私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陸話 思わぬ助け舟

 

滅幻宗に囲まれてしまった私達だったが、状況を冷静に考えれば囲んでいるのは下っ端坊主ばかりだし、私達の方には妖術に長けた黒狐さんも居る。だから、落ち着いて戦えれば何とかなるかもしれない。

 

その上、栄空と峰空――滅幻宗の幹部の2人も、ひょっとしたら前と同じように分身体の可能性だってある。

 

先輩の話では、術で作られた分身体は札に込められた妖気が無くなるか、もしくは術者本人を倒せば消えるらしい。だから、この2人を倒して橋鬼の分身体達が消えれば万事解決・・・となれば1番良いんだけど。

 

そうやって私と椿が冷静に分析していると、下っ端の連中が突如として私達へ襲いかかる。

 

『ふん、妖異顕現・・・黒土(くろつち)の骸龍(むくろりゅう)!』

 

すぐさま迎撃しようとすると、私達の前に黒狐さんが立って、初めて聞く名前の妖術を発動した。

すると、私達の周囲の地面が大きく振動しながら盛り上がって、巨大な骸骨のような黒い龍へと姿を変えたのだ!

 

「な、な〜んじゃこりゃあ・・・」

 

『ふふふ、流石に椿並みに破天荒な妖術を使える綾でも驚いたか。これは数で攻められた時用の妖術だ――さぁ、暴れろ骸龍!』

 

その黒狐さんの声に土の龍はグォォオオ!!と力強い咆哮で答え、巨大な身体を捩らせたり尻尾を振るったりして下っ端坊主達を吹っ飛ばしていく。やっぱりというべきなのか下っ端坊主達はマトモな対抗手段が無いからか、野球のノックみたくポンポン吹っ飛ばされていく。

 

すると、その光景に圧倒されている私を守るように椿が私の後ろへジャンプして飛んで来た。

 

「あっ、いつの間に!妖異顕現、影の操!」

 

そうして椿が私の影を操ると、それと同時に栄空の妖気がある事を感じ取り、その影が攻撃する瞬間に姿を隠していた栄空本人も姿を現したのだ!

 

「あっぶねぇ〜・・・サンキュー椿、助かったよ!」

 

「綾ちゃん、油断しないで!敵は姿を隠したり出来るんだよ!」

 

「おっと、返り討ちに合う所でしたね・・・貴方達は感知能力が高いのですか。これは厄介そうですね」

 

そして、なんと更に続けて何処からか放たれた強い妖気が込もった矢が栄空目掛けて飛んでくる。それを栄空は片手で難無く撃ち落とすと、崖の上の方を見て少し嬉しそうな声を上げた。

 

「おやおや?全く、久しぶりの再会かと思えば危ないですね――大地さん。今は確か、"烏森"の名前を貰っているのでしたかね?」

 

「黙れ栄空、今の貴様に名前など呼ばれたくはない。俺は俺の、かつての因縁を果たす為に此処へ来ただけだ」

 

矢の放たれた方向を見ると、崖の上にオジサンが弓矢を構えて栄空へ向けていた。

 

思わぬ助け舟でオジサンがフリップを使わずに話している事にもビックリだけど、今の話し方からして栄空達を知ってるっぽいのは意外だったよ。オジサンは今まで滅幻宗の話をした事とかは無かったけど、これは一体全体どういう事なんだろう?

 

「それにしても・・・もう弟子達はダウンですか、情けない――おっと!!」

 

そんな事を考える間も無く、今度は黒狐さんの放った雷が私達の横を通り抜けて栄空を襲った。

 

「わっぶね!?ちょっと黒狐さん!私と椿の間を通すように雷の妖術を撃たないでよ!!」

 

『す、すまん綾・・・しかしププッ、椿・・・雷の通った時の静電気で、フワフワと毛が逆だって何とも愛らしい姿に』

 

「怒るよ、黒狐さん。何を笑っているんですか、もう」

 

椿と2人で黒狐さんをジト〜っと睨んでいると、今度は峰空が攻撃を仕掛けてくる。しかも峰空は札から円盤らしき物体を召喚し、手裏剣のように黒狐さんへと飛ばして来たのだ。

 

「黒狐さん危ない!」

 

すぐさま椿が叫んで、影の妖術で無理くり黒狐さんを伏せさせる。その瞬間、風を切る音と共に土の龍は縦に両断されて元の土の塊へと戻ってしまった。

 

『ぐぉ!何をする椿・・・って、何だと!?土で出来ているとはいえ、俺の強力な妖気を含んだ骸龍が真っ二つに!』

 

「まさか、あんなヤバそうな妖具を出してくるなんて。あんなの下手に防御なんか出来ないし、これはちょっと倒すのは厳しいかも」

 

「というか、あの分身体の2人は何時になったら消えるんだろう?」

 

すると、不思議に思った椿の言葉に栄空と峰空の2人は目を丸くして驚き、やれやれと言った様子で首を横に振ってくる。

 

「私達を分身体と決めつけるとは・・・なるほど、先程から靖君の様子がおかしいと思えば、そういう事でしたか」

 

「ふふ、残念だけど今の私達は分身体じゃないわ。というか、それなら靖君なら分かると思ったのだけど?」

 

「一度騙されているんだ。そう簡単に自分自身の心を信じられる訳が無いだろう」

 

その反応からすると、どうやら幹部2人は分身体じゃなかったようだ。状況的には少し不味いかもしれないけど、それならそれで橋鬼の件は2人を捕まえて術を解かせてしまえば解決しそうだ。

 

とはいえ、この有利な状況を利用して先輩を二度も騙そうとするなんて、やっぱりコイツらは下手な妖怪よりも悪い連中だな。

 

「さて・・・分かっていただいた所で、他は早く消えていただけませんか?私は妖怪も半妖も、そして彼らに味方する人間も全て消し去りたいのですからね。全く汚らわしい存在だ」

 

しかし栄空は簡単に倒されまいとしてか、容赦なく私達の周辺へ大量の爆発する札を投げ付け、土煙で視界を奪ったり足場を不安定にさせてきた。

参ったな、これだと崖からのオジサンの援護も難しくなるかもしれないぞ・・・!

 

「ちょっと栄空!大地も含めた他はともかく、椿って妖狐だけは殺しちゃ駄目よ!?」

 

「何故ですか?悪しき妖怪や、それらに与する者は全て滅さないと・・・」

 

「それを完全にする為に"その子の力"が必要なのよ。奈田姫様の指示を無視するのなら、それがどういう意味を持つかは分かっているわよね?」

 

すると、その栄空の行動に峰空は明らかに動揺してストップをかけていた。

 

なるほど、どうやら幹部とはいっても互いに連携出来ている訳じゃなさそうだね。なんか前にも、こんな感じの噛み合わない仲間意識な奴を見た気がするけど。

 

「くっ・・・苛立ちますね。私は妖怪だろうと半妖だろうと、人ならざる者は今すぐにでも消し去りたい程に許せないのですよ」

 

「それは無理よ。今の貴方の力じゃね」

 

「ほぅ・・・では、やってみましょうか?」

 

その途端、栄空と峰空からは何故か妖怪と大差が無いどころか、それ以上の妖気が出てくるのを感じた。

 

ん?でも、この妖気の感じ・・・何処かで感じた覚えがあるような、無いような・・・?

 

「はい、ストップ。これ以上は止めましょう栄空、感づかれるわよ」

 

「・・・」

 

だが、そんな私の心を読んだかのように峰空は栄空を制止したので、落ち着きを取り戻した2人から感じられていた妖気も消えてしまった。

 

それでも私にとっては、栄空や峰空がただの人間ではないんじゃないかという疑念を持たせるには十分だった。

それは椿も同じだったようで、私と互いに少し顔を向け合ってから頷いて、2人で同時に術式吸収して強化した妖術を発動する。

 

「術式解放!黒鉄の鎖舞!!」

 

「一気に纏めて捕まえてやる!術式解放、凍華繚乱!!」

 

椿の放った太く強化された鎖は私の作り出した氷の花弁を纏って、触れるだけで完全に動きを封じる力を持った状態で、獲物を狙う蛇の如く栄空と峰空へと襲いかかる。

 

「あら、隙を突いたつもり?でも、これくらいなら・・・」

 

そんな私達の不意打ちを、峰空は予想していたと言わんばかりの表情をして円盤の妖具で迎撃してくるが、術式吸収で強化された上に組合わさった椿と私の妖術はアレくらいじゃ切り裂けない。

 

激しく鉄同士がぶつかり合う音が聞こえた後に、大きく刃こぼれしてボロボロとなった峰空の妖具が弾かれ、傷一つ無く依然として冷気を纏った鎖は一瞬で栄空と峰空をグルグル巻きにした。

流石に相手の力が強いせいか完全に氷漬けとはいかなかったけど、それでも両腕を凍らせて2人が何も出来なくさせられたので結果オーライだ。

 

「くっ・・・嘘でしょう!?この私が・・・!」

 

「ふん・・・無様なものですね、峰空」

 

「栄空、アンタの方が先に捕まってたでしょ!」

 

確かに峰空の言う通り、栄空は何故か無抵抗でアッサリ捕まえられていたのだ。うーむ、これは何だか嫌な予感。

 

「おや、こんな物で私は捕らえられませんよ。こうやって、この札の力で鎖を錆びさせれば・・・ほら、この通り簡単に脱する事が出来ます」

 

栄空がそう言うと、なんと左足を素早く動かして札を鎖に当て、一瞬でグルグル巻きにしていた鎖を錆び尽くして壊してしまった。

 

「やっぱりとは思ってたけど・・・でも足で札を使うとか器用過ぎるな!」

 

『椿に綾、2人の術が抜けられたとはいえ問題無いぞ。それなら、こうすれば良いからな!』

 

「むっ!?」

 

逃げられる!と思った瞬間に、今度は黒狐さんの妖気が膨れ上がったかと思えば、壊された私達の鎖は炎に変化して栄空を襲いかかっていたのだ。

 

「なるほど、これは黒狐さんの"神妖の力"だ!相変わらず、色々と応用出来るみたいで少し羨ましいな〜!」

 

「感心してる場合じゃないよ綾ちゃん!相手が次の手を打ってくる!」

 

しかし、それでも栄空は更なる札を投げ付けて爆発を起こし、その風圧で黒狐さんの変化させた炎を掻き消してくる。

 

「大人しくしろ、栄空!!」

 

「おや・・・これは我ながら、とんだ失態ですね」

 

そこで先輩が栄空へと札を投げ付けると、その札は吸い込まれるようにして栄空の手足に張り付いて、札が張り付いた部分が石化して栄空は動けなくなっていった。

 

「ちょっと先輩、流石に石にするのは後々不味いんじゃ・・・」

 

「大丈夫だ綾、剥がせば元に戻る」

 

初めて丘魔亜と戦った時の事を思い出したから、その石化の力についつい慎重になってしまったよ。コイツらを零課に引き渡す事を考えたら、後で元に戻るんなら別に問題無さそうかな。

 

しかし、それだというのに栄空と峰空は何故か余裕そうな表情を浮かべている。

 

「やれやれ、一気に分が悪くなりましたね・・・ですが」

 

「そうね、どうやら向こうは終わったようだしね」

 

「何?それは、どういう事だ――ぬぅっ!?」

 

2人に崖から降り立ったオジサンが問い詰めようとすると、栄空と峰空の足元に黒い渦みたいな空間が現れて2人をゆっくり吸い込んでいく。すぐさまオジサンは弓を構えて矢を放ったが、黒い渦から現れた異形の手によって防がれてしまった。

 

「これは・・・逃げるというより、他の何者かが2人を逃がそうとしている!?」

 

『くそ、逃がすか!おい靖に綾の叔父とやら、何とかならないのか!?』

 

「すまん、俺の方じゃ間に合わない!」

 

「駄目だ、此方も厳しい!あの黒い渦、相当の妖気で作られていて生半可な攻撃を通さないぞ!」

 

「残念ね〜今回の私達の仕事は、単なる"時間稼ぎ"よ。厄介な妖狐と、霊能力者の少女を足止めする為だけのね。まさか"昔の馴染み"まで出てくるとは思ってなかったけど、目標は別な機会に捕獲すれば良いし、今日はここまで。という訳で、またね〜」

 

そう峰空が言い残して、黒い渦は完全に2人を飲み込んで跡形もなく消えてしまった。

 

オジサンの事については色々と気になるけれど、この状況は不味いな。まんまと敵の罠にかけられた・・・って事は、とてつもなく嫌な予感がする。でも、そう敵の思う通りになんかさせやしないぞ。

 

『2人共、聞こえるか!?椿に綾よ、すまん!座敷わらしが山神に連れ去られた!アイツは、あの山神は一体何なんだ!?』

 

「クソッ、よりにもよって最悪な事になった・・・!」

 

「そんな・・・早く、わら子ちゃんを助けに行かないと!」

 

しかし運命というのは私達に残酷らしく、勾玉から聞こえる白狐さんの報告が耳をキンキンと鳴らしたのだった。

 

どうすれば良い・・・考えろ、考えろ私!

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