私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陀話 山神様に化けた妖怪、山獅子

 

あれから全力で谷底から上に登って来た私達は、すぐに白狐さん達の所へと向かった。

 

すると、大量に出て来ていたハズの橋鬼は何処からもスッカリ消え去っており、白狐さんのみがスマホでわら子の妖気を探っていた。4つ子の方は、どうやら既にわら子を捜索する為に別々な方角へ探しに行ったようだ。

 

私達の姿を見つけた白狐さんは、申し訳なさそうな顔をして声をかけてくる。

 

『おぉ、すまんな椿に綾よ。折角あの橋鬼達を消してくれたというのに、こんな事になってしまって。それで谷底で死んでいたという方が、本物の山神だったのか』

 

「はい、そうです・・・」

 

その白狐さんの言葉に、より申し訳なさそうな声で椿が答えた。

 

そして、谷底で見つけた本物の山神様の死体の隣に血で「山獅子」と書かれていたので、そいつがわら子を攫った妖怪かと黒狐さんもセンターへ問い合わせて調べてくれていた。しかし、手配書に該当するような妖怪はヒットしなかったのだ。

 

『どんな奴かは知らぬが・・・とにかく椿に綾。お前達2人の感知能力で、座敷わらしを連れ去った奴を追うぞ!』

 

「あっ、その必要は無いですよ黒狐さん」

 

『ぬっ?どういう意味だ?』

 

「なんていうか妖気の感じからして、実はま〜だ此処に居るっぽいんだよね」

 

白狐さんからは、偽物の山神が提案した"お堂を閉鎖しての籠城作戦"で偽物の山神とわら子の2人だけになる状況と気付かず、わら子の悲鳴でまんまと皆が引っかかってしまったのだという。それと同時に、橋鬼達も溶けるようにして消えてしまったんだとか。それから、お堂から"1つの"黒い影が飛び出して来たので4つ子達が血相を変えて追いかけて行ったそうな。

流石に、普段は椿の祖父並みに厳格そうな雰囲気を漂わせている4人でも私達と同じくらい、わら子の事を大切に想っているんだろうね。

 

それはそれとして――

 

「まっ、物は見てのお楽しみって事で・・・椿!」

 

「うん、綾ちゃん!そこです!妖異顕現、黒鉄の鎖舞!!」

 

私が皆に分かりやすく天井を指差すと同時に、椿は鎖の妖術を発動してドシュッ!と、私の指差している天井目掛けて突き刺した。

 

すると、その攻撃で出来た天井の穴から飛び出して来たのは――

 

「ひょひょ・・・2人共に、なんという感知能力。恐れ入りますのぅ」

 

「ん〜!んむ〜!!」

 

天井から出て来たのは、口に布を巻かれて声を出せなくされてしまったわら子を担いだ、山神様に化けていた妖怪"山獅子"であった。

そいつは山神様の姿をしていた時とは違い、相変わらずヨボヨボながらも髪がライオンのようになって多少強そうな感じになっている。

 

ギロと私達を睨みつける山獅子へ、私も椿も負けずにキッと睨み返してやる。

 

『ほぉ、それが本来の姿なのか?なるほど、お主どうやら妖怪に"成り立て"じゃの。我らの力量を知らずに、こんな事を仕掛けてくるとはな』

 

「ひょひょ・・・力量?お前達のような雑魚の力量など、たかが知れとるわい」

 

「ほ〜う、確かに大口叩くくらいには"成り立て"みたいだね〜」

 

「綾、簡単に挑発に乗り過ぎだ・・・」

 

「そ、そうですね綾ちゃんのオジサン。でも白狐さんの言う通り、妖気を隠す素振りも無かったばかりか妖気自体も小さくて量だって少ないよ」

 

「だけどさ、椿。滅幻宗の仰々しい物言いからして、まさか連中はコイツを使役しようとしてたんじゃない?」

 

その私の冗談混じりな言葉に、椿も訝しげな顔をして首を傾げた。"妖怪を滅する"事をモットーにしてるような奴らが、妖怪を使おうとしている理由・・・多分じゃないけどロクでもない予感しかしない。

 

そんな事を考えていると、ふと湯口先輩が口を開いた。

 

「そうか、"成り立て"か!これで分かったぞ、アイツら本当に何を考えているんだ・・・!」

 

「先輩、何か分かったんですか?」

 

「あぁ、そうだ椿。恐らくコイツは元々、この山に住む猿か何かだろうな。そいつに滅幻宗が、例の札を使って妖気を無理矢理注入して妖怪にしたのかもしれない」

 

「はへ〜、とんでもない話だ・・・」

 

もし先輩の話が当たってたなら、いよいよ私のロクでもない予感も当たりそうで怖くなってくる。

すると、今度は黒狐さんが先輩の後に続いて声をかけてきた。

 

『おい待て、靖。もしかすると滅幻宗はコイツではなく、あっちを妖怪にしたんじゃないのか?』

 

「えっ、黒狐さん?それはどういう・・・うわっ!?な、何だよ、この熊みたいな死体は!!」

 

黒狐さんが視線で示した先には、なんと更に妖怪の死体が転がっていたのだ。見た限りだと妖怪に成り立ての時に襲われたようにも見えるが、その襲った奴は目の前に居る山獅子なのかもしれない。

 

「何だと!?なっ、確かに札が貼ってある!じゃあ、そういう事はまさか・・・!」

 

『いかん!コイツは普通に妖怪化した奴で、座敷わらしを食べる事で更なる妖気を得ようとしておる!』

 

「「えぇ〜!!」」

 

もう滅茶苦茶ってレベルじゃないんだけど!?

 

――というか、そんな事に驚いてる間にも山獅子はジリジリと後退りながら逃げようとしてる!

 

「綾!奴が逃げるぞ!」

 

「分かってるって、オジサン!逃げようたって、そうは問屋が下ろさねぇぞ!妖異顕現、緊急祭繰龍(エマージェンシーサイクロン)参式"迦風楪(キャプチャー)"!!」

 

「ナイス、綾ちゃん!妖異顕現、影の操!!」

 

すぐさま私は風の妖術で作った竜巻に山獅子を閉じ込め、椿が奴の影を変形させた縄を身体へ巻き付けて完全に行動を封じようとする。

 

「ひょひょ・・・無駄な事を――怨!」

 

「な・・・!私と椿の術が!?」

 

しかし、それに山獅子は全く動じる事なく何事かを一喝する。

 

すると山獅子の周りから石を持ち上げた時に出てくる虫のように、ザワザワともウジャウジャとも禍々しい気を持った霊魂が一瞬で集まって来て私達の術から妖気を奪って効果を無くしてしまったのだ。

 

「な、何なんですかアレは・・・こ、怖いよ」

 

「ぎゃあ!何処から呼び出したか分かんないけど、あんな怨霊を呼び出すなんて納涼にしちゃ時期外れだろ!マジで怖いっつ〜の!!」

 

『椿も綾も、そう引っ付くな。今はコイツを何とかせねばならんのだろう』

 

「あ、ああ・・・足が竦んじゃって、それどころじゃないですよ〜」

 

「というか、そうでなくっても私はゲジゲジとかムカデみたくなってるのを触るのは無理だって!」

 

あ〜やだ!前に学校の事件を解決した時の、毛虫みたくウネウネしてた髪の毛を思い出しちゃったじゃんか!!

 

『それに忘れているようだが、椿には浄化の力があるだろう?対処の方法があるというのに、何故怖がる?』

 

「「あっ・・・」」

 

「どうやら、その様子だと2人共忘れてたようだな」

 

やっべ、そう言えば忘れてたわ。黒狐さんやオジサンに指摘されて思い出したら、な〜んか逆に怖くなくなってきたぞ!

 

「よ〜し!それなら椿が周りの霊魂を浄化した後に、今度こそ捕まえてやる!」

 

「次は簡単に抜けられないよう、僕も鎖の妖術で!」

 

しかし私達が浄化の力を使おうとした時に、今度は山獅子を取り巻いていた怨霊がわら子にまで取り憑こうとしていた。

 

「ひょひょ、こうすれば更に妖気が旨くなるでの。さて、何処かでゆっくりと――」

 

「そうはさせません!天神招来、神風の禊!!」

 

でも、すぐに椿が"神妖の力"を解放して浄化の風を起こして怨霊を浄化し、そのまま山獅子も竜巻へと変化させた風で閉じ込める。

わぉ、これじゃ"竜巻系の妖術"って私の専売特許の1つが無くなっちゃうじゃん。でも椿だから許しちゃうな〜。

 

「ひょっ!?私の怨霊が全てやられただと!浄化の力を使うとは、貴様ら何者!?」

 

「バーカ、気付くのが遅いんだよ!」

 

「それに僕達は何者かって?僕と綾ちゃんは、わら子ちゃんのただの友達だよ!」

 

「"神妖の力"を持っているだけの妖狐と人間だけどね!」

 

すると私達の言葉を聞いた山獅子は、途端に表情を曇らせて何としてでも逃げようと考えを巡らし始めたようだ。

 

「ぬひょ!?何じゃこれは!!」

 

けど、私と椿だけじゃなくて狐2人も揃っている時点でコイツは"詰み"も同然なのだが。何せ私達の神術は、白狐さんにも操れるしオマケで術の形すら自由自在に動かせる。

 

そうして椿の浄化の風で山獅子を完全に行動不能にしようとしたのだが、それでも奴は往生際悪く上へ飛び上がって竜巻の中から抜け出ようとしている。

 

しかし、それを見逃す椿と私ではなかった。

 

「だから逃がさないってば!妖異顕現、黒鉄の鎖舞!!」

 

「そして、いい加減わら子を離しやがれ!妖異顕現、緊急祭繰龍!!」

 

"神妖の力"を抑えた椿が鎖の妖術で山獅子からわら子を引き剥がし、私の風の妖術に乗せて椿の腕へと彼女を一気に連れ戻す。

 

「ひょ!しまった!」

 

「油断大敵ってやつですね。わら子ちゃんは返してもらいましたよ」

 

それから椿がわら子の拘束を解いてあげると、彼女はすぐさま椿に抱きついて大泣きしてしまう。

 

「うえぇ〜ん!椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん!」

 

『さて、後はお前を捕まえてセンターに引き渡すだけだな』

 

「こういう奴は人間にも居るな・・・ったく、つくづく人間と妖怪は大差ないと思うぜ」

 

『そこには同感じゃな、小僧』

 

そして狐2人と湯口先輩は山獅子の着地した場所で待ち構えており、"最早逃げられないぞ"と言わんばかりに3人で包囲する。

 

「もうこれ以上、悪あがきをしても無駄だよ。だから観念して大人しく捕まってください」

 

「ひょひょ・・・まだじゃ!まだ私には"アイツら"が居る!!」

 

「あっ、こら待て!!」

 

しかし、そんな私達が圧倒的に有利な状況だと分かっているにも関わらず、山獅子は突如として駆け出し包囲を抜けて何処かへと走っていってしまったのだ。

 

『ちっ、往生際の悪い!』

 

「さっきの戦闘で結界は既に無くなっているから、山から逃げられたら追うのが面倒だぞ!」

 

確かに先輩の言う通り、逃げられたら滅茶苦茶ヤバいだろうけど・・・あの様子だと、まだ何か仕掛けてきそうな気がするな。一体、何をするつもりなんだろう?

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