私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 準備は万端

 

しばらく眠った後、目を覚ました私の身体からは痛みも疲れも何も無くなって、かなり動けるくらいに回復していた。

 

そして、椿も同じく身体の調子は戻ったようだけど・・・現在、とある理由で少し動きずらい状態になっています。

 

「くぅ・・・くぅ」

 

「ねぇ、綾ちゃん。これ・・・」

 

「はは、わら子まで寝ちゃってたなんてね・・・」

 

なんと、わら子は私と椿を膝枕した状態で壁に寄りかかって眠ってしまっていたのです。

 

「なんで敵の本拠地なのに、良くそんな可愛い寝息を立てていられるの〜・・・?」

 

「あっ、思い出した。わら子ちゃんって、昔僕がまだ男の子だった頃に隠れんぼをして遊んでいた時、おじいちゃんの家の蔵の中で寝ちゃってた事があるんだよ。ひょっとすると、わら子ちゃんは暗い所に居ると自然に眠くなっちゃうんだろうね」

 

「マ〜ジですか・・・何か地味に凄い特技に感じるぞ」

 

「それで、当時の僕はわら子ちゃんを見つけるのに苦労したのに、当のわら子ちゃんは寝ていたからさ。その事で怒っちゃってしばらく口を聞いてくれなくて、その後は泣きそうになって僕に不幸の暴走が起こっちゃったから大変だったんだ。思い出したら、ちょっと懐かしく感じるや」

 

そう言って「えへへ」と照れ臭そうに笑う椿の顔を見た私は、つい頬が熱くなってしまって思わず椿の顔から視線を逸らしてしまったよ。

 

「そ、それよりもさ。とりあえず、わら子を起こさないと動けないんじゃない?」

 

「あっ、そうだったね。わら子ちゃ〜ん、起きてくださ〜い」

 

ポンポンと椿は自分の頭を置いているわら子の膝を軽くつつくと、わら子はカクンッと身体が前のめりになって、彼女の口からヨダレが垂れたかと思ったら――

 

「うわぁ!!あっぶない!」

 

「え、ちょ椿――ぎゃぁぁあ!!」

 

椿が横に転がってわら子のヨダレを避けたから、そのままベチャアって私の額にかかっちゃったぞ!!

 

「はっ・・・!あっ、ご、ごめん椿ちゃん!そ、それに綾ちゃんもごめんね!私のせいで・・・その、ヨダレ塗れにしちゃって」

 

だけど、その悲鳴のお陰でわら子が目を覚ましてくれてので良しとしよう・・・いや、私からしたら良くないんだけどね。

 

「ま、まぁ起きてくれたんだから別にへーきへーき・・・うん」

 

「まさか綾ちゃん、里子ちゃんみたいな趣味に目覚めていないよね・・・?」

 

「んな訳あるかい!」

 

「ごめんごめん、冗談だよ冗談。それで、わら子ちゃん・・・やっぱり、暗い所に居たら寝ちゃうんですね」

 

そう椿は私と漫才染みたやり取りをしてから、わら子に身体を屈めて目線を合わせると、わら子は申し訳無さそうに顔を俯かせて謝ってくる。

 

「うん、2人共ごめんなさい。私は、椿ちゃんと遊んでいた時から変わらないから」

 

「そうかな?今のわら子ちゃんは自信に満ちていて、昔とは全然違うよ」

 

「えっ・・・椿ちゃんは、オドオドしている感じの方が良い?それだったら・・・も、戻すけど」

 

「あっ、良い良い!無理に戻さなくても良いです!」

 

「ふふ、ありがとう。椿ちゃんは相変わらず優しいね」

 

・・・な〜んて思ってたら、いつの間にやらイチャイチャしてたんですけど。

あらヤダ、もしかして私だけ蚊帳の外にされてない?

 

「え、えっと・・・それよりわら子、これからどうするつもりなんだ?」

 

とりあえず私は少し話に割り込む感じになりながらも、わら子へ別な話題というか話の本筋を尋ねる。

 

「その前に椿ちゃんも綾ちゃんも、お腹空いたでしょ?もう夕方だけど・・・はい、お昼ご飯」

 

「あ、そっか。私とした事が、すっかり忘れてたよ〜」

 

「ありがとう、わら子ちゃん」

 

いけないいけない、"腹が減っては戦ができぬ"って言うもんね。

 

私と椿はわら子から弁当を受け取って蓋を開け、普段より活きが良いように見える蠢く米やおかず達をせっせと手際良く食べていく。

 

「それじゃあ、この後の事は食べながら聞いてね」

 

「んぐっ!」

「もっきぇ、もっきぇ〜」

 

「もう、椿ちゃんに綾ちゃんたら。食べながら返事はしなくて良いよ。でも、2人共リスみたいに頬っぺ膨らましちゃって可愛いね」

 

はい、すいませんでした。

それと、状況が状況だから少しでも早く食べようとしてるだけだったから、そう言われると何だか恥ずかしくなってくるよ。

 

「ではでは。私達のやる事は敵の総大将を見つけて、出来る事なら捕らえる事。私の推測だと、今の所は幹部の4人が良く名前を言っていた"奈田姫"が総大将だと思うの」

 

「確かに、思い出してみるとアイツらは偶にその名前を出していたね」

 

「そうだね・・・わら子ちゃん、綾ちゃん。たとえ総大将じゃなかったとしても、あの4人にとって重要人物なのは間違いないよ」

 

私と椿は弁当を食べる合間合間に返事をしながら、わら子から作戦の詳しい話を聞いていく。

 

「そして、玄葉さんがもう1度此処に来た時に牢屋の鍵を持ってきてくれる手筈になっているから、そのタイミングで私達は牢屋から脱出するよ」

 

「んっ・・・了解です」

 

「ムグムグ・・・おっと、一つ質問して良い?その奈田姫って奴は今何処に居るとか、それについてわら子は予想がついているの?」

 

「うん、それなら大丈夫だよ。此処も寺院関係の建物なら多分、奥の院とかそういう場所に居るんじゃないかな?とにかく、奥に進んでみたら良いと思う」

 

「まぁ、実際分かりやすいボス部屋とかある訳ないしな〜・・・」

 

「ボス部屋って、綾ちゃんは変な事言わないの。でもそれって、あの4人に遭遇する確率も・・・」

 

「高いよ。しかも、私達じゃ勝てそうにないね」

 

わお、マ〜ジですか・・・隠密行動とか、私が1番苦手な事だぞ。だって、身体を動かしたりしてないと落ち着かないし。

 

「私達のやる事って、めちゃくちゃ難易度高くない?」

 

「大丈夫、綾ちゃん。その為に玄葉さんが潜入員として選ばれたの。あの玄武の盾は、どんなものでも防げるからね。最悪の場合、玄葉さんの盾で守られながら皆が来るまで逃げまくったら良いの」

 

「なるほど、そこまで考えた上での人選なんですね」

 

「なんというか慎重なような、大胆なような・・・ま、いっか!」

 

考えてても今更どうしようも無いしね。

私達は自分に出来る事を、とことんやれるだけやってみるしかないさ。

 

「んっ・・・ご馳走様」

「よし、と・・・ご馳走様でした!」

 

わら子の話を聞きながらも弁当を食べ終え、私達はスックと立ち上がって背筋を伸ばす。

 

「僕は準備オーケーです!」

 

「私も、いつでもいけるよ!」

 

「それなら、後は玄葉さんが来るのを待つだけだね」

 

「あっ、わら子ちゃん。1つ確認したいんだけど・・・湯口先輩はどうするの?」

 

「勿論、可能なら助けるよ。でも、可能なら・・・ね」

 

「そう、ですか」

 

「・・・ああ、分かったよ」

 

私は先輩の救出についてわら子から返ってきた答えへ、そう自分へ言い聞かせるように言葉を返した。

 

湯口先輩が再び敵の手に落ちている可能性も有り得なくはない。

だけど、それでも私にとって先輩は椿と同じくらいに大切な人だから何としても助け出したいって、そんな気持ちを持つ程にまで想うようになっていたんだ。

 

こんな時になってようやく気付くなんて、もしかしたら遅過ぎたのかもしれないけどね。

 

「椿ちゃん、それに綾ちゃんも。多分、2人なら無理してでも助けようとするよね?」

 

「うぐっ・・・」

「バ、バレてた?」

 

「私だって、長いこと椿ちゃんと付き合ってきているんだから、誰がどんな気持ちを隠しているか位は分かるよ。だけど、皆もそれは分かっているハズだよ。だから椿ちゃんと綾ちゃんは、やりたい事を全力でやったらいいよ。私がフォローするから」

 

「ごめんなさい、わら子ちゃん」

「ご、ごめん・・・わら子」

 

「違うよ2人共、そこはありがとうだよ」

 

謝る私達に、わら子は微笑みながら此方の手を優しく握ってくる。その朗らかな笑みを見ていると、わら子は本当に座敷わらしなんだなって実感するよ。だって、こんなに太陽みたいな優しい顔を見たら、誰だって心が幸せになってくるんだもん。

 

「だから、その人を助けて総大将も捕まえる。それが私達の目標だよ、良い?」

 

「うん、絶対に成功させよう!」

 

「ありがとう、わら子ちゃん」

 

ああ、もう・・・私も椿と同じ程に、色んな人から支えられているんだな。

 

そんな皆も椿も支えられるように、私はまだまだ強くならないといけないんだ。今回のように、もし大切な人が危険な目に合っていても、簡単に助け出せるくらい強くなりたいよ。

 

――その後、気を引き締め直した私達の元へ玄葉さんが鍵を持ってやって来た。

 

「皆さん、お待たせしました。準備の方は・・・良いようですね」

 

玄葉さんは私達の強い意志を持った目を見て、確認する必要もなかったと感じる表情を浮かべながら、私達が閉じ込められている牢屋の鉄格子の鍵を開ける。

 

「さっ、行きましょう。幹部の4人は瞑想の時間で奥に行ったらしく、他の者はこれを機にだらけきって遊んでいます。綾様を狙っていた"処刑人"と呼ばれる大鎌の女も、外へ行っているのか見かけないようですし、今がチャンスです」

 

「分かりました、行きましょう玄葉さん」

 

「おっし、準備は万端!アイツらに私達を甘く見たツケをタップリ払わせてやる!」

 

「椿ちゃんも綾ちゃんも、気合い入れるのは良いけれど・・・隠密行動なのを忘れないでね?」

 

「「うっ・・・分かってます」」

 

ヤダナーワラコチャンッタラ。わ、私そこまで暴れる気はナイヨー?

 

何処から敵が来るか分からないし、ひょっとすると美亜の家みたく罠も張られているかもしれない。だから、慎重かつ用心深く進んでいかないとね。

 

とにかく、私達は玄葉さんを先頭に薄暗い牢屋を出る為、出口のある方向へと歩き出したのであった。

 

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