私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾陸話 今までにない"嫌な予感"

 

――それから放課後

 

私達は皆で楽しく話しながら、登下校に使っている待ち合わせ場所の公園へと向かっていた。

普段なら迎えの一反木綿か妖怪タクシーが時間通りに待ってくれているハズなのだが、今日はやけに遅いのか誰も待っていないようだ。

 

レイちゃんに乗って帰ろうかとも思ってみたけど、5人くらい乗せられるレイちゃんでも流石に疲れさせちゃうかもしれないし、何よりレイちゃんは今グッスリおやすみ中なのだ。無理に起こすのは可哀想だから止めておこう。

 

「それにしても、迎えが遅いっすね〜」

 

すると、そこでタイミング良く楓が時間通りに来ない迎えの事を切り出してくる。

 

「う〜ん・・・確かに遅いっちゃ遅いけどさ」

 

「でも、そこまで心配する程に遅くなってないかな」

 

「椿と綾の言う通り。まだ、いつもより30分遅いだけ」

 

「30分でも十分おかしいと思うんだけど・・・」

 

カナと雪も楓と同じく訝しんではいるものの、それよりも私や椿と長く話していたいのか何処か残念そうな顔をしていた。それにしても、家でも結構話しているのに、良く2人は話のネタが尽きないな〜。

 

「でも椿、綾。何かあったならアンタ達の勾玉に、白狐か黒狐から連絡が入るハズでしょ?」

 

「うん、そうだけど美亜ちゃん・・・」

 

「何にせよ連絡が来ないんだったら、こっちから連絡してみるしかないよな」

 

そうして私と椿は耳に着けている勾玉を外して椿は白狐さんに、私は黒狐さんに声をかけてみるが・・・全く何の反応も返ってこない。

 

「白狐さん?ねぇ聞こえてる白狐さん!?もしも〜し!!」

 

「黒狐さ〜ん!聞こえてっか!?・・・クソッ、マジでか」

 

「椿ちゃんも綾ちゃんも、どうしたの?」

 

「カナ、こりゃヤバいかも。いくら呼んでも、黒狐さんが応答しない」

 

「僕の方も、白狐さんと連絡が取れないんだ」

 

その私達の言葉に、ようやく皆も危険を察知して周囲を警戒し始める。そして私と椿の勾玉の方は、普段の受け答えの際に光らない事から狐2人が応答しないのではなく、どうやら何らかの理由で"勾玉自体が機能していない"状態のようだ。

 

「ねぇ、椿ちゃんに綾ちゃん。2人共、何かおかしいと思わない?いくら人気の無い場所って言っても、この辺りは住宅街だよ?どうして人の話し声どころか、歩く音すら聞こえないの?」

 

「これは、まさか――!」

 

私が事態の深刻さに気付くと同時に、今度は龍花さんと朱雀さんが上空から降り立って私達を守るように武器を構える。

 

降り立って来た2人へ椿が驚きの声を上げた。

 

「龍花さん!それに朱雀さん!」

 

「椿様と綾様は、ご友人を守ってください。この公園全体に謎の結界が張られています」

 

「どうやら、何者かが貴方達を襲おうとしているようなのです」

 

「結界?そんなモン、一体何処のどいつが・・・」

 

そうして私が2人の言葉へ質問しようとした瞬間――

 

「待って、椿ちゃん!綾ちゃん!」

 

「気を付けて、姉さん達!周りが囲まれています!」

 

カナと楓が叫んだと同時に、公園の木陰から薄気味悪い笑い声を出しながら怪しい男共が姿を現した。

 

「10人・・・ううん、20人?もっと沢山いるかも」

 

「カナに雪、それから楓も私達から離れないで。なんというか、コイツらから微弱な妖気を感じる」

 

「うん、綾ちゃんの言う通りです。一応は普通の人間みたいだけど、それぞれが妖具を持っているみたいです」

 

「まさか、この人達・・・椿ちゃんと綾ちゃん、それに美亜ちゃんや楓ちゃんも捕まえに来たって事?」

 

「そうかもしんないね」

 

そうして警戒をしていたが、それでも男共は構わずジリジリと私達の方へと近づいて来た。

 

「一応言っておきますが、それ以上近づいたら容赦はしませんよ」

 

龍花さんもどうやら、向こうが本気で私達を襲いに来ている事を直感で理解しているらしい。

 

それは私も椿も同様で、コイツらの視線からはヘドロのような気持ち悪さと、包丁の切っ先のような殺意を感じていた。そして、今までにない"嫌な予感"も。

 

「ひひ、暗殺者の"あの人"の言う通り。此処で張ってて正解だったぜ」

 

「おぉ、こんな上玉が4体も」

 

「しっかし、妖怪女が好きな市長が辞職したからな〜・・・他の上の得意先がコイツらを気に入ってくれるかどうか」

 

「関係ねぇ、その時は俺達で楽しんじまえば良いさ」

 

「いやいや、札に閉じ込め戦力とする方が良いだろう」

 

そんな自らの欲を満たす事しか頭に無い男共の言葉を聞いて、椿はキッと眉を強く顰める。

 

どうして亰嗟から力を得た連中は皆こうまでも悪事へ簡単に手を染められるんだろうか。力を持てたからといって、誰しもが良い人になるとは限らないって例を見せられているようで気持ち悪いよ。

 

「ひゃわ!?」

 

すると、途端に椿が白狐さんの力を使って一瞬の内に楓を抱き抱えて飛び退く。

 

一体何が――と思っていると、それと同時に銃声が遠くから聞こえてきて楓の立っていた場所に弾丸が撃ち込まれていたのだ。

 

「椿姉さん、これは・・・」

 

「うん、楓ちゃん。誰かが、僕達をスナイパーライフルで狙っているよ」

 

「危ない、椿様!」

 

しかし、今度は男共の1人が鉄パイプのような物で椿へ殴りかかってきた。龍花さんが青龍刀で攻撃を防いで弾き飛ばしてくれたから良かったものの――と思う間もなく、楓を抱き抱えたまま椿が叫んだ。

 

「美亜ちゃん!後ろに飛んで!」

 

「な、何よ!?きゃあ!!」

 

椿の声に反応して美亜が後ろへ跳んだ瞬間に、またしても銃声が聞こえて地面に穴を空ける。それを見た事で私は敵から狙撃されている事を確信し、美亜も同じく狙われていると認識した。

 

「クソッ、狙撃手が隠れてんのかよ!」

 

「ちょっと嘘でしょ!?椿、アンタ何処から撃たれているか分かるの?」

 

「分かるのは撃った時の音だけです、美亜ちゃん!向こうが発砲した時の微妙な音の違いで、何処が狙われているか大雑把に把握しているんだよ!」

 

「じゃあ、なるべく動いて狙わせないようにするしか――うおっとぉ!あっぶね〜な!!」

 

椿は私の返答に頷いているけど、男共も攻撃してきているから何とも上手く動けない状況だ。

 

「くっ・・・こうなったら一か八か、私が空から!」

 

「朱雀さん!そんな事をスナイパー相手にしたら自殺行為です!」

 

「しかし椿様、このままでは!――うっ!」

 

狙撃手からの銃弾を避けては、男共の攻撃を受けないようにしつつ反撃していく私達。しかし、幾ら殴ったり蹴ったり果てには妖術で吹っ飛ばしても、どういう頑丈さをしているのかコイツらは立ち上がって復帰してくる。

 

「はっ、痛くもねぇぜ!」

 

「おら!観念しろ!」

 

「スナイパーと俺達のチームは無敵だぜ!」

 

そんな勢いの衰えを知らない連中を見て、私もついつい愚痴をこぼしてしまう。

 

「あ〜クソ!ちょっとばかり頑丈だからって調子乗りやがって!!」

 

「不愉快なのは同感です、綾様。コイツら、何かで身体能力とかを強化しているだけのクセに・・・!」

 

そうして龍花さんと共に敵を再び吹っ飛ばしていると、またスナイパーが発砲した音が聞こえてきた。椿が身を翻して避けた事から、今度は彼女が狙撃されたらしい。

 

「くっ、危ないなぁ!」

 

「椿!楓も動き回りながらでも、出来るだけ私達から離れんな!」

 

「暗殺者、亰嗟の・・・まさか、もう1人の父さん母さんを殺した奴って・・・」

 

すると楓は何かを呟きながら、憎い敵を見つけたと言わんばかりの目をしていた。

 

「おい、楓!聞こえてんのか!?」

 

「討つべき仇、自分が・・・自分が何としても!」

 

私の声が届いておらず、危うく楓が1人で敵陣へ突っ込んでいこうとした瞬間――

 

「落ち着いて、楓ちゃん!!」

 

なんと椿が楓の前に立って頬を引っぱたいた。

 

「なっ!?何するっすか、椿姉さん!!」

 

「何するもこうするもないよ、楓ちゃん。言ったそばから僕達に頼ろうとしないで、また1人で仇を討とうって考えていたでしょ!?」

 

「うっ、だけど・・・」

 

しかし、椿が楓を説得する最中であっても男共は容赦なく2人を襲ってくる。

 

「はっは〜!幼女2人ゲット〜」

 

「妖異顕現、影の操!」

 

「――っおぉ!?」

 

「ちょっと黙っててもらえねぇかなぁ!この変態クソ野郎が!!」

 

「それと僕は幼女じゃありません!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

まぁ、その攻撃は私と椿で防いで、2人を捕まえようとした奴を彼女の影の妖術で持ち上げた後に顔面へ膝蹴りを入れてやったけど。

 

「さて、と・・・良いか、楓?相手はただの一般人なんかじゃないんだ。下手に突っ込もうとしたら、それこそ返り討ちにされちまうぞ」

 

「綾ちゃんの言う通りだよ。力を手にして有頂天になっている人間は、とても恐ろしい事ですら簡単にやろうとしてしまえるんだからね」

 

「うっ・・・だ、だけど」

 

「だけどもヘチマも無いよ。もっと楓は色々強くならないとダメだ」

 

「焦った所で危ない事にしかならないんだから、今は僕達に守られてください」

 

楓の気持ちも分からなくはないし、楓自身も自分が未熟であるという事は良く分かっているハズだ。だからこそ、悔しい想いを堪えて今は我慢してもらわないと。

 

「くっくっ・・・痛ぇなオイ。だが、効かねぇがな!」

 

そう思っていると、今吹っ飛ばしたばかりの奴が何とも無いといった具合で起き上がってくる。

 

「こんっの野郎、コイツらゴキブリ以上にしぶとい奴らだな!」

 

「先ずはテメェから――ぐはぁっ!!」

 

しかし、途端に椿に殴られスーパーボールの如く派手〜なバウンドをして気絶した奴を見て、私も男共も一瞬ポカーンとしてしまった。

 

「とりあえず、こうやって気絶させた方が良さそうだね・・・って、あれ?どうしたの綾ちゃん、そんなビックリした顔して」

 

「あ、うん。椿がそこまで強くなってた事を再確認した感じ、かな?」

 

「もう、綾ちゃんは何言ってるの?僕だって、伊達に戦い方を学んでいないからね」

 

そして他の男共の方はというと、今ので結構怖気付いているようだ。

 

「お、おい・・・聞いてねぇぞ、何だあの力は?」

 

「怯むな、数じゃ俺達の方が勝ってるんだ!」

 

「おぉ!押せ押せ――えぇっ!?」

 

それでも立ち向かおうとする連中へ、今度は炎を纏ったカナと共に椿に負けじと、私も風の妖術で威圧する。

 

「はっ!その程度の数、全然大した事ないな!」

 

「椿ちゃんと綾ちゃんを傷付けるなら、私も許さないよ!」

 

ついでといわんばかりに、私達を囲んでいた連中も龍花さんと朱雀さんによって、いつの間にやら半分以上がボッコボコにされて山積みにされていた。

 

だが、まだ私達には厄介な敵が残っている。

 

「龍花さん、危ない!!」

 

「ぬっ!」

 

「ギリギリ何とか、私でも撃ってきてる銃弾が見えるようになってきたよ。龍花さん、大丈夫?」

 

「あ、ありがとうございます綾様」

 

あのスナイパー、アイツを何とかしないと私達は安全に公園から逃げる事すら出来ないのだ。

 

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