私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第捌話 椿の妖狐っぽさ、全開じゃん

 

あれから私達は1階を、敵が居るであろう奥の院以外くまなく探したが、結局湯口先輩を見つける事は出来なかった。

 

下っ端の坊さん達は皆油断しきって寝転がっていたので、探索は楽な方だったんだけどな・・・。

 

「ふぅ、ようやく睡眠薬が効いたようですね」

 

「って、一服盛ってたんかい玄葉さん」

 

そりゃ地下で派手に戦ってたのに増援も誰も来ない訳ですわ。なんか緊張しながら慎重に探してたのが馬鹿らしくなってくるぞ。

 

「しかし綾様、あの4人には効いていないでしょうから、慎重に行くのは変わらないですよ」

 

「はいはい、そこは分かっていますよ〜っと」

 

「確かに、あの4人だけは普通の人と同じ感覚で相手したら駄目ですもんね」

 

そうして私達は先程までと変わらない慎重さで、2階へと続く階段を探す。

もし先輩が奥の院以外で何処かに捕まっているとするなら、残るはそこの部屋にしかなさそうだ。

 

「さて、この先が2階への階段なのですが・・・」

 

「また誰か居たのか?」

 

「はい、綾様。あの天力(てんりき)と才力(さいりき)は兄弟ではありませんが、先程の奴ら以上にコンビプレーが上手いらしいです」

 

「天と才で天才コンビってか・・・まーた面倒そうだな」

 

物陰に身体を隠しながら私と玄葉さんがコソコソと話していると、そこへ椿が恐る恐る手を上げて玄葉さんに質問する。

 

「あの・・・何で精鋭の人達が、こんなにも残っているんですか?」

 

「全員出払ったとは言っていないですよ、椿様。流石に敵も馬鹿じゃないようで、ある程度の戦力は本拠地に残しています」

 

「椿も玄葉さんも、ちょっと静かに。あの階段に居る2人、真剣な顔で何かを話し込んでるみたい」

 

私は2人に小声で知らせながら、再び階段前でたむろする天力と才力の方を見る。

 

2人共、筋肉兄弟のようにムキムキではないけど、こっちもこっちで上半身裸で阿修羅よろしく背中から幾つもの腕が生えて気持ち悪い。ちなみに玄葉さん曰く、メガネをかけてる方が天力でかけてない方が才力だとか。

 

その奇妙な2人の姿に、椿は異様な物を見る眼差しで玄葉さんへ再び質問する。

 

「玄葉さん、アレも妖具によるものですか?」

 

「えぇ、そうです。しかしアレには戦闘能力が無く、他の妖具と組み合わせて使うのが一般的だと聞きましたが・・・何をしているのでしょうか?」

 

そう、なんと天力と才力は暇そうに欠伸をしてから、どういう訳か沢山の腕を使ってジャンケンを始めていたのだ。

 

「良し、勝った。俺からだ」

 

「ふん、今回は負けないからな」

 

「どうかな?いくぞ・・・あっち向いてホイ!!」

 

うん、ナニヤッテンダアイツラ。

 

暇つぶしにやっているんだろうけど、あまりの間抜けな絵面に玄葉さんですら脱力した顔してるよ。

 

というか、こんな腕が沢山あるんだから1発で勝負決まるモンだと思うんだけど・・・。

 

「おっ!お前、北西を向いたな?」

 

「違う!良く見ろ、少し北だろ!北北西だ!」

 

「いや、北西だ!」

 

「って16方位かよ!!」

 

「「ん?その柱の陰に居るのは誰だ!?」」

 

あっ、しまった!!思わず大声でツッコミ入れちゃったよ!

 

あの2人、姑息な手を・・・。

 

「「「あ〜や〜(ちゃ〜ん〜・さ〜ま〜)?」」」

 

「さ、3人共・・・そんな目で見ないでくださいスミマセンデシタ」

 

確かに完全に私のせいなんだけども!

それでも私は、阿修羅な2人が変なあっち向いてホイをしてたのが悪いと思います!

 

「はぁ・・・仕方ないです。このままずっと見ていても、埒が明かないですからね」

 

とりあえず私達は、そう言った玄葉さんを先頭にして、正々堂々と阿修羅な2人の前に姿を現した。

 

「んん?おい、その3人は捕まえたハズじゃ・・・」

 

「あぁ、そういう事か。玄葉、お前はスパイだったのだな」

 

「そういう事です、才力さん。さて、出来たらそこの階段を通して欲しいのですが・・・」

 

「ふん、それは無理だな。私達も此処を守らないと、後で酷い目に合う。その上、裏切り者を易々と通す理由も無いからな」

 

そうメガネ付きの天力が玄葉さんへ言い、沢山の腕を前に組んで仁王立ちしてくる。

 

ま〜た戦闘かと思いつつも私が椿と共に巾着袋に手をかけようとした時、才力が1本の手を前に突き出して待ったをかけてくる。

 

「おっと、待ちな。俺達はあまり戦闘向きじゃない。そこで、どうだ?さっきのを見ていたなら、俺達と"16方位あっち向いてホイ"で勝負をしないか?」

 

「何ですって?あんな高難度なものを・・・?」

 

「そんなの、私達に勝ち目なんて――」

 

「あっ、分かりました。それでも良いですよ」

 

「「椿(様)!?」」

 

「綾ちゃんも玄葉さんも、大丈夫です。ちょっと必勝法を見つけたので」

 

随分と自信満々だけど、あのトンデモあっち向いてホイに必勝法なんてあるのか・・・?

 

私が玄葉さんと驚いているのと対照的に、天力と才力は自分達が弱いと椿に思われたからなのか、少し怒ったような表情をしていた。

 

「舐められたものだな・・・良いだろう、その必勝法とやらを見せてみろ!」

 

「別に構いませんよ。その代わり、勝ったらちゃんと通してね?」

 

「勿論だ。男として二言は無い」

 

そう言った天力が椿の前へと歩き出て、上から見下ろすようにメガネをクイッと直す。

 

「椿様・・・大丈夫なのでしょうか?」

 

「う〜ん・・・椿ちゃんは昔から、ジャンケンが強かったし――あっ!」

 

「わら子、椿の必勝法について何か分かったの?」

 

「うん。多分、椿ちゃんは私に使った方法で相手に勝つつもりかも・・・」

 

椿と天力がルール確認をしている後ろで、私はわら子の言葉に頭を傾げていた。

 

な、なんだろう・・・なんというか、地味〜に嫌な予感がするんですけど?

 

「「ジャ〜ンケン、ポン!」」

 

「むっ?くそ、私の負けか」

 

おっ、どうやら最初のジャンケンは椿が勝ったみたいだね。

後は相手にあっち向いてホイで同じ方向を向かせれば勝負は勝ちになるけど、一体どうするつもりなんだ?

 

「はい、あっち向いて――ホイッ!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

「って、不意打ちかよぉ!!」

 

そりゃ確かに必勝法と言えば必勝法だわ!

まさか人差し指を突き出したまま、牙〇零式よろしく吹っ飛ばすとか予想外にも程があるよ!

あ〜もう、吹っ飛ばされた奴は階段横の壁に綺麗な人型の穴を空けてダウンしちゃってるし・・・白狐さんの力でやってんじゃんアレ。

 

「なっ、天力!?き、貴様!ルールを――」

 

「何がルール違反なんですか?僕は相手の後ろの方角を指しただけですよ?どこもルールに違反なんてしていません」

 

「ぬっ・・・ぐぅ、しかし」

 

「それに、殴ったら駄目とは言われてないし」

 

「がっ・・・き、貴様」

 

そう言って、椿は私の方を振り向いてニコッとしながらウィンクしてくる。

 

うん、コレひょっとしたら私が悪い流れか?確かにルールの隙を突くのは得意だけど、それを見て椿が自分なりに考えた結果だとしたら・・・泣けるぞ、色んな意味で。

 

「椿ちゃん、確か私の時は『上下左右前後だ!』って言ってたよね?」

 

「あ、あはは・・・そう言われると歯痒いです、わら子ちゃん」

 

「うわぁ・・・椿の妖狐っぽさ、全開じゃん」

 

「まぁね。そのお陰で僕は、わら子ちゃんを不機嫌にさせちゃって、不幸のオンパレードを受けちゃったんだけど」

 

それは椿が悪いわな。まさか変な所で変な繋がりがあるなんて思ってなかったぞ、その話。

 

「では、約束通り通してくれますか?それとも、力押しで私達と戦いますか?」

 

そして、玄葉さんが残った才力に問いかけるけど、それ半分くらい脅し入ってますよね?

 

「ち、ちくしょう!こうなりゃヤケだぁ――」

 

「よし、交渉決裂だな!ジャンケングー!!」

 

「がふっ!!」

 

それでも相手は悩んでるフリをして不意打ちしようとしたので、仕方なく私も前に出たのと同時に一瞬で才力の全身に拳の乱打を浴びせ、天力が吹っ飛んでいった壁へと叩き込んでやった。

 

「やれやれ・・・ですが、ここからは今のように簡単ではないですからね。良いですか、お2人共?」

 

「はい・・・」

「うん、了解ですよっと」

 

さて、これで階段も上がれるようになったし、捕まってる先輩を助け出すまであと少しだ!

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