私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆話 妖怪街道の日常を見る

 

『落ち着いたか、椿に綾よ』

 

「ええ、もう大丈夫。先を急ぎましょう」

 

「う、うん。ありがとう白狐さん」

 

山道を下りながら、私達を心配してくれる2人。黒狐さんがスマホで調べ物までしてくれた辺り、相当私達の事が気がかりだったようだ。でも、街に着く頃には私も椿も落ち着きを取り戻してきていた。

 

ふと、椿が訝しげに白狐さんへ質問する。

 

「ねぇ、白狐さん。妖魔ってさ、人の言葉は理解出来ないの?」

 

『ぬっ、急にどうした?椿よ。・・・そうじゃな。奴等は人の言葉どころか、言葉そのものも使えず此方から話しかけても反応を見せんのじゃ。』

 

「つまり、理性は喪われてるって事だよね・・・」

 

白狐さんが私の言葉に黙って頷く。妖怪から変異する妖魔がいたとしたら、その想いはとうの昔に喪われてしまったのだろうか。そう考えると私は妖魔の危険について、少し複雑な気持ちになった。

 

「じゃあ、言葉を理解する妖魔って特別なんだ」

 

『椿・・・お前、まさか何か思い出したのか?』

 

「ううん、この言葉だけだよ黒狐さん。本当は他にももっと思い出したハズなんだけど、また忘れちゃったよ」

 

そう言って椿は白狐さんの背中でしょんぼりとする。それを励まそうとしてか、彼は尻尾を使って椿の顔をモフモフと撫でてきた。

 

『椿よ、その言葉を理解する妖魔だが――確かに居た。しかし10年程前から姿を見せずにいると、そう報告にあるのでな。まず心配はいらんじゃろ。』

 

「ハア・・・だといいけれど。あまり椿に危険が迫るようなら、ちゃんと守ってあげてよね」

 

『今さら言われるまでもない、綾よ』

 

そうして、街の中を進んでいくと街のあちらこちらに色んな妖怪達が様々な表情を浮かべ楽しそうに過ごしている姿が見える。

 

その姿からは恐怖を感じる事もなく、椿も安心したのか身体を起き上がらせた。

 

『ん?椿どうした?怖くないのか?』

 

「あっ、うん黒狐さん。怖いのは変わらないけど、ちょっとは大丈夫になってるかな・・・」

 

「ようやく、妖怪にも慣れてきたみたいね」

 

『チッ』

 

「おい駄狐」

 

黒狐さんが舌打ちした事へツッコミながら、私は街中を跳ねて進むビニール袋へ荷物を沢山入れた案山子を見ていた。椿の方では白狐さんが道を知りたい浮かぶガイコツへ色々と教えている。ただ、椿はそれがいきなり出てきた事が怖かったのか再び彼の背中で縮こまってしまっていた。

 

『うんうん、椿はそうでないとな』

 

「やっぱり早々、怖くならない訳は無いよね」

 

「う、うぅ・・・」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

街中を歩きながら、さっきの椿の怯えぶりに白狐さんが茶化してくる。私と黒狐さんはその様子を見て苦笑いを浮かべた。

 

『全く・・・少しはマシになったのかと思ったら、変わらんの〜椿は』

 

「お、驚かす方が悪いんです!」

 

『まぁ、その姿もまた可愛いんだがな』

 

「はいはい、2人ともあんまり椿をいじらないの。2人はともかく、私達は初めて此処に来るんだからさ」

 

のどかな街並みを抜けると、その先に広がっていたのは車通りが多かったりする大通りのある街並みだった。とはいえ、こちらも人間界の時とは打って変わっていて、建物の多くが苔むし窓がボロボロだったりと大分廃れている感じがしていた。

そこにとまっている鳥達も、やはりというか妖怪らしい姿かたちをしている。

 

「ちょっと建物が古く見えるってだけで、こんなにも街並みが変わって見えるなんて。不思議な感じがして、少しテンション上がってくるね」

 

『椿のように一緒に驚いたり怖がるものかと思っていたが・・・意外と順応が早いな、綾は』

 

「白狐さ〜ん・・・まだ着かないんですか〜?」

 

『ん?まだかかるな。我慢せい』

 

なんだか街を歩くのが楽しくなってきた私に、妖怪や建物の異変などに恐怖心が全開になる椿。

 

先程は反転している地形が多く無事にセンターまで辿り着けるのかと不安になっていたのだが、此方まで来ると流石に慣れてきたのか建物の配置などが分かり易くなってきていた。

 

「あ〜楽ちん楽ちん!さっきまでの街並みと比べると、こっちの方が人間界と同じ感じで歩きやすいな〜」

 

「ねぇ、此処って・・・人間の世界とどういう繋がりがあるの?建物の形が一緒なんだけど」

 

「そういえば、そうだね。白狐さん!何かこれって意味があったりするものなの?」

 

『ん?よく気づいたな2人とも。この妖界はな、いわば人間界の裏世界というものじゃな』

 

白狐さんが大通りの看板を指さす。看板が取り付けられている場所も反対側だが、何やら文字のようなぐにゃぐにゃなものが描かれていた。

 

『ほれ、ちょうど鏡に映したような世界になっておる。だからといって、字までは反対にはなっとらんからな』

 

「そうなんだね〜全然分かんないけど」

 

「あ〜、読めないですね・・・」

 

『なんじゃ、最近の人間は「草書体」は読めんのか?』

 

「むしろ初見で読めた方がすごいっての。私と椿はついこの間まで普通に暮らしてたんだからさ」

 

そうやって歩いていると、椿が電柱にぶら下がっている提灯お化けに気がつく。

 

「ねぇ、街灯って提灯お化けなの?もしかして・・・ずっとあのまま?」

 

『ん?そんな事はないぞ、良く見ろ。ほら、ちょうど交代の時間だ』

 

黒狐さんが示した先から、別な提灯お化けが跳ねてきてオフィスのサラリーマンのような会話をしながら電柱を登り下りしていった。

 

「か、可愛い・・・」

 

「喋ってる事はアレだけど、見てる分にはほのぼのしてくるね〜」

 

『なにか言ったか?2人よ』

 

「別に〜?ちょっと余所見してただけですよ」

 

「な、何でもないです白狐さん。・・・あっ、それよりも提灯お化けさんの灯りの交換ってロウソクですか?その割りには炎の揺らめきがない気がします」

 

椿が照れ隠しに話題をずらしながら、私も少し気になっていた事を引き出す。

 

『あぁ、灯りはLED電球じゃ』

 

「とんでもない所を近代化してるね」

 

「行きましょう、白狐さん」

 

和もへったくれも無い真実で完全に冷めてしまった椿が先を行く。そして私達は四条通りの繁華街に出てきた事にようやく気がついた。

 

「あれ?白狐さん、此処って・・・」

 

『むっ?気づいたか椿よ。そうじゃ、今向かっているのは、お主らの世界でいう所の市役所がある場所じゃ』

 

「市役所が妖怪センターになってるんだ。こりゃ覚え易そうで助かるね」

 

「それじゃ、このまま河原町通りを上がっていけば・・・」

 

『うむ、すぐ見えてくるハズじゃ。しかし――時間がかかり過ぎたの、あとは走るぞ!』

 

「あっ、ちょっと!」

 

いきなり走り出した2人に私達は振り落とされないよう必死にしがみついた。目的地はもうすぐだ、そう思うと身体に緊張感が湧いてくる。

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