私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
湯口先輩が妖魔人にされてしまった事、そしてカナが椿を庇って死んでしまった事・・・全部、力の無い私なんかが自分から関わっていったから起こってしまった。
だったら・・・その罪は、自分自身の行動で祓い落とすしかない。
「うわぁぁぁあ!!!お前達が壊したんだぁ!!」
白金色の九尾となった椿が、全ての原因を作った華陽へと飛びかかっていく。
「ちょっと、殺したのはアンタの大切な――」
その華陽の言葉を聞いた瞬間、私の堕ちきった頭にも激しく怒りの血が上るのを感じた。
「お前が・・・お前がぁぁぁあ!!!」
「いきなり奈田姫に・・・いや、亜里砂様に攻撃をしてくるとは、この不届――ぐぉっ!?」
そして私も華陽へ飛びかかり、立ちはだかろうとする玄空を椿と共に拳一撃で吹っ飛ばす。
コイツだって、華陽に利用されている被害者かもしれない・・・だけど!だけど!!
「ちょっと・・・私の新しい子が、そんな簡単に吹き飛ぶもんじゃないわよ!尾槍破砕!!」
「はぁっ!!」
「だぁっ!!」
「なっ、嘘・・・私の妖術が気合い1つで消え・・・違う、これは妖気が!?」
華陽の放った妖術を打ち消した私は、怒り狂う椿と共に新たに自身の身体へ生えた尻尾を使って、底知れぬ程に湧いてくる妖気を込めた妖術を発動する。
「妖異顕現――白金(はっきん)の火炎槍(かえんそう)!!」
「妖異顕現――尾針誘弾(びしんゆうだん)!!」
「くっ・・・!」
その私達の妖術を、華陽は9本の尻尾に妖気を込めて防ごうとするが、椿の怒りが込められた燃え盛る尻尾の槍と、私の放った追跡する尻尾の一閃の前には、こんな防御なんてトイレットペーパーよりも簡単に突き破る事が出来てしまう。
「ぎゃぁぁああ!!!」
「「亜里砂様!」」
それでも、すぐに後ろから栄空と閃空が私達へと迫って来て、更には峰空も再び腹の口で私達の妖気を吸おうとしているようだ。
「うふふ、やってくれたわね〜。でも、どんな力でも私が――うっ・・・ちょっ、何これ。少し吸っただけで、もうお腹が!?」
しかし、私達から溢れる妖気の量には峰空の大きな口でも全くといっていい程に吸いきれないらしい。
「「雑魚は引っ込んでて!!」」
「くっ、うぅ・・・これでも私、妖怪1000体分の力は――あぐっ!?」
峰空を椿と同時に尻尾で吹っ飛ばし、今度は私達の前に顔が2つとなった栄空が立ちはだかってくる。
「ちぃ、厄介ですね」「そうですね、まさか2人共に強いとは」
「で、次は顔が2つの化け物ですか?」
「そっちには悪いけど、邪魔するなら・・・潰すよ」
「狐の方は優しさが抜けたか・・・」「それに人の子の方も、前以上の殺気・・・ですが、それがどうしました!」
そう言って、栄空は両手を合掌させて術を発動させてくる。
「「くらえ!!空速攻敷(くうそくぜしき)!!」」
「なんだ・・・仰々しい技名の割りには、上から何となく押さえつけられてる感じがするだけで、大した威力じゃないな――出でよ、麒麟甲」
「当て字もダサいし、2つ同時に喋るとか気色悪い!!来い、御剱!!」
「はっ?効いてな――この術は、押さえつけるだけじゃないのですよ!?内臓も全ても押さえつける威力だというのに!」「ま、待て・・・その前に、奴らの武器が!」
自身の予想とは全く違う展開になって慌てる栄空へ、武器を手の内に戻した私達は"神妖の力"をそれに込めて技を放つ。
「神刀、御剱――神斬乱れ切り!!」
「神甲、麒麟甲――雷神の乱打(イカズチのラッシュ)!!」
「「ぐわぁぁあ!!」」
向かってくる栄空をボコボコにした私達は、即座に振り返る。
「こ、のぉ!!調子に乗る――へぶっ!?」
「不意打ちしようたって、そんな妖気ダダ漏れだとバレバレだ」
そして、後ろから攻撃しようとしてきた閃空の身体に私と椿それぞれの尻尾を巻き付けて拘束した。
「がっ・・・ぐぅ・・・この、化け物がぁ・・・」
「どっちがですか?」
「私達には、そっちだって大概化け物だとおもうけど?」
「げふぅ!!」
私と椿で同時に閃空を頭から地面へ叩きつけて気絶させ、ようやく辿り着いた事態の元凶の華陽を強く睨みつける。
「ふふ、あははは!良いね〜椿ちゃんも綾ちゃんも。そ〜んなに妲己を取り返したい〜?この紅ひ――がっ!!」
「そんな事で怒ってんじゃねぇんだよ、私達は!!」
そう叫びながら私は尻尾を槍状に変化させ、無言で同じように鋭くした尻尾で攻撃した椿に続けて、ケタケタと笑う華陽の胸元へ突き刺す。
純粋で強い妖怪なら、この程度で死なない事は分かっている。だけど・・・カナは、半妖のカナは・・・!!
「くっ、新しく出来た子・・・そいつらを止めなさいよ!!」
「んっ?」
「あっ・・・」
華陽の言葉に私と椿が振り向くと、そこには妖魔人となって理性を失ってしまった先輩が、どういう訳なのか手を震えさせて険しい顔をしていた。
「くっ・・・う、な、何故・・・何故だ?殴れ、ない。殺、せない・・・」
どうやら、まだ先輩の自我が残っていて、私達を攻撃出来ないようだ。
「先輩・・・ごめん!」
「僕のせいだ・・・でも、今は邪魔です!」
「ぐぉ!!」
それでも、直接カナを殺したという事もあって、私達は怒りのまま先輩に尻尾を叩きつける。
しかし、その瞬間に私は胸の内に沸いた妙な罪悪感で、椿と同じように足を止めてしまった。
「う、ぐぅ・・・」
「うっ・・・」
「あはっ、大チャーンス」
それを隙ありと言わんばかりに華陽は尻尾を振るい、私達へ針のように硬化させた毛を飛ばしてくる。
「しまった、コレは――くぅ!!」
「うっ!!・・・ば、爆発するんでしたっけね」
「あははは!!それ、それそれそれ!!」
華陽が続けざまに爆発する毛針を飛ばしてくるが、今の私と椿には蜂に刺されたよりも全然痛くはない。
「いい加減、鬱陶しいんだよ・・・妖異顕現、鈍色の火尖槍(かせんそう)!!」
「綾ちゃんの言う通り、調子に乗りすぎです――妖異顕現、白金の浄焔獄(じょうえんごく)!!」
「えっ・・・きゃぁあ!?」
そして、"神妖の力"で強化された妖術で華陽を炎に包み、そのまま更に力を強めていく。
「あぁぁぁ・・・何これ、何これぇ!!ちょっと、私が・・・何で!!」
「キヒッ」
しかし、祟り神の笑い声が聞こえた瞬間に私達の放っていた炎が消えてしまう。
「――っ、炎が消えた!?」
「クソ、あの祟り神ですか・・・アイツも、アイツも僕の大切を・・・!!」
「キヒッ?キヒヒヒ・・・」
すぐさま私達は祟り神に攻撃しようと振り向くが、その瞬間に祟り神は姿を消して逃げてしまった。
「こんのぉぉお――なっ!?」
すると、その隙を狙って華陽が再び私達の背後から襲いかかってきた。
だが、それすら今の私と椿にはお見通しであり、即座に尻尾で華陽の攻撃をいなしつつ、今度こそ逃がさないよう力強く身体を締め上げる。
「いい加減に諦めろよ、華陽。私達の力の差、ここまでされて分からない訳無いだろ?」
「そして、今までの罪を悔いて僕達に消されてください!!」
「ぐぁっ!?また・・・あぁぁあ!!」
そして私と椿は華陽を締め上げたまま、再び浄化の炎を放って奴を灰にしようとするが――
「いっ!?」
「でっ!?」
突然、上から頭を殴られて私達は思わず誰がやったのかと振り返る。すると、そこには普段の酒臭さを漂わせながらも、どこか怒りを感じさせる表情の酒呑童子が立っていた。
椿がキッと酒呑童子を睨みつける。
「何してくれるんですか、酒呑童子さん・・・邪魔ばかりして」
「そりゃこっちの台詞だ、くそガキ共が。ったく、2人共"繋ぎ"吹っ飛ばして覚醒しやがって。それだけキレたのは分かるが、お前らのやってるそいつは妖気の無い奴にキツいんだよ」
「何を訳の分からない事を・・・」
その瞬間、私は酒呑童子が何を言っているのか何となく理解し、嫌な予感がして慌てて振り返る。
そこには皆が倒れ伏し、苦しそうに息を荒くしてしまっていたのだ。
「落ち着けクソガキ共!!皆があんな風になってんのは、テメェらの妖気のせいなんだよ!!」
「あ、あぁ・・・そ、そんな、嫌・・・嫌!!」
「うるさい・・・うるさい、うるさいうるさい!!」
嘘だ・・・私達が守ろうとしたせいで、逆に皆が傷ついてるなんて・・・!
「あはっ、ありがとう〜酒呑童子。持つべき者は、悪しき心のある友達よね〜」
「なっ!?」
「しまった!」
そんな私達の隙を突いて、華陽は尻尾を槍状に変化させ酒呑童子ごと貫こうと振りかぶってきた。
しかし――
「テメェもなぁ、もう黙れ」
「はっ・・・えっ?わ、私の槍を素手で、しかも片手で振り向かずに!?」
その酒呑童子の変貌ぶりに、華陽どころか私達も驚愕の表情を浮かべてしまった。
さっき玄空に簡単にやられていたのに、そいつを妖魔人にした華陽の攻撃を受け止められるなんて、一体どうなっているんだ?
酒呑童子の持っている瓢箪は普段の物よりも赤く大きく見え、"酒鬼"と書いてある。まさか・・・。
「正直、コイツは飲みたくなかったんだがな。数十分しか効果が持たねぇわ、その後の反動がキツいわだし・・・それで先手取られて、さっきはあんな簡単にやられちまった。すまねぇ、だがまぁ・・・ここまできたら仕方ねぇよな――ここから圧倒しちまってよぉ!ぬぅん!!」
「ぎゃわっ!?」
やはりというか、酒呑童子はアッサリと裏拳で華陽を吹っ飛ばす。そして、今の攻撃で身動きが取れなくなっている華陽を滅する為に椿が近づこうとする。
「おいこら!目を覚ませと言っているだろう、クソガキ!!」
「あぅ!?」
すぐさま酒呑童子が手を引いて止め、そのまま彼女にビンタを見舞った。
だが椿は足を踏んばって耐え、酒呑童子へ怒りの眼差しを向けていた。
「いっつ、酒呑童子さん・・・邪魔をするなら、貴方も消すよ!!」
「お〜やってみろや。だが、その前にアイツらが止めそうだがな」
酒呑童子がそう言ったと同時に、私達の後ろから狐2人の声が聴こえてきた。
『椿に綾よ!止まらぬか!』
『2人共、落ち着け!!』
しかし、既にカナを喪ってしまった私と椿にとっては、今更2人に止めろと言われても止まれない精神状況となっていたのだ。
「もう遅いんです!!落ち着けって言うなら、止まれって言うなら・・・カナちゃんを生き返らせてみせてよ!!守り神なんでしょう!?」
「ごめん、白狐さんに黒狐さん・・・私、私がもっとちゃんとしていれば!!もう、こんなの無理だよ!落ち着きたくても、耐えられない!!」
2人に八つ当たりしても何も変わらないのは私も椿も分かっている。しかし私達には、もう何も出来なかった自分に対する怒りや悲しみが止められなくなってしまって、こうでもしないと現実から逃げたような感覚に囚われてしまいそうだった。