私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私と椿は身体にダメージを負いながらも、何とか玄空から距離を取って"神妖の力"を僅かに解放して、それぞれの武器を淡く光らせ敵を見据える。
【2人共、大丈夫なの?結構食らってたけど】
「ぶっちゃけ、まだめっちゃ痛ぇよ!」
「うぅ・・・僕も、身体のそこら中が痛いですよ・・・」
距離を離す為にとはいえ、流石に身体張りすぎたわ。後で椿共々狐2人に怒られるのは間違いないけど、あっちもあっちで中々苦戦しているみたいだ。あの2人に加えて、黒狐さんの側にはオジサンも加勢しているのに、相手はどれだけ強いんだろう?
だけど、今は私達を狙う目の前の敵に集中しないとだ!
「ふん。どうやら、まだ力を使いこなせていないようだな。ならば――ぐおっ!?」
すると早々玄空が油断してたので、私と椿は隙を突く形で突撃して、奴の顔面に御剱と麒麟甲を叩きつける。
「そうやって第一印象だけで決めんのは"鼻が節穴"過ぎだぜ!」
「それを言うなら"目が節穴"だよ、綾ちゃん。でも綾ちゃんの言う通り、力ばかりじゃないんですよ。少量の力でも、どうやって工夫を凝らして戦うかです!」
それにしても、まさかここまで綺麗に不意打ちが決まるとはね。自分でもちょっとビックリだわ。
まぁ、問題があるとすれば石の状態だから、私の麒麟甲も椿の御剱も打撃的なダメージしか与えられない所だけど、逆に言えば相手を殺す事なく戦えるから気兼ねなくボッコボコに出来るね。
龍花さん達との特訓のお陰で今の不意打ちは上手くいったけど、玄空はダウンせずに私達の攻撃から復帰して、踏ん張りながら錫杖を振り抜いてくる。
「くっ・・・!!」
「うっ、ぐ・・・!!」
その攻撃を私達は武器で防ぐ。しかし――
「ほぉ、中々の強度だな。だが・・・むん!」
「えっ・・・ぎゃぅ!?」
「なっ・・・うがぁ!?」
なんと玄空の突いてきた錫杖の先端が爆発し、私達は再び大きく吹っ飛ばされてしまった。どうやら、錫杖の先端に爆発する札を仕掛けていたようだ。
「いっつつ・・・」
「とんだ手品を仕掛けてくるとはね・・・」
地面に背中を打ちつけた私達が腰をさすりながら立ち上がると、玄空はその場でニヤリとしながら腕を組んで睨み付けてくる。
「一時足りとも油断するな。貴様らの前に居るのは、鬼神だぞ」
「鬼神?ふふ・・・」
「ふっ、くくく・・・」
「何がおかしい?」
そりゃおかしくって私も椿も笑っちゃうよ。
本当の鬼神という人物を知っている私達からしたら、玄空が自らの事を鬼神と例えるのは"井の中の蛙大海を知らず"という諺をそのまんま見ているかのようだもん。
だから、玄空なんて酒呑童子の凄まじいチートぶりと比べたらビビる必要なんて無かったんだ。
「あらよっと・・・!」
「それじゃあ、行くよ!」
「ぬっ――うおっ!?」
私と椿は仰向けに倒れていた所から足のバネだけで起き上がりつつ、2人で同時に玄空の懐へ突っ込んで御剱と麒麟甲で錫杖を弾き飛ばす。
「やっぱりな。手で棒きれ握り締めてる、その中に何か隠してやがったか」
「初めから錫杖の先に札が付いてなかったと思ったら、そこに札を隠していたんですね。冷静に考えれば手品の種は簡単な事でしたね、綾ちゃん」
「ああ、全くその通りだ――よっと!!」
「ぬぐっ!くっ・・・」
私は椿の言葉に頷きながら、麒麟甲を着けた右脚で玄空の顎を蹴り上げた。
普段の本気を更に本気にしているような"神妖の力"を解放した状態で攻撃したから、相手も今の一撃だけで結構体勢がぐらついたみたいだな。
「やぁっ!!」
「がっ・・・!!」
そして、すかさず椿が御剱で突いて吹き飛ばしたけど、その先には峰空が居て――
「きゃあっ!?ちょっ・・・玄空、何しているの!?折角トドメを刺そうと思ったのに!」
「椿ちゃん、綾ちゃん・・・ありがとう、助かったよ〜」
なんと、ビリヤードの球同士がぶつかったかのように2人がポーンと飛んでっちゃったぞ。でも、そのお陰かボロボロにされていたカナを間一髪助けられたみたいだし、結果オーライだオーライ!
「カナちゃんは、もう・・・大丈夫じゃないじゃないですか」
「あはは・・・ご、ごめん。思った以上に上手くいかなくて」
「ったく、笑って誤魔化しても駄目だからな」
助けられたから良かったとはいえ、こんな傷だらけになってまで私達の足手まといにならないように頑張るなよ・・・本当、カナは前しか見ない奴だな。
なので、私も椿もカナの方へ歩いてから、彼女の頬をフニ〜とつまんで引っ張る。
「いひゃひゃひゃ・・・椿ちゃんも綾ちゃんも、いきなり何するの?」
「いや、別にね。カナちゃんが無茶した罰ですよ」
「そうそう、自分の身体をもっと大切・・・にぃぃぃい!?」
「ふ〜ん、それなら2人もだよね〜・・・」
「いっ・・・!背中は駄目だって・・・」
そういや何回か背中から地面に叩きつけられてたから、私も椿も後ろ側は大分ズタボロかも。
まぁ、こんな風に触られて滲みる痛みが来るまで何とも思っていなかった私達もカナの事は言えない立場だったよ。
「くっ・・・おのれ」
「"おのれ"は私の方よ!全く何してくれてんのよ。良いから、早く退きなさい!それと、胸に手!」
「むっ?邪魔なものが・・・」
「何ですって!!」
な〜にやってんだアイツら・・・私達が警戒しながらカナの所に行ったのがバカバカしくなるような漫才してんじゃね〜よ。
でも、玄空と峰空の連携が取れていないんだとするなら、そこを突ければ私達にも勝てる可能性は十分ありそうだね。
「ちっ・・・しかし、我が錫杖"剛枝"を吹き飛ばすとはな。良かろう、もう少し本気を出そう」
「はっ?ちょっ、待ちなさい玄空!」
「ぬん!秘術"鬼神剛腕"!!」
すると、玄空は両手を合わせて力を込めるようなポーズを取り、それと同時にボハッ!と玄空の両腕がいきなり袖を破って筋肉モリモリマッチョマンな見た目へと変貌する。
この筋肉を見てくれ、コイツをどう思う?すごく・・・大きいです・・・って、そんなアレな事を考えてる場合じゃない!あの両腕から大量の妖気が溢れてきているし、もう訳わかんないんだけど!?
「ぬぬぬぬ・・・ぬぅぉぉおおお!」
「この、バカ!私が居るのも考えなさいよ!」
そして峰空は慌てて玄空から距離を取っているから、コレもしかしたら私達も逃げた方が良い感じの奴かな?
だって、某機動戦士のスカート付きみたいに合わせた両手を握り締めて、そのまま地面へ振り下ろそうとしているし・・・嫌な予感しかしないぞ!
「くっ・・・綾ちゃん!カナちゃん!早く生徒の皆を!」
「あっ、しまった忘れてた!!」
「駄目!もう間に合わないよ!」
「ぬぉぉお!!!」
だけど玄空の攻撃より早く動く事は叶わず、私達は玄空が振り下ろした拳でクレーターの如く崩落していく地面に巻き込まれてしまう。
「きゃぁぁあ!!」
「ひゃぁぁあ!!」
「あぁ!椿ちゃんと綾ちゃんが、可愛い悲鳴を〜!」
「カナちゃん!それどころじゃな〜い!」
「もっと他にヤバい事になってるだろ〜が!!」
突然足場が悪くなったせいでマトモに動けないわ、体勢が崩れそうな所に土砂やら岩やら降ってくるから危ないわで身動きが・・・!
「あっ、何とか間に合ったみたいだね」
「えっ?うわっ!」
「こ、これは・・・木の根っこ!?」
そんなピンチになりかけた途端、なんとカナの言葉と同時に陥没した地面の中から木の根が伸びて私と椿の頭上をガードしてくれたのだ!
「はぁ、はぁ・・・間に合ったわ。というか、お母様ったら・・・とんだ勘違いをしてたみたいね。私の体質、草花に呪術をかけるタイプじゃなくって、樹木に呪術をかけるタイプじゃないの!!」
「なっ、美亜!?」
「えっ、美亜ちゃん!?」
その声に私と椿は上を見上げると、美亜が屋上から両手をグラウンドに向けてかざしているのが見えた。どうやら、彼女が私達に木の根を使って助け舟を出してくれたらしい。
「でも、これでやっと私の能力が分かったわ。妖気が少なくても、軽く木に呪術をかければ妖気がドンドン広がっていく。そりゃ、私の自身の妖気が少なくなるのも当然かもね・・・だって、こんな事になっちゃうんだもの。私の妖気がもっと沢山あれば、下手したらこの星を滅ぼしちゃうくらいかもね」
「確かにその通りですね、美亜ちゃん・・・」
「うわぁ、マジかよ・・・冗談キツいや」
まさか、穴を覆うようにして樹海が生えてくるとは思ってなかったよ。それにしても美亜の呪術は本当にヤバいな・・・木の1つ1つに顔みたいな模様まで浮き出てるし。
「って、うひゃぁぁあ!?な、なんで私達を捕まえようとしてくんだよ!」
「コレ、蔦に捕まって動けません!」
「椿ちゃんも綾ちゃんも落ち着いて。そういう呪術なんだし、しょうがないよ。しかも、本人まだ操れていないし・・・」
「ま、まぁそれなら仕方ないけど・・・でも、これなら敵の方も捕まってるかも」
私はカナと会話をしながら滅幻宗の2人を見るけど――
「ふははは!面白い!!だが、俺には効かん!」
な〜んで玄空は、パンチやキックで頑丈そうな太い蔦を吹っ飛ばしたり出来るんですかね。そんな姿を見せられると、ますます私の中で人外疑惑が強くなってくるぞ。
「とりあえず、今はコレから脱出だ!」
「くっ!」
ひとまず私と椿も下に居る玄空を確認する為に椿は御剱で、私は稲妻雷霆蹴で蔦を払って足場のようになっている木の根っこへ着地する。
「さぁ・・・第2ラウンド開始だ!」
玄空はそう言って腕に更なる力を込めていく。きっと、コイツが滅幻宗の幹部で最も強いのかもしれないけど、それでも全く勝ち目が無くなった訳じゃない。
あの時のリベンジマッチ、今ここで果たさせてもらうよ!