私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾陸話 真の正義

 

美亜が樹木にかけた呪術によって、滅幻宗の連中は殆ど蔦に絡まれて動けなくなってしまっている。まぁ、生徒の皆も捕まってしまっているから、避難もへったくれもない状況になっちゃっているんだけどね・・・。

 

「よし!これで皆を見張ってた奴らも動けなくなってるし、今が助け出すチャンスだよ!」

 

「そうですね、綾ちゃん。美亜ちゃん、後は皆を安全な所に移してください」

 

「椿に綾、分かってるの?私のは呪術であって、アンタ達のような妖術じゃないから操れる訳ないじゃない!!」

 

「おま・・・それ自信満々に言うなよ!!」

 

「じゃあ何で使ったんですか!?」

 

「私だって、こうなるとは思ってなかったのよ!!」

 

ヤダもう美亜ったら〜・・・こうなると呪術を解除する以外には皆を蔦から解放する手段が無いって事じゃん!使い所さんが白目を剥いておられるぞ!

 

「ふん、余裕なものだな――せい!!」

 

「おっと!」

「わっとぉ!」

 

なんて考えてたら、玄空が蔦を掻い潜りながら私と椿にムキムキとなった両腕で攻撃を仕掛けてきたぞ。

 

だけど、向こうが突風を利用した弾で攻撃してきた所を見ると、あまり遠距離は得意じゃなさそうだね。それでも突風の弾を防御したら、麒麟甲を着けた手は少し痺れているけど。

 

【2人共、馬鹿ね。アレは避けなさいよ】

 

「ごめんなさい、妲己さん。カナちゃん達も居たし、防げるくらいなら防ぎたかったんです・・・だけど1発でこの威力だと、綾ちゃんと一緒に防御してても、そう何回も出来ないですね」

 

「確かにね。こんなのを真正面から防ぎ続けてたら、先に私達の腕の骨が駄目になっちゃいそうだよ」

 

そして、私と椿が手をブラブラと振って痛みを紛らわせていると、穴の上から私達の良く知る2人の声が聞こえてくる。

 

『椿よ、無事か!?』

 

『全く・・・この木々の有様は一体何なんだ?』

 

「あっ、白狐さんに黒狐さん!これは、何と言えば良いんだろう・・・」

 

「えっと、一言で言うなら美亜の呪術で出来上がった状況・・・かな?」

 

いきなりの登場にビックリしつつも、私がグラウンドに出来た穴や、そこに生えた樹海の事について答えると、狐2人も目を丸くして驚いた。

 

「それよりも、2人の相手は?」

 

「その服の汚れ方からしたら、苦戦しながらも何とか勝てたとか?」

 

『いや、それがの・・・』

 

『この大量の木々を利用され、見失ってしまった』

 

「「美亜(ちゃん)の馬鹿野郎」」

 

「私のせい!?何よ2人共、折角助けてあげたのに!」

 

毎度毎度、言い方が押し付けがましいんじゃ!

 

とはいえ、失敗してしまった事を考えててもどうしようもないので、とりあえず玄空との戦いに集中――しようとした瞬間、突然大きい球体が木々の隙間から現れて、私達の方へ向かって飛んできたのだ!

 

「うわぁ!!」

「どわぁ!?」

 

『ぬぅ!これは・・・閃空とかいう奴か!何処だ!?』

 

「あっはっは!"何処だ"と言われて、はい此処です〜なんて言う訳無いだろう?さぁ・・・て、この大量の木は僕にとっては有利だね。どうやって遊んでやろうかな〜」

 

穴の中全体から声が聞こえる事から、どうやら閃空は札か何かで拡声器みたくして自分の居場所を撹乱してるようだ。

 

周りを見渡しても、辺り一帯は何処をどう見ても木・木・木・・・ぶっちゃけ、これは完全に美亜の策が裏目に出ちゃったな。

 

そんな事を考えた瞬間、椿の後方上部から閃空が吹っ飛んで来て、私達の目の前を落ちながら木々にぶつかって真下の木に激突する。

 

そのあまりの突然さに私も椿も再びビックリして、椿に至っては耳や尻尾を逆立ててしまっていたよ。

 

「くっ!靖く〜ん、友達の僕を殴るなんて最低だな〜」

 

「黙れ、閃空。この現状、そして生徒を人質にとってまで妖怪退治は強行する事なのか!?」

 

「「あっ、湯口先輩!」」

 

聞こえてきた親しみのある声に再び穴の上へ私達が視線を向けると、そこには湯口先輩が木々を飛び移りながら降りてくる姿があった。

 

そういえば、今朝は何か用事があるとか何とか言って何処かへ行ってたみたいだったけど・・・閃空へ言い放った言葉からすると、先輩は裏切った訳じゃなかったみたいで良かった。

 

そうホッとしている私と椿に、妲己さんは呆れた声色で話しかけてくる。

 

【2人共な〜に安心しているのよ?まだ戦いは終わっていないでしょうが。それとも・・・はは〜ん】

 

「い、いやいやいや!妲己さんが思ってるようなのとは違うから!」

 

「そ、そうそう!綾ちゃんの言う通りです!また先輩が敵になっちゃったらどうしようって思って、それでちょっとホッとしただけだから・・・あっ」

 

【まだ何も言ってないわよ〜】

 

「もう、椿のウッカリさんめ・・・」

 

あっぶねぇ〜!椿が先に先輩の事を言わなかったら危うく私も口を滑らせる所だったよ!

妲己さんに弄られるネタが増えるのだけは本当、椿に好かれたい私からすれば勘弁したい事だからね・・・。

 

そんな私達を他所に、先輩は次に父親でもある玄空を強く睨み付ける。

 

確か、玄空は先輩にとって実の父親じゃなかったハズだけど、それでも戦いにくい事は戦いにくいと思うんだ。

 

「この恩知らずが。育てた恩を仇で返すか」

 

「黙れ、その行動と姿を見て確信したよ。お前達は、悪だ!!」

 

そう言って先輩は怒りに震えながら玄空を指さしたが、滅幻宗の幹部達は驚くでもなく何故かニヤニヤとした笑みを向けていた。

 

そして、何処に隠れていたのか栄空も現れて他の2人同様にニヤついた笑みを浮かべ、それを見て先輩は今にもキレそうになってしまっている。

 

「あっはっはっは!靖く〜ん、何をもって僕達を悪と決めつけられるの?そんな基準なんか、時と場合によってコロコロ変わるんだよ!戦争を見てごらん?皆、相手を悪だと言っては互いに武器を取って戦っているじゃないか!僕からしたら、どっちも悪なのにね!」

 

「黙れよ、閃空!自分の中の正義・・・それを貫き通せれば、何時かは真の正義となるんだ!」

 

「そんなのは誰だって持っているんだよ、気付かない内にね!だからこそ争いは起こる――こうやってねぇ!!」

 

先輩と言い争っていた閃空は、そう叫ぶと同時に文字が入った球体を木の陰から彼に向けて放ってくる。

 

「しまった、そんな所に隠していたなんて・・・湯口先輩!」

 

「たぁ!!」

 

「なっ!?」

 

その不意打ち気味に先輩へと放たれた球体は椿が御剱で弾いてくれたけど、人1人分くらいの大きさがある鋼鉄っぽい球体を弾いたからか、またしても彼女の手は衝撃で震えてしまっていた。

 

【全く、椿のば〜か】

 

「椿!今のは大丈夫だった!?結構硬そうに見えたけど・・・」

 

「うるさいです、妲己さん。それと綾ちゃんも、そこまで心配しなくても、僕は大丈夫だよ」

 

「椿・・・それに、綾も・・・2人共大丈夫か?その背中の怪我、アイツにやられたんだな・・・」

 

すると、先輩は私達の傷だらけの身体を見てから、再び玄空へと怒りの眼差しで睨み付ける。

相手が一応は親のハズなのに、なんというか完全にブチ切れモードが入っちゃっているみたいだ。

 

「先輩、僕達は大丈夫です。だから、そこまで怒らなくても・・・」

 

「うん、椿の言う通りだよ。あの人は先輩の育ての親なんでしょ?なのに、そこまで憎しみを込めて睨まなくても良いと思うんだけど」

 

「いや・・・残念だが2人共、俺はアイツを父とは思っていない。幼い頃から今に至るまで、それらしい事をされた覚えが無いからな」

 

「えっ・・・」

 

「そんな・・・」

 

一瞬だけ私は嘘じゃないのかと思ったけど、先輩が浮かべる険しい表情から、それが嘘ではない事を嫌でも感じ取ってしまう。

 

そして、最早2人の睨み合いは親子同士としてではなく、倒すべき宿敵同士が向け合うものとなってしまっていた。

 

「靖く〜ん?父親よりも、友達の僕と遊びなよ〜!」

 

そんな中、閃空は再び浮遊させていた巨大な球体を投げつけてくる。

 

玄空のように物理だけで攻めてくるならまだしも、閃空が行ってくる攻撃は浮遊する球体によるものばかりなので、私達からしたら厄介極まりない相手だ。

 

「2度も言わせるな、黙れ閃空。お前を友達だと思った事は1度も無い!俺の友達は――アイツらだ!」

 

そう言って先輩は球体を避けながら下の方を指さし、先輩と同じくらいの歳の坊主頭の人達が必死で蔦を登ってきているのを見せる。

 

「うぉぉお!!靖、助太刀するぞ!」

 

「こんな奴らの好き勝手にされてたまるか!」

 

「あの厳しい修行の日々は何だったんだ!街の人達を守る為じゃなかったのかよ!!」

 

そして蔦を登ってくる人達は皆一様に、滅幻宗の悪行に対して文句を言っていた。

その様子からして、どうやら私達を手助けする為に来てくれたようだけど・・・まさか、これって先輩が滅幻宗の怪しい事を教えたからなのかな?

 

「椿に綾、朝は何も言わずに行ってしまって悪かった。実は今朝に早く出ていたのは、こいつらを説得する為だったんだ」

 

「そうだったんですか・・・でも、あの〜・・・閃空にやられていますよ?」

 

「か、完全に無防備だもんね・・・木を登ってる状態な訳だし」

 

うわ〜、閃空の球体で木を思いっきり揺すられて皆さんドンドン下に落とされていくんですけど。

それでも諦めずに登ろうとしている所が、何とも哀愁漂う感じになっていて見てるだけでも辛いぞ。

 

「ちっ、この木は一体何なんだ!?コレのせいで戦おうにも上手く戦えないぞ!」

 

「あっ・・・それ以上は、その・・・」

 

「み、美亜が落ち込むんで、なるべくなら控えてもらうと〜・・・あっ」

 

しかも、そんな先輩の仲間の文句が聞こえてしまった美亜は、屋上で体育座りの姿でいじけてしまったよ。

 

「ふん・・・どうせどうせ、私なんか・・・そうよ、私のせいよ。折角役に立てると思ったのに、これじゃ完全に足手まといじゃない。あぁ・・・でもどうせなら、もっと困らせてやろうかしら?椿と綾の困惑した顔、ちょっと見たいかも」

 

「ちょっと・・・美亜ちゃん、落ち着いて!」

 

「え、ちょ・・・美亜?あの〜スイマセン美亜さん!?なんか木がドンドン紫になってウゾウゾしだしてるんですけど!?」

 

こんな時に、よりにもよって私の大嫌いな形に木を動かさないで!美亜は物凄く怖い感じの笑顔をしているし、なんで問題ばっかり積み重なっていくんだよ〜!

 

「ぬぅ、この面妖な木々ども・・・厄介だな」

 

「ちょ〜っと不味いわね、これだと作戦通りにいかないわよ。あの雇われの子に手助けを呼ぼうにも、今は何だか体調が良くないみたいだし」

 

「それならば、殺してしまいましょうか――おっと!まだ追ってきていたのですか、大地さん」

 

「此処で貴様らを倒すまでは、諦めるつもりはない!」

 

「あらら・・・だから栄空、それは駄目って言っているでしょう。今回の私達の目的は、あの狐の子の中に居る妲己を奪取する事と、銀髪の子の捕獲なのよ?余計な事をしたら、その後処理が面倒になるでしょうが!そんな残業はお肌の天敵よ!」

 

ん?なんか今、オジサンの攻撃を避けながら慌ててる4人から不吉そうな会話が聞こえてきたぞ?

 

椿の中の妲己さんを奪う事と・・・私を捕まえる事だって?つまり今回の学校への襲撃は、最初からそれが目的だったって事か・・・。

 

【ふん、私を狙って何をしようとしているのかしら?それに”烏森の力”を失った綾も捕まえようだなんて・・・妖怪退治の連中にしては、どうも変な話だわ】

 

「・・・とにかく、あの4人に捕まる訳にはいかないですね。綾ちゃんも気を付けて!」

 

「うん、分かってるよ椿。でも、ハナから捕まってやるつもりはないけどね!」

 

ウニョウニョ蠢く木々の気持ち悪さを我慢しながら、私は椿と共に4人を力強い眼差しで見据える。

 

連中の目的が椿と私を捕まえる事なら、私達が捕まった時点で生徒の皆や妖怪の人達へ何をしでかすか分かったもんじゃない。

 

だから、ここは絶対に勝たないと・・・!

 

「あわわ〜!!こ、こんなの予想外だよぉ!!」

 

「だ〜もう!いちいち面倒臭い蔦だなコレ!!」

 

「美亜ちゃ〜ん!落ち込むのは後で良いから、今は早く呪術解いて〜!!」

 

な〜んてシリアスな雰囲気は、後ろで蔦に捕まっちゃってるカナで台無しになったよ。

 

こっちの助けになろうと頑張ってくれるのは嬉しいけど、こんな予想外な事態になったら私や椿でも対処しずらいわ!いやホント、カナは良くやってくれてるよな〜・・・。

 

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