさい】

 

「えっ・・・」

 

「なっ、椿も同じ事を――って、うわっ!!」

 

しかし、私は妲己さんの言葉で一瞬だけ椿の事を意識して油断してしまった。

 

「綾ちゃん!今助け――わぁ!!」

 

なんと、橋鬼の1体に右足を掴まれてグイと空中に持ち上げられてしまったのだ。それを助けようと椿は妖術を発動しようとしたけど、その隙を突かれて彼女も同じく橋鬼に左足を掴まれてしまう。

 

「うわぁ!っていうか妲己さんのバカ!!離してぇ〜!!」

 

「ヤバいヤバい!このままだとボコボコにされる!!」

 

椿を助ける為にジタバタと暴れて掴まれた右足を振りほどこうとするが、結構な力で掴まれているらしくビクともしない。

 

『いかん、椿!』

 

「椿様!綾様!虎羽、朱雀、何とか出来ないのか!?」

 

「座敷様を守るだけでも精一杯だ、くそ!白狐様!せめて貴方が先に向かって、お2人を!」

 

「いや、虎羽。私が石をぶつけられてでも、椿様と綾様を助けに・・・」

 

「待て待て朱雀!今そっちに向かって連中が投げようとしている岩が飛んできては、流石に不味いと思う!」

 

そうして皆も私達を助ける為の策を練ってくれているうちにも、私と椿は橋鬼達に担ぎあげられて、まるで神輿をワッショイワッショイするかのように何処かへ運ばれていってしまう。

 

「ちょっ・・・!くっ、僕達を何処に連れて行くんですか!?」

 

「まさかコイツら、私達には普通の攻撃が効かないのを知って別な方法を――って、激しく揺れるせいで気持ち悪くなってきた・・・オェ」

 

「ちょちょちょ綾ちゃん!そこで吐くのは僕に直撃しちゃう!それ本当に不味いから止めてぇ!!」

 

「いや、ごめん椿。なんか本気でヤバいかも」

 

そんな会話をしながら運ばれていると、そこから見えた景色を見て椿と私は驚愕の表情になった。

 

「あっ、待って・・・ちょっと待って、そっちは!」

 

「うっぷ・・・このままだと崖に一直線じゃん!結構高さあるみたいだし、落とされたりなんかしたら幾ら私達でも怪我しちゃうって!」

 

「綾ちゃん・・・今ので僕、出発前に嫌な事を言われてたのを思い出したよ」

 

「一体何の事――あっ」

 

そういえば雪から"1回の怪我につき1回弄られる"って約束させられてたっけ。

 

ヤベェ!!だったら尚更怪我する訳にはいかないじゃん!こうなったら身体の力で振りほどけないし、氷と風の妖術で脱出するしかない!

 

【椿も綾も何か考えてたみたいだけど、もう遅いわよ】

 

「ほえ?」

 

「はい?」

 

な〜んて事を考えていた間にも、とっくに橋鬼達は崖に到着して私達を軽々しくポーイと投げてましたよ!

 

ああ、もう少し太って体重が重かったら・・・って冗談を思い浮かべてる場合じゃない!

 

「うわぁぁぁあ!!」

 

「ぎゃぁぁぁあ!!」

 

『椿!!』

 

「綾様!!」

 

龍花さんと白狐さんの焦る声が聞こえる中、私達は谷底にヒュ〜と落ちていってしまう。

 

とはいえ、すぐさま落下への対策を思いついて私達はそれぞれ妖術を発動した。

 

「くっ・・・妖異顕現、黒鉄の鎖舞!」

 

「コレを応用すれば――妖異顕現、凍華繚乱!」

 

そうして椿は尻尾の毛を鎖に変化させ、私は氷の花を鎖の形に変化させて崖の岩へ引っ掛ける。

これで一安心・・・かと思っていたら、なんと岩が脆かったせいか引っ掛けた場所がボロッと取れてしまって再び落下してしまったのだ!

 

「おま、ちょっ!ふっざけんな〜!!」

 

「わ〜ん!軟弱岩の馬鹿野郎〜!!」

 

【アンタ達、誰にキレてるの?大丈夫よ、2人共に防御力を上げているなら多分死にはしないわ。まぁ、軽い怪我はするかもしれないけどね】

 

「その怪我をしたくねぇんだっての〜!」

 

何とかして無傷で着地出来ないものかと頭に考えを急いで巡らせるが、さっきまでの戦闘もあって妖気がギリギリで何の妖術を使っても持ちこたえられそうにない。

 

そう思っていたら、落ちていく先の谷底に黒狐さんと湯口先輩を見つけた。どうして谷底なんかに居るかはこの際置いといて、これは助かった!

 

「黒狐さん、助けてぇ!!」

 

「すいませ〜ん!黒狐さんに湯口先輩、キャッチお願いしま〜す!!」

 

「ん?・・・なっ!椿、それに綾!?一体何をやっているんだ!?」

 

『くそ、橋鬼共に落とされたのか!待ってろ!!』

 

その私達の声が聞こえてすぐに、黒狐さんは狐の姿へ変化して崖を駆け上がって椿を背中で受け止めて難なく着地したのであった。

 

ホッ、良かった〜・・・ん?あれ?私は???

 

まさか黒狐さん、椿の事しか頭に無くて私を――

 

「ギャン!!」

 

『全く・・・危ない所だった。防御力を上げているとはいえ、怪我をする所だったぞ』

 

「そうですね、助かりま――」

 

「私は全然無事じゃないんですけどぉ!?頭から落っこちたよ今!」

 

そのまま私は黒狐さんへ怒ろうとするが、今度は湯口先輩が叫んでくる。

 

「おい、2人共危ない!」

 

「「――え?ギャフン!?」」

 

『ぐぉ!?』

 

なんと私達が先程ぶら下がろうとして失敗した岩が、転がりに転がって私達の頭上を直撃していったのだ!

 

『くっ、あ、頭に・・・おい2人共、何かしたか?まさか岩まで一緒に落ちてくるとは思わなかったぞ』

 

「あ、え〜と・・・まぁ、はい」

 

『とはいえ、椿も綾も大した怪我は無いようだな。しかし椿は大丈夫か?コブが出来たかもしれん、後で見てやろう』

 

なんというか、黒狐さんは相変わらず椿ばかり・・・って、ちょっと待った。なんかジンジンと地味に頭が痛くて、触ったら岩がぶつかった所が膨らんでるんですけど。うん、これ凄〜く嫌な予感するわ。

 

「全く・・・能力で防御力を上げていたのか。2人共ヒヤヒヤさせやがって。とにかく、もう上では戦闘が始まっているんだろう?コイツらが無限に湧いている原因を早く探らないとな、どうやら滅幻宗の連中が関わっている可能性もあるようだしな」

 

「先輩がそう言うって事は、知ってる人を見かけたって事ですか?」

 

「ま、まぁ・・・そうだな」

 

その私の言葉に、何故か先輩は気まずそうな表情で答える。そして黒狐さんも、どういう訳なのか少し複雑そうな顔で私の方を見ているような気がした。きっと先輩にとっては知り合いだから、そして黒狐さんは敵が厄介そうな奴だったからなのだろう。

 

「いつつ・・・あっ、黒狐さんのお陰で僕も大丈夫です。でも、あの・・・タンコブって怪我に入りますか?」

 

『「は、はぁ?」』

 

「バッ・・・つ、椿!言わなきゃバレないのに〜!!」

 

「いやいや、黒狐さんにはタンコブ出来たのはバレちゃってる訳だし」

 

待って怪我にカウントしないで!椿がそれを怪我にカウントしたら私、今回マトモに暴れられないんですけど!?

ああ、これはカナと雪に弄られる事が確定したかもしれませんわ・・・。

 

でも、先輩と黒狐さんが私に対して何とも言えない様子をしていたのは何だったんだろう?また新手の敵が出た、とかじゃなけりゃ良いんだけど。

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