私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「し、試験なんて聞いてないよ!」
「そうだそうだ!一体どういう事なのか説明しろ駄狐共!」
私達は突然の事態に2人へ文句をつける。
正直、今さら引き下がれる状態ではない事は分かっているつもりだが、それでも物事の順序はきちんと説明が欲しかった。
『大丈夫じゃ、2人とも。我らと同等の力を持っているのだぞ?こんな試験など余裕の朝飯前じゃよ』
「はぁ・・・あの時みたく、上手く呼び出せればいいけど」
私に秘められた力――それが人や妖怪の魂に力を与えて戦わせる事が出来るというのは椿の祖父のおかげで分かったが、今の私には「佐々木小次郎」と名乗る鳥人間の怪物以外の魂を感じる事が出来ない。正直、かなり不安だ。
「よし、ちょうど今日ライセンスの認定試験がある。それまでの間にライセンスの説明でもしておこうか?」
『そうだな、2人とも知らないから頼む。』
黒狐さんが私達の代わりに説明を要求する。
いくら知らないからとはいえ、何でもかんでも2人に椿と一緒に守られてばかりじゃ何処か落ち着かなくなってくる。
私が椿を守るって決めたんだから、せめて少しは前に出させても良いんじゃないのかって。
「――さて、ライセンスには階級が存在していてな。十級から一級まで存在している。それによって、手配書の妖怪や妖魔への干渉出来る権利が決まっている」
「なんだって?そんな権利があるのか」
「えっ?手配書にはランクがあるのは聞いたけど、誰でもその妖怪を退治して良い訳じゃないの?」
すると白狐さんが後ろから説明してくれた。
『当然じゃ。なにせ手配書のランクが高ければ、命に関わる程の大妖だからじゃ。誰でも簡単に挑戦して、次々と殺されて命を粗末にされては困るだろうが。だからライセンスがあり、その等級によって狙える手配書が変わってくるんじゃ』
「なるほど。確かに人手がどんどん減っていったら、センターとしても仕事を受ける人が居なくて困るもんね・・・」
「続けるぞ。此処は他所からの依頼も、こういうライセンスを持っていないと出来ない。次に等級毎による手配書の各ランクへの干渉可能領域だが、ざっとこうなっておる。そして等級によって捕まえられる手配書のランクを制限しているのは、上級ライセンスの妖怪達による下級手配書の乱獲を防ぐ為だ」
そう言って、達磨百足は私達に縦長の紙を広げて見せた。そこには十級から七級まではDからCランク、六級から四級にはCからBランク、三級から二級はBからAランク、一級はAからSランクと書かれており――更にその下には特級はSからSSランクが受けられる事と、それが機密事項任務による特殊ライセンスである事などが記されていた。
「特級だって?」
「えっ・・・一級より更に上があるの?」
「因みに手配書のランクは、Aランク以上は全て妖魔となっておるからな。しかしそもそもからして一級は数十人しか居ないし、特級など妖怪史上2人しか出ていない。昨今の妖魔の凶暴化により、認定試験がキツくなっているからな。制度を改める必要があるかもしれん・・・そこの白狐と黒狐ですら二級だからな」
私達は振り返って2人を見る。どちらも誇らしげにドヤ顔をしていて、とても自慢げな感じだ。
そんな2人でさえ二級というのだから、その上の存在について考えると嫌でも眉間にシワが寄ってしまう。
「・・・改めて思うと、ますます妖怪の力がすごく感じるな」
「あの・・・その特級が2人しか居ないという事は、SSランクってよっぽどの奴なんですよね?」
「ん?気になるか?安心しろ、SSランクの手配書なぞ早々出ない。というか、ここの所出現していない。それにな、その特級の2人というのは――っと、いかんいかん!ウッカリと喋る所だったわ」
「あー、そういう個人情報も機密事項に入るんだね」
「あぁ、後はな。ライセンスは誰でも十級からという訳ではない。妖気の強さで決める為、いきなり八級からスタートしたりする場合もある。しかし制度により、四級から上は必ず昇級試験を受けなければならなくなっている。・・・と説明は以上だが、頭には・・・入ってないな」
達磨百足が情報が多すぎてキョトンとしている私達を見て頭をかいた。一度に言われる情報量の密度が濃すぎて、得意な科学すらギリギリ赤点な私の頭ではパンクする寸前だ。
『2人とも安心せぇ。試験というが、筆記は無い。そこまで心配する必要はないぞ』
白狐さんから励ましの言葉を貰うと、ちょうど試験の時間になったらしく職員のスーツ姿をした鬼が声を張り上げた。
「妖怪ライセンス認定試験を受験する方は、こちらに集まってください!」
『おっ、試験が始まるようだな。よし、行ってこい椿、綾』
「やっぱり、僕1人で受けるのか・・・」
「私から手を貸したりは出来ないけど頑張ろう、椿!」
『すまんな。それに、人間達の試験も1人で受けるものであろう?』
私が椿の背中を撫でて励まし、廊下の前へ歩いてから2人へ振り返って大きく手を振る。
――すると私達の横を、黒猫を思わせる妖怪の女の子が歩いてくる。
そして横を通り過ぎる際に、私達へわざとらしくぶつかってきた。私は思わず転倒しかける椿の手を引いて抱きしめる。
「うわっ!?」
「ちょっと、危ないじゃない!」
「あ〜ら、ごめんなさい。あんまりにも気配が無さすぎて、気づかなかったわ〜」
「んだと、テメェ!!」
「止めてよ綾ちゃん!こんな所で喧嘩なんて・・・」
「・・・悪い。少し頭に血が上った」
「嫌ね〜人間の匂いがプンプンするクセして、噛み付いてきそうで怖いわ〜」
そんな事を言いながら、その黒猫の女の子はツカツカと案内の鬼の所へ歩いていった。
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認定試験へ向かう廊下にゾロゾロと色んな妖怪達が集まってくる。
そして大多数が集まって数分した後に、案内の鬼が他にまだ受験へ来ない事を確認してから此方へ着いてくるよう指示を出して先導してくれた。
薄暗い廊下の様子に椿が怯えて私の腕にしがみついてくる。
「うぅ、怖いなぁ・・・」
「別にこのくらいの廊下、怖くも何ともないでしょ」
「だって綾ちゃん、前に並んでる皆は全員妖怪だよ?取って食われたりしないって事は分かってるけど・・・」
「はぁ、これじゃ先が思いやられるな」
耳や尻尾までも怯えてしまっている椿に、私は呆れてため息をついた。今日で何回目のため息なのだろうか。
――と、話し込んでしまった事で周囲に椿以外の誰も居ない状態になってしまっていたのに気づいた。
そしてふと振り返ると椿の姿も消えてしまっている。
「ありゃ?はぐれちゃったか?」
違和感から周囲を見回すも、廊下で目に入るのは壁に無数に並ぶ扉ばかりで誰の姿も見当たらない。すると、天井から突然人の唇が出現し何かを喋り始めた。
『それではこれより、試験の方を開始します!まずは皆さんが多少はあるであろう、妖気感知の能力テストです。この中にある扉には1つだけ、次の試験を担当する試験官の居る部屋へと繋がっているので、それを制限時間内に見つけてください!』
「なるほどな、既に試験は始まってたって訳ね。それにしても、この中からか・・・骨が折れそう」
また、ため息をついてしまった。