私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――その翌日
私と椿は登校してから揃って、バッタリと自身の机で項垂れていた。
何せ昨日の晩は、がしゃどくろと口裂け白骨女のイチャイチャっぷりを、夕ご飯の時ですら見せつけられていたような状況だったのだ。
骨同士で新婚夫婦よろしく、ご飯をア〜ンし合ってたのとか色んな意味で頭に残ってるんですけど。
「椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん・・・大丈夫?」
「う〜ん・・・しばらく骨は見たくないです」
「ぶっちゃけN〇Kの人形劇でも見てた気分だったわ・・・」
「あら椿に綾、アンタ達も普段は白狐や黒狐とイチャイチャしているじゃないの」
「おいおい!椿はともかく、私は狐2人から椿を守ってるだけなんだけど!?あの2人に好意向けられるとか、考えただけでも少しゾッとするぞ!」
「そこまで白狐さんと黒狐さんを悪く言わないの、綾ちゃん。それに美亜ちゃんも、ああ見えても僕は抵抗しているからね?」
「でも椿、本気で抵抗してるように見えない」
その雪の言葉に対して、椿は大きなため息をついて理由を答える。
「あのね雪ちゃん、あの2人は僕に何をされても面白がるでしょ?だから、ある程度に抵抗をとどめているんです。そうすれば"これ以上は駄目だな"って分かるでしょ?」
「でも、そうやっている内に少しずつ調教されていくのよね〜」
「ぶっ!ち、ちょ・・・調教!?」
「ま、まさか、そんな・・・椿が〜!」
「綾ちゃんも綾ちゃんで、美亜ちゃんの言葉で変なショックを受けないでください!」
私が頭を抱える横から、椿が脳天にチョップでツッコミを入れてくる。うぐ、地味に痛い。
いやいや!でもさ、だって私が狐2人から守り切れなかった時とか色々アレやコレな事されてるから、頭では有り得ないと思ってても"ひょっとしたら・・・"って考え出したら落ち込みたくなるんだよ!
「全く綾ちゃんも・・・それに美亜ちゃん?調教ってさ、もうちょっとキツい事をされないですか?」
「あら?調教にだって種類はあるのよ。優しくヤンワリと調教していくのだって調教の一種じゃないかしら」
「うぅ〜ん・・・」
「椿、そこで思い悩む必要無いと思うけど」
本当に美亜はもう少し、人を弄る事に対して自重して欲しいって思う時があるよ。今だって、それぞれの事で悩んでる私と椿を見て面白そうな顔をしているし。
そして、ついでと言わんばかりにクラスの人達にまで嬉しそうにニヤニヤされてしまってるよ〜!
あ〜もう、何時から私まで弄られキャラが定着しちゃったんだろ・・・。
椿が色々弄られそうなのは薄々勘づいてはいたけど、まさか喧嘩っ早くて皆から嫌われてると思ってた私まで弄られる事になるとはだよ。
「あれ?ねぇ、アレ何〜?」
すると、クラスメイトの1人が廊下を指差して不思議そうな声を上げていた。それにつられた皆も同じ方を見てから騒然としだしたので、私と椿も気になって廊下へと視線を向けると――
「・・・」
「・・・」
「・・・マジでか」
うん、廊下に狸の耳と尻尾がある地蔵さんがあったんですけど。コレ絶対そうだよね?むしろ違ってたらビックリするぞ。
「なぁ楓、それ滅茶苦茶バレてるからな」
「・・・」
おい、シレッと無視すんじゃないやい!
えっ?私は本当に楓で間違い無いって思ってるんだけど。他の皆にも見られてるし、あまり目立ってたら妖怪としてはヤバいんじゃないのか?
担任の先生までびっくらこいた顔しちゃって困惑してるし、これはもう強硬策で行くしか無さそうだ。そう思った私は、皆に見えないよう椿と互いに軽く頷き合ってから行動を起こす。
「すいません、先生・・・ていっ!」
「はぅ!?な、何するっすか姉さん達!!」
「いや"何するっすか"じゃねえよ!?滅茶苦茶バレまくってたからね今の!」
椿の脳天チョップで変化が解けた楓を、すぐさま私が襟首を引っ掴んでプラ〜ンとぶら下げる。もう既に盛大に目立っちゃってるから、今日私達の守護をしに来てもらっている龍花さんに連れて帰ってもらおう。
そんな事を思っていると、我に返った担任の先生がジェスチャーで"ちょっと待った"をかけてくる。
「あ〜、待て待て2人共。その子も妖怪なのか?」
「あっ、はい。化け狸の楓ちゃんです」
「本人は"くノ一"を自称してますけどね。実際、見た通りの感じですよ〜」
椿と私の言葉に、楓は少し不満そうな顔で頬を膨らませている。なんというか、それ普通に可愛いだけだから怖くも何ともないぞ。後、ちゃんと自分から挨拶くらいしとけ。
とりあえずは椿が楓の頭を下げさせてはいたけど、それでも微妙に抵抗していた辺り不貞腐れてるようだ。
しかし、それから楓を待っていたのは皆からの予想外の反応であった。
「か〜わいい〜!!」
「ねぇねぇ、尻尾触っても良い?」
「耳丸くて可愛い〜!」
「ほっぺプニプニしてる〜!」
「へっ?へっ!?なんすか、何なんすかコレぇぇえ!!」
なんとクラスの女子達から黄色い声が上がりまくり、楓は何の抵抗も出来ず皆から耳やら尻尾やらを触られまくられたのだ!わ〜ヤベ〜・・・。
「こら、お前達。そういう事は後にしろ。HR始めるぞ〜」
私達が止める前に担任の先生が上手く止めてはくれたけど、皆から揉みくちゃにされた楓は完全にビビり上がってしまい、すぐさま私と椿の後ろに逃げ込んで来てしまった。
「ね、姉さん達・・・お、鬼が、鬼が居るっす、此処・・・」
「鬼は失礼だと思うよ、楓ちゃん」
「ま、まぁ気持ちは分からないでもないけどさ・・・とにかく、ドンマイ」
それからは、一先ず担任の先生が気を効かせてくれて"今日だけ特別"という事で、楓も一緒にクラスへ居て大丈夫となった。
とはいえ、クラスの女子達からの熱い眼差しとか、一部の男子共の邪っぽい視線のせいで楓本人はキョロキョロして落ち着きがなかったけど。
━━━━━━━━━━━━━━━
――昼休み、屋上にて
「それで?楓ちゃんは何をしに学校へ来たの?」
私と椿、カナに雪の普段のメンバーに楓を加えた5人で弁当を食べながら、椿が楓に一番私達が気になっている事を尋ねる。
ちなみに、今回の弁当は某ト〇ロに出てきたようなピンクの田麩(でんぶ)とグリーンピース、目刺しの魚っぽい妖怪食である。わぁ、里子の手作りって感じが今回はいつもより強くてテンション上がってくるよ〜!
「ムグムグ・・・それは極秘任務なんで、姉さん達にも言えないっす」
「おいおい楓、食べながら喋ると危ないぞ。あぁ〜ほら、目刺しが逃げそうになってるし!」
「むっ、逃がさないっす!」
楓は何時にも増して真剣そうな様子で逃げようとしてた目刺しをキャッチしているが、その間にも他の具材が動きまくって大変な事になりかかっている。
「ふふ、スッカリお姉ちゃんが板に付いてきたね〜椿ちゃんも綾ちゃんも」
「カナちゃん、茶化さないでください。それと楓ちゃん、まだ君はライセンスなんて持っていないから任務は受けられないでしょ?あんまり勝手な事をしていたら、おじいちゃんに怒られるし海音ちゃんにも心配かけるよ?」
「・・・」
「それでもだんまりかぁ。仕方ない、こうなったらマジで椿の爺さんに話して、楓が変な事を起こさないように厳しく見ておいてもらおうかな」
「うっ、綾姉さん・・・卑怯っす」
「そもそも楓ちゃん、言わない方が悪いですからね」
私と椿の圧力に、ようやく楓は言いたくなさそうにしながらも目的の事を話してくれた。
「ぐぅ、椿姉さんも・・・その、仇を探してるっす」
「仇って、君の育ての親の?」
そして楓は、その椿の言葉を肯定するように頷く。
それにしても、亰嗟の2人に親を殺した犯人の事を聞いていた時から薄々何かをしようとしている気はしていたけど、よりにもよって1人で動こうとしているとは思っていなかったよ。
まぁ・・・よくよく考えたら、楓は元から1人で先走って行動に移してしまいがちな性格だしね。思い出してみれば、初めて楓と会った時も盛大な勘違いだけで遠い此方まで来てたっけ。
何にせよ、分かりやすい性格の楓が抱えている"想い"すら見抜けなかったくらいに、私も椿も自分の事で一杯になりかかっちゃってたね。
「楓ちゃん、ちょっとア〜ンして?」
「なんすか、椿姉さん?ア〜ン・・・んぐっ!?」
すると、椿はおもむろに楓へ"噛んだら風船の如く膨れる"グリーンピースを食べさせ、彼女が膨らんだグリーンピースで口一杯になって喋れないようにさせていた。
あっ、この流れは椿が本気で怒ってる時の説教をする雰囲気だわ。
「ねぇ楓ちゃん。君の想いに気付けなかった僕達も情けないけれど、君はまだ幼い妖怪ですよ。もうちょっと周りの妖怪さん達とか、特に僕や綾ちゃんには相談して欲しかったですね」
「ムグググ!」
「君1人で亰嗟に居るかもしれない両親の仇に挑んでも、逆に殺されちゃうよ。そんな事になったら僕や綾ちゃん、海音さんに君の両親や旅館の人達は凄く悲しむと思う」
「ムググ、ムグ!!」
「ちょっと楓ちゃん、聞いてる?楓ちゃ――」
「椿、ちょいタンマだよタ・ン・マ。楓の口の中が予想以上にエラい事になりかかってるわ」
今回の椿の説教はとても真面目な説教なんだけど、そこに至るまでの流れが少し強引過ぎたのかもね。これじゃ会話とかどころじゃなさそうなくらい苦しそうにしてるよ。
「あ〜、うん・・・椿、説教する時はもう少しやり方を加減しよっか?」
「ご、ごめんなさい・・・」
━━━━━━━━━━━━━━━
――それから少しして
皆で協力して、何とか楓の口から膨らんだグリーンピースを取り出す事が出来た。ちなみに美亜は案の定というか、面白い物を見てる表情をしてて手伝ってくれませんでした。
「椿姉さん、酷いっす・・・」
「ごめんごめん・・・まさか、あんなに噛んでたなんて思ってなかったよ」
「でも、姉さん達の言いたかった事は分かりました。自分、焦ってたっすね」
「ま、平たく言えばそういう事だね。そんで、これからはちゃんと私や椿に頼る事!」
そうして私は椿と一緒に楓の頭を優しく撫でると、何故か楓は恥ずかしそうにしながら俯いて顔を真っ赤にしてしまった。
「椿姉さん、綾姉さん・・・」
そして楓は上目遣いで私達を見てくるけど、なんというかトロ〜ンとしてません?えっ、これ私達が何かやらかしちゃった感じか?
そんな事を思っていると、そこへカナが楓に待ったをかけてくる。
「楓ちゃん楓ちゃん、ちょっと待ってね〜それ以上は、此方に入会しないといけませんよ〜」
「おぉ、こんなのがあったんすね!分かりました、入るっす!!」
「何言ってるの楓ちゃん!?」
「つ〜か、カナはそうやって私と椿のファンクラブを布教してるのかよ!?」
なんというか、本当にブレないな〜・・・。
しかも自然に会話へ入ってくる感じで手馴れている辺り、多分ファンクラブの規模が凄い事になってそうな気がしてきたぞ。
「あら香苗、アンタ面白い事してるわね。私も入らせて」
「モチのロンだよ!」
「ぎゃぁあ!美亜もか〜い!!」
うわぁ、これは酷い。
そもそもの話、椿が好かれるのは分かるけど何で普段から態度とか悪い私も好かれてるのか分かんないんだけど。
でも、そんな今の環境を好きだと思っている、"らしくない"私が心の中に居るのも確かだ。
少し前までは喧嘩ばかりで自分の事なんかまるで考えた事なんてなかったけれど、ひょっとしたら私は今までで一番、自分の事を"幸せ"だと感じているのかな・・・?
「椿も綾も2人が何を考えているか分からないけれど、悩む必要無い。私達を受け入れるだけで楽になる」
「雪ちゃん、悪魔の誘惑は止めてください・・・」
「私もそっちに進んだら踏み外しそうだから、まだもう少し考えさせてよ〜!」
どうやら椿も、自分が元々男の子だったから今の女子達に好かれたり、先輩や狐2人に好かれたりする事を悩んでいたらしい。
でも、なんで私達が真剣に悩んでるのに皆は幸せそうな顔でニヤニヤしてるんだよ〜!?
割とマジで考え込んじゃってるんだぞ、私なんかが皆とこれからも仲良くしてて良いのかなって!
そんなこんなで私も椿も恥ずかしくなっちゃったので、照れ隠しのつもりで急いでグリーンピースを口の中に入れて思いっきり噛んでやった。
・・・ん?"噛んでやった"???
「ムグググ!」
「ムグ、グググ〜!!」
ぎゃあ!完全にやらかしたぁ!
コレそのまま飲み込まないとダメな奴なのに、揃ってグリーンピースを噛んじゃったから先程の楓と同じ事になっちゃったよ〜!!
「天罰っすよ〜姉さん達〜」
あっ、ちょ・・・楓も楓で酷ぇ!
1回こうなると、このグリーンピースは少しずつ口の中で削っていかないといけないから面倒臭いんだって〜・・・。