私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――滅幻宗の逃亡から4日後、華陽側では
上手く"親友"である雫が逃げおおせたという報せを受けた私は妲己の後始末などを終えてから、予め各所に準備されていた滅幻宗の隠れ家の1つへ、その見た目は古い賃貸住宅の扉を開く。
「お邪魔するわよ〜・・・っと、何これ。酷い臭いね〜」
途端にハエがたかっていてもおかしくはないような腐臭が九尾の妖狐である私の敏感な鼻を刺激してきたので、袖を口元に当てて臭いに耐えながら奥の方へと進むと、キッチンと居間が一体になった部屋で雫と高度な陣の上に寝かされた"処刑人"の死体を見つけた。
「うっわ、帰って早々に何してるのよ?」
「あら、誰かと思えば・・・華陽じゃない。わざわざ心配して見に来てくれるなんて」
「下手に近所から騒がれても私は助けないからね〜?」
「それは分かっているわ。何せ、今の滅幻宗は幹部や優秀な子が妖魔人になったとはいえ不安定な状況だから、その間に使える駒を用意しておこうかと思ってね」
「なるほど、それで気絶していた処刑人を殺してまで、死霊を操る妖術にかけていたって訳。幾ら人間に寄生妖魔を植え付けた私でも、これは趣味が悪いわ〜」
「あら・・・そう?」
わざとらしく私は両手をブラブラさせて気持ち悪いといった顔で雫をからかってみるが、彼女は私の事など歯牙にもかけていないのか素っ気なく陣に妖気を込め続けている。
「それで、今後の行動方針についてなんだけど――」
「幹部の4人と例の子が安定し次第、妖怪センター側の戦力を削いで2人の記憶を奪取する、という話よね?」
「わお、もうそこまで知ってるなんて。これじゃあ、まるで私が単に遊びに来ただけみたいじゃない」
「ふふ、団体として動いているんですもの。利害が一致している内は、これくらい別に問題の無い事でしょう?」
「流石、分かってるわね〜。それも、情報屋として働いてきた故の経験かしら?」
私が冗談混じりに言うと、雫は如何にもといった営業スマイルでコックリと首を縦に頷かせた。
「そういえば、綾の方は無事?主にメンタル面の方で」
「正直、あれだと多分ぶっ壊れちゃったんじゃないかしらね〜。靖君を妖魔人に変えた上で椿ちゃんの親友を殺して、それを"全部貴方が悪い"と吹き込んだんですもの。2つは私が仕掛けた事だけど、あれはちょっとやり過ぎでドン引きモノよ〜」
「好きに言っていなさい、華陽。私に必要なのは"私の事だけを見てくれる綾"、それだけなの」
「歪んでるわね・・・何処かで聞いた言葉だけど、"愛ほど歪んだ呪いは無い"ってのを思い出すわ」
「そうね、私にとっては本当に"呪い"のようなものよ・・・」
それだけ雫に言い残してから、私は雫に軽く手を振って賃貸の家から外に出た。
「うふふふ・・・愛に狂った奴でも、信頼出来る所は信頼出来るものね〜」
――その翌朝、椿側にて
僕はカナちゃんの遺してくれた火車輪によって自分が変わらなくちゃいけない事を意識して立ち直り、皆から僕が普通に朝ごはんを食べている所をビックリされたりしました。
そして、今は窓からの光に目を細めながら綾ちゃんの居る隣の部屋の襖を開いています。
「綾ちゃん・・・」
「う、あぅ・・・ぇ・・・」
そう・・・綾ちゃんは僕達が帰って来てから、ずっとこんな感じで部屋に1人でボゥッとした顔のまま体育座りをして、開いたままの襖から空を見上げ続けているんです。
綾ちゃんのオジサンが言うには、綾ちゃんは"自分の生命力"を妖気に変換した反動と、そして"僕達が滅幻宗に酷い目に合わされた事は自分のせいだ"って思い詰めてしまったから・・・だそうです。
すぐにでも僕は綾ちゃんを元気づけてあげたいけれど、今は僕達の周りの状況が良くないらしく、おじいちゃんから聞いた話によると、妖怪センターも亰嗟に襲撃されて壊滅的な被害を受けてしまったのだとか。
どうやら、センター内部に敵のスパイが紛れていて、僕達が滅幻宗と戦っている時と同じ頃に次々と中を爆破されてしまったみたいです。
だから・・・いつも通りとはいかないけれど、僕は僕なりに皆の"想い"を背負って、出来る事を頑張らないといけない。
「行ってきます、綾ちゃん」
「ぅ、あぃ・・・」
まるで人形のようになってしまった綾ちゃん。
その姿に、僕は涙を堪えて部屋を後にする。
ごめんね、綾ちゃん・・・君の事は、今起こっている事態が少しでも落ち着いてから何とかするから。