私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参話 そのサプライズは心臓に悪いって!

 

三味線モドキの妖魔を倒した夕方、私は美亜と共に椿の爺さんの部屋へ戻って来ていた。

 

「そうか、綾に美亜よ・・・恐らく、そいつは華陽の放った妖魔かもしれんな」

 

「えっ?それって、まさか・・・」

 

「綾の考えている通りじゃ。どうやら近頃、例の寄生する妖魔が動物や死体、果てには人間や妖怪に取り付いて暴れさせているようなのだ。しかも死体に取り付く奴は、恨みを持って死んだ者を選ぶ悪知恵を持っておるらしい」

 

「言われてみれば、確かに帰り道の途中で何度か妖魔っぽい妖気を感じたような気がします。なるほど・・・私が修行している間に、随分と面倒臭い事になってるんですね」

 

「冗談キツいわね・・・そんな奴、厄介極まりないじゃない」

 

そんなヤバい事になっている事実を聞いて私と美亜が項垂れそうになると、何故か途端に椿の爺さんはケロッと態度を明るく入れ替えて笑顔を向けてくる。

 

そして――

 

『ふっ、待たせたな椿よ!我が起きたからには、もう安心じゃ!』

 

『あの時は何の助けにもなれなかったが、俺も白狐もこの通りだ!』

 

「「ぶっふぉ〜!?」」

 

『『って、居ない!?』』

 

「それと、朗報じゃ2人共。実は綾と美亜が戻る直前、ようやく白狐と黒狐の奴らが目を覚ましたわい・・・って、何を2人して吹き出しとる」

 

椿の爺さん、この狐2人が登場するタイミング完全に間違えてますって!後、そのサプライズは心臓に悪いって!あ〜もう、凄くビックリしたわ・・・。

 

◇◇◇

 

それから少しして、椿の爺さんから事情を聞いた狐2人は何処か残念そうな顔をして、やる気無さげに胡座をかいていた。

 

『ぬ、ぬぅ・・・まさか、まだ帰って来てなかったとは』

 

『俺達とした事が、つい舞い上がってしまったな・・・』

 

ハイハイ悪かったですね・・・愛しの椿ちゃんじゃなくって。

 

「そこまで凹まんでも良いだろう、白狐と黒狐よ。それに綾も何を不機嫌そうにしとるんじゃ?」

 

「い〜え〜別に〜」

 

「見るからに、めっちゃくちゃ不機嫌そうじゃないの・・・ひょっとして、アンタも椿に会いたい訳?」

 

『『「当然(だ・じゃ)!!」』』

 

「きゃっ!3人で同時に反応しないでよ、もう!」

 

しまったしまった、ついつい狐2人と一緒になって不満な気持ちをブチ撒けちゃったよ。

今日は椿が修行から帰るって酒呑童子から連絡があったけど、美弥子だけ目を覚まさない状況なのもあって、いつ帰ってくるんだろうと私もドキドキしているんだ。

 

何せ、椿が出発する時に私はまだ塞ぎ込んでた訳だし・・・その事についても、色々謝らないと。

 

「綾姉さ〜ん!居るっすか〜!?」

 

そんな事を考えていると、突然スパーン!!と楓が私達の居る部屋の襖を開けてくる。そして、元気そうな狐2人を見るなり目を丸くしてビックリしていたよ。あの楓の様子だと、まだ椿の爺さんは全員に狐2人の事を知らせてたって訳じゃなさそうだね・・・いや、本当に何でサプライズなんてやってるんですか。

 

「それで、いきなり楓はどうしたのさ?」

 

「あ、えっと・・・大変なんです!さっき家の周りに、あの妖魔達が集まって来てて!」

 

『『「「「な、なんだって〜!?」」」』』

 

わ〜お、今度は狐2人どころか美亜と椿の爺さんとも5人同時でハモっちゃったわ。何か今日は、やけに誰かと一緒に反応しちゃう事が多いや。

 

・・・っと、それどころじゃなさそうかな今は。

 

「さて!とにかく椿が無事に帰って来れるよう、チャチャッと片付けてしまいますか!」

 

『うむ、綾の言う通りじゃな。椿との折角の再会を、あんな面倒な奴らに邪魔させる訳にはいかん』

 

『ここは俺と白狐・・・そして綾で、奴らの前線に出る!』

 

「それなら、私は後方支援って感じね。翁、それで良いかしら?」

 

「ああ、構わん。しかし、白狐と黒狐は復活したての身という事を忘れるな。全員、決して無理はせず自分の命を最優先に戦え」

 

『『「「了解!!」」』』

 

◇◇◇

 

――それから数分後。

 

私は狐2人と共に妖怪食で簡単な妖気補充を済ませてから、家の門の前へ立って道のあちこちから迫ってくる妖魔の群れを一瞥する。

 

『ひぃ、ふぅ、みぃ・・・クソ、どれだけの数で来ている!』

 

『我らが眠っている間に、華陽の奴も随分と勝手な事をしてくれたな。いけるか、綾?』

 

「OKだ、白狐さん!私の方は既に準備は整ってるよ!」

 

そう言った私に、狐2人は今頃というべきか不思議そうな顔で、私の今の儀礼衣装をまじまじと見てくる。

 

『それにしても、綾よ。お主、いつの間にそんな力を身に付けておったとはな』

 

『その儀礼衣装とやらから感じる力・・・"怒りの感情"を妖気に変えているのか』

 

「うん、その通りだよ黒狐さん。オジサンの猛特訓で得た"怒髪天・朱雀"の力、今から思う存分見せてあげる!」

 

そして、ゆくゆくは椿の好感度も狐2人を追い抜いて・・・ふっふっふ。

 

『綾、お前ヨダレが出ているぞ・・・』

 

『ひとまず余計な妄想はここまでにせい!来るぞ!』

 

「わ、分かってるって!」

 

狐2人に脳内で展開してた夢物語を中断させられてしまった私は、その怒りを八つ当たり的に妖魔達へぶつける為に、腰へ提げていた氷霰剱を逆手で持って地面に剣先を立てる。

 

「いくよ、雪・・・力を貸して!」

 

そして私が拳にした両手を突き出し妖気を込めるにつれて、それに共鳴するかの如く氷霰剱が冷気を発しながら私の腕に氷を纏わせてくるけど、勿論これは私の妖気が暴走している訳じゃない。

 

「ふぅぅ・・・細氷拳(さいひょうけん)!!」

 

私は拳の乱打を一瞬の内に放って迫り来る妖魔の群れ1体1体に命中させ、その全てを一撃でノックダウンさせた。

 

氷霰剱からの妖気を氷という固体に変化させ、それを冷気に急速変化させて後方へ噴射し拳の速さや威力を数段引き上げる――これが私の新たな技、ダイヤモンドダストの光を放つ"細氷拳"だ。

 

『ほぅ、詠唱を必要としない妖気の技とは・・・流石じゃな、綾!』

 

『ふっ、これは俺達も負けてはいられん!』

 

そう狐2人が自信満々な様子を見せていたら、2人の真後ろに妖魔が居るんだけど!?

 

「白狐さん!黒狐さん!」

 

『ぬっ――うぉっ!?』

『くっ――不意打ちとは、卑怯な!』

 

何とか2人は敵の攻撃を防げたみたいだ。

でも、どっちも復活したばかりで妖気が十分じゃないからか妖魔の力に押され気味になってしまってるよ!しかも、その2体も人間に寄生してて手が出しにくいタイプだし!

 

「すぐ手助けを――うわっ!?チクショー!コイツら大勢でワラワラワラワラって!!」

 

すぐに私も"浄化の力"で2人を何とか助けようとするけれど、私の方へ残った妖魔が殺到してきたせいでマトモに狐2人の所に向かえない!

 

クソ〜!コイツら、私が自分達にとっての天敵だって理解してやがる!

 

このままじゃ、白狐さんも黒狐さんも・・・!

 

「御剱!!浄化の刃!!」

 

『なんだ!?』

『おわっ!?』

 

すると、その瞬間――聞きなれた声と共に、狐2人の隙間を縫うようにして"浄化の力"で形作られた刃が、2人を襲ってきていた妖魔へと命中する。

 

「この力は・・・椿!!」

 

その声に思わず振り返った私は風の妖術を発動し、周囲に群がってきた妖魔を上空へと吹っ飛ばす。そして一瞬で"神妖の力"を込めた氷霰剱で上に飛ばした奴らを全て浄化し、椿の一撃で寄生していた人から剥がれた妖魔に向かう。

 

「グゥォォォオ!!」

 

「今度こそ、これで――御剱、浄化の刃!!」

「大人しく消え去れ!――麒麟甲、浄化の拳!!」

 

「ギャゥ!!」

 

タコやイカのような形に変化しようとした妖魔を浄化し終え、そのまま私は椿に抱きついた。

 

「おかえり、椿!!」

 

「わわっ!あ、綾ちゃん!?それに、白狐さん黒狐さん!」

 

椿は驚きながらも私を抱き返して、後ろから来た狐2人にも振り返って今までで1番かもしれない笑みを浮かべる。

 

『おぉ、椿!』

『椿!無事か!?暴走していないか!?』

 

「全くもう、2人はいきなりそっちの心配?椿は半年間修行して帰って来たんだから、この程度は問題無いに決まってるじゃん」

 

「本当だよ、白狐さんも黒狐さんも・・・僕が何をしていたと思っているんですか?それと――んっ!」

 

すると、椿は一旦私を抱き上げて器用にお姫様抱っこで降ろしてから、狐2人に両手を広げて待つような仕草をする。

 

これはまさか・・・2人にも抱きついて欲しいってアピールか!?

 

『お、おぉ。すまんな椿・・・』

 

『あぁ、悪かった。たっぷりと抱きしめて・・・』

 

止めとけ止めとけ!こういう時、あの2人が何をするか椿は身をもって分かってるハズだろ!

 

「てぃっ!」

 

『うぉう!?』

『おぅふ!?』

 

「あっ、綺麗な腹パン決まった」

 

狐2人は近づけば椿が抱きついてくると思っていたのもあってか、どちらも椿の拳を食らった腹を押さえて尻もちをついてしまっている。

 

『な、何をする椿よ!』

 

『ゲホッ、完全に油断したな・・・』

 

「何をする・・・はこっちですよ?僕を止める為に、命を投げ出すなんてバカですか!」

 

『ぬぅ、しかし・・・あの時は、そうするしかお主を――』

 

「だからって、命懸けは違います。それに綾ちゃんも!」

 

「えっ、私も!?」

 

椿の突然の方向転換に、私は目を丸くしてビックリしてしまう。な、何か不味い事やらかしたっけ・・・?

 

「あの時に雫さんから何を言われたのか知らないけれど、暴走するくらいの事を自分1人で抱え込まないでください!白狐さんと黒狐さんが起きなかったら、綾ちゃんが居なくなっちゃってたら、僕は・・・僕はまた、暴走していたからね!」

 

「うっ・・・ごめん、椿。私、あの時は何も自分の事を考えてなかった・・・」

 

『ぐっ・・・そ、そうか。それは悪かった』

 

『ぬっ・・・すまなかった、椿。我らの力不足で・・・』

 

そう私も狐2人も申し訳ない気持ちで項垂れていると、そのまま椿は目尻に涙を浮かべながらギュッと私達3人にまとめて抱きついてきた。

 

あぁ、この感触や匂い・・・私にとって1番落ち着くし、何より本当に久しぶりだ。あっ無理、私もう泣きそう・・・っていうか、もう涙がポロポロ出てきてるわ。

 

「白狐さん黒狐さん、おかえり。それと綾ちゃんも、ただいま」

 

「うん、おかえり椿!皆、待ってたよ・・・!」

 

『うむ、心配かけたな。そして、よく戻った・・・椿よ』

 

『あぁ、ただいま。そして・・・おかえりだな、椿』

 

狐2人の復活で少しややこしい感じにはなってしまったけれども、それでも私は椿と再会出来て嬉しい事に変わりは無い。

 

本当は椿から嫌われたんじゃないかと、全て私のせいだと思ってて敵意を向けてくるんじゃないかと、ずっと心の何処かで不安になってしまっていた。

 

でも・・・そんな事は全く無かったばかりか、椿は私の事も狐2人と同じくらい大切にしてくれていたんだ。

 

こんなの、泣かないようにって我慢する方が無理だよ。だから、ありがとう・・・椿。

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