私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 悪化していく戦況

 

私と椿は悪化していく戦況の中、正面で舌なめずりをする華陽を変わらない眼差しで睨み続ける。

 

皆の増援が到着するまで耐えなければいけないけれど、敵の本来の目的は――

 

「さっ、椿ちゃん。妲己と替わってくれる?」

 

そう、椿の中に居る妲己さんなのだ。

 

華陽は自身の影で私達の足を掴んで、更には言う事を聞かなければ玄葉さんとわら子を殺すような目付きをしている。

 

奴が今までに話してきた内容から推測すると、どうやら華陽は殺生石や椿の中に居る妲己さんを利用して、元々1つの存在であった"白面金毛九尾の狐"として復活しようと目論んでいるようだ。

 

そうなると、椿の中から何かしらの方法で妲己さんの魂を奪い取るつもりなのは間違いない。

 

【華陽・・・!椿、アンタいい加減にしないと、強制的に替わるわよ!】

 

「やってみてください!」

 

【なっ・・・】

 

すると、先程から暴走気味だった妲己さんに椿が一喝する。

 

「妲己さん、此処に連れ込まれる前、僕達に何て言ったの?逃げろって言ったよね!?相手の目的が妲己さんだって事、僕も綾ちゃんも分かっているんだよ?それだったら、敵の思う通りの展開なんて、絶対にさせないよ!」

 

そう椿が強く言うと、彼女の強い"想い"を込めた気迫もあってか妲己さんは押し黙る。

 

かつて妲己さんと華陽に何があったかは分からないけれど、それでも今は椿の言う事の方が正しいと感じるよ。

 

「へぇ・・・言ってくれるわね〜。じゃあ椿ちゃん、これでも?」

 

しかし、華陽がそう言って指を鳴らした途端、ゴキリと鈍く嫌な音が後ろで聴こえてきた。

 

まさか・・・!

 

「えっ?あっ・・・うわぁぁあ!!」

 

「つ、椿!!」

 

なんと、華陽の影はいとも容易く椿の右脚をへし折ってしまっていたのだ!

 

椿を傷付けられた怒りが爆発した私は、すぐにでも華陽の顔面へ拳を叩き込もうとするが――

 

「テメ――がぁぁぁあ!!」

 

「あっ、そうそう。抵抗されると面倒だから、ついでに綾ちゃんのも折らせてもらうね〜」

 

一瞬で私の左脚が折られてしまい、その激痛から前のめりの形で床に倒れてしまう。だけど、それでも・・・それでも、1発はブン殴って――

 

「ふぅん、まだ戦る気あるんだ?それなら・・・はい、腕もいっちゃおっか」

 

「は?・・・う、ぐぅぅうう!!」

 

しかし、それをも見越していたのか、私は華陽の影に右腕も折られてしまい、片足片腕の骨折と激しい痛みによって、満足に手足が動かせない状態にされてしまっていた。

 

「椿!!綾!!」

 

「椿様!!綾様!!」

 

「そんな・・・椿ちゃん、綾ちゃん!私の幸運の気が作用しないなんて・・・どうなっているの!?」

 

その一瞬の凄惨な出来事に、湯口先輩や玄葉さん、そしてわら子も驚愕の声を上げる。

 

「あはは〜私がアンタの対策をしない訳が無いでしょう?コイツの力で、アンタの力を相殺しているんだからね〜」

 

すると、華陽は自身の後ろからヒョロヒョロとした毛むくじゃらの老人みたいな人物を引っ張り出してきた。

 

「嘘・・・?その貧相な姿・・・まさか、貧乏神!?」

 

「そうよ。あの廃村の御堂に封じられていたからね。アンタの力を利用して、封印を解かせてもらったのよ〜」

 

なんてこった・・・あの場所に、そんな奴が封じ込められていたなんて!

 

皆が到着する時間を稼ぐ為に、何とかして身体を動かしたいけど、あまりの痛さで這いずる事も出来ない・・・!

 

「さて、椿ちゃん。いい加減、妲己と替わってくれない?そうしないと、殺すよ?最悪でも貴方の死体から無理やり、中の妲己を引きずり出せば良いだけの話なんだし」

 

「でも・・・それをしないのは、ぐっ・・・そっちの方が、リスクがあるんでしょう?」

 

「あらら〜分かってたのね〜。それじゃあ、しょうがないわね〜もう1本足を――」

 

私が痛みで身動きの取れない中、そう華陽が言いかけた瞬間に、椿が左手を突き出して妖術を発動する素振りを見せる。

 

「させません!!妖異顕現、影の操!!」

 

「生意気ね〜。綾ちゃんみたく、痛くて転げ回っているかと思ったのに。でも無駄よ、その妖術は私の方が上手――」

 

「綾ちゃん!」

 

「あぁ・・・妖異顕現、緊急祭繰龍!!」

 

「ぎゃぅっ!?」

 

椿の意図を察した私は動かせる左手から竜巻を発生させ、彼女が妖術を発動するフリに気を取られた華陽の顔面へとぶつける。

 

しかし、その衝撃で私と椿は大きく吹っ飛ばされてしまい、私がクッションになる形で椿と共に床を転がった。

 

「いっ〜!!つぅぅ・・・はぁ、はぁ・・・あ、綾ちゃん、大丈夫?」

 

「ぐ、あ・・・ぜ、全然へーき・・・」

 

【椿、アンタ・・・言っとくけど、私も痛いのよね】

 

「「妲己さんのせい(だ・です)!」」

 

【そうよね、ごめんなさい】

 

「はえ?」

 

「な、なんだよ急に、その・・・うん」

 

しおらしくして素直に謝る妲己さんの声に、私と椿は困惑の表情を浮かべてしまう。

 

「あ〜もう!私の顔に何て事してくれるのよ・・・!」

 

【それと綾。言っておくけれど、華陽は顔を傷付けられるのが1番許せない奴だから。それこそ、逆鱗に触れると思っておきなさい】

 

「ちょ、遅いんですけど!?私、思いっきり顔面に竜巻ブチ込んだ後なんだけど!!」

 

「綾ちゃんのお陰で何とか術からは脱したけれど・・・妲己さん、わざと?ねぇ、わざとなんですか?」

 

【さぁね〜♪】

 

妲己さんめ・・・華陽が気に入らないからって、代わりに私を当て馬にしてくれたね?最悪だよ〜もう!

 

【さっ、そんな訳だから替わりなさい、椿。あの状態の華陽を相手にするなんて、今のアンタ達じゃ出来ないでしょ?】

 

うわぁ、絶対に確信犯だわコレ。

こうなる事知ってて何も言わなかったのはタチ悪いってレベルじゃね〜ぞ。

 

「あは、あはは・・・それじゃあ〜今度は椿ちゃんじゃなく、綾ちゃんの残った手足をいっぺんにいってみようか〜?」

 

ほれ見た事か!全身の毛を逆立たせて、目もオーラも完全にブチ切れモードじゃん!

っていうか、この流れだと私が狙われてる感じですよねぇ!?

 

【ほら、早くしないと。もっと痛い目に合うわよ?・・・主に綾がだけど】

 

「それでも!妲己さんとは替わらない!」

 

【くっ、意地っ張りね!どうなっても知らないわよ、椿!?】

 

「だぁ〜クソ!とにかく何とかして、この状況を突破するよ!」

 

とりあえず私達は近づいてくる華陽へ向き直り、向こうの出方を伺う。

作戦面に関しては椿と妲己さん頼りなので、手足を骨折している私は二重の意味で足手まといかもしれない・・・だけど、それでも何かは出来るハズだ!

 

「あはは・・・良いわね〜2人共、良い目をしてるわね。でも、また簡単に捕まっちゃうわよ〜――ほらぁ!」

 

華陽は自身の影を操り、再び私達を捕まえようと動かしてくる。

 

「綾ちゃん、今度は床に撃って!」

 

「OKだ!妖異顕現、緊急祭繰龍《昇》!!」

 

椿の合図に合わせて竜巻で空中へ飛んでそれを回避し、そこから椿が"神妖の力"を少し解放して壁を蹴って私を抱きかかえながら"ある方向"へと視線を向ける。

 

「さぁ・・・いい加減に反抗は止めるんだ、息子よ」

 

「がはっ!く、くそ・・・椿と綾を、2人を助けないといけないんだ。お前らなんか――ぐぅっ!!」

 

「あ〜あ〜、奈田姫・・・じゃない、亜里砂は危ないモードに入っちゃってるし、玄空は"父の愛"を靖君に与えてるし、栄空なんか御機嫌で向こうの2人を襲ってるし・・・何処に加勢しても邪魔だって酷い目に合わされそう。あぁ、暇だなぁ〜」

 

「だったら、敵が逃げないようにちゃんと見張っておきなさいよ。私は栄空の方を見ているんだから、亜里砂の方はアンタが見なさい、閃空」

 

「え〜?でも一方的だし・・・って、あれ?あの子達、何処行ったの?」

 

そう、私達が飛んだ方向は――先輩が捕まっている真上だ。

 

「そこまで暇だ暇だって言うんなら、私達が相手してやるよ!やっちゃえ、椿!!」

 

「任せて、綾ちゃん!天神招来、神風の禊!!」

 

「えっ――うわっ!!」

 

そして、椿が私を抱えたまま右手で浄化の風を放って閃空を吹っ飛ばす。更には玄空も同じく吹き飛ばそうとするけど、案の定というか耐え切られてしまったね。

 

「あれ〜?椿ちゃんも綾ちゃんも、浮気は駄目だよ〜?」

 

「はん!生憎、私は他人に気持ちが移ろい易いもんでな!」

 

「攻撃が来るよ、綾ちゃん!!」

 

無論、それを黙って見過ごす華陽ではなく、自身の影を大きく変化させて空中に居る私達へと影の手を伸ばしてくる。

 

だが、それでも私達の作戦に変更は無い。

 

「「術式吸収!」」

 

「えっ?嘘!私の妖術が!?」

 

おっし!椿と2人で分担したお陰か、何とか椿よりも強力な相手の妖術を吸収する事が出来たぞ。

 

「詳細入力・・・やっぱり、僕の"影の操"の上位版みたいなやつですね」

 

「よ〜しよし・・・こうして吸収しちゃえば、こっちのモンだ!」

 

そこから、吸収した妖術の詳細を解読して変容させていき、そして着地したと同時に私は椿と共に左手を突き出す。

 

「術式解放、強化出力!影の魔神《極》!!」

「術式解放、強化出力!影の巨砲《極》!!」

 

「へっ・・・嘘でしょう!?なんで・・・なんで操れないのよ!!」

 

私達が吸収して放った強化バージョンの影の妖術は華陽の力をものともしないまま、その部屋を埋め尽くす程に大きなエネルギーで進んでいく。

 

「あぁぁぁ!ちょっと、ふざけ――」

 

そして影が華陽を完全に呑み込んだ瞬間に、椿は影を変形させて丸いドーム状にして華陽を閉じ込めた。

 

「い、一時しのぎにしかならないかもしれないけれど・・・それでも十分上手くいったね、綾ちゃん」

 

「はぁ、はぁ・・・よし、後はあの4人だけだ・・・!」

 

ひとまず何とか華陽の上をいけたけれど、私達はだいぶ妖気を消費してしまったよ。

皆が到着するまでにあの4人を抑えて、華陽が復帰してくる前に先輩を助け出さないとね。

 

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