私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
敵の術に捕まってしまった私と椿が閉じ込められた結界の前で、玄葉さんは顔色を変える事なくわら子を抱えたまま立っている。
そんな様子を見たオジサンと狐2人は、すぐに私達を助けようと結界を張った滅幻宗の3人に攻撃を仕掛けるけど、その攻撃は玄葉さんの盾で完全に防がれてしまう。
「ぐぅ・・・!なんという硬さだ!」
『玄葉!お主、何のつもりで!!』
『俺達を、翁を・・・いや、座敷わらしを裏切るか!』
そんな玄葉さんの行動に、狐2人は玄葉さんを凄い剣幕で睨み付け、表情が見えないオジサンも弓を玄葉さんに向けたまま、その手をブルブルと怒りで震わせていた。
そして、結界で動けない私達の所にも滅幻宗の幹部4人が近づいてきている。
「うぅっ・・・くぅ・・・っ!」
「白狐さん、黒狐さん・・・!」
それでも私と椿は何とか術の拘束から抜け出そうと身体に力を入れるけど、その力はあまりに強く拘束が緩みもしないよ。
こんな時に限って、レイちゃんも今回は危険だからとお留守番させていたし・・・最悪だ。
「椿ちゃん!!」
「くっ・・・椿!」
皆を守るように前へ立っているカナも雪も、この強力な結界に捕まっている私達には手出しすら出来ない状態だ。
「ふっ、玄葉よ。新入りの割には、良く働く奴だ。"ただの人間"にしては素晴らしい力ではないか」
「ありがとうございます。これも全て、奈田姫様の目的の為」
そう言って玄葉さんは、近づいてくる玄空へ頭を下げた。
でも玄空は今、玄葉さんの事を"ただの人間"と言わなかっただろうか?確か、玄葉さん含めて4つ子の人達は人妖っていう存在だったハズ・・・一体、どういう事?
参ったな・・・考えを纏めようにも、身体中が酷く痛むせいで全く頭が回らないよ。先輩も気絶したまま玄空に担がれてしまっていて、このままじゃ助け出すどころか逆に私達が捕まっちゃう・・・!
『玄葉!何故裏切った!』
「仕方ないのですよ。気付いてください・・・ねぇ、椿様に綾様。付き合いが短いとはいえ私達がどういう人物なのか、それはもう分かっているのでしょう?」
「「・・・」」
白狐さんの言葉に玄葉さんはそう言うけれど、私と椿は拘束の痛みで全然話が分かんないぞ。
「あぁ、すみません2人共。ですから、少しの間だけ大人しくしていてくださいね」
「くっ・・・うぅ」
「うっ・・・ぐぅ」
それに大人しくしろって言われたって、拘束されている私達にはそれしか出来ないよ。
オジサンと狐2人も諦めずに攻撃を続けてくれているけど、それも全て玄葉さんの力で一切通用していないし・・・まさか、こんな事になるなんて。
「あはは、あの攻撃が無駄みたいだ〜。その盾凄いね〜玄葉さん」
「閃空。感心していないで、その妖狐と少女を捕獲しちゃいなさいよ」
そして、そんな玄葉さんの防御に手こずっている3人を他所に、閃空と峰空が私達の所へと近づいてくる。
私と椿だけじゃ、どうしようも・・・いや、まだ椿の中には妲己さんがいる。きっと妲己さんなら良い考えが――
【無理よ、2人共。これは完全に詰んでいるわ・・・だから言ったのに】
「嘘・・・でしょう」
「なっ・・・そんな!」
妲己さんでも駄目なのか、この状況を覆すのは!
それでも皆、諦めずに私達を助けようとしてくれているのに!特に美亜は呪術を使ってまで私達の捕まっている結界を壊そうとしてくれているよ。
だけど、呪術で成長した植物は結界に近づいた瞬間に一瞬で萎びて枯れてしまっていた。
「なんで!?私の呪術がここまでアッサリ・・・!」
「他の皆も、大人しくしていてください。座敷わらしが此処に居る以上、妖術をも無力化する幸運の気で満ちています。美亜さん、呪術等も使えないですよ」
「くっ!そんなの、やってみないと分からないでしょうが!!」
その瞬間、栄空が美亜へ何かの札を投げつけて攻撃してきた!不味い、アレはきっと爆発する札だ!!
「やれやれ・・・集中するのは良いけれど、敵の動きも良く見ないとね」
でも、その札は美亜に当たる直前で校長先生が起こした突風によって上へ舞いあげられた事で空中で爆発した。
敵の札は校長先生が何とかしてくれたみたいだけど、それなら尚更私達が結界から抜け出さないと・・・。
「うぐぐぐ・・・こ、このくらい!」
「いっ、つぅ・・・でも、うぅぅ!」
身体を少し動かそうとしただけでも酷い激痛が走る程に締め付けられているけれど、それがなんだって話だ。
【ちょっと椿も綾も、それ以上は・・・】
「妲己、さんは・・・黙ってて!」
「どうせ・・・妲己さんでも、無理・・・なんでしょ?だったら・・・!」
そんな私達の往生際の悪さに、妲己さんは大きくため息をついてくる。
【このままじゃ、また暴走するわよ。アンタ達、また"神妖の力"に頼ろうとしているでしょ?】
「じゃあ・・・他に何かあるってのかよ!」
「ここから脱出するには、それしかないの・・・!」
【馬鹿椿にアホ綾。仲間を信じなさいって言っているでしょう?】
そりゃ信じているよ。だけど、それでどうにもならない状況だから・・・だから私達が何とかしないと!
「諦めよ」
そんな中、私達に大きな影が覆ったのを見て顔を上げると、玄空が私達の目の前に立ちはだかっていた。
だけど、さっきまで戦っていた相手とは思えないくらいに玄空の身体は大きく見えて・・・いや、違う。
――この叫んで泣き出してしまいたくなるような感覚、私はコイツらに"恐怖"してしまっているんだ。
「あがっ!?」
「おごっ!?」
そう頭で理解した瞬間に私と椿の頭は玄空に殴りつけられ、それによって視界が大きく揺らいで意識も消し飛びそうになる。
『椿!!綾!!』
『おのれ!!玄葉・・・貴様も俺達と同じように、椿や綾の事を想っていただろうが!それなのに、何故こんな事を!』
ギリギリ意識は保てたけれど、その一撃のせいで私も椿も完全に身体へ力を入れられなくなってしまっていたよ。
「ふむ・・・これくらいで良かろう。よし玄葉、このまま撤退する。後から来る追手の方は頼んだぞ」
「分かりました」
そこから玄空は、かつて美亜に使った物よりも大きく長い数珠を取り出し、それで動く事すらままならない私と椿を縛り上げてきた。
クソ、もう本当にどうにもならないのか?
「うく・・・離、して!」
「この・・・うぅ、ぐっ!」
それでも私は椿と共に出来る限りの抵抗をしようとするけれど、もはや力の入らない身体では指1本も動かす事も出来なかった。
「椿ちゃん!!綾ちゃん!!すぐ助け――きゃぅ!?」
「な、何これ?見えない壁が!?」
皆も私達を助ける為に玄空へ近づこうとしたが、周囲に張られた玄葉さんの盾のせいで、攻撃を通すどころか近づきすら許してはくれない。
「ちょっと・・・!このままじゃ座敷わらしまで!ヤバいわよ!」
「参ったね、私達は生徒を守らないといけないし、今来てくれた捜査零課でもコレは・・・」
『クソ!椿!!』
『行かせるかぁぁあ!!』
「綾!!この・・・助けないと!!」
美亜も何とかならないかと校長先生に怒鳴ったりしてくれているし、オジサンや狐2人に至っては完全に全力だ。
「駄目・・・です。皆、もう戦ったら・・・」
「皆・・・今は私達よりも、早く逃げて・・・!」
玄葉さんの力でダメージを受けていなかった閃空と峰空が、私達を助けようとする皆を殺そうと術を発動しかけている。
「閃空、峰空、栄空。後は奴らに任せておけ」
すると、玄空がそう言って私と椿を担ぎ上げたと同時に、倒れていた下っ端達が起き上がってオジサンや狐2人、それどころか他の皆や生徒達へと襲いかかっていったのだ。
「えっ、まさか・・・」
「ふん、奴らはこの為の駒に過ぎん。札で大量の練気を流してやれば、訓練していない者は脳が壊れてあんな風になる」
「この、クソ野郎・・・がっ!?」
「綾ちゃん!!」
玄空の非道な行動に怒りの声をぶちまけるも、その途中で奴は私の腹を強く殴って、更に身体から力を奪っていく。
「さて、行くぞ」
「はぁ〜全く・・・真剣にやられたフリするのは疲れたよ〜」
「真剣にやってないと思われてたわよ、閃空?」
「コイツはいつもそうですよ。それよりも、この妖狐と人間。用が済んだら、ちゃんと殺すんですよね?」
ちくしょう・・・何から何まで、コイツらの思い通りになってたって事かよ・・・。
玄空に運ばれて遠くなっていく景色の中、皆はオジサンや狐2人に殆ど守られるような形で私達を追う事も出来なくなってしまっていた。
そんな皆を見ながら、私は自分の弱さに椿と同じくらい涙をボロボロと零してしまう。
もっと私が自分の力を過信していなければ・・・そして"神妖の力"をシッカリ使えていれば・・・椿も皆も、こんな酷い目に合わせず済んだハズだ。
私は・・・自分が強いと思っていただけの――ただの無能だ。
【2人共に仲間を信じなさい、良いわね。私はいざという時の為に、力を温存させておくから】
でも、あんなに言ってた妲己さんは何故か意味深そうな言葉を、私達にキツくも優しい声で言ってきたよ。
「椿様、綾様・・・そして座敷様も皆様も。ごめんなさい・・・」
そして私と椿は身体が疲労や戦闘のダメージで限界を迎えて意識が薄れていき、玄葉さんの何処か怒りを堪えているような声を最後に目の前が真っ白となっていったのであった。