私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
逃げていった山獅子を狐2人と先輩が追いかけていくが、私と椿はオジサンが居るとはいえ、わら子の身の安全の為にと後を追うのを躊躇してしまっていた。
すると、そこへタイミング良く上空から4つ子の人達も現れて、わら子の傍へとフンワリ着地してくる。どうやら私達が山獅子と戦闘した事を感じ取って、すぐに捜索から戻って来てくれたようだ。
「座敷様!良かった、ご無事で・・・」
そのまま龍花さんはわら子へと抱きついてギューっとしているけど、あまりに心配し過ぎて力が強くなってるみたいで、わら子本人は苦しそうにしてるんですが。
「はいはい、龍花さん落ち着いて落ち着いて。わら子がダウンしそうになっちゃってるでしょーが」
「・・・ハッ!す、すいません座敷様!」
「あ、愛されてるね〜わら子ちゃん・・・」
「そして椿様と綾様、ありがとうございます。まさか二度までも座敷様を助けて頂く事になるとは・・・私達の修行が足りませんでした。申し訳ありません」
そうして4つ子は揃って私達に頭を下げて謝ってくるが、あまりに4人が思い詰め過ぎてる感じがしたので私も椿も少しタジタジしてしまう。
「いや、友達のわら子ちゃんを助けるのは当然です。それに、それだけ心配して動いてくれたって事は、4人共わら子ちゃんの事が好きなんですよね?必死になって周りが見えなくなるのも分かりますよ、僕の事を守ろうとする綾ちゃんみたいでしたし」
「ちょっと椿、そう言われると結構恥ずかしいんだけど・・・」
とはいえ、それでも椿は何とかフォローの言葉を4人へとかけてくれた。なんというか、やっぱり私と違って椿は他人の事を思いやれる性格なんだな〜と感心するよ。
「好き・・・ですか。う〜ん、少し違う気もしますが・・・いや、これは悪くないですね。それより椿様に綾様、まだアイツを捕らえていないのでしょう?」
「行ってこい、綾。座敷わらしは俺と守護の4人が全力で守る。2人は奴の後を追って今回の事態を終わらせるんだ」
「OK、オジサン!分かったよ!」
「はい、ありがとうございます!わら子ちゃんをお願いします」
そうオジサンや4つ子の人達に背中を押された私達は、それぞれの力を解放して3人の後を追う。色々あったとはいえ、あの4人の力ならきっと・・・わら子は今度こそ大丈夫だろう。
━━━━━━━━━━━━━━━
それから少し走ると、お堂からあまり離れていない場所で3人と合流する。
「白狐さん!黒狐さん!」
『おぉ、椿と綾か。座敷わらしの方は良いのか?』
「それなら大丈夫だよ。捜索に行ってた4人が戻って来て、3人と一緒に探して来いって言われたからね」
「綾、そんな簡単に任せて大丈夫なのか?」
「心配なのは分かるけれど、二度も同じ失敗をする人達じゃないですから、ちゃんと大丈夫ですよ先輩」
「そうか、椿。それにしても、どうして山獅子は一体こんな所に逃げて来たんだ?」
そして、その場所を見て山獅子が此処へ逃げて来た理由も大体察した。
そう、私達が来たのは例の廃村だったのだ。
「そんで、何で皆さん立ち止まってる訳で?とっとと山獅子を捕まえないと、村の人の幽霊とか使われたら面倒臭い事になりそうなんだけど」
『ん?いや、それがな綾・・・どうも様子がおかしいんだ』
私の質問に黒狐さんが意味深そうな答えを返したので、気になって椿と3人の隙間から前を覗いてみると、そこには何故か慌てまくる山獅子の姿があった。
「おい、お前達!何で言う事を聞かないんだ!?お前達を呼び出したのは私なんだぞ!おい、聞いているのか!?」
わ〜お、こりゃもう余裕もへったくれも無いですわね。そして今の山獅子の言葉からして、やっぱり廃村は山獅子自身がピンチになった時に何かしら利用しようと蘇らせてたって事か。だけど、その亡霊達が自分に従ってくれないから滅茶苦茶焦っていると・・・ある意味じゃ自業自得な結果だね。
とはいえ、私達側から見ても村人達の亡霊からは怨念や負のオーラは消えていないように感じる。さっきと違いがあるとすれば、多少それが薄くなってきている気がする程度だろうか。
「・・・って、あっ!!」
「えっ、どうしたの椿?」
「うん、綾ちゃん。あそこ・・・」
そんな事を考えていると、途端に椿が声を上げて村の一点を指さす。椿の指す方向や村人達の様子をよくよく見てみると、亡霊となった村人達はどうやら谷を越えた先の山の方を見ているようだ。
その山の方では、いつの間にやら木製の橋が作られつつあったのだ。
『ぬっ、何故あんな所に橋が!?』
『白狐、落ち着け!橋が独りでに架かっているんじゃない、村の数人が橋を作っているんだ!』
黒狐さんが更に奥を指さす方を見れば、確かに数人の職人達の亡霊が忙しない様子で橋を作っていた。彼らの頭上にはレイちゃんがフワフワと浮いているのを見て、ようやく私達は村人達が何故こんな事をしているのかを理解する。
そして、ここで私は"ある事"を思い出す。そして、そこに遺されていた"想い"。
この村では元々別な村との道を繋ぐ為に橋を架けようとしていた事を・・・。
「そうか、これはレイちゃんが!」
「なるほど、そういう事ですか。村の何処からか志半ばで亡くなった職人さん達を連れて来て、役割を与えて橋を作らせているんだ。村の人達を成仏させる為に」
『何と・・・むっ?待て、それならば廃村の者達の願いというのは・・・まさか』
「気付きましたか、白狐さん。この廃村の人達の願いは、たとえ人柱を使ってでも向こうの山へ橋を架ける事なんです。そして、レイちゃんはそれを叶えようとしているんです」
何処にも居ないなんて思ってたら、いつの間にか1人でそんな事をしてるんだもん、そりゃ私達だってビックリするよ。
それにしても、レイちゃんは自分の霊狐としての使命なのか分からないけど、ここまで大きな事を出来るなんて・・・レイちゃんは本当に単なる霊狐なの?
「ひょ、ひょ・・・まっ、待て!待て待て!何故コイツらの怨念が・・・負の念が薄まっていっとる!?」
「簡単に教えといてやりますよ、山獅子さんとやら。お前は廃村の人達の無念を利用しようとしたみたいだけど、レイちゃんはこの人達を最初から救う為に動いていたんだ」
「人の"想い"を悪用しようとする貴方と、小さくても勇敢に"想い"を叶えようとするレイちゃん。その"想い"に対する考え方の違いが貴方の敗因です」
私と椿の言葉に山獅子は完全に抵抗する気を失ってしまったのか、その場でへたり込んで呆然と橋が作られていく様子をただただ眺めていた。
村人を止めようとすらしなくなった所を見るに、ここでようやく私達との力の差が理解出来たらしい。
「ひょ、ひょひょ・・・あぁ、お、思い出した・・・私も、いや俺も"そう"だった」
「えっ?って、うわぁ!!」
「な、なんか急に若々しい山伏の姿になった!?」
ポツリ、ポツリと呟きだした山獅子は、どういう訳なのか爺さんからオッサンに姿が変わっていて、私も椿も驚いてしまった。
すると、その様子を見た白狐さんは何処か納得したように話を始める。
『なるほどな。お主、此処で暴れていた猿の怨霊の除霊に失敗し、殺されて逆に取り込まれとったのか。それで妖怪になったんじゃな』
「あぁ・・・そのようだ。それで猿の怨霊が、取り込んだ俺の力を使って此処に居た大量の怨念達を蘇らせ、更には此処で何かをしようとしていた坊さんの集団すら利用して強力な妖怪になろうと企んだみたいだ・・・」
「はぁ〜・・・何だか私、良く分かんなくなってきたよ」
「えっと、綾ちゃん。とりあえずまとめるなら、センターへ最初に依頼を出したのは消えたハズの村を見つけた本物の山神様で、その後に山獅子に殺されてしまったって事だと思うよ」
「なるほどね。それで滅幻宗も状況を利用して何かを考えてたけど、結局は山獅子の思い通りになっていた・・・と考えれば1番筋が通ってるな」
よしよしOK。椿のフォローもあって、何とか私でも今回の事態について大体は理解出来たよ。
うん、これ良く考えなくても完全にわら子はとばっちり食らっただけじゃねぇか!?
「おい、そこの坊主。俺の中には、まだ猿の野郎が居る。ついでだ、コイツは俺が一緒に連れて行く。だから、代わりに経を唱えてくれんか?」
「あぁ、分かった。宗派は違うかもしれないが、まぁ我慢してくれ」
そう頭の中でツッコミを入れていると、話を終えた山伏は湯口先輩へと声をかけていた。そして、近づいて来た先輩を見ると、山伏は少し難しそうな表情を浮かべる。
「しかし坊主、お前もちょっとヤバそうだぞ。俺と同じ修行の身だろうと、決して油断はするんじゃないぞ」
「・・・あぁ、肝に銘じておくよ」
多分、山伏は先輩の身体に纏わりついている妖気の事を言っているのだろう。もし、これから先輩の身に何かあったら・・・ふと、そう私の頭では不安がよぎる。
しかし、先輩はそれを分かっているかのように山伏へ答え、それから静かに経を唱え始めた。
「すまなかった。俺の未熟さ故に、迷惑をかけた・・・失礼する」
先輩の読み上げる経が進むにつれ、山伏の身体は少しずつ淡い光を上げながら薄くなっていく。
しかし――
「ウキャァァア!!」
なんと、まだ猿の怨霊は往生際悪く逃げようと、山伏の身体から出てこようとしてきたのだ。
まさか山伏との魂の繋がりが切れて、しかも自我まで取り戻したのに抵抗するなんて。
「大人しく浄化されてください。天神招来、神風の禊」
「ギッ!キキィ・・・」
「す、すまんな、狐の嬢ちゃん」
「良いですよ、アレはしょうがないです」
とはいえ、椿が浄化の力をぶつけてくれたお陰で、猿の怨霊も完全に大人しくなって成仏したけどね。やっぱり人と動物じゃ考え方自体が違うんだろう。
そして、上半身だけになった山伏は私と椿を見て、何故か穏やかそうだった顔を真剣な表情へ切り替える。
「しかし・・・狐の嬢ちゃんも、そこの人間の嬢ちゃんも色々抱えてんな。だけど、2人共どんな事があっても・・・自分を見失うなよ」
「うん、分かりました」
「えっと、はい・・・なんというか、気を付けます」
その山伏の、何処か私達の心を見透かしているような眼差しに、私は少し緊張しながらも椿と同じように微笑む。そうして照れ臭そうではありつつも、満足そうな様子で消えていった山伏を見送ったのであった。