私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾陀話 激戦の中で

敵の真の狙いが私と椿であるという状況でも、私達のやるべき事は変わらない――捕まっている生徒達を助けて、それと同時に滅幻宗をブッ潰すだけだ!

 

湯口先輩の仲間は幹部4人の囮になろうと下でアレコレ騒いでくれているけど4人はそれを気にも止めず、睨み付けてくる私達へ対抗するように睨み返してくる。

 

ふとした瞬間、その中から玄空だけが姿を消し、それと同時に白狐さんが椿へ向かって叫ぶ。

 

『いかん!椿よ、上だ!!』

 

「大丈夫、分かっていますよっ・・・と!」

 

「ぬっ!?」

 

あの一瞬で玄空は椿に後ろから襲いかかろうとしてみたいだけど、その強化された筋力による素早さも今の私と椿には目で捉えられるスピードだ。

酒呑童子と比べたら話にならない遅さだね。

 

そして椿が後ろに飛び退いたタイミングで、玄空はすかさず隣に居た私にも裏拳を放ってくる。

 

「だりゃあ!」

 

「なっ――ぬぐぅ!?」

 

だけど、私は上半身を大きく逸らしてそれを避け、その僅かな隙を突いて回避の勢いをつけた麒麟甲による拳の一撃を攻撃してきた腕の肘にお見舞いしてやる。

 

「脇腹がガラ空きですよ、それ!」

 

「ぐぉ!!この・・・っ!」

 

そして私の攻撃の後に、椿も着地しながら踏み込んで、御剱で突いて玄空の身体をよろめかせる。

 

「おっと!」

「うわっとぉ!」

 

それでも玄空は、私達の攻撃がクリーンヒットしたにも関わらず、太い腕を横に振るって反撃してきたよ。私達がしゃがんでなかったら危うく頭がポーンと飛んでたんじゃないのか、今の攻撃は?

 

「ちょっ・・・椿、少し動きに気を付けろ。その・・・見えているぞ。多分、ずっと気付いてないだろう?」

 

「えっ?・・・あっ!!」

 

「それに綾も、避ける時は動く先に注意してくれ・・・その、お前の尻が俺の股間に・・・あ、当たって・・・!」

 

「はい?・・・って、ぎゃぁぁあ!!」

 

しまった全然気にしてなかった〜!

 

今日の椿は普段履いてるスパッツじゃなかったから丸見えだし、私も避けた先の場所なんか木の上ぐらいしか考えてなくて先輩に身体を密着させちゃってたよ!!

 

「せ、先輩見ないで!」

 

「変態!変態!!」

 

「いや2人共、これはどうしようもないだろう――って、うぉ!!」

 

とか何とかやってたら閃空が先輩に不意打ちしてきたぞ!

 

まぁ、攻撃された本人は避けられたから良いけど・・・こういうのは気にしてたら戦闘に集中出来ないんだよ、今更だけど!

 

「ラッキースケベぐらいで動揺するなんて、靖君ってウブだね〜」

 

「少し黙れ、爆!!」

 

「うわっ!僕が来るのを見越して、既に仕込んでたの!?」

 

それでも先輩は閃空の足元を爆破出来る程に冷静みたいだけど、閃空は驚きこそしても怯む事なく一瞬で体勢を立て直してきた。

 

「ぬぉぉおお!!大人しくしろ、妖狐!霊能力者!」

 

「ひぇ!くっ・・・嫌、ですっ!」

 

「そう!簡単にっ!捕まって!たまるかってんだ!」

 

先輩を心配する間もなく、私達の方には玄空が襲いかかってきて何度も巨大な腕を振るってくる。

流石に捕まる訳にはいかないと、私と椿でそれぞれの武器を使って攻撃をいなした直後に、2人同時のダブルキックを玄空の腹に直撃させた・・・けど。

 

「ふん、何かしたか?」

 

「えっ――きゃぁ!?」

「なっ――うわぁ!?」

 

幾ら龍花さん達から戦い方を学んでいても、私達の元の身体能力は中学生くらいだったのを忘れてたぁ!

 

しかも今の攻撃を腹で受け止めたまま、私と椿は玄空に足を掴まれてしまったし・・・これは不味い!

 

「くっ、椿!綾!」

 

「だから〜余所見は・・・」

 

先輩は私達を助けようとしてくれているけど、その後ろからは閃空が巨大な球体から鋭い棘を出して迫ってきているよ!

 

これじゃあ先輩も私達も――そう思った瞬間、閃空の周囲に複数の人達が現れて札を構えていた。

 

「それは・・・」

「こっちの台詞だぁ!!」

「くらえ!連弾符!!」

 

「なっ――うぐぅっ!?」

 

なんと、その先輩のピンチを救ったのは木々を登ってきていた先輩の仲間達だったのだ!

その彼らの地道な努力と執念は、幹部4人の知らない所で少しずつ着実に実っていたんだな!

 

そして、四方八方から先輩の仲間達が投げた札は衝撃波の形となって閃空へ何発も命中し、ついには閃空を木から落とす事にも成功する。

 

それでもまだ、札の衝撃波は閃空目掛けて飛んでいきまくっているんだから凄い絵面だよ。

 

「くっ、嘘だろ!?この、雑魚が・・・!」

 

「雑魚でも活躍出来るんだよ!」

「そら、もっともっといくぞ!」

 

「うわぁぁぁああ!!」

 

わ〜お、容赦ないな〜・・・ま、見下してきた連中に思いがけないタイミングでボコボコにされてるんだから、自業自得も良い所だとは思うけど。

 

「椿と綾を――離せ!!」

 

そして先輩も、閃空が下っ端達にボコられている姿を見て呆然とした玄空の隙を突いて、錫杖で奴の手を殴りつけて私と椿を助け出してくれた。

 

「先輩、助かりました!」

「サンキュー、先輩!」

 

「ぬっ!?くそ・・・意外な展開に、つい呆気に取られてしまったわ。閃空、あの間抜けめが」

 

私達はすぐさま先輩と一緒に玄空から距離を取ると、そこで先輩からアドバイスをされる。

 

「椿!綾!力で駄目でも、技術で何とかなるだろう!人体の急所を忘れたか!?」

 

「えっ?あっ・・・そうでした!」

 

「そっか!それなら、まだ戦いようはあるね!」

 

激戦の中で、先輩の喝を受けた事により私も椿も戦意が復活し、それぞれの持つ武器を強く固く握り締める。

真正面から力で対抗するんじゃなくて、多彩な技で相手を圧倒すれば勝機は必ずある!

 

「えぇい、馬鹿息子が・・・」

 

「ふん、悪いが俺はもうアンタの息子じゃな――」

 

「いいや、息子だ。まだ、俺にとっては息子だ」

 

「なっ・・・!?先輩・・・この人」

 

「何、玄空のあの顔は?笑って、いる・・・?」

 

「ちっ、胸糞悪い笑顔向けやがって・・・!」

 

すると、玄空はまるでロボットが笑っているかのように、1つの感情も篭もっていない不気味な笑みを先輩へと浮かべ始めたのだ。

 

「さぁ、息子よ。今ならまだやり直せる。我が元へ・・・」

 

「断る!!」

 

良かった・・・先輩はもう滅幻宗の所なんかには戻らないと、それを自分の意思で強くハッキリ言ってくれた。そんな先輩の言葉が聞けただけで、私は心の底から嬉しいと思ったよ。

 

「そうか、残念だ・・・」

 

「がっ!!」

 

しかし、その瞬間に玄空は先輩の目の前に凄まじい速さで移動し、あの異様に太くなった腕で先輩を殴りつけて後ろの木に吹っ飛ばしてしまった!

 

「「先輩!」」

 

「がはっ!ゲホ、ゲホ・・・クソ、手を抜いたな?」

 

「当然だ、息子なのだからな。例え何を言ってこようと、今は反抗期というものだろう?だから、父として責めはしないさ。躾は、しないといけないがな」

 

そんな・・・あれで手を抜いていただなんて。

 

じゃあ私と椿が目で追えていたのも、玄空からしたら全く本気じゃなかったって事かよ。

 

こうなったら――勝つ為に私達に残された方法は、1つしかない。

 

「やるしか・・・やるしか、ないよね」

 

「妲己さん、お願い」

 

【――ったく、2人共しょうがないわね】

 

"神妖の力"を更に使えば、より妖術の応用も多く使えるようになる。

 

だけど、前のように妲己さんでも私や椿を抑えきれない場合もあるハズだから、私達は自分にある技術や知恵もフルに使って暴走しないようにしなくちゃいけないんだ。

 

「妖異顕現、黒焔狐火!」

「妖異顕現、凍華繚乱!」

 

「む?今更そんなもの・・・ぬぉっ!?」

 

私と椿は、"神妖の力"によって新たに使えるようになった技を玄空へと放った。

 

でも、その一撃は先輩に意識を向けている隙を狙ったにも関わらず、玄空は油断していなかったのか避けられてしまったよ。

 

そして、殴られた箇所を押さえつつも先輩は私達の方を見て驚きの表情を浮かべてきた。

 

「椿、それに綾・・・お前達のそれ、武器に妖術を纏わせているのか?」

 

「うん、そうです。黒焔を手や指に纏わせる事が出来るなら、持ってる物にも出来るハズだと思ってやってみました」

 

「私も椿のを見様見真似でやってみたけど、これなら例え防御されても強化された妖術で確実に倒せそうだよ!」

 

そう言いながら、私は椿が黒焔を纏わせた御剱を振るう真似をして、拳や蹴りで麒麟甲に纏わせた凍華を先輩へと見せる。

その動きの度に凍華は花弁を散らし、それに触っただけでも簡単に凍り付かせてしまいそうな輝きを放っていた。

 

「そうだ、椿に綾。その武器に纏わせている妖術、刃として飛ばせないか?」

 

「何だって?刃にするだって?」

 

「えっと・・・僕は1回刃を飛ばす技をやっているから、その時の感覚でやれば出来ると思う。綾ちゃんも、多分やってみれば出来そうな感じかな」

 

「わお、割と簡単なのねそれ・・・」

 

「よし、それなら2人共――今飛ばしてくれ。ちょっと面白い事を考えた」

 

そうして3人で顔を近づけコソコソと作戦を立てていくけど、何故か椿の顔は恥ずかしそうに赤くなってしまっているぞ。

 

「とりあえず出来る出来ないよりは、やってみる価値がありそうだね」

 

「わ、分かりました。えっと、敵に向けて・・・ですよね?」

 

「ああ、そうだ!」

 

先輩の自信満々な様子を見て、私と椿は意を決してそれぞれの武器を前に構えた。

 

「じゃあ、いくよ――てい!!」

「よっし、やるか――おらぁ!!」

 

私は妖術を飛ばすイメージをしながら椿と同時に麒麟甲を着けた手を横に振るうと、なんと麒麟甲に纏わせていた凍華の花弁が刃のような形となって相手に向かって飛んでいったのだ!

 

更に、勢いよく振ったからか椿の妖術も私の妖術も切断する力が追加されていて、前方にある木々を焼き切ったり凍り切ったりしながら飛んでいく。

 

「よし、今だ――爆!!」

 

私達が武器から妖術の刃を放ってから少しして、そう先輩が再び叫ぶ。

 

すると、その私達の放った刃の前方で大量の爆発が起こり、それによって妖術の刃は爆炎の中に紛れて見えなくなった。

 

なるほど!これなら相手は、いつ私達の攻撃が飛んでくるのか分からなくなるって事か!

 

「ふん、見えなくした所で俺には関係な――ぐわっ!うぐぅ!!」

 

「えっ?後ろから?」

 

なんだなんだ?防御しようと構えた玄空の後ろから、どういう訳か椿の放った黒焔の刃が現れたぞ!

 

お陰で後ろからの攻撃が直撃して怯んだ玄空に、私の凍華の刃も直撃したから結果オーライといえば結果オーライなんだけど・・・こりゃ一体どうなっているんだ?

 

「どうだ?アンタは忘れていたようだが、俺にはたった1枚だけ・・・アンタに持たされていた物があったんだよ。"転移符"――コイツを使って、椿の技をお前の後ろに飛ばしたんだ!」

 

そう言って先輩は、1枚の札を私達の攻撃で蹲る玄空へと見せつける。

 

なるほど・・・滅幻宗が突然現れたり、かとおもえば謎の空間に消える形で逃げていったのは、全てその札の力によるものだったんだ。

 

そして椿の刃が後ろから出てきたのも、爆炎の陰で転移させていたからなんだね。

 

「うぐぅ・・・こんな、炎と氷如き――き、消えんだと!?」

 

「そうですよ、僕の黒焔は消えません。さぁ、降参してください」

 

「私の凍華も、1度凍りだしたら止まらないよ。死にたくなかったら、とっとと降参するこったね」

 

そう私達は言うも、玄空は首を縦に振るどころか降参の言葉すらも言わずに黙っている。

 

何なんだ、コイツ・・・暴れるならまだしも、妙に大人しくなっている気がするぞ?こんな状況でも、まだ何かしようっていうのか?

 

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