私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
試験の内容は単純で、今私が居る廊下に並んでいる沢山の扉の中から次の試験担当の試験官が居る部屋を当てるというものだ。
確か天井のリアルな口のスピーカーは「妖気感知の試験」と言っていたような気がする。
となれば――私はとりあえず両手の人差し指をコメカミに当てて、一休さんのポクポク的なポーズをして妖気らしきものを探ってみる。
「・・・ぜ、全然分からない。何これ、どの部屋にも妖怪の反応ばっかりじゃん!」
頭を悩ませていると、ふと嫌な予感が頭によぎった。そういえば放送では「試験官が居る」と言っただけで他に妖怪が部屋に居るなんて事は一言も喋っていなかったのではないか。
そうなると今度は試験官の妖気がどういうものなのかが気になる話なのだが、生憎さっき椿と話していたせいで聞き逃したらしく――何も分からない状態なのだ。
「仕方ない。「三人寄れば文殊の知恵」とかいうし、ここは小次郎でも呼んでみるか〜・・・」
意識を集中して小次郎を心で呼んでみるも、姿を現す事もなく更にはうんともすんとも聞こえなかった。
「あの鳥野郎、こういう時には出てこないなんて本当に私の事を助ける気あるのかな〜!」
大きく肩を落としていると、ふと感じている妖気の中に1つだけ異様な状態になっている扉に気がつく。
その部屋からは妖気が全くといっていいほど出ておらず、まるで誰も居ないのではないかとすら思えるほど閑散としている。
「・・・まあ、下手に適当な扉を選んで襲われたら嫌だしね。ここはダメ元で開けてみますか!」
私は自身にそう言い聞かせ、スパーン!とその扉を勢い良く開いた。
するとそこには大きなパーティー会場のような部屋が広がっていて、椿の姿の他に――頭が蛇となっている執事服の妖怪が椅子に座っていた。
「なるほど、9分36秒ですか。これまた信じられないタイムですね」
「へ?椿が此処に居て、今タイムを計られたって事は・・・」
「おめでとうございます、綾様。貴方は第1の試験の突破となりました。椿様のクリアタイム8分42秒には届きませんでしたが、それでもこの試験においてトップクラスの成績ですよ」
蛇の執事から聞かされ、私はポカーンと一瞬呆けてしまう。そして我に返ると、言いようのない喜びが身体の底から湧き上がってくる。
「ぃ、いよっしゃぁぁああオラぁぁ!!」
「さっ、此方へどうぞ。他の方々は・・・そうですね、まだ時間がかかると思われますので。では、ごゆっくりと」
「・・・ごめんなさい、今の姿見なかった事にしてください。なんか自分でやっといて、すごく恥ずかしくなってきた」
膝をついて両手をかかげ、まるで映画のパッケージみたいなガッツポーズを決めてしまった事に後悔する。
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少し落ち着いた所で私が椿の隣に座ると、彼女が奇妙な中身をした菓子っぽい袋を見ながら話しかけてきた。
「やっぱり綾ちゃんはすごいね。僕なんか危なくない部屋からって感じで選んで、運良く合格出来ただけなのに」
「いやいや椿の方がよっぽどだって。私は使い魔呼んで手伝ってもらおうとして失敗しちゃったしさ〜。まあ時にはこういうのも大事かな、あはは」
「それでも僕は、綾ちゃんのそういう所を尊敬してるよ・・・」
そんな事を話していると、執事が私達を気遣ってか紅茶らしい飲み物を用意しつつ、菓子を薦めてくれる。
「あぁ、そちらの方。どうぞ召し上がってください。妖気感知の時に妖気を使われる方も居ますから、妖気を補充する為に用意させていただきました」
「へぇ〜。それじゃ、お言葉に甘えて・・・いただきまーす」
私と椿は菓子の中から、特に見た目が普通そうなトリュフチョコを取り出して食べた。
だが次の瞬間、なぜか口の中で一気にチョコが溶けだした事で口から溢れそうになってしまう。
「や、やはいやはい!なひほれ!?」
「あぁ、そうそう。その中には珍しい物も用意させてもらっています。「爆弾トリュフ」という物で、食べる時に注意しないと――そうなりますね」
「おほいです・・・」
蛇の執事が解説してくれるものの、私達はそのチョコをなんとか飲み込もうと必死で大変だった。
「んぐ、く・・・ぶはっ!っあ〜チョコで溺れる所だった!」
「んぐぐ・・・ぐぅ・・・んぐ。はぁ、はぁ・・・あ〜死ぬかと思った!」
「さっ、これをどうぞ」
口の中のチョコを飲み干した私達へ執事が紅茶っぽいものが入ったカップを手渡してくれた。だが正直、怖くて飲む気になれない。
すると今のアクシデントで飲まずに警戒する此方へ、執事が優しく微笑む。
「あぁ御安心を。そのお茶は特製の薬草で淹れた物ですから、食べ物とは違いますよ」
「あっ、そうなんですか。ご、ごめんなさい」
「こ、今度からはちゃんと言ってくださいよね」
いい加減、飲まないのも流石に失礼かと思い一口飲んでみる。お茶の味は紅茶に薬のような風味と若干の苦味が加えられたような、どこか不思議な味わいをしていた。
だが椿の口には合わなかったようで、少し苦味がキツそうな顔で呻いている。
「うぅ・・・」
「大丈夫、椿?無理して飲まなくても良いんだよ?」
「おや、お口に合いませんでしたか?」
「あっ、いや・・・ちょっとその、この飲み物は飲んだ事が無かったのでビックリしちゃっただけです」
椿が執事へ苦笑いを浮かべると、その胸中を冊子てなのか優しい顔のまま彼女へ問いかけてきた。
「そうですか。もしかして貴方は、地方から出てこられた方でしょうか?このお茶は割と都会では飲まれていますが、地方では未だ知らない方もいらっしゃいますからね」
「あっ・・・は、はい!そんな所です」
「ふ〜ん。それなりに人気なんだね、このお茶」
私はゴクゴクとノドごしの良さからお茶を飲み干すと、いきなりホールの扉が開け放たれて甲高い大きな声が響く。
「いっちばんのり〜!!」
すると執事がまた、驚きの眼差しをそちらへと向けた。どうやら、私達が来てから5分くらい経った現在のタイムでも早い方のようだ。
だが来た人物が私達の姿を見つけた瞬間、喜んでいた様子から一変して驚愕の表情をして叫んだ。
私も、その人物が先程廊下でぶつかってきた黒猫の少女である事に気づいて驚きの声をあげる。
そして椿はそんな私達よりも小さな声で挨拶する。
「なにゃ〜!?あ、あああアンタはぁ!!」
「お、お前!あの時の黒猫女かァ!!」
「あっ・・・ど、どうも」
「ふむ、13分54秒。これまた、お早い。美亜様、第1試験突破ですね」
執事が美亜と呼ばれた少女を褒めるも、私と彼女はそんな事以上にすぐこんな形で再会した事に驚いて動けなくなってしまっていた。