私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第伍話 驚かし方が古いセンター長

 

窓やらあちこちから妖怪がチラチラと見える市役所もとい妖怪センターへ辿り着く。椿は心霊スポットみたく異様な市役所の光景からか耳を倒して尻尾も震わせていた。

 

「椿・・・大丈夫?めっちゃ怖がってる気がするけど」

 

『椿よ、安心せぇ。取って食うような奴はおらんわ。この世界にも法律はあってな、無益な殺生は禁じられておるわ』

 

「ゆ、有益なら良いんですね」

 

「はぁ。そんなホイホイ有り得ないでしょ・・・」

 

椿の後ろ向きな考えに、私と黒狐さんはほぼ同時にため息をついた。人目ならぬ妖怪の目が多いのだから、そこまで疑心暗鬼になる必要も無いと思うのだが。

 

それでも椿は、白狐さんが気にせずセンターへ入ろうとするのを必死で止める。

 

「あっ、待って!まだ心の準備が!」

 

「今さら立ち止まってる余裕なんて無いよ、椿」

 

『その通りじゃ、そんなの待っていたら日が暮れるじゃろう。ここまで来たら覚悟を決めよ、椿よ』

 

「はぁ・・・分かりましたよ、綾ちゃんも白狐さんも」

 

私達が2人の背中から降りて、人型になった彼らとセンターの中へ入った。すると、すぐ目の前に広がる大きなホールに思わず声をあげてしまった。

 

「なんて大きさ・・・初めて見るよ」

 

「お〜・・・ひろ〜い!」

 

ドーナツ状になっているホールの上の階を飛ぶ妖怪達を眺めつつ、多くの妖怪が並んでいる受け付けへと向かう。

すると、受け付けへやって来た職員の妖怪へ書類を渡したり受け取ったりしている沢山の手に椿が驚いた。

 

「な、何アレ!?」

 

椿が指さす方へ目を向けると、そこには無数の腕を持った非常に長い身体をしている、まるでダルマっぽい顔の妖怪が仕事をしていた。どうやら書類の受け渡しをしていたのはあの妖怪らしい。

 

「白狐さん、黒狐さん!アレは何て妖怪なんですか!?」

 

「つ、椿・・・そんなにはしゃぐと――」

 

「誰じゃ!うるさい奴は!」

 

私が椿に注意しようとした瞬間、その妖怪が大きな声で怒鳴って、此方へグルリと振り返った。

 

「お〜お前さん達!なんだ、何か用か?だが、見ての通り、今この時期俺達は忙しいんだ。用件なら早くしてくれよ」

 

『センター長の「達磨百足(だるまむかで)」よ。我らは今回、ある者に妖怪ライセンスを取らせに来たんじゃ』

 

「むっ?ライセンスか。分かった・・・少し待て」

 

そう言って、書類の山を漁る達磨百足。しかし――

 

『よし、ダルマよ。椿が怖がっているから、その腕落とすか』

 

「いきなり物騒な事を言うな、こらぁ!」

 

「コイツ、思いっきりセンター長になんて事言ってんの!?」

 

ついセンター長と一緒に黒狐さんへツッコミを入れてしまった。達磨百足の怒った顔が般若の面よりも恐ろしい事になっている。

 

『やめんか黒狐。此奴は蠱毒(こどく)によって作られた妖怪じゃ。呪術の対象にされたら我らとてタダではすまんぞ』

 

『ふん・・・分かってる』

 

白狐さんに制され、大人しく引き下がる黒狐さん。そこへ椿が先程の言葉の意味を聞く。

 

「ねぇ白狐さん、「コドク」って何?」

 

『・・・おい椿。何故いつも、妖怪の事を聞く時は白狐なんだ?』

 

「いや、それは・・・ねぇ?椿」

 

「だって、白狐さんの方が詳しそうなんで」

 

その言葉に気を良くしたのか、突然白狐さんが得意気な顔で解説を始めた。

 

『よし椿と綾よ、博識な我が説明してやろう。蠱毒とは呪術の一種でな、大量の虫を壺や箱の中で一緒に飼い・・・共食いをさせるのじゃ。そうして生き残ったものは神霊となるので、これを祀る。そして、その虫から取れる毒を人に飲ますと呪殺出来るのじゃ。よって、これは暗殺などによく使われるのじゃ』

 

「よ、よく分からない・・・とどのつまり毒殺ですね」

 

「の、呪わないでください・・・」

 

全く説明の意味が理解出来なかった私と、その説明をした張本人である白狐さんの後ろへ椿が隠れる。

 

「おいおい、そんな簡単に呪えたら苦労しないわ。呪うにも条件がいるんだ、安心しろ!」

 

「そりゃそうですよね〜アハハ・・・」

 

私が達磨百足の言葉に愛想笑いを浮かべた所、そこへ椿が恐る恐る顔を出す。

 

だが、次の瞬間――

 

「目が合ったな、これでお前達は呪われた!さぁ、苦しんで死ねぇ!!」

 

「ひぇぇえええ!」

 

「・・・何してんですか?」

 

「ん?あれ?お前さん、意外と反応薄いな〜」

 

いきなり怖い顔をして「呪ってやったぜ」な宣言をされても、休日にB級ホラー映画を嗜んでいる私にとってはイマイチ迫力が無く感じてしまう。

 

・・・椿には効果は抜群だったようだけど。彼女をあまり怖がらせるのは止めて欲しいと思う。

 

『おいこらダルマァ!やっぱりその腕、切り落としてやろうかァ!』

 

「まあまあ黒狐さん、落ち着いて落ち着いて!」

 

「かっかっか!黒狐よ、そう怒るな冗談だ。しっかし、そっちは驚かしがいのある奴だな」

 

『椿よ、そんな簡単な方法で呪殺出来るわけないだろう。泣き止め、大丈夫じゃ』

 

「・・・あ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”」

 

「ぎゃああああ!!」

 

『綾もやめんか!』

 

つい面白くなって某邦画ホラーの地縛霊の物真似をしたら白狐さんに怒られた。なにせあの程度のビックリ要素でも悲鳴をあげてしまうのだ、反応を見たくなるのは当然の事だろう。

 

「ん?待て。お前さん達、さっきから椿に綾と言っているが、まさかその子達がそうか?」

 

『あぁ、そうだ。それがどうした?』

 

「そうか、その子が椿か。そしてそっちが綾か。椿は箝口令が出ているから分からないのはしょうがないが、そいつにはライセンスを――」

 

『あぁ待て、センター長。実はコレを鞍馬の大天狗から渡されとる』

 

すると白狐さんが懐から分厚い封筒を取り出して、達磨百足へ手渡した。彼はそれらの中身を沢山の手を使って器用に読み進めていく。

 

「どういう事?椿はライセンスを――」

 

私が聞こうとした言葉を遮って、達磨百足がため息をつきながら口を開いた。

 

「全く・・・大天狗の奴め、何が起こっても知らんぞ。良かろう、2人のライセンスの認定試験の受験を許可しよう」

 

「なんだって?受験?」

 

「へっ?認定試験?」

 

唐突に言い渡された受験許可に、私達は狼狽えて白狐さんと黒狐さんを交互に見た。2人は頑張れといった様子で此方へ頷いている。

 

「こ、こんなの聞いてないって〜!!」

 

私の絶叫がセンターのホール中へ響いた。

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