私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参話 滅幻宗の起源とオジサンの過去

 

牢屋の中から脱出した私達は、薄暗い地下の通路をヒタ・・・ヒタと静かにゆっくり進んでいく。

 

玄葉さんの話によると、此処は京都市内にある滅幻宗の寺院の地下なのだとか。今どき何処ぞの秘密結社みたいな、こんな建物が残っているなんて珍しいな。

 

「ところで、此処の牢って薄暗いですね。足元が良く見えない――わっ!」

 

「びゃあ!?ビ、ビックリした〜」

「きゃっ!ちょっと椿ちゃん!?」

 

「あっ、ごめん綾ちゃん、わら子ちゃん!」

 

その途中、椿が通路でつまづいてしまって、私とわら子へ覆い被さるようにして盛大にコケてしまった。

 

好きな椿の顔が間近にきてるからか、ちょっと可愛い系のイケメンに感じて少し心がドキドキするぞ。

 

「3人共、そういうのは家に帰ってからお願いします」

 

「「家に帰ってもやりません」」

 

私と椿は玄葉さんの言葉にムッとしながらも立ち上がって、わら子の手を優しく引いて立ち上がらせる。でも、わら子は何故か顔を真っ赤にしていたよ。

 

「ほぉ、これは・・・牢の中が賑やかだと思えば、可愛らしい客人じゃの」

 

「「誰(だ)!?」」

 

別な牢屋から聞こえてきた声に、思わず私と椿は後ろを振り返る。すると、玄葉さんはそれが誰なのか分かっていたらしく、私達の間を通って牢屋の中に居るその人へと話しかけていた。

 

「貴方達でしたか、すいません。事が終われば貴方達も此処から出しますので、今暫くお待ちください」

 

「よいよい。私は辛抱するのは得意じゃて」

 

「しかし、和尚・・・もう貴方は」

 

「良いと言っている。この程度の苦行、昔の修行僧に比べれば生温いわい」

 

その牢屋からは複数の人の声が聞こえてきて、暗闇に慣れてきた目を凝らして良く見てみると、そこに閉じ込められているのは全員が坊さんのようだ。

 

白い髭を生やした、本当の意味で熟練の坊さんといった雰囲気のある人が私達へ声をかけてくる。

 

「それよりも、お前さん達。ちょいと、この年寄りの話に耳を傾けてくれんか?私達の寺院、そして宗派を乗っ取り悪巧みをしている奴らの事じゃが・・・」

 

それを聞いた瞬間、私の頭には以前オジサンが話してくれた滅幻宗の事が蘇り、つい椿と一緒に彼らの閉じ込められている牢屋の前へと駆け寄ってしまったよ。

 

「それ、詳しく教えてください」

 

「滅幻宗について、何か知っているの!?」

 

「椿ちゃん!?綾ちゃん!?」

 

「お2人共。申し訳ありませんが、今は急いでいるんですよ」

 

「それは分かってる。でも、少しでもアイツらの事を知っておけば、戦いで何かの役には立つハズ・・・!」

 

私がそう言うと、年寄りな坊さんは眉毛に隠れた目を少し見開いて此方を見てくる。

 

「おぉ、狐の嬢ちゃんと白髪の嬢ちゃんは分かっとるようじゃの」

 

「し、白髪じゃないんですけど・・・」

 

「狐・・・って、僕の耳が見えるんですか!?」

 

「えっ!それじゃあ、私の姿も!?」

 

「勿論、見えとるぞ。その格好からすると、そっちのお前さんは座敷わらしかの?この目で見られるとは、何とも幸運じゃの」

 

なんとこの人、椿の耳や尻尾・・・そしてわら子の姿まで認識出来ているなんて。これは、妖怪の存在を信じているからなのか、それとも坊さんが何か特別な力を持っているからなのか・・・謎だね。

 

「それと、急いどるのは分かるが、ほんの数分だけ耳を傾ける事も重要じゃぞ?急いては事を仕損じる、とも言うのじゃからな」

 

「うっ・・・分かりました」

 

その年の功からくる重さのある言葉を聞いて、玄葉さんは何も言い返す事は出来なかったよ。

 

まぁ、実際に山の廃村での1件で焦って色々大変な事になっちゃった事があったから、仕方ないとは思うけどね。

 

「さて、納得してくれた所で――話すかの。私の恋のアバンチュー・・・おぅっ!?」

 

うん、今のお弟子さんのツッコミは正しい判断だと思うわ。こんな状況で悠長にふざけてどうするねん、あのヒゲ坊さんは。

 

「全くもう。空気がこうも重苦しいと、口から出る言の葉も重くなるじゃろうが」

 

「あ、なんだ・・・場を和ませようとしてただけですか」

 

「綾様、それに椿様も。あまり真に受けないように・・・」

 

「へっ?」

「はい?」

 

「お坊さんの中には、口達者な方もいらっしゃいます。気付いた時には、その話術にはまり込んでいる場合もあるので、気を付けてくださいね」

 

な、なんか玄葉さんから真剣な顔で言われると、微妙に目の前のヒゲ坊さんが怖くなってきちゃったぞ・・・。

 

「オホン。さて・・・そもそも私達がこうして捕らえられているのは、奴らに反発する私達が邪魔だった事と"ある情報"を保有していた事、この2つが理由なのじゃ」

 

「「"ある情報"?」」

 

「あの有名な、殺生石の場所じゃ。我々の宗派では霊は勿論の事、妖怪等も存在すると信じておる。それ故、時には彼らの存在を守る為に動いたり、またある時には人へ害をなす者を追い払ったりしておったわい」

 

「あっ、その話・・・私のオジサンからも聞きました」

 

そう私が答えると、ヒゲ坊さんは何処か懐かしいといった感じに顎を掻きながら頷いてくる。

 

「ほぅ、大地の事を知っておるようじゃな。それに、そこの狐の嬢ちゃんも怯えなくとも良い。お前さん達は清い心を持っているようじゃ」

 

「清い心、だって?」

 

「さっきの会話で分かる。お前さん達の敵になるような事はせんよ。さて、話を戻すが・・・そんな情報を持っていたからか、ある日この寺院は襲撃され奴らに奪い取られたのじゃ。そして連中に従うフリをして儂らの為に動いてくれていた大地を残し、私達の宗派は滅幻宗という憎き集団へと変えられてしまったのじゃ」

 

「そんな、オジサンが・・・」

 

一瞬、私は自分を育ててくれた人が昔どんな苦労をしてきていたのか、それの理解に頭が追い付かなかった。

 

滅幻宗の起源とオジサンの過去で以前の話を思い出すと、あんな奴らに宗派を乗っ取られた後、それでもオジサンは組織を正しい道に導こうとしていた事に心が痛くなってくる。

 

「・・・玄葉さん」

 

「言いたい事は分かっています、椿様。滅幻宗が本当は最近出来た組織ではないんじゃないか?もっと昔から存在していたんじゃないか?・・・と」

 

「すると、滅幻宗はまさか――!」

 

「その答えは"はい"です。実は滅幻宗は、100年近くも前から存在しているのです。同じく20年前から妖怪退治を生業としていて、今は壊滅してしまった"烏森家"と比べても、その歴史の長さは異様です」

 

「そっか、椿が60年も男の子として別な所に隠されていたくらいだもんね・・・って、ちょっと待って。玄葉さん、今"烏森家"って言わなかった?もしかすると私も、その家や滅幻宗に何か関係があるの!?」

 

それに今の話、あの家は妖怪退治を生業にしていたって・・・分からない。本当に私は、ただ偶然に妖気を扱えるだけの人間なの?

 

「落ち着いてください、綾様。私達4つ子も翁も知っているのは名前や表向きの仕事だけで、烏森家の内情については知らない事が多すぎるのです。それに先程も申した通り、今では家系自体が途絶えてしまっていて、彼らの事を知る人も居らず詳細を調べる事すら困難なのです」

 

「あっ・・・うん、ごめん玄葉さん。私の方も、少し熱くなり過ぎたよ」

 

「いえ、大丈夫ですけれど・・・綾様は自分の過去について、何か気になる事があるのですか?」

 

「分かりやすく言うなら、5歳くらいより前の事がボンヤリと霧がかかったようになって思い出せないんだ。それでも、昔に妲己さんやオジサンと初めて会った時の事とかは思い出せるんだけど・・・」

 

「えっ?綾ちゃんも昔、妲己さんと会った事が?」

 

「うん・・・物心がついた辺りの歳だから、分からなくて当然なのかもしれないけど」

 

そんな話をしていると、ふと私はヒゲ坊さん達の話している事の矛盾に気が付いた。

 

「あっ、話を脱線させてしまってすいません。それと・・・失礼な事を尋ねるかもしれないですけど、貴方達は生きている人間なんですか?」

 

「ほっほっ、不思議な事を言う。存在していれば、生きている――違うかの?」

 

「え?それは・・・う〜ん、あれ?」

 

「「綾(ちゃん・様)・・・」」

 

しまった、コレそこまで真剣に悩む話じゃなかったか?だって、ヒゲ坊さんがニヤニヤして楽しそうな顔しているんだもん。

 

もしかしなくても話術に嵌められた感じだな、コレ!

 

「良いのぉ、久々に若人(わこうど)の悩む姿を見られたわい」

 

「あ〜、もう・・・」

 

じゃあ、そうなるとヒゲ坊さん達は既に死んでいて、それにも関わらず魂が未だに何かの術で牢屋に閉じ込められているって事になるんだな。

 

「さて、簡単な話だったじゃろう?年寄りの話には、耳を傾けるもんじゃ。そして奴ら、あの5人は異常じゃ。こうなった私達を今も牢屋に縛り付け、更なる情報を聞き出そうとしとる。恐ろしい奴らじゃ、そちらも気を付けよ」

 

「えっ・・・は、はい!色々教えてくれて、ありがとうございます!」

 

「分かりました。僕達への助言、ありがとうございます!」

 

「よいよい。これから戦に赴く可憐な女子達に助言をするのは、当然の事じゃよ」

 

そう言って礼をする私達に、ヒゲ坊さんは大した事の無いように手を振った。そして、その弟子の坊さん達も私達を期待する眼差しで見ているような気がしたよ。

 

すると彼らの反応に少し照れ臭くなっていた途端に、私達の居る場所から離れた方で扉が開くような音が聞こえ、此方に向かって歩いて来る音まで聞こえてきたぞ。

 

「そんな・・・!奴らの見回りは、1日に1回だけ。しかも、夜中だと言っていたハズ。くそ、私の方が嵌められたか?」

 

「玄葉さん。こっちに近づいて来ている人達って、そんなに強い人なの?」

 

「強い?いや、強いですが、その・・・出来たら対峙したくないのです、椿様。見たら分かります。ですが、此処は私の言う通りに動いてください」

 

玄葉さんは、そう言って私達にこれからの作戦でどう動くかについて耳打ちをしてきた。

 

「なるほど、OKだよ玄葉さん」

 

「うん、やれるだけやってみます」

 

「多分通用しないでしょうけれど、それで十分です。後は私がやるので・・・さっ、急いでください」

 

何だか含みのある言い方がある敵みたいだけど、これでやり過ごせるなら作戦も少しは楽になってくれるかもね!頑張らないと!

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