私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾壱話 知りたい事

 

模擬戦を終えて一息ついた私達はカナが約束してくれた通り、オジサンの事について話を聞く為に雪が敷いてくれたレジャーシートの上にペタリと腰を降ろす。夏の暑さのピークは過ぎたとはいえ、レジャーシート越しでも陽に照らされた屋上に篭った熱を感じる。

 

「そんじゃ、先ず私から。こないだの山での時、オジサンは滅幻宗の人を知っているような感じだったけど、知り合いだったとか何かあったの?」

 

「いきなり核心に近い所を聞いてくるな、綾は・・・」

 

早速1番気になっている事を尋ねてみると、オジサンは少し悩ましげに頭を掻いてからコクリと頷いて質問に答える。それにしても今更だけど、頭を含めて全身が鎧とか宇宙飛行士みたいなゴテゴテした格好だから、なんというか地味に仕草がわざとらしく見える気がするね。

 

「しかし綾達に気付かれずに隠していても、いずれは向こうに勘づかれただろうからな。ここはハッキリと言おう――俺は、かつて滅幻宗に所属していた事がある」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「正確には、今のように"妖怪を滅する事だけを目的"にしたりはしていなかった頃の話だがな」

 

「は、はぁ・・・」

 

オジサン、そういう事を後から言って皆を困惑させるのは止めて欲しいよ。ついつい皆と一緒にビックリしちゃったじゃんか。でも妖怪退治に執心していなかった頃っていうと、どれくらい前の話になるんだろう?

 

「俺が奴らと袂を分かつ事になったのは、今から遥か昔・・・1000年以上も前になるかもしれん」

 

「いや待って!?」

 

「せ、1000年以上って言いました!?」

 

予想の斜め45度からすっ飛んでいった答えが出ちゃったよ!そんな昔の人だったのオジサン!?

流石に、実年齢60以上な椿も目を丸くするよ!

 

でも、それなら滅幻宗の幹部4人もオジサンと同じような人達って事になるのか。何となく普通の人間ではない違和感を感じていたけど、これで納得出来るね。

 

「じゃあ、綾ちゃんのオジサンはもしかして・・・」

 

「ご想像の通りだ、妖狐の椿。俺は、あの座敷わらしの守護をしている4人と同じ"人妖"と呼べる存在だ」

 

「そうなんだ・・・」

 

そのオジサンの言葉に、私はつい声色が暗くなってしまう。

 

それは私が物心ついてからずっと一緒に暮らしてきたというのに、オジサンが人妖だった事にすら気付けなかったという複雑な身内意識からなんだろうか?

 

いや、でもそうなると次に気になるのは――

 

「オジサン、昔の滅幻宗ってどんな感じだったの?」

 

「ふむ、一概には言えないが・・・救いを求める者に安らぎを与えるような、いわば慈善事業のような事をしていた。そもそも滅幻宗という組織自体は、俺が今の幹部4人と共に立ち上げたような存在だったからな」

 

「じゃあ、元々妖怪退治もしていなかったって事なんですか?」

 

その椿の質問に、オジサンは再び頷く。

 

「ああ、そうだ。しかし時代の流れの中で、悪行を為す妖怪が増えてくるようになると、それに伴って自然と妖怪退治の仕事も頼まれるようになっていったがな。最初こそ、ただ泥棒や悪戯をする妖怪を捕まえて説法を説く事のみをしていた。しかし、何時からか"ある者達"が中核となって"妖怪そのものが悪である"として、滅幻宗を過激化させていったのだ」

 

「それが、あの幹部4人だったって事?」

 

「その通りだ、綾。概ね合っている」

 

すると少し俯いたオジサンに、椿は何処か警戒した様子で質問を続ける。

 

「でも、綾ちゃんのオジサン。貴方はそれを黙って見ているハズは無かったよね?」

 

カナも雪も不審そうにオジサンを見ているけど、滅幻宗を作り上げた張本人だと名乗っているから、他の人からも疑われるのは仕方ないのかもしれないね。

 

「・・・俺はアイツらを何としてでも、人の道を踏み外さないようにしたかった。だが俺が行動を起こそうとした時には、"奈田姫"という奴の裏工作によって誰も俺を信用してくれなくなっていたんだ。いくら俺が理念から外れていると説いても"凶暴な物の怪に情でも湧いたか"と、半ば追い出される形で組織を脱退させられてしまったのだ」

 

「そうだったんですか・・・」

 

「そんな・・・」

 

かつて仲間同士であった者から裏切られ、組織から追い出されてしまったオジサンの気持ちはどれほど酷く傷付いていたのだろう。想像するだけでもどんな言葉をかければ良いのか分からず、何も言えなくなってしまいそうだ。

 

それでも――それでも、まだ私は知りたい事がある。

 

「ねぇ、オジサン。オジサンがそんな昔の人だったんなら、本当は何時から私と一緒に暮らしていたの?私とオジサンは、本当に血の繋がりがある親戚なの?」

 

「すまない、綾。本当は、お前と俺との間には何の関係も無かったんだ。10年程前に"ある人物"から、お前の命を守って欲しいと託されただけの話だ」

 

「その"ある人物"って、誰なの?オジサン、隠さないで全部教えて」

 

「綾ちゃん、流石にそれ以上は・・・」

 

オジサンへ迫るように質問を続ける私を見かねてか、椿が少し引き気味で間に入って止めようとしてくる。

 

「とても知りたがっている綾には悪いが、何故か俺もそれについては全く思い出せない。顔や姿形、声すらも霧がかかったように朧気なんだ。覚えているのは、綾を守って欲しいという言葉だけだった」

 

「綾のオジサン、随分と都合の良い記憶してる」

 

「ゆ、雪ちゃんまで!」

 

「ふっ・・・確かにこんな話、信用してくれという方が無理なものだろう。だが、俺が知っている事は本当にこれで全てなんだ。それに今の滅幻宗については最早、俺には想像も及ばない状態にある」

 

「オジサン・・・」

 

それから自嘲するかのようにオジサンは軽く笑うと、何かを感じ取ったかのようにおもむろに立ち上がった。

 

「さて・・・何時までもコソコソと覗き見とは感心しませんよ、八坂校長」

 

そう言ったオジサンが視線を向けた先を私達も見ると、なんと屋上の物陰から校長先生がスーッと姿を現しながら、何処か満足げな表情で扇子を広げていた。

 

まさか、私達の模擬戦やオジサンの話も隠れて見ていたんだろうか?校長先生を少し怪しく思っている私と椿は、ついつい身構えてしまう。

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