私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾陀話 私にとって最も必要な力

 

狙撃手からの狙撃のせいで、公園に閉じ込められた私達は依然として襲いかかってくる男共と戦っていた。

 

ある程度は力をコントロール出来るようになったカナも全力で私や椿と共に戦ってくれているが、それでも暴走の危険がある以上は無茶をさせられない。椿と"あの可愛い声"で、カナを正気に戻すのが恥ずかしいからって事もあるけれど。

 

「椿様!!」

 

「分かっています、朱雀さん!妖異顕現、黒鉄の鎖舞!!」

 

「いくら叩いても起き上がってくるなら――妖異顕現、凍華繚乱弐式"胡蝶花(こちょうばな)"!!」

 

椿が尻尾を変化させて鎖で相手を雁字搦めにしていく横で、私もグルリと身体を回転させながら氷の妖術を応用して、氷の花弁を飛ばして男共の足元を凍らせて動きを封じていく。

 

「なっ!?クソ、何て奴らだ!」

 

「落ち着け!俺達には"あの人"が居るだろう!」

 

「おぉ、そうだそうだ!すぐに助け――がっ!?」

 

しかし、そうして私達が捕まえた5人の内の1人は突然、どういう訳なのか狙撃手の弾丸に額を撃ち抜かれてしまった。その予想外な事態に、私も椿も驚いている間にも捕まえた人はどんどん撃たれていく。

 

「ちょっと、どういう事よ!敵のスナイパーは味方なんて使い捨てだと思っている訳?そしてこれは口封じって事!?」

 

かつて血の繋がった家族から良いように扱われてきた美亜からしたら、こんな敵の行動は頭にきて当然なくらいに怒っているが・・・私と椿は、互いに見ても分かるくらいに別な"何か"に恐怖を感じていた。

 

「違う、美亜。これは・・・これはただ殺したんじゃない。あの狙撃手は、もっとヤバい事しようとしてやがるんだ!」

 

「どういう物を使ったのか分からないけど、撃たれた人から妖気が溢れてきてる。このままじゃ、あの人達は妖怪になっちゃうよ!!」

 

そして皆にもそれを伝えた時、全員が一様に"有り得ない"といった顔で驚く。

 

「何ですって!?」

 

「綾ちゃんと椿ちゃん、どういう事!?」

 

「詳しい理由とかは分かんないけど、撃たれた奴らの身体が変化して妖怪っぽくなっていってるから、そこは間違いないと思う」

 

「でも・・・あの様子だと妖怪になるどころか、不完全で妖怪どころか半妖にもならないで、自我を失った化け物になりそうだよ!」

 

本当に敵の狙撃手は何を考えているんだ。

私達を捕まえる為だったら、それが例え味方であろうと多くの人を犠牲する連中に、私は更に怒りが湧いてくる。

 

「アアァァァァア!!」

 

「た、助け・・・助けてくれぇ!」

 

「はな、話が違う・・・止めてくれェェエ!!」

 

「いやだ・・・グゲ、ァァア!ば、化け物になん・・・か、カァァア!!」

 

すぐに私達は拘束していた連中を動けるように解いた。しかしそれでも狙撃手の方が動きは早く、そいつらが逃げ出すより先に次々と狙い撃っていったのだ。そして、逃げる事すら出来ずに撃たれた男共は、苦痛の悲鳴を上げながら異形の姿に変化していく。

 

すると、私達の前に龍花さんと朱雀さんが立って、それぞれの武器を構えた。

 

「椿様に綾様、離れてください。私と朱雀で苦しんで暴れ出す前に、この方達を楽にしてあげなくては」

 

「えっ・・・」

 

私達を囲んでいた残りの連中も怯えて立ち竦んでいる中、今度は木々が風に揺られる音と共に氷のように低く冷徹な男の声が聞こえてくる。

 

「作戦通りにやれとは言われたが、まさかここまで大きな変化を遂げるとはな。この"魔銃弾"、撃った奴へ悪魔の力を与える"海外の妖具"はやはり、使った此方でも恐ろしい程に底知れぬ力を秘めている」

 

「なっ!また海外の妖怪の力ですか・・・」

 

そう椿が叫んですぐさま狙撃手を目で探すけど、椿の妖狐としての強い聴覚を持ってしても相手の居場所は分からないようだ。

 

「しかし、前に仕留めたと思っていたハズの獲物が生きているとはな。これは狙撃手として・・・いや、暗殺者として俺はまだ未熟だったか。さて・・・捕獲命令が出てはいるが、あくまで"生きていれば良い"話だ。俺は自身の信条で、今度こそ獲物を"狩る"。そして、存分に暴れろ――半妖にすらなれぬ傀儡共よ」

 

「あんっの野郎め・・・おい、周りのバカ男達!命が惜しけりゃ此処からとっとと逃げろ!」

 

「あ・・・うぁ・・・」

 

これ以上被害者や厄介な敵が増えないよう私は周囲の男共に叫ぶが、そいつらは味方から裏切られた事によるショックもあってか完全にビビって動けなくなってしまっていた。

 

こんな事態にはカナも雪も顔を強ばらせて緊張してしまっているし、椿と一緒に2人の方も守らないといけないね。

 

「グォォオ!!」

 

「うわっ・・・たぁ!」

 

そんな事を考えている内にも、変化を終えて化け物となった化け物は私達へ飛びかかってきた。

悪魔の力を流し込まれたからか、化け物にされた人達は身体がボコボコと歪に膨れ上がっており、肌も赤黒く変色してしまっていた。

悪魔としても不完全という事なのか頭に角は生えてないが、元々の顔が身体の肉に埋もれそうになりながらも苦しげな表情を私達へと向けている。

 

「椿様!綾様!」

 

「クソ、無理やり変化させられた人達だから戦いずらいな・・・!」

 

すると、攻撃が出来ないでいる私達を守るように、龍花さんは敵の攻撃を防いでくれた。そのまま切り捨てようとした時、椿が慌てて声を張って止める。

 

「龍花さん、待ってください!その人達は生きています!」

 

「椿様、しかし・・・!くっ、この!」

 

龍花さんは襲ってくる敵を蹴り飛ばしつつ、他の変化させられた連中へ青龍刀を向ける。

 

「椿様、悪いですが彼らはもう・・・」

 

「いや、まだ・・・まだ方法はあるよ、龍花さん」

 

私は椿が考えている事を察し、龍花さんを制するように言った。だけど、多分これは椿にとっても危険な賭けかもしれないし、再び"万が一"が起これば皆に怒られるだろう。

 

それでも私は、例え敵であっても救える命を助けようとする椿の意思を尊重しようと思った。

 

「・・・妲己さん」

 

【もう、椿ったら・・・はぁ、止めても無駄・・・よね?】

 

「全くもって妲己さんの言う通りだけど、椿が使える"浄化の力"を全力で解放しないと、あの人達は助けられないと思う」

 

【確かに、綾の予想通りよ。そよ風程度な椿の神術じゃ浄化は無理そうだし、また暴走した場合はどうするつもりかしら?】

 

「それなら私も、自分の"烏森の力"で何とか椿を戻せないか頑張ってみるよ」

 

【あ〜もう、綾も・・・アンタまで暴走したら意味無いでしょうが】

 

その妲己さんの言葉に、私と椿は苦笑いしながら揃って頭を搔いた。

 

「ま、最悪カナ達に止めてもらえれば良いかなって思ってるよ」

 

【はぁ、後でタップリと彼女達に"お礼"しときなさいよ】

 

「あはは・・・分かっています」

 

とりあえずは妲己さんからも了承を得れた私達は、狙撃手から狙われないように動き回り続けているカナ達へ大きな声で叫んだ。

 

「ごめん!カナに雪、それから美亜!今から私達、全力で浄化して助けられないかやってみる!!」

 

「もし僕達が暴走しちゃったら、皆で何とか戻してください!」

 

「へっ!?椿ちゃんに綾ちゃん、今なんて言ったの!?」

 

「2人共・・・まさか」

 

「あのバカ達、どうなっても知らないわよ!」

 

「姉さん達・・・」

 

そう私と椿が叫んだ後でも、楓は不安そうな眼差しを私達へ向けていた。それならそれで尚更、暴走する前に早い所ケリをつけないと!

 

「いきます――」

 

「さぁ、やるぞ――」

 

「神刀、御剱!!」

 

「来い!神甲、麒麟甲!!」

 

椿が巾着袋から神刀を取り出し、私も天へ手を掲げて何処からか飛んで来た神甲を装着して、それぞれの"神妖の力"を発動する。

 

そして、椿が怪物となった1人へ神刀を振るうと――

 

「ギィ・・・!アァァァ、あっ・・・」

 

やはり私と椿が考えていた通りに斬られた人は元の人間の姿へと戻っていき、変化していた肉塊そのものな身体は灰のようになって消えていく。

 

「お、おぉ・・・も、元に!元に戻ってる!」

 

「凄いぞ嬢ちゃん達!その調子で皆を元に戻してやってくれ!」

 

「あ、あんな奴らだとは知らなかったんだ!頼む、助けてくれ!」

 

「もう俺達、亰嗟側にはつかねぇ!知っている事は全部教えてやる、だからアイツを倒してくれ!」

 

そんな様子を見た他の連中はアッサリ手のひらを返して、私達へ助けを乞うように縋り付いてきた。

 

ぶっちゃけ自業自得だからざまぁみろとは思っているけれど・・・それでも見殺しに出来ない辺り、私も椿と同じくらいに甘くなってきているのかもしれない。

 

そう思いながらも、私は神甲を着けた腕を振るって更に1人を元の姿へと戻した。私も"神妖の力"が使えるとはいえ、こんな敵の多い状況じゃ恐らく私も椿も暴走してしまうだろう。

 

でも今は、これが"私にとって最も必要な力"だ。

 

「むっ、あの時の力か。どんな状態となった者でも浄化が可能とは、これは厄介そうだな」

 

厄介、か・・・それならそれで好都合だ。

そう向こうが零したという事は、相手からすれば不利な状況になっている証拠でしかないのだから。

 

――状況を再度確認。これより当機は"負なる者"への対処を開始する。

 

「ちっ・・・私からしたら、あんまり良い気分じゃないわね。今まで2人は、あの状態でこれだけの敵を相手した事はなかった上に長時間戦ってた事も無いのよ。だから、どうなるのか一切分からなくて嫌な予感がするわ」

 

「そうだね・・・でも美亜ちゃん、今は2人を信じようよ」

 

当機の"友人"、美亜と香苗の精神的マイナスイメージを検知。

 

「美亜、カナ。当機と"妖狐 椿"に対する"不安"は不要」

 

【嘘でしょう、椿に綾。アンタ達・・・】

 

"妖狐 椿"から"九尾の狐 妲己"の魂魄を検知。

 

【2人から"神妖の力"が溢れ出ていないなんて。それどころか安定しているって事は・・・ア、アンタ達"神妖の力"を受け入れちゃったの!?バカ椿にアホ綾!そんな事をしたら、二度と元に戻れないわよ!】

 

"九尾の狐 妲己"の魂魄の発言の意味が不明。

 

当機は現目標"妖気に犯された人間の救助"の遂行を優先する。その後は次目標"遠距離に居る狙撃手の排除"を実行。

 

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