私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾弐話 シリアスがシリアルになったんだけど

 

私達の模擬戦やオジサンの過去の話を隠れて見ていた八坂校長先生は、普段のようにニコニコと扇子を広げたまま近づいてくる。

 

「いやいや、流石だね〜槻本君も烏森君も。夏休みの間に、君達は更に強くなったようだ。妖怪としての実力が板に付いてきているね」

 

「校長先生・・・私は妖気が使えるだけで、一応人間なんですけど」

 

「ごめんごめん烏森君!すっかり忘れてしまっていたよ、はっはっは」

 

校長先生のボケにサラッと軽いツッコミを入れた所で、私と校長先生のプチ漫才に呆れながら椿は訝しげな様子で声をかける。

 

「何しに来たんですか?もうすぐ昼休みも終わりますよ」

 

「な〜に、君達に少しお願いをと思ってね」

 

めっちゃ嫌な予感がして受けたくないんですけど。

でも、それを断ったら却って、校長先生の事を信頼しているカナや雪に不審がられるだろう。ここは誰からも私と椿の本心を悟られずに、慎重な反応をした方が良さそうだ。

 

「八坂校長先生、ここから先はこの私・・・」

 

「な、なんか聞き覚えのあるような声が」

 

「皆の味方!半妖の味方!この赤木生徒会長――ぶべらばっ!?」

 

「あっ、ごめん変態会長。ついビックリして拳が出ちゃった☆」

 

シュバッと変な前口上で飛び出して来たら、反射的に攻撃してしまうのは仕方ないよね、ウン。

そして椿も、鎖の妖術で伸びかかっている変態会長をグルグル巻きにして縛り付けていたよ。

 

「いや、いきなり何をするんだい!?僕はまだ何もやっていないよ!?」

 

「すいません、こうでもしないとマトモに会話が出来ないんです」

 

「放っといたら危ないしね〜」

 

「僕は危険生物か何かかい!?」

 

「「ある意味、危険生物より厄介(だよ・です)」」

 

それも女性限定でな!

ホント酷い話だよ・・・その性格だけ何とかしてくれれば、もうちょい頼りがいはありそうなのにさ。

 

そして校長先生も依然としてニコニコしながら、縛り付けられている変態会長へ声をかけた。

 

「赤木君、君には良く動いていてくれて助かっているよ。だけどね、ちょっと一線を超えてしまう所が玉に瑕(きず)かな?」

 

「あの、校長先生・・・わ、私が何か?」

 

わお、流石の変態会長も校長先生にはビビりまくって大人しくなるもんなんだな。というか、そこまでビビっているのを見ると、多分何かやらかした自覚があるんじゃないかって気がしてくるぞ。

 

「君は体育の時間中、水泳の授業をしている女子の更衣室に忍び込んでは、服とかに染み付いている汗やら色んな物を舐め取っていたようだね?」

 

「いえ、あれは・・・私は垢舐めの妖怪ですから、垢を舐め取って妖気を補充しないと、妖気の不完全な私では暴走を・・・」

 

何コレ、シリアスがシリアルになったんだけど。

 

そして敢えて、とっくに欲望的な意味で暴走してるとはツッコまんぞ。というか椿も他の皆も変態会長のあまりの所業に、ドン引きしてる上に自身の身体を隠すような仕草までしてるし。

 

「風呂桶の垢で我慢しろと、そう言いましたよね?」

 

「うっ、ぐぅ・・・いや、その・・・」

 

「はい、ギルティ」

 

「うわっ!あ、綾君!?」

 

流石にアウトオブアウトなので、私は変態会長を縛り付けている、椿の鎖の端っこを屋上の一角へ突き刺して宙ぶらりんにさせる。

 

「待て待て!綾君、話を聞け!半妖の中には、ある程度の妖気を補充しておかないと暴走する人も居る!辻中君もその1人だ!だから私も人の身体の垢を舐めて、妖気を補充しないと大変な事・・・に」

 

それでも変態会長は言い訳を続けるけど、そこで私の後ろに居る椿の怒りの眼差しで、今度こそ大人しくなった。そもそも余計な事を言わずに"欲望を持て余しました"って、正直に白状すれば済む話だと思うけどね!

 

「別にさ、妖気を補充出来れば良いんでしょ?それなら妖怪食で十分だよね?それにカナちゃんは、ちゃんと妖気を蓄えていても暴走したよ。だから、その暴走は気持ちの問題じゃないんですか?」

 

「ですってよ、そこの変態。どうせ嘘つくんなら、最初から正直に謝れば良いのにさ」

 

「はい、綾ちゃんの言う通りです。あんなの言い訳になってないですよ、変態」

 

そうして私と椿でカエルを睨むヘビのように変態を軽蔑の表情で見ていると、何故かカナと雪もビクビクした様子になってしまっている。

 

「うわぁ・・・椿ちゃんと綾ちゃんから、遂に会長とも呼ばれなくなったよ」

 

「しかも、一気にランクダウンしてる・・・恐ろしい」

 

な、何か2人をビビらせるような事したっけ?

まぁそれはそれとして、変態が完全に大人しくなったので一先ず屋上の一角へ吊るしたままにして、これまでの悪行を反省してもらうとしよう。

 

「さて・・・説明する為に出て来たのに、結局罰せられて終わりの彼は放っておいて、こうして私が来たのは君達4人へ放課後に校内の見回りをお願いしたいからさ」

 

「は、はぁ」

 

そして校長先生は笑顔のまま私達の方へと歩いて近づいてくるが、なんというか私や椿からしたら今の校長先生の笑顔は少々不気味に感じてしまう。

 

「でも、校長先生。それだけだったら生徒会の人が何時もやっているから、私達がやった所で特に何にも無いと思いますけど・・・」

 

「いや、それがね烏森君。夏休みの間に、どうやら変な妖怪が紛れ込んだらしくてね。もし手配書の妖怪だったら学校の皆が危ないだろう?だから、ここは烏森君と槻本君に調べてもらいたいんだ」

 

「あ、分かりました。"それだけ"でしたら大丈夫ですよ」

 

ぬぬ・・・椿が校長先生の反応を伺いながら答えた所を見るに、私はカマをかける為に囮にされた感じかな?でも校長先生は全く変な反応というか、普段通りニコニコしていて全然分からないや。

 

――と思ってたら、椿も私の方を見て"僕でも駄目みたい"と言いたげに、わざとらしく肩を竦めて首を傾げていたよ。その仕草は許してくださいって感じなのかな?めちゃくちゃ可愛いから許してあげますよぉ!

 

「それじゃ、宜しくね。これからの事も含めて、君達4人には特に期待しているからさ」

 

そうして、校長先生はそそくさ〜と屋上を後にしていった。ついでにオジサンも屋上から飛び降りてその場を後にしていったけど、あんなゴテゴテな人が学校をうろついているのを見つかったら大騒ぎになりそうなんですけど。ち、ちゃんと見つからないように帰って欲しいかな〜?

 

「それにしても、ま〜た厄介そうな事を押し付けられちゃったなぁ。手配書の妖怪でもランクが低けりゃ何とかなるってだけで、もし高いランクの奴だったらどうしようもないぞ」

 

そんなハァとため息をつきながら、これからの事を想像して気が滅入りそうな私の横では、カナは物凄く気合いが入っているようだった。

 

「ふっふっふ・・・これは燃えてきた!よ〜し!ちゃんと椿ちゃんと綾ちゃんの役に立てるんだって事を証明して、2人のパートナーになるんだ!」

 

「なんでカナは凄くやる気満々なんだよ〜?」

 

「あのね、カナちゃん。君は十分、僕や綾ちゃんのパートナーとして頑張ってくれていますよ。特に学校での事とかは、カナちゃん達が居ないと上手く仕事が進まないからね。僕達2人だけだと、綾ちゃんが良く1人で暴走しちゃうもん」

 

「椿、カナも頼りがいがあるのは分かるけど。そこまで私、暴走した覚えは無いよ?まぁ、私だってカナには何時も助けられているけどさ・・・勉強の事とか」

 

はい、正直な話めちゃくちゃ勉強はカナのお陰で何とかなっている状況です。

夏休み明けのテストなんか、ギリギリの所で赤点を逃れられたからね。去年まで毎回受けさせられていた、放課後の補習が無いのは心が清々しい!

 

「椿ちゃん、綾ちゃん!そこまで言ってもらえるなんて嬉しいよ!!」

 

そんな事を思い出していると、カナは椿と私の言葉に感激して満面の笑みで私達へ飛びついてきた。

 

「「あっつぅい!!」」

 

感激のあまり、妖気を制御出来なくて身体からファイアーしてるけどな!

 

「あっ!あれ!?ご、ごめん2人共・・・大丈夫?」

 

「へ、へーきへーき。ちょこっとだけビックリしただけだから」

 

「僕の方も大丈夫だよ。でもカナちゃん、なんで炎が?」

 

「ん〜、良く分かんないんだよね・・・」

 

カナが落ち着いたと同時に炎も引っ込んだようだし、これもやっぱりカナのメンタルで――と思っていたら、今度は雪が私と椿の手を引っ張ってカナから引き離そうとしてくる。

 

「椿も綾も、危ない。香苗はまるでバーナー、危険」

 

「ちょっと、誰がバーナーよ!?離しなさい雪〜!」

 

「ぎゃあ!タンマだカナ!また炎が出てきてる〜!!」

 

「へっ?嘘!?な、何で?特訓の時は、こんな事は無かったのに〜!」

 

「あれ、待って・・・何だか、急に寒くなっ・・・て、きて――」

 

「わぁぁあ!?つ、椿が凍ったぁ!!」

 

そうやってカナと雪を抑えようとしていたら、今度は椿がカチンコチンに凍っちゃったんですが!?

 

「雪、待って!椿ちゃん凍らせてるから〜!ストップ、ストップ!!」

 

「えっ?あれ・・・何で?香苗の炎から守る為に2人の周りを冷やそうとしたら、何故か椿だけ凍った」

 

「私の方はめちゃくちゃ熱いんだけど!?それ、まさかじゃなくても範囲外だったり範囲内だったりしてるよ!」

 

「雪、良いから戻して〜!!」

 

うわぁ・・・左は激熱、右は激寒。これな〜んだ?とかナゾナゾやってる場合じゃねぇ!

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――数分後

 

「はぁ、はぁ・・・し、死ぬかと思った」

 

「ある意味、カナと雪だったから良かったけどさ」

 

「「反省しています・・・」」

 

あの後、何とかカナの炎で凍り付いてしまった椿を解凍出来た。とはいえ、まさか雪の能力までとんでもない事になってしまうのは予想してなかったよ。

 

そんな感じだったので、2人は何が何だか分からないけど悪い事をしてしまったと土下座をして謝りまくってきていた。

 

「カナも雪も、もう大丈夫だから頭を上げてよ」

 

「それに僕も綾ちゃんも怒ってないから、そこまで気にしなくて良いですよ」

 

「そんな訳にはいかないよ、椿ちゃんに綾ちゃん!下手したら怪我どころじゃなかったんだから・・・そうなったら私、一生自分を許せなくなる!」

 

「私も同じく。でも、私は特訓していないのに何で椿を凍り漬けにしちゃう程の力が?」

 

その雪の言葉で、私達は揃って「う〜ん」と腕を組んで唸ってしまう。確かに、特訓をしていて力の制御方法が変わったかもしれないカナなら分からないでもないけど、雪までもが同じように扱う能力が強くなっている理由が思い当たらない。

 

「そこだよなぁ・・・ひょっとしたら校長先生が何か――」

 

「ふふ、椿君に綾君!それは恐らく、君達2人の特異性によるものだよ」

 

「うわ!変態がミノムシみたいにブラブラ・・・というかグルングルンしながら話しかけてきた!?」

 

確かに気になる話ではあるけど、私はそれ以上に吊り下げられたままな変態が、死にかけのイモムシみたいな動きをしてる方が怖いんですが。

 

すると、その変態会長の言葉に椿が食いつく。

 

「それ、どういう事?」

 

「八坂校長から聞いたが、君達自身も"神妖の力"を持っているようだね」

 

「うん・・・産まれた時から、僕には"神妖の力"があったみたいです。それに綾ちゃんも、確か"神妖の力"を扱える素質を生まれ持っているって、そう綾ちゃんから前に聞いたよ」

 

「あぁ、椿の言う通りだね。確か思い出した記憶だと、どうやら私は"悪しき者を祓う"宿命がある烏森って謎の血筋のお陰で、"神妖の力"を扱えるみたいなんだよな」

 

「なるほど・・・2人共、恐らくは"それ"のせいじゃないのかい?椿君も綾君も、どんな"神妖の力"なのかは分からない訳だし、まだ無意識で発動しているのかもしれない」

 

「そうだとしたら、あの狐2人よりも私達はとんでもない力を持ってる事になるぞ・・・」

 

う〜む、困ったもんだ。暴走のリスクさえ無くなれば、私にとっては椿を守る為の力として強力なんだけどな。

 

それと・・・椿は何故か複雑そうな顔をしていた事は黙っておこう。あの顔の感じだと、自分の生まれとかより私や狐2人の事を考えているように思えるし。

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