私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私は椿の事を睨んでいる美亜を睨みながら、紅茶もどきのおかわりを貰って飲み干す。一番だと思って乗り込んできたら、そこに先客が居たというヌカ喜びしてしまった気持ちは分からないでもないが・・・それにしてはやたらと椿に対しての不満感が強い気がしてならない。
「ふん。たまたまマグレでこの部屋を当てたからって、いい気にならない事ね」
「・・・あ、うん。わ、分かってるよ」
「はっ、何がいい気になるなって?運だって実力のウチに入るっての」
すると私の態度が気に食わなかったのか、美亜がテーブルを強く叩いてきた。私としては正論を言ったつもりだったのだが、彼女にとって運は実力とは認めないようだった。
「あ〜もう!ムカつくわね!なによ、アンタらのその態度!」
「何だよ?って、椿?」
「へ?あ、ご、ごめんなさい・・・」
私が彼女へ食って掛かろうとすると、椿のトラウマに火が着いてしまったらしく只管に謝り始めてしまう。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「落ち着いて、落ち着いてね椿。おい、椿を怖がらせる真似するなよ」
そんな椿の様子を見てしまった美亜は、すぐにただ事では無いと悟り私達の近くへやって来た。
「あぁ・・・もう、何よ貴方。怒鳴られる事に何かトラウマでもあるの?私に勝った妖怪が、こんな情けないなんて。・・・だからムカつくのよ」
「えっと・・・ごめんなさい」
「ほら椿も、いちいちこんな事で謝る必要はないでしょ」
「はぁ・・・もう謝んなくていいわよ。それにその様子だと、あなた達の力ではここまでが限界のようね。特にそっちは人間の割にはよくやったと思うわ。まぁ、1つくらいは勝ちを譲ってあげるわよ」
そう言って美亜は優しく椿の頭を撫でた。私が何か良からぬ事でもしようとしてるのでは、と警戒して見ていると――美亜が椿の耳をサワサワと触った。
「ひゃぅ!あっ、待って・・・!そこは!」
「あら、なかなか良い毛並みと手触りね。そこだけは認めてあげるわ」
「出来れば、私にも触らせて欲しいんだけど」
「え〜、どうしようかしらね〜?」
しばらく美亜が触っているのを眺めていると、執事が彼女を止めに入ってしまった。
「美亜様、お戯れはその辺りで。相手の事も少しはお考えください」
「分かってるわよ」
「あっ、そのチョコは結構ヤバい・・・」
そして、私達が大変な目にあった「爆弾トリュフ」を手に取るとそれを口に放った。しかし、どうやったのかそれが口の中で爆発した様子が無く普通に話を続ける。
「ふん、良い物用意するわね。あなた、どこかの御屋敷に執事として働いてるでしょ?」
「執事"だった"です。屋敷という程ではありませんが、少し特殊な場所で。――しかし流石ですね。代々、優秀な猫の妖怪を生み出してきた良家のご令嬢だけはあります。感知能力がずば抜けてますからね」
「なんだって?そこまで有名な家系なの、美亜の家ってのは?」
「この2人に負けてるけどね」
美亜がため息をつく。そして執事が私達を見て、どこかわざとらしい感じで言葉を続けた。
「そうですね。この方々の感知能力は更にずば抜けていて、もはや異常ともいえますね。なにせ8分、9分台でクリアしていますから」
「8分に9分!?この試験の平均クリアタイムは20分よ。早くても15分、その半分の早さでクリアなんて。マグレにしても・・・」
「え?何、何だよ?こっちをそんなジロジロ見て」
私達の身体を品定めでもするかのようにジーッと見る美亜。
「2人とも、なにも特別な感じはしないわね〜。良いわ、どうせあなた達の快進撃もここまでだしね」
「そもそも、コレはまだ第1試験だっての・・・」
私の呟きを気にする事もなく、美亜は椅子に座って執事から渡された紅茶もどきを啜る。黒くお嬢様然とした服装や茶の飲み方からも、やはり先程聞いた良家の令嬢というだけあってどことなく気品を感じさせる。
「なに?そんなに眺めて。あなた達の前にもあるでしょ?」
「あっ!ご、ごめんなさい!」
「口の悪ささえ無けりゃ、普通に可愛いのにな」
「あぁもう!アンタは喋ってるだけで調子が狂うし、そっちはホントに謝ってばかりで情けないわね」
それからも他の妖怪を待つ間に、ちょくちょく美亜は椿の耳へちょっかいをかけていたのだった。
こういう時に便乗して、一緒に触ってみようという気が起こらない私は自分で不甲斐なく感じた。
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そして何故かボロボロになった妖怪達がゾロゾロと来る中、執事が懐中時計の時間を確認して声を張り上げた。
「規定時間30分を超えました!これにて、第1の試験終了です!」
すると入ってきたホールの扉に鍵がかけられ、そこから間に合わなかったのか激しく扉を叩く音が聞こえてくる。それを気にしないと言わんばかりに執事は話を続ける。
「さて・・・今着いたばかりの方の為にも、もう少し休憩を挟み、その後に第2の試験へと移りましょう」
それを皮切りに、この場に居る妖怪達は緊張の糸が切れたように次々と各々の雑談を始める。
「あら?もしかして貴方達、トップでこの試験を突破した2人?」
話しかけられる声に振り返ると、そこには首が変に曲がった舌の長い女性の妖怪がにこやかな笑みを浮かべていた。いきなり話しかけられた事と怖い妖怪の姿に椿が近くに居た私の後ろへと隠れる。
「うひゃぁ!!」
「うわっ!椿?」
「なにやってんの?あんたら」
それを見た美亜から呆れたような顔をされる。そして恐怖した椿の様子に女性の妖怪が心配して声をかけてきた。
「あ、あら?怖がっちゃったの?」
「あ〜・・・彼女、ちょっと怖い妖怪が苦手みたいでして。そちらが怖がらせるつもりが無かったのは分かってるんですけどね」
「あぅ、綾ちゃんありがとう。」
すると美亜も椿の事を気にしてか、励ますように言葉をかけてくれた。
「アンタもしかして、妖魔への恐怖があるの?そういうのって、妖魔と間違えて妖怪を怖がっちゃう場合もあるのよね」
「う、うん。実は小さい頃に、言葉を理解する妖魔に出くわしてから――」
その瞬間、ホール中の妖怪達がざわめいた。
『言葉を理解する妖魔!?』
「椿のバカ・・・」
白狐さんや黒狐さんから、あれほど「妖魔には言葉を理解するのは居ない」と言われてたのに、どうしてウッカリそんな話をしてしまったのだろうか。
あー・・・と呟きながら私は頭を抱えた。