私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私と椿の消えない妖術による攻撃を受けたハズの玄空は私達の言葉に耳を貸す事なく、今度は何故か身体に気合いを入れ始める。
「ぬぬぬぬ・・・」
「これって、まさか――」
「ぬぅん!!」
「わぁっ!?僕の黒焔と綾ちゃんの凍華を吹き飛ばした!?」
嘘でしょ!?まさか玄空が身体に力を込めただけで、自身にまとわりついていた私と椿の妖術をかき消してくるだなんて!!
「くそ、化け物が!」
「あんな芸当されたら、幾ら何でも真面目に私ですら人間かどうか疑うよ!」
「この人、どうやったら倒せるの・・・!」
すると、玄空の異様さに困惑する私達の近くへ、今度は峰空が吹っ飛ばされてくる。
「きゃぁっ!?痛いわねぇ・・・ちょっと、何よこの子。急に攻撃のキレが良くなってない?」
「当然だよ!私だって、椿ちゃんと綾ちゃんの助けになりたいんだから!」
どうやらカナも、蔦から助け出した後からの凄いやる気で峰空を圧倒していたみたいだ。
「むぅ・・・栄空、準備は?栄空?」
玄空は何かを狙っているのか栄空へと呼びかけているけど、当の本人も峰空と同じくオジサンと黒狐さんのタッグ相手に翻弄されているよ。
「くっ・・・厄介な」
「俺を誰だと思っている!かつて滅幻宗が正しい組織だった頃、お前達に戦闘技術を教えた事を忘れたか!!」
『どうした!お前の術の数、その程度か!?』
しかも栄空の方に至っては、戦いが始まった直後からオジサンと黒狐さんがずっと優勢で、さっき姿を隠していた時にも2人は向こうの動きを先読みして奇襲を仕掛けていた程だ。
「なっ――馬鹿なぁぁぁあ!!」
そして、オジサンが先端トゲだらけの長い矢を放ち、そこへ黒狐さんが放った槍のような雷も加わった一撃が栄空を貫き、飛んでいた空中から木の幹へと叩きつけた。
「・・・」
「さて、玄空。状況は俺達の方が有利になっているぞ。これでも、お前達はまだ――うっ!?」
先輩が玄空へそう言おうとした途端、強気だった彼の顔が一瞬にして引きつった表情となる。
「えっ?一体何が・・・ぐっ!?」
「ひっ!」
動けなくなった先輩に何が起こったのかと私達も玄空の方を見ると、奴は此方をとてつもない怒りを込めた目で睨み付けてきていたのだ。
玄空が放つ怒りのプレッシャーは、私達だけでなく生徒達を守ろうとしてくれている雪や私達と共に戦ってくれているカナは全く動けなくなってしまい、そして狐2人ですらも足を止めてしまう程だった。
「あ〜・・・ちょっと、玄空。怒りは抑えた方が――っ!」
「黙れ。元はと言えば、貴様らが滑稽にやられすぎなのだ。いい加減、遊ぶのは止めにしろ」
そんな中、玄空は峰空へギロリとした目を向ける。
今の言い方やプレッシャーからして、玄空は4人の中のトップで間違いなさそうだ。そう考えると、あんなデタラメな強さも何処か納得出来るよ。
でも、"遊び"と言っていたって事は・・・今までの戦闘は全て、まさか本気を出してすらいなかったのか?
有り得ない・・・そんな事って・・・。
「残念だけど、遊んでなんかないわ。至って真剣よ・・・」
「そうか。それなら、もっと真剣になれ!!」
「もう――って、ちょっと!危ないわねぇ!」
そう言っている間にも峰空はカナの燃える爪による攻撃をギリギリで回避していた。
玄空とは違って、他は本気で戦っているようだから一安心といった所だけど・・・それでも、油断が出来ない状況に変わりは無いぞ。
でも、そのお陰で――
「だから、余所見をし過ぎだ!」
「いくよ、綾ちゃん!術式解放――黒槌土塊《極》!!」
「OKだ、椿!術式解放――緊急祭繰龍《空》!!」
「ぬぉっ・・・おぉぉぉお!!」
その時間を使って、私と椿は術式吸収による強化を終える事が出来た!
椿の巨大なハンマーに私の豪風を乗せて加速させ、パンチで受け止めようとする玄空を思いっきり吹っ飛ばしてやったよ!!
「えっ、嘘でしょう・・・玄空!?」
「今度はそっちが余所見ね。私の火車輪を馬鹿にしたら、こうなるんだよ!!」
そして、その一部始終を見て思わず足を止めた峰空へ、今度はカナが火車輪を大きく広げながら大量の火柱で形作られた炎の竜巻を放つ。
「火車天輪(かしゃてんりん)!!」
「ちょっ、嘘!何それ――きゃぁぁぁぁあ!!」
炎の竜巻は反応の遅れた峰空を一瞬で飲み込んで、ギャグ漫画のオチよろしくウェルダン気味に燃やした。
「ふぅ・・・ぶっつけ本番なのに、制御出来て良かった〜」
「カナちゃん、ちょっと?」
「それ割と危なかっただろオイ」
「あっ、ごめんね2人共。でも、分かっているよ・・・今なら出来るかな〜と思ってね。そうだ!美亜ちゃん、もう呪術は大丈夫だよ!」
あ、逃げよったコイツ。まぁ、どっちにしろ後で椿の爺さん家に帰ったら椿からミッチリ2時間コースだろうし。
カナの言葉を聞いた美亜は、ブツブツと何か言いつつも手を再びグラウンドにかざし、あれだけ禍々しく生えまくっていた大量の木を地面へと戻していく。
あんな事になってても解除すれば元に戻るんなら、一応でも良いから先に教えておいて欲しかったぞ・・・戻らないんじゃないかって私達はヒヤヒヤしてたんだからな。
「全く・・・やっと終わったわね。あ〜疲れたわ」
全ての木々を引っ込めて、樹海だった所を元のグラウンドへと戻した美亜が屋上から飛び降り、校舎のアチコチを利用して軽やかに私達の所へと着地してきた。この挙動は正しく、猫娘ならではといった感じだよ。
「あっ、そうだ!校長先生達も探さないと!」
滅幻宗の連中が全てグラウンドに倒れているのを見て、戦いが終わったと安心したカナは思い出したように慌て始める。
「そうだな。その間に俺はコイツらを縛っておく。お前達は北校舎で先生達を探してきてくれ」
先輩も戦闘が終わって一安心しながら、ゆっくり倒れ伏す4人へと縄を持って近づいていく。でも、滅幻宗の呆気なさもあってか私と椿は何故だか嫌な予感を感じていた。
『まぁ、待て。お主らは行かなくて良い』
「キャン!だから、尻尾引っ張らないで〜!」
「いでっ!ちょっ、白狐さん!ポニテの束ねてる所掴まないでよ〜!」
先輩の後を着いていこうとすると、私は椿が尻尾を掴まれたように、白狐さんに後ろから髪を掴まれてビックリしちゃったぞ。
『お前達2人は半妖の奴らを、その2人と一緒に探せ。他の生徒達は、俺達が安全な場所に避難させておく。それに、そろそろ翁達も来る頃だろうしな』
「あ〜・・・そういえば、椿の爺さんに増援をお願いしてたんだっけか」
「でも、来るにしては少し遅過ぎるような気がするけれど・・・」
『綾、何を心配そうな顔をしている?それに椿も、そこまで不安そうにしなくても大丈夫だ。我々の渾身の一撃を受けた人間が、ただで済むハズはあるまい。今回は特に、お主ら2人が頑張ってくれた。あんな戦い方をするなんて、正直驚いたぞ』
そして、そう言って白狐さんは椿と私の頭を優しく撫でてきた。なんというか、こんなタイミングでやってこられると思わず顔が緩んでしまうな。
「てへへ・・・」
「えへへ・・・」
あぁ、ほら。ついつい椿と互いに顔を見合わせたら、こんな声まで出ちゃったよ。ちょっと照れ臭くなっちゃうな〜。
「香苗、早く半妖の人達や先生達を探しに行くよ。椿と綾は、白狐と黒狐に癒されといて」
そんな様子を見てか、何処か雪は不機嫌そうな顔をしてカナを呼びにやって来た。
「その心配はご無用!!」
・・・なんかグラウンドの入り口の方から、聞きたかった訳でもない奴の声が聞こえてきた気がするんですけど。
「僕達は無事だ!心配をかけたようだが、襲撃の際にいち早く動いて――ムググ!」
「変態は黙っていてください」
「つ、椿・・・」
とか思ってたら、椿が影の妖術で変態会長の口を塞いでたよ。
しかもグラウンドの入り口には彼だけでなく、なんと学校に居る半妖の皆や校長先生達も居たのだ。その上、そのすぐ後には警察の人達も到着して、先生達が今回の事について色々と説明していたのであった。
「まぁ、そういう事だ。悪かったね、君達。敵に気付かれないようにしていたら、結構な時間がかかってしまったよ」
「本当ですよ。せめて、無事なら無事と言っておいて欲しかったです・・・」
「何にせよ、皆が無事で良かった・・・これでも心配してたんだよ、私達はさ」
まぁ、危うく変態会長がデカデカと大声で私達に説明しようとしてたので全部持っていかれそうになったけども。
しかし、次の瞬間――突然、先輩の苦しそうな叫び声が聞こえてきて、生徒の皆が先輩の方を見てざわつき始めたのだ。
「がっ・・・ちく、しょ・・・!」
「さて、帰るぞ。バカ息子」
「なっ・・・ま、まだ動けんのかよ!?」
すぐに私達もその方向を見ると、なんと先輩は再び立ち上がった玄空に鳩尾を殴られ気絶させられてしまっていたのが見えた!
「「先輩!!」」
『いかん!待て、椿!!綾!!』
白狐さんの言葉を聞くよりも早く、急いで私と椿は先輩を助けに走り出す。
「もう遅い。それに、邪魔な樹海もようやく消えた。さぁ、始めよ!」
「はいはい〜」
「了解〜!」
「言われなくとも・・・」
だけど、それが敵の罠だと気付いた時には既に遅く、私と椿は他の3人によって周囲を取り囲まれてしまった。そして、3人は手に札を持ったまま何かを唱え始めている。
【椿!綾!戻りなさい!!】
「でも・・・先輩が!」
「首輪も玄空に外されてるし、ここは私達が助けるしか!」
【諦めて!!今はアンタ達が逃げる方が――】
そう妲己さんは正論を言ってくるけれど、あのまま先輩を連れ去られてしまったら、連中に先輩が操られて再び敵同士になってしまうんだ。
だから・・・もう二度とそんな事だけは!
「馬鹿めが・・・四空結界!!」
それでも突き進もうとする私達に、目の前の玄空が叫ぶ。すると、私達の足元が光出して見えない縄のような物でギッ!と強い力で身体を締め付けられてしまった。
「ぎゃぅっ!?」
「いぎぃっ!?」
『椿!!綾!!』
『駄目だ、白狐!アレは強力な結界術だ!例え俺達でも2人の近くに行けないぞ!』
そんな・・・あの狐2人でも入れない結界だなんて。
縛られている痛みで周りは上手く見えないけど、よく見たら確かに私達の周りには光の壁が張られていて誰も寄せ付けない状態になってしまっている。
あまりの痛さで脳が千切れてしまいそうだよ・・・。
でも、どうしてだ?どうして私達の強力な攻撃を受けても、敵は全然効いていなかったようにピンピンしていやがるんだ?
「当たり前です。何故なら、この私の見えない盾で彼らを守っていたからですよ――"椿様"、"綾様"」
「えっ?」
「なっ・・・!?」
私と椿は、そこへ現れた人物を見て更に驚愕してしまった。
なんと、緑のリボンを着けた黒髪のポニーテール・・・玄葉さんが、気を失っているわら子を脇に抱えて私達の前に姿を現したのだ。
「玄葉、さん・・・」
「な、んで・・・だ、よ・・・」
そんな、どうして貴方がこんな事を・・・せめて嘘だと、嘘だと言ってくれよ。