私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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幕間 番外編 その捌 約束したのに

 

――椿と綾が滅幻宗に連れ去られてから数時間後、滅幻宗の本拠地に居る"処刑人"の方にて。

 

滅幻宗が山で"ある存在"を手に入れる為の手助けをしてから、私はアイツ――綾から取り戻した"烏森の力"を安定させるべく、ずっと貸し与えられた部屋に篭もって使い魔との妖気の流れを調律していた。

 

「はぁ、はぁ・・・!クソ・・・っ!」

 

手元に置いていた鎮痛剤の瓶を掴んで、その中身をありったけ口の中へと放り込む。

 

あれからというもの、私の身体は頭の中を筆頭に各所が激しく痛むようになってしまっていた。

あの雫とかいう奴の話では"まだ小次郎の妖気が身体に馴染んでいないからだ"と言っていたが・・・まるで内側から肉食動物に食い破られているかのような激痛だ。

 

「あらあら、随分と苦しそうね〜?まだ使い魔が完全に使いこなせていないと聞いていたんだけど」

 

「ちっ、峰空か・・・気が散って集中出来ないから、さっさと出ていけ」

 

「ちょっと〜そんな態度取らないの。アンタにも一応知らせておこうかと思ってね。実は妖狐とアンタが使い魔を奪った少女・・・さっき捕まえてきた所なのよ」

 

その峰空の言葉に、私は思わず激情のまま身体を動かそうとする。

 

「なっ!?アイツを此処に連れて来たのか――ぐっ!!」

 

「無理に身体動かさない方が良いんじゃない?だって妖狐は奈田姫様直々の目的だったけど、あの少女は奈田姫様の知り合いが情報の提供と引き換えに要求してきた話だったんですもの」

 

「ふざけやがって・・・何処のどいつだ、その知り合いって奴は?」

 

「さぁ?奈田姫様は話してくれないから、私達には皆目見当すら付かないわね〜」

 

何とも不快な話だ。

 

普段から姿を見せない奈田姫という奴も心底気に食わなかったが、"知り合いの頼み"でそいつが私に綾を狙っていた事を隠したまま滅幻宗の幹部だけに任務を与えていた事で、私は奈田姫を信用するつもりは毛頭無くなった。

 

アイツは烏森に対しては裏切り者だけど、私と雫にとっては"普通の人"として、誰にも縛られる事なく自由に生きていて欲しい奴なんだ。

 

しかし、だからといって助けに行こうとしても、滅幻宗に捕獲を依頼した"知り合い"が何を考えているか分からない以上、迂闊に手出しが出来ない。

 

それに、きっと滅幻宗も私が綾を救い出そうとすれば全力で邪魔をしてくるハズだ。

 

「ちっ・・・それなら仕方ないな。その知り合いとやらの用事が終わるまでは、私は大人しくしといてやる」

 

「そうね。そうしてもらえると嬉しいわ〜」

 

そう言って峰空は部屋を後にしていく。

 

そして、私は身体に鎮痛剤が効いてきたのを見計らってから、本拠地内に居る坊主達から妖狐と綾の捕まっている場所を聞いて様子を見に行く事にした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――椿と綾の捕えられている地下牢獄

 

あちらこちらと彷徨きながらも、ようやく辿り着いた地下牢獄への階段。私がそこを降りようとすると、全身が筋肉ダルマのような2人組みの男に声をかけられる。

 

「むっ?お前は確か、最近雇われて此処へ来た奴ではないか」

 

「ああ、そっちは・・・闘力(とうりき)と戦力(せんりき)の兄弟だったっけ?」

 

その私の言葉に、筋肉ダルマな2人は互いに目を合わせてから、金剛力士像のようなポージングをして軽く頷いてきた。

 

「如何にも。お前は"処刑人"と言っていたな。この先に何か用事があるのか?」

 

「まぁね。さっき妖狐と霊能者の綾を捕まえてきたって聞いたもんだから、そいつらが本人かどうか確認したいんだよ」

 

「ふむ、良い心掛けだと感心するが・・・もし、何かの間違いで奴らを逃がすような事があれば、俺と兄者がお前を許しはせんぞ」

 

「へいへい、そんな油断も隙も作りませんっての。そもそも、アンタら2人を相手するような事なんて面倒だから勘弁したい話だっての」

 

ギロリと弟の方が凄むような眼差しで私を見てくるが、別に助け出しに来た訳ではないので鼻で笑って流してやった。

 

「ふっ・・・確かに、この俺達の鍛え抜かれた身体の前には、どんな敵も赤子同然だ!!」

 

「兄者と2人ならば、負ける気などせんわ!!」

 

「お〜、お〜・・・ま、そういう訳だから。とりあえず入り口は頼んだよ」

 

「「お任せあれ!!」」

 

適当な事を言って、私は筋肉兄弟の間を通って階段を降りていく。

 

あの2人の筋肉によるポージングを見せられ続けていたら、あまりの場違いぶりに頭が痛くなってきそうだ。

 

そして牢屋の中を1つ1つ確認しながら歩いていくと、奥にある牢屋に見覚えのある3人の姿を見つけた。

 

「ふん、それほど厳重にはしていないみたいだな・・・」

 

中に閉じ込められている妖狐と綾、そして座敷わらしの3人は気絶させられた状態で牢屋の床に寝かされているようだ。

 

牢屋は見た所、丈夫そうな鉄格子で隔ててはいるものの、壁を削って作ったヘコみに取り付けてあるだけの形なので、強い妖気を持つ2人を閉じ込めておくには不十分ではないかと感じる。

 

「おやおや、何処に行っていたのかと思えば・・・こんな所で何をしているのです、処刑人?」

 

そんな事を考えていると、突然後ろから例の嫌味ったらしい奴の声が聞こえてきた。

 

「ちっ、栄空か」

 

「後どれくらいで戦力として復帰出来るかを貴方に尋ねようとしたのですが、部屋に居られなかったのでね。その様子を見ると、どうやら身体の方は問題無さそうですね」

 

「妖気が馴染まない痛みを鎮痛剤で誤魔化しているだけだ。それで?他に何か用でも?」

 

私は向こうの飄々とした態度に苛立ち、わざとらしく腕を組みながら振り返って聞き返す。

 

「いえ、大した話ではないのですよ。貴方の出自についてなのですがね。処刑人、貴方は雫さんに拾われて育ったという話を小耳に挟みまして」

 

「ふーん・・・で?」

 

「それで少し、貴方の過去について聞かせてもらいたいのです」

 

周囲を見渡して他に誰も居ない事を確認し、私は栄空の言葉に頷いた。

 

「ああ、別に構わないよ。それで、どこから話せば良い?」

 

「貴方が話したい範囲で大丈夫ですよ。私としては、何故貴方が霊能力者の綾に固執するのかを知りたいだけですから」

 

「あっそ、それなら話は単純だ。綾と私は――同じ生まれの姉妹なんだよ」

 

すると、栄空は僅かに目を開いて私の顔をジッと見てきた。

 

「なるほど・・・しかし、使い魔を奪う程に血の繋がった者を手にかけようとするとは、どうやら複雑な事情がありそうですね」

 

「お前ら滅幻宗には分からないだろうけど、これでも私はアイツの事を最大限に思いやっているつもりだ。現に、今までだって殺そうと思えば何時でも殺せた訳なんだからな」

 

「ふむ、それは姉妹としての情ですか?」

 

その栄空の言葉に、私は自分の心中を全てさらけ出しそうになる気持ちを抑えて答える。

 

「・・・あながち間違ってないかもね。とにかく、お前らが妖狐をどうするとか、何をしようとしてるとか私にとっては関係ない。だけど、もし綾に何かをしてみろ――その時は、私がお前らを無惨な死体に変えてやる」

 

「おぉ、怖い怖い。全く、少し貴方の心に踏み入っただけじゃありませんか」

 

「本来なら、それすらも私は嫌なんだよ。今度余計な事を言ったら、その薄ら笑いしてる口を縫い合わせてやるからな」

 

「私も、そこまで敵対するつもりはありませんよ。ですが、せいぜい奈田姫様の機嫌だけは損ねないように気を付けてくださいね」

 

そう言って、栄空は普段と同じゆったりとした足取りで地下牢獄から出て行った。

 

私は鎮痛剤の副作用からくる強い疲労感で壁に身体を預けながら、鉄格子の向こうに居る綾へと視線を移す。

 

「ごめん、姉ちゃん・・・雫と一緒に、絶対悪い奴らなんかには手出しさせないって約束したのに・・・」

 

そう誰にも聞こえない程の小さな声で呟いてから、私は重い瞼を擦って立ち上がって自分の部屋に戻った。

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