私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾捌話 たとえ命を捨ててでも

 

再度、救出対象を確認。狙撃手である"負なる者"によって妖気を注入され、異形へと変異した人間は残り3人。

 

「敵の攻撃を回避。当機は神術を発動――天神招来、神鳴の恵(かみなりのめぐみ)」

 

真っ先に突進してきた1体を浄化。これにより、残る数は2体――

 

「全く・・・堅実なのは良いですが、動きが固いですよ"魔を殺す者"」

 

「"妖狐 椿"へ当機は感謝の意を表する」

 

当機の後方優位を取った1体を"妖狐 椿"が浄化した事を確認。残る1体も同人物によって浄化された事を確認した。

 

これより当機は次目標"遠距離に居る狙撃手の排除"へと移る。現在の環境状況、これまでの攻撃情報から逆算――狙撃手は公園北西部の最奥部の方に潜伏と推測。

 

「対象を認識。妖異顕現、緊急祭繰龍」

 

狙撃手が潜伏していると推測される地点へ、当機は集中的な妖術による制圧攻撃を実行。

 

「妖異顕現、影の操。たまには、こうして妖術を使っても良いですね」

 

"妖狐 椿"により、敵狙撃手が完全に潜伏地点から追い出された事を確認。

 

「ぐっ・・・!う、ぐ・・・い、一体何が――うおぉっ!?」

 

「さぁ、こっちへ来なさい"負なる者"」

 

敵狙撃手は"妖狐 椿"の妖術によって行動不能になった事を確認。当機は一度待機状態へ移行する。

 

「いいぞ嬢ちゃん達!早く捕まえろ!」

 

「その危なっかしい武器を奪ってくれ!」

 

「・・・貴方達は少し黙っていてください。この男の後で、ちゃんと滅してあげますから」

 

「「ひっ!!」」

 

"妖狐 椿"の精神ストレス上昇を認識。それに伴う救出対象の不安係数の上昇も認識。

 

「こうなる事は予想外だったが・・・隙だらけだ!」

 

狙撃手の拳銃による発砲を確認。"妖狐 椿"が神刀で防御した為、当機による救援は不要と判――判、判断・・・

 

「甘いのはそちらですよ。天神招来、神風の鉄槌」

 

「が・・・あぁ・・・っ!」

 

椿が狙撃手を神術で攻撃している所で、ようやく"元の私"は身体の中で意識を取り戻す。

 

《止めろ、これ以上は放っておいたら駄目だ!》

 

『却下。模擬人格の否定的意見は容認出来ない』

 

《ふざけんな!敵だとはいえ、あのままだと死んじまうだろうが!》

 

『却下。当機"烏森 綾"の存在意義は"妖狐 椿"の護衛が最優先である』

 

しかし以前のように、そう簡単に身体を奪い返せる訳ではなく、私の身体は金縛りになったように棒立ちになったままだ。

 

「さて、覚悟は出来ましたか"負なる者"?潔く滅されなさ――ん?"神妖の力"が・・・」

 

【椿!アンタだけでも戻りなさい!】

 

そんな中でも、妲己さんは椿の身体の中で力を抑えて暴走を止めようとしてくれているようだ。

 

【うっ、くぅ・・・嘘、この私の力でも抑えられないなんて、本当に完全な暴走って訳ね。でも暴走は暴走、いい加減に戻らないと取り返しのつかない事になるわよ!】

 

「うるさいですね、戻れ戻れと。むしろ、今の状態の私こそが元に戻っている状態です。邪魔をしないでください、あの"魔を殺す者"のようにね」

 

妲己さんの事を歯牙にもかけない椿の姿を棒立ちで見させられながら、それでも私は自分の身体を取り戻そうと全力で"もう1人の私"に抵抗する。

 

《クソ、妲己さんでも抑えきれない程にヤバいなんて・・・それと私の身体も、いい加減に返して欲しいんだけどな!》

 

『却下。当機の安定性を考慮して、今後は当機の精神モデル自身が身体を制御すべきと判だ――』

 

《うるっせぇ!何が"魔を殺す者"だ、何が椿を守る役割だ!私は、私自身の"想い"で椿を・・・そして、助けられる人を助けたいんだよ!!》

 

すると、そこへカナ達も椿の暴走を止めようと必死に呼び掛けてくるのが聞こえてきた。

 

「椿ちゃん、もう止めて!もう相手は捕まえたんだから戻ってよ!」

 

「椿・・・それは乱用したら、駄目」

 

「全く、手間かけさせるんじゃないわよ!」

 

そう言ってカナと雪、美亜は椿の前に立って手を広げるが、それでも椿は纏めて風の妖術で吹き飛ばそうとしている。

 

「毎回毎回、私の前に立ち塞がって・・・貴方達は何度邪魔をするのですか?」

 

そこへ、今度は龍花さんと朱雀さんも椿の前に立ちはだかった。

 

「椿様!綾様!その姿は一体どういう事なのですか!?」

 

「はぁ、また邪魔者が増えましたか。そういえば、お2人は初めて"この姿の私"を見られますか。ですが、これが"本来の私"です」

 

「"本来の私"?いいえ、違いますね。そんな強引な者が、本当の椿様なハズがありません。綾様も効率的に動いているように見えますが、2人共に力が暴走しているだけの状態です!龍花、抑えますよ!」

 

「えぇ、朱雀!そっちは綾様を!」

 

その瞬間に、棒立ちしていた私の身体は朱雀さんの炎によって押し倒される。こんな状況でも全く身体が動こうとしないのは少し危ないとも思うけど、これなら私が身体を取り戻すまでの時間は――

 

「えっ?速――んむっ!?」

 

「なっ、龍花!?」

 

そう思う間もなく、なんと椿は一瞬でカナと雪をダウンさせた時のように、龍花さんを例のキスで落としてしまっていた。

 

「ん〜、ん〜!!ぷぁっ・・・はぁ、はぅ・・・」

 

「ちょっ・・・る、龍花?そんな、大丈夫で――ひっ!」

 

その後、私を押さえている朱雀さんの目の前へ椿が瞬間移動してきたのだ。そして――

 

「く、来るな・・・!ひっ、んぅっ・・・」

 

片手で私を押さえていた炎の拘束を解除しながら、椿はディープなやつを朱雀さんに入れて龍花さん共々完全にダウンさせてしまう。

 

「ぷぁっ・・・はぁ、はぁっ・・・」

 

「あ、あぁぁ・・・つ、椿姉さん?」

 

「香苗。見入ってないで、アレ止められなかったの?」

 

「うっ・・・だって、そうしたらこっちに狙いが来そうだもん。それに雪だって同じだったでしょ?」

 

「それは、そうだけど」

 

一瞬で2人が無力化されてカナ達も萎縮してしまっている中、椿は神刀を再び強く握り締めて倒れている狙撃手へと近づいていく。

 

「椿姉さん・・・ち、ちょっと。そ、その冗談は、本気で止めた方が良いっすよ?」

 

でも楓はそれでも、例え自身の行動が無茶だと分かっていようと椿を止めようとしてくれていた。

 

「それに綾姉さんも・・・2人共、自分が悪かったっす!あんな浅はかな考えで、姉さん達に余計なものを背負わせてしまって」

 

《違う、楓。アンタは何も悪くない、余計なものなんて1つも背負ってなんかないよ!》

 

その楓の言葉で、私は身体を取り戻そうとする意思をより一層強める。

 

「それで"そんな風"になってしまったのなら、いくらでも謝ります!だから、その演技は止めてください!!」

 

「ふふ、可愛いわね楓。でも残念だけど、これは演技じゃないの。これこそが"本当の私"・・・"神妖の妖狐"である、椿なのです」

 

「な、何言ってるんですか?い、意味分かんないっすよ!」

 

【止まりなさいよ椿!いい加減、元に戻れっつってんのよ!アンタは・・・アンタだけは、それをしたら駄目ぇ!!】

 

楓が悲痛な声を上げ、妲己さんも必死に呼び掛けても椿は止まる事なく、狙撃手を無理やり立たせて神刀の切っ先を突き付ける。

 

「ぐ、ゴホッ・・・な、何が起きている?貴様、俺を殺した所で全て丸く収まる訳じゃないぞ」

 

「ええ、そんな事は理解していますよ。ですが、人を使い捨てるまでに"負の想い"に塗れた貴方は、もう元の人間には戻れません。さぁ、滅されなさい――"負なる者"」

 

《たとえ命を捨ててでも、椿に人を殺させる訳にはいかないんだよ!!この・・・いい加減、動きやがれ私の身体ァァァ!!!》

 

『――模擬人格"綾"の行動を許可。"合理を選ぶ私"では完全に"妖狐 椿"を守る事は出来ないと判断』

 

そのまま椿が狙撃手を突き刺そうとした瞬間に、何とかして突っ込もうとしつつ叫んでいた私の身体は途端に動けるようになり、そして――!

 

『――後は頼みましたよ、"烏森の正統なる後継者"』

 

ドス、と重く鋭い音が聞こえたと同時に酷い痛みが胸の中心から広がってきた。

 

「全く、とんだ邪魔をしてくれましたね"魔を殺す者"。この際ですから、あの"負なる者"に自分がどうなるのかを見せてあげるのしましょう」

 

すると、私を刺している事を認識しているにも関わらず椿は神刀を更に深く突き刺し、それに伴って胸の痛みも激しくなる。

 

「――天神招来、負滅浄化(ふめつじょうか)」

 

「う、ぐっ・・・ぁァァァアア!!」

 

な、何なんだ!?

刺された場所から身体が燃え出して、身体の中にある妖気がどんどん消えていくのを感じる!

 

「"魔を殺す者"よ。御剱の浄化の刃にて、その魂を地獄で償い浄化されなさい。しかし、強い"想い"によって穢れた肉体は使えないでしょうから、浄化の炎で焼き尽くしてあげましょう。これが私の浄化――」

 

「こん・・・っの、馬鹿椿ぃぃい!!」

 

だけど、それでも私は椿が神術を発動した途端に、私は右腕へ残る力全てを注ぎ込んで思いっきり彼女の頬を殴り飛ばす。

 

「うぐ!か、はっ・・・!?」

 

それによって、何とか神刀から椿の手を離させる事に成功したけど・・・身体の炎も消えて無くなったとはいえ、全然身体に力が入らなくなってしまったよ。

 

【やったわね・・・遂にやってしまったわね、アンタ!】

 

「ケホッ、ゴホッ・・・うるさいですね。次は貴方です」

 

【くっ、やっばいわね・・・これは!】

 

しかし、それでも椿の暴走は戻らず、その場に倒れ込んでしまった私の胸から、神刀を強引に引き抜いた。傷口からダクダクと人生で流した事が無いくらいの量の血が流れていくのを眺めながら、その血の流れに比例するかのように私の意識が薄くなっていく。

 

「綾ちゃん!椿ちゃん、何て事してるの!?」

 

「本当いい加減に戻りなさいよ!椿!!」

 

「おや?まだ私を止めようとしますか」

 

そしてカナ達が椿の尻尾を無理やり掴んだ所で、私は真っ暗な世界へ意識が落ちていってしまった。

 

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