私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私達は玄葉さんの言う通り、鍵が壊れて開きっぱなしの牢屋に入って、わら子が巾着袋の妖具から出してくれたボロボロな布を被って身を潜める。
なるほど〜さっき弁当を食べる時に見付けたけど、これはこういう時の為だったんだな。
そうして隠れた直後に、玄葉さんの所へ2人の男の声が聞こえてくる。
「うん?玄葉、何故お前が此処に?」
「お疲れ様です。闘力様、戦力様。実は、少し胸騒ぎがしましたので、こうして自主的に見回りをしております」
「ほぉ、それは殊勝な心がけだ。しかし、お前は"処刑人"と同じように正体の分からない新参者。そう易々と信用すると、いつ裏切るか分からんからな。怪しい行動は、いかんぞ・・・」
「兄者、そんなものは身体に刻みつければ良いんだよ」
どうやら、玄葉さんと話している2人の男は兄弟で、最初に声をかけていたのが兄のようだ。
「戦力、それは良い考えだな。何せ此処は、人が滅多に来ない。怪しい奴に何をしようと、気付かれる心配は無いという訳だ」
おぉう、向こうさんは完全に玄葉さんがクロだと思い込んでいるみたいだな・・・"玄(クロ)"葉さんだけに。
――な〜んて思ってたら椿にギュッ!と尻を抓られました。
いや、最近私のツッコミに対して色々容赦なくなってきてない?今のダジャレだって、まだ口に出してもなかったんだけど。
それに、わら子も苦笑いの表情で私達の手を引っ張って、玄葉さんを助けに行かないように止めているし。何か真面目にやってる所スミマセンでした。
「お2人共、その為に此処へ?」
「ふっ、その通りよ。それに、お前を狙っていたのは俺達だけではなかったようだからな。こうして抜け駆けする為に、何故か牢に2回も入ったお前の後を追っていたのだ」
「なっ・・・!?」
おいおいおい?それじゃあ、さっき私達の様子を見に来た時にも、コイツらは後ろを着けて来ていたって事なのかよ?
だって、玄葉さんが扉を開けた時以外、向こうからは音も何もしなかったハズだぞ?
「分からなかったか?扉の開く音がしたのは先程と、その前にもう1回。計2回あったハズだが・・・」
私は思わず椿の方を見るけど、彼女も首を横に振って何も聞こえなかったとジェスチャーしてくる。妖狐としての鋭い聴覚もある椿であっても気付かれる事なく侵入するなんて、そんな訳は・・・。
「あぁ、失礼。コレで消していたっけな」
「くっ・・・札の力で、自分達の音を消していたのか。外道が・・・!」
げっ、そんなのアリかよ。じゃあ私達も気付く事なんて出来ない――って、あれ?そうなると私達が牢屋から脱出した事もバレバレって事か?
ちょっと、マ〜ジですかよ・・・。
「そこの2人、出てこい。隠れていても無駄だ」
そう言われた瞬間に私は不意打ちを仕掛けようとしたけど、またもや椿にポニテを強く引っ張られて止められ、彼女が前に出て2人の男に質問する。
「・・・僕達が脱出する時から見ていたなんて。もしかして、あのお坊さんの霊との会話も聞いていたんですか?」
「霊?そんなもの本当に居たのか?そこの銀髪の娘と一緒になって、何も無い空間に向かって話していて気持ち悪かったぞ」
「兄者、ハッタリですよ。霊なんて存在しない、それに妖怪だってね」
うん、これじゃ説得は無理そうだな。
せめてヒゲ坊さんの話とか聞こえていれば、滅幻宗のヤバさに感づいて手のひらを返すかと思ったのに〜・・・っていうか、シレッと霊や妖怪を信じてないって断言してたなコイツら。
より純粋な妖怪である、わら子の姿も見えてないみたいだし――いや、コイツら頭こそ丸めているけど本当に坊さんか?
「そうだな、霊などいる訳が無い。上の人間も、妖怪だ何だと躍起になりやがって・・・無駄な事を。存在していない者を、どう退治するというのだ」
「は?ちょちょ、ちょい?本気で霊とか妖怪とか見えてないの?」
「「当たり前だ!」」
「待ってください、それなら何で貴方達は滅幻宗になんか?」
何か変な流れになってきたぞ、オイ。
滅幻宗の連中は皆そういうのが見える人だとばかり思ってたんだけど?ここにきて見えない人が出てくるとか、ビックリ以外の何物でもないよ!
「ふん、決まっておる。俺達が信じているのは――我が肉体のみ!!」
「そう!兄者の言う通り――信じるは己が身1つ!!」
チョットナニイッテルカワカラナイ。
っていうか、いきなり上着脱いでムキムキな身体でポージング始めやがったんですけど。
「どうだ!鍛え抜かれたこの身体!更に練気を用いれば、より筋肉は増え爆発的なパワーを生む!その為に、コイツらの言いなりになっているに過ぎん!」
「兄者!素晴らしい肉体です!」
「お前もな、戦力よ!」
あー、うん・・・玄葉さんが対峙したくないって理由、何となく理解出来た気がするわ。筋肉モリモリマッチョマンの変態♂だコイツら!
お互いにポージングし合っては褒めているし、此処はボディビルダーの会場かと疑う有様だぞ。
「椿ちゃん、綾ちゃん・・・ごめん、私無理」
「ぼ、僕もです・・・」
「お、お2人とも・・・気を確かに」
「うわぁ・・・けど、あんな筋肉モリモリマッチョマンの変態なのに意外と良い体つきしてるよな」
「「「綾(ちゃん・様)!?」」」
え、何か素直な感想述べたら3人からドン引きされたんですが。
あの兄弟、練気を使うだ何だ言ってるのだけが気に入らないだけで、その気になれば普通に世界取れそうなボディしてると思うぞ私。
「ま、まぁ何にせよ、コイツらを倒さないと先に進めなさそうだしな!だから、コレでも食らえ!妖異顕現――凍華繚乱!!」
「本当は影を操るのも嫌だけど・・・え〜い!妖異顕現、影の操!!」
一先ずは不意打ちの形で、私が壁に投げつけた凍華による氷と、椿による兄弟の影の拘束で相手を2人の身動きを封じる。
「何と面妖な。どんな手品かは知らんが・・・」
「いや、手品じゃないんだけど!?」
「とにかく玄葉さん、今の内に――」
「「ぬぅん!!」」
「「うそぉっ!?」」
これで一安心かと思った矢先、なんと本格的♂筋肉兄弟は力を込めてポーズを決めただけで私の氷と椿の影を吹き飛ばしてしまったのだ!
「あぁん、ひどぅい・・・でも仕方ないね」
「綾ちゃん、脳検査受けますか?」
「ご、ごめんって椿!あのマッチョマンぶりを見てたら、何か変な空気に当てられただけだし!」
「ですが、これで十分です!後は私の、この玄武の盾で!」
すると、そう言って玄葉さんは玄武の盾を何枚も呼び出して、その中でも大きな2枚を使って筋肉兄弟を挟み込む。
なるほど、このまま圧迫して相手を気絶させられれば・・・!
「ふふふふ、この程度か?」
「兄者、上腕の筋肉が最高です!」
「ふっ・・・お前もな」
なぁにこれぇ?2人して両腕を突っ張ってるだけで、挟み込もうとする玄葉さんの盾へ完全に対抗出来てるんですけど。
「くっ・・・これは普通、人間に防げるものでは・・・多少はダメージを受けると思っていたのに・・・!」
その様子に、玄葉さんは目をしかめて玄武の盾を操ったまま困惑している。
ちなみに案の定、筋肉モリモリマッチョが強調されてる絵面なので、椿もわら子も「うげぇ・・・」といった顔でアイツらを見てます。
うん、私だって尋常じゃない筋肉だなと思うよ。
「ふん!!」
「はぁ!!」
「嘘!?私の玄武の盾が!」
な〜んて思ってたら、挟み込んでた盾をポーイ!と上に放り投げちゃったぞオイ。
「このままじゃ、不味いよね・・・天神招来、神風の禊!!」
「そっか!椿の神術なら――」
「ふむ、良い風だな」
「そうですね、兄者。汗をかいたので丁度良い」
「うわ〜ん!!効いてないよ!」
何なんだコイツら!?椿の神風で浄化されるどころか、踏ん張ってる訳でもなく本気で扇風機の風みたいな感じで涼んでるんですけど!
「椿ちゃん、落ち着いて。とにかく相手は、何もかも規格外だよ。私の不幸の気も、簡単に弾き飛ばしてるもん」
「わら子もわら子でサラッとヤベ〜事やってるな・・・っていうか、アイツら絶対ギャグ補正とか持ってるタイプだろ」
「ギャ、ギャグ補正?」
「綾ちゃん・・・変な事言ってふざけるのも、いい加減にしてくださいね?わら子ちゃんだって困ってるじゃないですか」
「ハイ、スミマセンデシタ・・・」
割と本気で私は兄弟の強さを分析してたんだけどな〜・・・フフ、椿の笑顔で向けてくる怒りのオーラが怖いです・・・。
「ふん!我々の筋肉愛、思い知ったか!」
「素晴らしいです、兄者!そう、筋肉は正義!清く美しく、この宇宙の絶対的存在!」
「そうだ、戦力よ!筋肉が無いと、人は生きられん!心臓だって筋肉で動いている!」
「そうですね、兄者!つまり、筋肉は命と言っても過言ではない!」
「だから俺達は鍛えるのだ!さぁ・・・レッツ――」
「「ムキムキ!!」」
うん、本気で出る作品間違えてると思うよキミ達。私が知ってるマイナーなシューティングゲームからソックリそのまま出てきたんじゃないのか?
「椿ちゃん!綾ちゃん!戻って来て、2人共〜!」
「あは、あはは・・・リモコンは何処?僕、教育番組のエアロビクス特集を見ている場合じゃないんです」
「あれエアロビクスっていうよりは筋肉〇付じゃ・・・」
「つ、椿様も綾様も落ち着いてください。リモコンは無いので、一旦電源を切るしか・・・」
「玄葉さんまで!?皆、戻ってきてよ〜!」
あ〜・・・うん、スマンわら子。こんなエゲツナイの見せられたら私の脳は理解を拒否したがってるんだ。
筋肉、筋肉、筋肉、スパム、スパム・・・うっ、頭が――
じゃなくて、あの兄弟は色んな意味で強敵だぞ!