私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆話 新たな力と2つの拳

 

復活したてな狐2人に頭を撫でられて、椿は更に深く抱きついている私の頭を撫でながら嬉しそうに尻尾を振る。この半年で椿は更に妖狐っぽいというか、女の子っぽい雰囲気が出てきていて、もし私が男だったら初めて見るだけでも惚れてしまいそうだ。

 

いや、もしくは・・・椿と初めて会った時から、私はとっくに彼女に惚れていたんだろう。

 

「うぅ・・・本当、久しぶりに会えて嬉しいよ椿〜」

 

『ふふ、綾は相変わらずだな。とはいえ我らもこの数ヶ月、寂しかったぞ』

 

『俺達が目を覚ましたのは、綾が美亜と任務に行っていた時だったからな。最初、椿が居なくて焦ったぞ』

 

「ん・・・そ、そうだったんですか。それに綾ちゃんも、もう任務を受けてたなんて・・・」

 

「まぁ、身内からの頼まれ事みたいな感じだったけどね」

 

椿が申し訳なさそうに私を見てくるので、私はニコリと上目遣いの笑みで大丈夫だとアピールする。でも、何故か椿は「ズキューン!」って感じで顔を真っ赤にしてアタフタしちゃったけど。私、そこまで愛嬌あったっけ?

 

『焦ったのはお主だけだろうがの、黒狐よ』

 

『ふん、何を言っている。焦っていたのはお前だろう。椿よ〜椿よ〜ってな!』

 

「あぁ、また始まっちゃった・・・折角僕、結構色々な所が成長した事を気付いて欲しかったのに・・・綾ちゃん、そんなに分からないものなのかな?」

 

「うん?まぁ、私から見て髪が伸びたり身体のアチコチが女の子っぽくなってて、より椿は綺麗になったと思うけどさ」

 

「な、何だか同じ女の子の綾ちゃんに言われると複雑な気分だよ・・・」

 

う〜ん?そういうモンですかね?女子のハートって、何か良く分からんよ。

 

椿は狐2人に女の子らしくなった所を気付いてもらえなくて残念がってるけれど、私なんて見てみろよ。半年前から何処も肉が増えずに筋肉だけ付いた、ガチなスポーツ選手体型になりつつあるんですぜ。コレ陸上競技とか普通に世界狙えるんじゃないのかな?

 

それは兎も角として、あの2人が喧嘩に発展したら面倒臭いし――

 

「とうっ!」

 

『ぐぉ!』

『ぐは!』

 

ひとまず2人の脳天にチョップを入れて一旦頭でも冷やしてください、マル。

 

『『綾!な、何をする!?』』

 

「おぅ、私に文句付ける前に先ず、愛しの椿ちゃんの事を忘れてるのを反省しなさいな〜」

 

「そうです!酷いです2人共!僕の変化に気付かずに、いつも通り喧嘩して・・・何か気付きませんか!」

 

プンスコと怒る椿。それを見て、黒狐さんは慌てて椿のフォローに入るけれど・・・。

 

『ま、待て!椿!分かった、分かっているぞ!ちょっと胸が大きく――ぐほぁ!』

 

「いきなり何処から見てんだ、この変態狐!!」

 

「黒狐さん、好感度マイナス30!」

 

うん、これには椿も私も顔面に鉄拳制裁入れますわ。そういう黒狐さんの所、男としてサイテー!

 

『というより、そんなに好感度が増えてたのか!?うぐぁあ〜しまった〜!』

 

「黒狐さんのバ〜カ・・・」

 

『ふん、全く黒狐は分かっとらんな。ほら、椿・・・コレだろう?』

 

「えっ?」

 

すると、そう言って白狐さんは朗らかな笑みを浮かべて、椿に真っ白な勾玉を手渡してきた。コレって確か、狐2人が眠っていた時に枕元へ置かれていた、椿が耳に付けていた物だ。

 

『我らの枕元に置いていきよって。そんなに我らに頼らないと、コレはそう決意しての事だったのだな。だが、もう修行は良いんじゃろう?ほら、またお主を守らせてくれ』

 

「あ、ありがとう・・・でも、うぅぅぅ・・・!」

 

白狐さんの言葉に椿は嬉しそうな顔をするけど、"そうじゃない"と言いたげに今度は頭から煙まで吹き出し始めちゃったぞ。

 

『ふっ・・・嬉しくて悶えとるとはな。髪も伸び、体つきも益々女らしくなりおって』

 

『確かに。俺達は気にしないが、そういう努力をしてくれるのも、また可愛いものだな』

 

「わお、どっちも既に気付いてたのか。良かったね〜椿」

 

あっ、椿がちょっと拗ねて頬を膨らませてる。何かハムスターみたいで可愛いな。

 

「くっ・・・最初から気付いていたなら、何で言ってくれなかったんですか?」

 

『当然だ。嫁の変化に気付かずして、旦那は務まらん』

 

『椿は最初から女の子らしかったからな。更に可愛くしてくるという行動にいじらしくなって、つい・・・な』

 

「小学生の男児か、2人は。全く・・・それなら気付いて1番で口に出した私だって、椿の旦那さんになれるっての」

 

すると、狐2人と私の言葉で椿は恥ずかしさの限界になったのか、とんでもないビックリワードが飛び出してくる。

 

「む〜!もう3人共キスしてあげない!」

 

『なぬ!?接吻だと!?何時だ、何時したんだ!!』

 

『両方にか!?どっちから先にしたんだ!!』

 

「っていうか、ひょっとして私にも!?待って待って!ちょっと本気で気になるんだけど!!」

 

嘘でしょ椿サン!?後ろ向いて照れ臭くしてないで、最初に誰へキスをしたのか教えてくれません事〜?

 

『椿よ!詳しく教えろ!』

 

「そーだそーだ!私だって、2人と同じくらい椿が好きなんだから!」

 

「い、嫌です!綾ちゃんも2人も、いつもいつも僕をからかって。僕だってからかってやる〜!」

 

『待て椿!そう言いながら逃げるな!』

 

ようやく見慣れた日常が戻ってきた〜と思いながら私は狐2人と一緒に椿を追いかけようとすると、何故だか私達の前に神職の服を着た男の子が立っていた。あの人は確か、さっき妖魔に寄生されてた人だったと思う。

 

「そうかそうか。この私を無視するとはな・・・」

 

「「へっ?」」

 

「そこに直れ〜!!」

 

「きゃぁぁあ!!」

「あばばばば!!」

『ぐわぁ!しまった!!』

『あぎゃぁぁあ!!』

 

な〜んて考えてたら、いきなり雷みたいな力をぶつけられて身体がビリビリするんだけど!?出会って数秒でコレとか、ナニモンですかこの人は!!

 

◇◇◇

 

――それから数分後

 

『申し訳ありません・・・椿との再会で、少し浮かれておりました』

 

今、私達は神職の格好をした人の前で正座させられています。そういえば、移動しながら戦っていたから気付かなかったけれど、此処って上賀茂神社じゃん・・・そうなると、私達に雷落としたり説教してきたこの人って、まさか!

 

『椿に綾よ、この方は・・・まぁ察しておるだろうが、この上賀茂神社の神様じゃ』

 

「賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)じゃ。宜しくな、椿と綾よ」

 

すると、その神様は私達にフレンドリーな様子でスッと握手の手を差し伸べてきた。私は握手をしながら、目の前の人物が神様であるという衝撃にポカーンとした顔になっちゃっていたよ。神社に祀られている神様なんて、多分初めて見たぞ。

 

「あっ、妖狐の椿と言います。宜しくお願いします、賀茂わきゃ・・・うぅ」

 

「せ、盛大に噛んだね椿・・・私は烏森 綾です。一応、霊能力者・・・って事で」

 

「はっはっ!賀茂(かも)で良い、2人共。実は私もな、自分の名前が言いづらくてしょうがないのだ」

 

私達の自己紹介に神様が大きく笑うと、白狐さんは神様へ少し困った表情を向けてくる。

 

『大神様。流石に神様なのですから、もう少し名前には拘りをお持ちになった方が・・・』

 

「白狐よ、私が良いと言っとるんじゃ。別に呼び名の1つや2つくらい気にせんで良いだろう。それに、この名は人が付けたもの。どう呼ばれようと、私は人々にとって"落雷等の雷による災害を守る存在"、それだけじゃ」

 

おぉ、あの白狐さんがめちゃくちゃ敬語で――って、そりゃ向こうは神様だから当たり前だよね。

黒狐さんに至っては少し緊張して喋れなくなっちゃってるみたいだし、向こうが楽に呼んで良いって言われても私達はキツいよ・・・。

 

「そうそう、先程は助かったぞ2人共。お主らの"浄化の力"のお陰で、私に寄生しようとする不埒な輩を、この身体から追い出す事に成功したからの」

 

「まさか、さっき椿の技が効かなかったように見えたのって、実際は賀茂・・・様が吸収して利用したから?」

 

「左様じゃ、綾よ」

 

その言葉の後、椿は途端に"ヤバい事をした"といった表情になって賀茂様へ頭を下げてくる。

 

「あっ、いえ・・・だけど、申し訳ありません。3人と早く話したくて、賀茂様の危険も考えずにあんな技を放ってしまいました」

 

「それ位よい。椿も綾も私とは初対面だし、そこの2人は説明をする時間も無かったんじゃろう?とはいえ白狐も黒狐も、いかにして私を傷付けずに私を妖魔から助け出そうと必死になりおって・・・お陰で後手にまわっとるではないか」

 

『『も、申し訳ありません』』

 

寛大だな〜賀茂様は。そして狐2人は土下座までしちゃって・・・いやまぁ、椿が居なかったら本気で危なかったみたいだし、ある意味じゃラッキーだったのかな。

 

――なんて思ってたら、何かヤバそうな妖気が近づいて来るのを感じるぞ。

 

「ちょっと待った、皆さん。どうやら更にお客さんが来るみたいですよ?」

 

「ううん、違うよ綾ちゃん・・・此処に現れる!」

 

椿がそう言った瞬間、私達の後ろから見上げる程に巨大な人型の黒い化け物が突然姿を現してきた。それにこの妖気、アレは間違いなく妖魔だ。

 

まるで黒い炎が人の形をとったようなそれは、目も口も無い上にユラユラと不気味な動きをしながら何かを探しているように彷徨い始める。

 

うわぁ・・・なんてデカさしてんだよ、アレ。

 

「なっ!こ、これは!?この辺りに溜まっていた"負の感情"が実体化し、妖怪と化したのか!?いや、それにしては妖気が・・・」

 

『不味い、これは妖魔になっとる!感情等とっくに失っていて、いつ暴れてもおかしくないぞ!』

 

賀茂様と狐2人が慌てた顔を浮かべているけど、妖気の質からして相手は単にデカいだけみたいだ。それなら――

 

「まだ何とか出来るね。椿、やるよ!」

 

「うん、綾ちゃん!・・・行くよ、カナちゃん」

 

椿が巾着袋からカナに託された火車輪を取り出し、それを腕に嵌めて妖気を込めながら妖魔へ向かって飛び上がる。

私も腰の氷霰剱を握りながら、その持ち手に妖気を込めて地を駆けて相手の懐へと飛び込んだ。

 

上空では椿の妖気に呼応した火車輪が円のような炎を彼女の腕に纏わせていき、それと対照的になるかの如く私の氷霰剱を持った拳も冷気と氷を纏っていく。

 

そして――

 

「はぁぁ!狐狼拳(ころうけん)!!」

 

「凍てつけ!細氷拳!!」

 

「グギャァァァッ!?」

 

火車輪の炎を利用した椿の拳と、氷霰剱の冷気を利用した私の拳。その新たな力と2つの拳による目にも止まらぬ一撃は、簡単に巨大な妖魔を吹っ飛ばしてノックアウトを決める。

 

『んなっ!?つ、椿よ・・・それは!』

 

『なるほど・・・火車輪を広げ、その炎を逆噴射してブースターとした訳か!奇しくも、綾の拳と似たような拳だ・・・』

 

「マジか、私ちょっと嬉しいな!」

 

「ふふ、白狐さんも黒狐さんも驚いていますね。そう、これが・・・この力こそが、カナちゃんが僕に遺してくれた力。そして、僕の新しい戦闘スタイルなんです!」

 

そう言った椿は着地して、少し照れ臭そうに私の方を振り返ってくる。

 

「でも、まさか綾ちゃんも同じような技が使えるなんて思っていなかったけれどね。その冷気の出ている剣、どうしたの?」

 

「へへ・・・コレは雪が"立ち直れ"って私にくれた励ましの武器なんだ。だから、これからは私と椿だけじゃなく、カナと雪の力も加わった4人の力だ!」

 

すると、その私の言葉に皆はニッコリと柔らかい笑顔を私に向けてきていたよ。

うん、ちょっと格好付けたかっただけです。だから、こうして皆に笑顔を向けられると、やっぱり恥ずかしいや。

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