私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾参話 袋叩きというより"袋叩かれ"なんじゃないか?

 

私と椿は軽く周囲を見渡す。今回、襲撃してきた滅幻宗の人数はざっと見ても50人以上は居て、それだけでも組織の尋常なさを感じ取れる。

 

狐2人はそれぞれ自身の感情を律して動けそうなので任せるとして、一先ずはカナ達と上手く連携して動かないといけない。

 

しかし、それより1つ気になる事がある。

 

「なぁ雪、今一通り見たんだけどさ・・・捕まっている中に半妖の人達だけが居なくないか?」

 

「む・・・確かに、居ない」

 

その状況に私と椿だけでなく、雪やカナ達も再び確認して頷く。他に半妖の人達が避難する可能性があるとするなら変態会長や牛元先輩の居る生徒会室だけど、それは北校舎にあるから爆発に巻き込まれてしまった可能性も否定出来ない。

 

しかし、そんな状況でも椿はめげずに私達へ指示を出してくれた。

 

「とにかくカナちゃんと雪ちゃんは僕から離れない状態で、カナちゃんは綾ちゃんと協力して可能な限り敵を戦闘不能にして」

 

「うん、分かったよ椿ちゃん!」

 

「おっし、合点承知之助だ!」

 

「「綾ちゃん、それ古い・・・」」

 

「えっ、マジでか」

 

それなのに私ときたら・・・おっかしいな〜?折角気合いを入れたのに、何か変な所でずっこけたんだけど。

 

「それと雪ちゃんは、僕のおじいちゃんに連絡して増援を・・・」

 

「もう呼んでる」

 

「わお、早いな〜」

 

そして雪も既にスマホで連絡してて行動するのが早くて助かるよ。それでも、増援の人達が来るまでには多少なりとも時間かかるだろうし、それまで持ちこたえる意味も含めて敵を減らしておきたい所だ。

 

それにしても・・・こんな状況にも関わらず、湯口先輩は何処へ行っているんだろうか?まさか、こうなる事を知ってて何かしようと動いてたとか――

 

『椿!綾!のんびりしている場合ではない、来るぞ!!』

 

白狐さんの声に私達は驚きながらも前を向く。すると、大量の坊さん共が錫杖や札を持って一斉に突撃してきていたのだ。

 

「ちょ、ちょちょちょい!?と、とりあえず・・・妖異変化、烏鳩!」

 

「あ〜もう!作戦会議もさせてくれないんですか!」

 

『当たり前だろう。とにかく落ち着け、2人共。いつも通りに妖怪退治をする要領で、1人1人確実に倒していけば良い。4人の幹部らしき奴らは、俺と白狐でやる!お前達は雑魚を片付けてくれ!』

 

「あっ、はい!分かりました黒狐さん!」

 

「とりあえず全体の指揮は2人に任せれば良さそうだね!それなら私達は・・・」

 

そうして私も変身して再び敵の方を振り向くと、向こうの連中は黒狐さんの発言に苛立っているようだった。

 

「雑魚とは言ってくれるな、化け物共が!人間を甘く見たらどうなるか、思い知らせ――」

 

「妖異顕現、黒槌土壊!!」

「妖異顕現、稲妻雷霆蹴!!」

 

「ぐあっ!」

 

まぁ、向こうは勝手にこっちを襲って来ている訳だから容赦もスルメも無いと思うけどね。

 

「そっちの方こそ、僕達が化け物だって分かって戦いに来ているんですか?人間には扱えない力を使えるんですよ!」

 

そうして椿が妖術を発動しながら敵を吹っ飛ばしていくが、その僅かな隙を突いて1人の敵が錫杖を椿へ振り下ろそうとしていた。

 

「しまった・・・椿!」

 

「後ろから椿ちゃんを狙うな!!」

 

「ギャァア!あっちぃ!!」

 

すると私が助けに入るより早く、カナが火車輪を上手く操って錫杖を燃やし、それに敵が怯んでいる所を回転蹴りで倒してくれた。

 

「全く危ない所だったよ、椿ちゃんも綾ちゃんも気を付けて!」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「うん、ごめんカナちゃん。でも敵の数は多くて、その上僕達の能力を分かって攻撃はしてくるけれど、僕達と比べたら全然力の差があるからね。不意打ちされても、あんまり意味が無いです――よ!」

 

そう言った椿は白狐さんの力を解放して、一瞬の内にして周囲に居た坊さん達の札を鋭く伸ばした爪で服ごとズタズタにして無力化していく。

 

「よし!私だって・・・だりゃりゃりゃあ!」

 

その一瞬の出来事で止まった隙を狙って、私も雷の妖術を応用で脚力のバネの強化して、瞬く間に周囲の坊さん達をボッコボコに叩きのめした。

 

白狐さんの力を発動した椿の動きも、雷の妖術で脚力を跳ね上げた私の動きも、どちらも普通の人間からすれば物凄いスピードだ。なので、例え身構えていようと頭や身体が着いていけなければ対処なんて不可能である。

 

そうして椿と私の速さに翻弄された坊さん達の数はどんどん減っていき、戦える奴も一気に10〜15人くらいとなっていった。

 

「おやおや、何をしているんです?貴方達は、ただ巻藁の如くやられる為に来たのですか?少しはその妖狐と少女に、傷の1つくらい付けられないのですか?」

 

すると、そんな坊さん達の無様さに栄空はイライラした様子を浮かべているのが見えた。でも、そんな事を言っていると・・・

 

「むっ!?」

 

『貴様、先程の台詞を言った事・・・後悔させてやる。綾はまだしも、椿を傷付けるだと?やってみろ!俺達の怒りを買うだけだぞ!!』

 

ほら見た事か。でも、黒狐さんがブチ切れて雷の妖術で丸焦げにしようとしたけど、栄空はギリギリの所でヒョイと避けられちゃったな。

 

「おやおや、既に怒っているようですが?そんな調子で大丈夫なのです――おっと!」

 

「ふん。大きな隙を伺う為に静観するつもりでいたが・・・俺も綾を傷付けるなどと聞かされた以上、貴様を生かして帰す訳にはいかんぞ、栄空!!」

 

「オジサン!」「綾ちゃんのオジサン!」

 

そうしたら今度はオジサンも黒狐さんに加勢して、学校屋上から飛び降りつつ栄空へ弓を放ってきたよ。そして黒狐さんがキレたのは分かるけど、まさかオジサンまでキレるなんて思ってもみなかったぞ。

 

「椿ちゃん!綾ちゃん!2人共、黒狐さんを見てないで自分の事を・・・」

 

「大丈夫ですよ、カナちゃん――妖異顕現、黒鉄の鎖舞!」

 

「だから不意打ちは無駄だっての!妖異顕現、泰焚・峯璃裂弩(タイフーン・ブリザード)!」

 

今の瞬間にも私達の死角から坊さん達が襲って来たけど、それを既に察知していた私達はそれぞれの強力な妖術で逆に捕まえてやった。

 

「嘘、今ので更に10人・・・?椿ちゃんと綾ちゃんだけで、もうそんなにも・・・!」

 

「いやいや、そう言うカナだって5人くらい倒せてるからな?それ多分、結構凄いからな?」

 

これじゃ、袋叩きというより"袋叩かれ"なんじゃないか?

 

そもそもの話、向こうが使ってくる道具が幾ら特別とはいえ、元は妖具みたいな物なんだから実力なんてレベルじゃないくらいに差があるし。

 

でも、そうなると何でオジサンが作った組織が、いつの間にやら妖怪は問答無用で滅するような連中に成り下がってしまったのかが気になるよ。

 

「この・・・くたばれ、妖怪!」

 

「おっと!」

 

例えば、たった今椿へ錫杖を振り下ろしてきた奴。そいつを含めて、なんか坊さん1人1人の動きも妙に単調過ぎるのだ。錫杖の先に妖気が集まっているから爆発させるであろう事もバレバレだし、私達みたく特訓や稽古もしていないんじゃないのか?

 

「ただの攻撃と侮って、かかったな?爆・・・」

 

「――の前に、その錫杖を折るだけです」

 

「あっ・・・し、しまった!」

 

「綾ちゃん、いくよ!」

 

「OKだ椿!でやぁ!」

 

「うぼぁ!!」

 

今襲いかかってきた奴も、椿がアッサリ武器を破壊してから2人でダブルキックして終了だ。だけど、やっぱり坊さん連中の弱さに私も椿も困惑していた。

 

「なぁ、椿・・・あの幹部4人は私達と戦って色々対策してるみたいだから手強くなってきてるのに、下っ端の坊さん達がここまで弱いなんて変じゃないか?」

 

「そうだよね、綾ちゃん。まるで僕達の情報を大して貰っていないようにも感じるよ」

 

「使い捨ての駒だとしても、時間を稼いだりする為には多少でも戦えるようにするだろ、普通はさ」

 

「一体、どうなっているの・・・?」

 

そんなこんなで下っ端坊さん達との戦いにも終わりが見えてきた時、カナが私達の後ろへ背中合わせになる形で着地してくる。

 

「今のを見てたけど、椿ちゃんも綾ちゃんもやっぱり凄いよ・・・」

 

「だって私と椿は白狐さんから簡単な体術と、黒狐さんからは妖術、龍花さん達から対人戦を学んでいるからね」

 

「前と比べたら、僕も多少は動けるようになっているよ。綾ちゃんと違って、まだドキドキするけどね・・・」

 

「まぁ、喧嘩慣れしてる身ですから」

 

「「そういえばそうだったね・・・」」

 

ちょっと?めちゃくちゃ緊迫してる状況なのに、2人でドン引きして「うわぁ・・・」な目で私を見ないでもらえます?そういうの、割りと地味にメンタルへダメージ入りますのよ私。

 

「とはいえ、今回は学校の皆が捕まっちゃってる状況だからね。術式吸収とか解放とか、派手な妖術は使えないな」

 

「その通りだね、綾ちゃん。皆が巻き込まれたら大変だもん」

 

「うん、だけど――妖異顕現、影の操!」

 

「なっ!俺の影が!?」

「しまった・・・!影を操る妖術か!?」

「こ、こんなに強いなんて聞いていない!」

 

「・・・こんな風に、今は簡単に下っ端の坊さん達相手なら捕まえられているけどね」

 

それを言ったらオシマイですよ椿さん。

一瞬で坊さん達の影を操って、縄で雁字搦めにするかのように動きを封じちゃってるよ。ホント、椿の影の妖術は応用性が高くて便利だよな〜。

 

そして案の定というか、下っ端の連中は私達についての情報も知らないみたいだ。

 

「椿ちゃんに綾ちゃん、油断しないで。まだ、あの4人が・・・」

 

「分かっています、カナちゃん。今ので下っ端の人達は全員捕まえたのに、あの4人は一切動じていないよ」

 

確かに椿の言う通りだけど、それどころか幹部の4人はまだ余裕があるといった様子だ。

 

黒狐さんとオジサンのタッグと相対する栄空は、2人の巧みな攻撃を簡単に躱しては、時折隙を見て札を飛ばして反撃している。そして白狐さんと戦っている閃空も、楽しそうな表情でちょこまかと動いて彼の攻撃を回避し続けているのだ。

 

「残念だが、我々も幾度と無く貴様らと戦い、その詳しい情報を得ている。もう貴様らの勝利など、一切無い!!」

 

更に今度は、その2つの戦闘の隙間を通るようにして、険しい顔をした玄空が重苦しいプレッシャーを纏って、私達の方へとゆっくり歩いて来た。

 

「玄空・・・湯口先輩の親父だ」

 

「気を付けて、綾ちゃん」

 

恐ろしいまでの気迫を感じながらも、私と椿は向こうがどう動いても対処出来るよう身構える。

 

「椿ちゃん、綾ちゃん・・・」

 

「カナちゃんは下がっ――危ない!!」

 

「あら、残念。良く気が付いたわね〜」

 

「クソッ、そういえば峰空もいたんだった!」

 

いつの間にやらワープでもしたのか、峰空は私達の後ろから不意打ちを仕掛けてきたのだ。

椿が咄嗟に頭を下げさせていなかったら、カナは危うく首を掻っ切られてしまう所だったよ。

 

これまでの戦いでも似た物を見てきたから今更だとは思うけど、コイツら敵対するなら汚い手すら使うなんて異常だな!

 

「いたた・・・ありがとう、椿ちゃん」

 

「よし、怪我はしてないみたいだな!」

 

「それより、カナちゃんは離れてて。2人が相手だと、流石に僕と綾ちゃんでもカナちゃんを守り切れないかもしれない」

 

やっぱりというか、あの様子からすると最初っから4人で私達と戦うつもりだったらしい。

ここまで幹部4人が清々しく好戦的なのを見ると、むしろ捨て駒にもされずアッサリやられた下っ端坊さん達に同情するね。

 

と、そんな事を考えていると――

 

「ぬん!!」

 

「うわっ!?」「どわぁ!?」

 

まさかの素手で地面を抉ってきたよ!!

玄空が力任せな攻撃で来るのは分かっていたけど、よくよく考えたらこの2人の組み合わせって――

 

「わっ、ぶねぇ!」「あっ、ぶない!」

 

めちゃくちゃ厄介だぞコレ!

なんせ玄空の攻撃を躱したら、その先に峰空の円盤っぽい武器が飛んでくる!どっちの攻撃も食らったら絶対ヤバいし、今の私と椿じゃ2手3手先を読むなんてキツいぞ!

 

「さぁ、今度こそ大人しく捕まるが良い!妖狐、椿!霊能力者、綾!」

 

「2人共、出来るだけ大人しくしてて欲しいのよね〜。だからお願〜い」

 

でも、私達は皆を助けないといけないし、ハナから2人で敵に捕まる気も無い。

 

「「どっちもお断り(だ・です)!!」」

 

――だからこそ1番手っ取り早くて確実なのは、私と椿の今出せる全力で現状を打破する事だけだ。

 

少なくとも、学校の皆は解放してもらうぞ!

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