私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

272 / 390
第弐話 信じる友達と一緒に

 

それから皆で私が頑張って作った晩御飯を食べ終え、台所で里子と食器の洗い物をしながら手分けして明日の朝ご飯の仕込みをしていると、そこへ椿の爺さんが神妙な表情で私を呼び出してきた。

 

最近は皆も落ち着いてきて、ようやく笑顔も戻ってきた頃になって一体どうしたんだろう?

 

そんな事を考えながら爺さんの部屋に到着した私は、コンコンと戸を叩いて返事を待ってから中に入る。

 

「失礼します・・・椿の爺さ――じゃなかった、翁。私に何の用事でしょうか?」

 

「そう畏まらんでも良い、綾よ。実は、此奴がお前さんに任務を頼みたいと言ってきての・・・」

 

椿の爺さんが困った表情でチラと自身の後ろに居る人物を引っ張り出すと、それは美亜の妹の1人である美瑠だった。

 

「「えっ、美瑠が!?」」

 

「――って、どわぁぁあ!?み、美亜も居たんかい!!」

 

「なっ・・・失礼ね、綾!私は最初から居たわよ!!」

 

「おっと、すまんな。今回の件は美亜にも関係があると思って、先に呼んでいた事を忘れていたわい」

 

「いや、そういうの1番最初に言ってくださいって・・・はぁ〜ビックリした」

 

てっきり私だけ呼ばれてるものだとばかり思ってたから、妖気の感知すらしないで入ったのが間違いだったわ。

美瑠はまだしも、美亜に関しては気配が全然感じられなかったぞ・・・流石は猫の妖怪というべきかな。

 

それにしても、まだ美弥子が目を覚まさない時に、何かヤバそうな事が起こったとかじゃなければ良いんだけど・・・。

 

「それで、美瑠は私と美亜に何を?」

 

「えっとね、綾お姉ちゃんに美亜お姉ちゃん。私ね、家の近くに住む猫さん達とお友達になったんだけれど・・・最近、猫さん達が"何か"に怯えてて外に出られなくなってるの」

 

その美瑠の言葉に、美亜は納得した顔で腕を組みながら頷く。

 

「なるほどね。つまり美瑠、その"何か"を私と綾で調べて何とかして欲しいって事かしら?」

 

「うん。でも気を付けて・・・猫さん達が怖いって言っている場所、何か呪いのような力を感じるの」

 

「うわ、マジでか。こりゃ呪いのエキスパートな美亜と、曲がりなりにも"浄化の力"を使える私じゃなきゃ対処出来なさそうだね」

 

「綾、そこまで褒めても私は何もあげないわよ?・・・というより、アンタ悪い物でも食べた?」

 

「なんでや!私は元からこんな感じでしょ〜が!」

 

いや本気ですよ!?

なんで美亜どころか、椿の爺さんも美瑠も皆して「本当にどうした?」って感じで首を傾げてくる訳?

 

「だ〜もう!!話は分かったから、さっさと調べに行くよ調べに!」

 

「はいは〜い♪アンタってば、本当に面白い奴よね〜」

 

クッソ〜!こうなったら任務をキリッと決めて"汚名挽回"だ・・・うん?いや、こういうのは"汚名返上"だったっけ?

 

◇◇◇

 

美瑠が地図で"この辺り"と教えてくれた、家の近くにある住宅街の狭い裏路地へと辿り着いた私と美亜は、すぐにそこから感じる異様な気配に眉をしかめる。

因みに、相変わらず私は儀礼衣装"怒髪天・朱雀"へ妖異変化をしたままだ。

 

「ちょっと・・・何よコレ。下水並みにドロドロした、混ざりあってる"呪い"の匂いがめっちゃするじゃない!」

 

「ぐぅぇえ、コレそれの匂いなのかよ・・・気持ち悪くて、今にも吐きそうだ・・・うっぶ」

 

「本当に吐くのは止めなさいよ、綾!?」

 

吐きそうになっている私の背中が美亜にドンドン叩かれていると、その裏路地の奥に異様な気配がみるみる内に収縮していく。

 

「クキュルルル・・・フシュー、フシュー・・・」

 

そして、異様な気配はゴッチャゴチャに混ぜ合わされた絵の具のような影へ変化し、三味線と昆虫が合体した見た目の姿を形作った。

 

「コイツ、まさか新手の妖魔か!?」

 

「そんな、嘘でしょう!?呪いの力を持っている妖魔なんて、今まで見た事無かったわよ!!」

 

「クソッ!これは一旦センターに――わぁお!?」

 

謎の妖魔の出現に一瞬たじろいだせいで、危うく弦みたいな糸の攻撃を食らいそうになっちゃったよ。

 

「クルル、クキュルル・・・」

 

「うわぁ・・・コンクリートの塀を豆腐みたくスッパリ切り裂くなんて、とんでもない切れ味してやがるな!」

 

「私達を見つけるなり攻撃してくるなんて、凶暴性も今までの奴以上にヤバそう――って、きゃあ!」

 

「フシュー!フシュー!」

 

「まだ人が話してる途中だろ〜が!妖異顕現、緊急祭繰龍【斬】!!」

 

「全くよ!あっぶない奴ね〜!コレでも食らいなさい!!」

 

三味線モドキの妖魔が弦を振り回している時に出来る隙を突いて、私と美亜はそれぞれ妖術や呪術で変化させた植物を使って、向こうの攻撃の間を縫うように連続で攻撃する。

 

「フシュー・・・クキュルルル!!」

 

しかし、動きを読まれにくい逆手で氷霰剱を振るいまくって次々と放った私の風の刃も、相手の隙を狙うのが上手い美亜の術で妖魔の四方八方から向かわせた植物も、ブーンブーンと低い音を立てて振り回される弦の一薙ぎで、いとも簡単に切り裂かれ打ち消されてしまった。

 

「マジか!アレ全部、一撃一撃妖気を結構込めた奴だぞ!」

 

「それに私の呪いで強化した植物も1発で消し飛ばしてくるなんて!アイツもまさか、呪いで改造された妖魔って事!?」

 

その妖魔の攻守一体と思える弦の凄まじさに、私も美亜も気圧されて後退りしてしまいそうになる。

 

だけど、こんな所で足踏みをしているようじゃあ、いつまで経っても私は誰かを守れやしない!

 

そう思った私は、すぐに自分を奮い立たせて三味線モドキがトドメと言わんばかりに振るってきた弦の束を右手で掴み取る。

 

「この・・・エセカブト虫、野郎がぁぁああ!!うぐぅぁぁあ!!」

 

「ちょっ、バカ綾!なんて事してんのよ!?」

 

弦を掴んだ手はズタズタに切り裂かれ、私の痛覚に酷い痛みで危険信号を伝えてくる。

 

「ギ、ギィィ・・・フシュー・・・!」

 

「往生、せいやぁぁあ!!」

 

それでも、私は怯む事なく弦を更に左手で掴んでグイ!と全身の力をありったけ込めて引っ張り、そのまま三味線モドキを空中へ投げ上げた。

 

そして、私は塀や家の屋根を蹴って飛び上がり、右脚に"怒りの感情"を変化させた妖気を集中させる。

 

「くたばれ!この三味線カブト虫野郎!!妖異顕現――稲妻雷霆蹴【飛翔】!!」

 

「ギ、ギィィァァァ・・・!!」

 

鳥の形で放たれた右脚を纏っていた雷が、三味線モドキの悪あがきで振り回す弦を焼き切り、正しく雷が墜ちるが如く一緒で消し炭となって裏路地に影の形だけを残して消え去った。

 

それを確認した私は、美亜の後ろに降り立って大きく一息する。

 

「はぁっ・・・はぁ、はぁ」

 

「あ〜もう、綾は相変わらず無茶ばかりするわね!アレで倒せなかったら、どうするつもりだったのよ!」

 

「そ、そういう時は・・・美亜に担いでもらって、逃げる感じだったかな・・・」

 

「本当に綾はバカね。アンタが死んだりしたら、私は椿にどう顔向けしたら良いってのよ・・・ほら、肩貸してあげるからシッカリしなさい」

 

そう言って美亜は、両手が傷だらけになった私の右腕を自分の肩にかけてくれた。

 

信じる友達と一緒に戦っている、そんな事すら忘れてしまうなんて。あの時から「誰も失いたくない」って、そんな"想い"だけで動いてしまった私はまだまだ未熟だ。

 

「・・・それと、ごめん」

 

「うん?何よ?」

 

「いや、何でもないよ・・・」

 

そして、ふと妖魔の巣食っていた裏路地に散乱する猫の手足を見つけた私は、どうにもならないと分かっていながらも謝罪の言葉を零す事しか出来なかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。