私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾話 勝ち目の薄い戦い

 

建物の中に引き摺り込まれた私達を見下ろしたまま、亜里砂・・・いや、華陽は嬉しそうな表情で壇上から降りてくる。

その衣装は呪われた家の時の中学生っぽかったファッションから一転、まるで中国の伝統衣装のような赤を基調とした装いとなっていた。

 

「あはは!椿ちゃんも綾ちゃんも、私がこんな所に居てビックリした?」

 

九尾の狐の1人である華陽が滅幻宗のトップにいるって事は、まさかコイツが今の滅幻宗を作り上げたという事なのだろうか?

でも、それなら何で妖怪を滅する事なんかやっているんだ・・・?

 

「くっ、華陽!お前の目的は一体――むぐっ!?」

「んんむっ!!むむぅ!!」

 

「「玄葉さん!わら子(ちゃん)!」」

 

すると、玄葉さんが華陽に言葉を発しようとした瞬間に、2人の影が動いて玄葉とわら子を拘束した。

 

「ちょっと黙っててよ。今、私は椿ちゃんと綾ちゃんに話しているの。それに、私の今の名前は亜里砂なのよ。だから、そっちで呼んでくれない?」

 

その悪気もへったくれもない華陽の笑みに、私達は一瞬身体を強ばらせてしまう。まるで、自分の思い通りにならない物は潰すと、そう言わんばかりの目だ。

 

それから華陽は、9本の尻尾を嬉しそうに振りながら、影からの拘束を解かれた私達の元へと歩いてくる。

 

「本当、久しぶりだね2人共。でも夏休みの間、何があったの?あの時と比べたら、どっちも少し目付きが違うね」

 

「僕にも色々ありましたからね」

 

「ああ、私だって日々成長するもんだよ」

 

この状況だと、私と椿しか華陽達と戦える人が居ない。湯口先輩も、幹部4人の後ろで木版に貼り付けられてしまっていて、心配そうな眼差しで私達を見てくる。

 

「あははは、2人共妖怪っぽくなってきたわね〜。今、どうやってこの状況から脱しようかって、そんな事考えてるでしょ?」

 

「は?」

 

「一言で言わせてもらうと、無理よ。貴方達はもう、私の手の内。どうにだって出来るんだから」

 

私が訝しげな顔を向けるより早く、華陽は指を鳴らして玄葉さんとわら子を拘束している影に妖気を送り込み始める。すると、影の拘束が徐々に力を増していき、2人の顔に苦痛が見てとれる程になっていく。

 

その瞬間、椿が叫んだ。

 

「止めて!!」

 

「だったら、妲己を出しなさい」

 

「うっ・・・」

 

しかし、華陽はギッとした眼差しで返し、私達はその強い威圧感と殺気に身体を硬直させてしまう。

 

なんなんだ、コイツは・・・さっきまでとは別人みたいに雰囲気がガラッと変わったぞ。あんなおちゃらけた様子だったのに、今じゃ視線だけで小動物を殺せそうな程だ。

 

「くすっ。ごめんごめん、ちょっと威嚇し過ぎたね。でも椿ちゃんの対応次第で、そこの2人の命も綾ちゃんの命も終わるんだよ。それだけは頭に置いといてね」

 

「かはっ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

「椿!亜里砂、テメェ――」

 

「綾ちゃん・・・威勢が良いのは好きだけど、今は黙っててよ」

 

「・・・っ!がはっ、げぇ・・・っ!」

 

それでも私は椿の前へ出て守ろうと華陽を睨み付けたが、向こうが放ってくる殺気に喉奥から吐き気まで上ってきてしまった。

 

そして、後ろの椿に至っては――

 

「あはっ!椿ちゃん、これだけの殺気を受けたの初めて?まさか、漏らしちゃうまでビビっちゃうなんてね〜」

 

「うぐっ・・・み、見ないで!」

 

そんな私達の醜態に、椿の方から妲己さんが怒鳴ってくる。

 

【――替わりなさいって、さっきから言ってるのに!ちょっと、聞いているの!?椿!!】

 

「椿、綾!!逃げろ!コイツらはヤバ・・・ぐはっ!?」

 

「お前は黙っていろ」

 

そして先輩も私達に心配の声をかけようとしてくれたけれど、玄空に腹を殴られて中断させられてしまう。

 

うぅ・・・私達の事より、今は自分の身体を心配してよ!

 

「かはっ・・・げほ、げほっ!ちくしょ・・・お前ら分かってんのか!奈田姫って奴は妖怪だったんだぞ!?」

 

「だからどうした?」

 

「――はっ?」

 

その衝撃的な玄空の発言に、私の頭の中にも先輩の放った言葉と同様の感情が浮かぶ。

 

妖怪を滅する集団が妖怪に良いように扱われている事を「だからどうした?」で済ませるなんて・・・コイツら、肉体どころか精神すらマトモじゃないぞ!

 

「か・・・亜里砂ちゃん。そこの4人、本当に人間なんですか?」

 

そう思った時、同じく今の言葉を異様だと感じた椿が、華陽へと1つの質問を投げかける。

すると、その質問を耳にした華陽は少し驚いたように目を開きつつも、ニヤリと口角を吊り上げてきた。

 

「へぇ・・・椿ちゃん、鋭いねぇ〜。でも、貴方はただ妲己と入れ替わる事に集ちゅ――っ!」

 

「答えてください」

 

華陽が一瞬言い淀んだのを見て、私は思わず椿の方を振り向く。そこには、椿が身体が怖気付いてしまいながらもキッ!とした眼差しで華陽を睨み付けている姿があった。

 

「あはぁ・・・椿ちゃん、良い目。だけど、足震えてるよ〜?・・・っていうか、とっとと妲己と替われ」

 

「あぅ・・・くっ・・・!」

 

「っ、椿!!」

 

それでも華陽の放つプレッシャーは椿を更に圧倒し、そこで私はハッとして椿と華陽の間に入る形で再び奴を睨み付けた。

 

「あ〜もう・・・ハエや蚊みたいにチョロチョロ鬱陶しいなぁ。綾ちゃん、私は貴方なんかに興味は無い。"親友"の頼みで生かしてるだけなんだから――あまり調子に乗るんじゃないよ」

 

「そんなもん、ハナっからどうだって良いんだよ!椿に手出してみろ、私がテメェを泣くまでブン殴ってやる!!」

 

「あぁ、綾ちゃんは本っ当そこが最高・・・だけど、最悪に大嫌いな所ね」

 

椿との会話を邪魔されたからか、華陽が私に向けてくるプレッシャーが一段と強くなる。

 

――内蔵の全てが気持ち悪い。

――少しでも吐き出して楽になってしまいたい。

 

そんな気持ちを全身の力で堪えながら、私は椿と共に華陽を睨み続ける。

 

近くに私達が頑張れる理由・・・そして私達を信頼してくれている皆の妖気が来ている。だから、少しでも敵の注意を此方に向けさせ続けないと!

 

「ふ〜ん、なるほどね・・・残念だけど、私も馬鹿じゃないのよ。貴方達、増援の到着を待っているわね」

 

「「なっ・・・」」

 

「何で分かったかって?そんなの、2人が勝ち目も無いのに睨み続けてくるからに決まっているじゃない。元から強気な綾ちゃんは兎も角、椿ちゃんまでそこまでしてくるなんて変だと思うわよ」

 

「くっ・・・」

「バレてやがったか・・・」

 

だが、相手が数枚も上手なのは私も椿も想定済みだ。だからこそ、私達は――

 

「残念ね。貴方達のせいで、そこの大切な2人――がぁ!?」

 

「ん?何か言ったか、華陽のバ・バ・ア?」

 

少しでも皆の為に時間を稼ぐだけだ。

 

私は会話の隙を突いて"神妖の力"を解放しながら麒麟甲で華陽をブン殴り、さっきまで座っていた雛壇らしい場所の方まで吹っ飛ばしてやった。

 

「椿、今の内に!」

 

「ありがとう、綾ちゃん!妖異顕現、影の操!」

 

そして、その瞬間に椿が影の妖術で玄葉さんとわら子を拘束していた影を解放して抱きとめる。

 

「はぁ、はぁ・・・すいません、椿様――って、危ない!!」

 

しかし、そう玄葉さんが叫んだと同時に何かが飛んできて椿達の近くで爆発した。飛んできた方向を見ると、玄空が怒りの形相で札を握りしめて此方を睨み付けている。

 

「ちっ・・・大人しく言う事を聞いていれば良いものを」

 

そこから玄空は更に札を投げつけて攻撃してくるが、玄葉さんが玄武の盾で椿とわら子を守ってくれた。

 

そして私は再び雛壇らしい場所の方を見ると、殴り飛ばされた華陽が閃空と峰空に助けられて身体を起こしていたよ。

 

「奈田姫〜大丈夫か?派手に吹き飛ばされてたよ?」

 

「うるさいわね、閃空。ちょっとビックリしただけよ」

 

一撃でダウンさせられなかったのは残念だけど、それでも不意打ちで立て直す時間を得られた!

勝ち目の薄い戦いだけど、これなら何とか・・・。

 

「あら?せっかく私の上げた服が・・・前の方、少し破れたわね・・・」

 

「別に良いわよ、峰空。それより栄空。他の2人、もう邪魔だから殺しちゃって」

 

「えぇ、分かりましたよ」

 

しかし、栄空はそう言ってから今まで私達が見た事のない程の笑みを浮かべながら、椿達の方へ歩いて来る。その様子は「やっと忌まわしい妖怪を殺せる」とでも言いたげな感じだ。

 

「この、手出しなんかさせ――ぐっ!?」

 

「うわっ・・・!!」

 

すぐに私達は2人を守ろうと動くけど、その瞬間に私達の足へ華陽の影がまとわりついて、雛壇の方へ引っ張られてしまう。

 

「椿ちゃんと綾ちゃんはこっちね〜」

 

「う、っぐ・・・妖異顕現、緊急祭繰龍!」

 

「くっ、この・・・妖異顕現、影の操!」

 

それでも何とか脱しようと、私は風の妖術を使って、椿が影の妖術を使って、2人同時に華陽を攻撃する。しかし――

 

「あはっ、やり合おうっての?でも、貴方達2人の武器には驚いたけど、妖術はどっちも全然ね!」

 

「なっ!?私の風も、椿の影も通用しないなんて!」

 

なんと、華陽は指を鳴らしただけで私達の発動した妖術を打ち消してしまい、再び私達は華陽の影に引き摺られてしまった。

 

「椿様!!綾様!!」

 

「玄葉さん、前!」

 

「あぁ、やっと・・・やっと殺せますねぇ!!」

 

「くっ!!この・・・!」

 

玄葉さんが私達を助けようとするけれど、満面の笑みで襲いかかってくる栄空の猛攻に身動きが取れない状況だ。

 

更に、私達の後ろからは他の3人も迫ってきていて、前にも後ろにも退けなくされてしまった。

 

皆が増援に来てくれるまであと少しのハズだけど・・・それまで、私達だけでコイツらの攻撃に耐え続けなきゃいけないのか。

 

くそ・・・ハッキリ言って、かなり不味いな。

 

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