私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第陸話 やっぱり皆、椿の事が

 

それから私達は狐2人が呼んだ雲操童に乗って、無事に椿の爺さん家へ帰って来る。

 

「お〜・・・おじいちゃんの家は、やっぱり変わっていないですね」

 

半年ぶりの帰宅となる椿は、何処か感慨深い表情で上空から家の方を眺めていたよ。

まぁ、そんな半年の間で家が半壊したりとか大きな出来事は起こっていなかったから、当然といえば当然だけどさ・・・せいぜい、妖術の特訓してた楓が大失敗して、私が寝てた物置き部屋を爆散させたくらいかな。

 

だけど、待ちきれないといった様子で椿が雲操童から降りて玄関へ駆けた途端、私は1つスッカリ忘れてしまっていた事を思い出す。

 

「ヤバッ!椿、危ない!!」

 

「へっ?――うわぁ!!」

 

「わぁ〜!椿お姉ちゃ〜ん!」

 

「ああ、やっぱりだ・・・」

 

はい、椿は禍々しい蔦に捕まって宙ぶらりんになっちゃいました。

 

コレは美亜の仕掛けた妖魔用トラップだったんだけど、元々は家に妖魔を入れないようにって私が提案した奴だから、実質私と美亜の共同作みたいなトラップなんだよね・・・椿には黙っとこうっと、後が怖いし。

 

「帰って来たのね、綾。それと・・・あら椿、久しぶり」

 

とか何とか考えてたら、美亜が玄関から少し面白そうな顔で出てきたぞ。でも耳や尻尾の反応からすると、椿が帰って来て嬉しいみたいだね。

 

「ちょっと、美亜ちゃん?久しぶりの再会なのに、なんかアッサリし過ぎて・・・いやでも、普段からこんな感じでしたっけ」

 

「えっ、その顔は何よ?ニヤニヤしちゃって!」

 

「あっ、ごめんなさい。美亜ちゃんがいつも通りだったから、つい嬉しくて。でも、そろそろ降ろしてくださ〜い!」

 

しまった。あまりに2人がホンワカしながら話してたから、椿が捕まったままなの忘れそうになっちゃってたわ。

一応、椿の格好は修行してた時のままなのかショートパンツ姿だったんで、例のラッキースケベ的な事にはならなくて済んだけど・・・美亜、な〜んか企んでる顔してないか?

 

「ふ〜ん。椿、アンタ私の事を"いつも通り"って言ったわね。どうしても降ろして欲しいんなら、綾みたいに『降ろしてください美亜様。一生下僕になりますから』って言ったら、降ろしてあげるわ」

 

「ちょっ、それは美亜ちゃん黒くないですか!?というか、綾ちゃんも綾ちゃんで何してんの!」

 

「ぶっ!?み、美亜!椿に言うなって〜!!」

 

「あ〜ら、ごめんなさい綾。あんまり貴方が面白そうにしていたから、ついちょっかいかけたくなってね」

 

ひでぇよ美亜!サラッと私まで巻き込んできやがった!・・・それに椿も、私に何とも言えない軽蔑の眼差しは止めてください。ちょっと小遣い足りなくて、どうしても欲しかった付録付き雑誌の金を土下座して借りただけなんです。

 

「離してくれないなら・・・よっ!」

 

「へっ!?ちょ、嘘!そんな簡単に――って、椿アンタ!力加減しなさいよ!」

 

「い、家の屋根までぶった切れてるぅ・・・」

 

賀茂様は何と言うことをしてくれたのでしょう。一振りだけでコレとか、私の麒麟甲もおちおち加減しながら殴らないとヤバい事になりそうだわ。

 

「ま、まぁ・・・きっちり修行してきたって訳ね」

 

そして美亜はガクガクしながら強がるなっての・・・と、そんな事を考えていたら皆が慌てて玄関から出てきちゃったよ。

 

「何じゃ何じゃ!敵襲か!?亰嗟の奴らか!?」

 

椿は申し訳なさそうにしながらも家の壁に手をかざすと、みるみる内に壊れた屋根の一部が元に戻っていく。そして、なんと何事も無かったかのように綺麗な形へ元通りとなったのだ。どうやら、コレも椿が新しく会得した妖術みたいだね。

 

「なっ、屋根が直ったじゃと!?――って、そこに居るのは椿か?」

 

椿の爺さん、こんな驚く事が連発して心臓大丈夫かな。それは兎も角、椿は家の屋根を直し終えると外へ出てきた皆にペコと頭を下げる。

 

「ふぅ・・・あっ、皆ただいま!」

 

すると、皆は一瞬ポカーンと驚いたまま固まって、それから椿をジッと見てからワッと一斉に笑顔になっていく。

 

「「「「おかえり!椿ちゃん!」」」」

 

「良くこんな短期間で帰って来たな!もっとかかると思っていたぞ!」

 

「でも、少し女の子らしくなってるよ〜」

 

「それにさっきの妖術。確実に強くなっているな」

 

そして、皆して思い思いの言葉をかけまくっているけど、椿はてんやわんやな表情で目を回しちゃってて聞こえてないっぽいぞ〜。

 

すると、そこへ更に――

 

「椿!」

「椿姉さ〜ん!」

「椿ちゃ〜ん!」

 

「ぐえっ!?」

 

雪と楓、里子の3人が愛情溢れる突進で抱きついてきたもんだから、その重さで椿がクルンとひっくり返っちゃったよ!というか一回転してたわ、一回転!

 

「ちょっと、3人共・・・」

 

「違うよ、椿ちゃん。私も入れて4人だよ〜」

 

「え?あっ、わら子ちゃん!」

 

かと思ったら、わら子も椿の背中に後ろから抱きついて、耳や尻尾をワシャワシャしてたり・・・やっぱり皆、椿の事が大好きなんだね。

私が皆を元気付けようと家の中で色々な家事を頑張ってた時に比べても、一瞬で皆に満面の笑顔を戻らせた椿の好かれっぷりは凄いや。

 

そんな事を考えていると、椿は雪の方を見てハッと何かに気付いたような顔をした。

 

「雪ちゃん、髪の毛が・・・」

 

「ん?あぁ、私も決めたの。半妖だからって、いつまでも逃げたりしない。一生懸命、ありのままの姿で生きようとした私の親友みたいに、私もありのままの自分で生きるって。それにちゃんと、修行もした」

 

その雪の言葉に私も頷いていると、何故だか雪が私の隣へススス・・・と寄ってきた。

 

「そういう事。だから雪は髪を黒く染めるのを止めて伸ばすようにしたんだって――んぅっ!?」

 

え、えっ?なんかいきなり雪にキスされたんですけれど?本当に突然だったから、またポニテを弄られるんじゃないかと思ってた私は、その不意打ち過ぎる雪の行動にポカーンとしてしまう。

 

「ぷぁ・・・」

 

「はっ、くぅ・・・ゆ、雪?いきなり、何でキスを・・・?」

 

「半年間、私も寂しかったのに椿が綾にベッタリだったから、つい」

 

いやいや、いやいやいやいや?"つい"でキスする程、雪は私の事好きだったの・・・?

 

「私は女の子が好きだし、綾の事は椿よりも好きだもん。だから、これからは私も椿の恋のライバル。負けないから」

 

私、てっきり雪は椿の方が好きなんだとばっかり思ってたよ。ほら、今のを見せつけられた椿だってポカーンとしちゃってるし。

 

「え、えぇ?ぼ、僕と綾ちゃんはそんな関係じゃないって。そうだよね、綾ちゃん?」

 

「お、うん・・・私と椿は恋人未満というか、えと・・・その、親友!親友だから!」

 

「「サラッと危ない雰囲気になりそうだったけど?」」

 

それは気のせいです〜!私は椿に狐2人並みの"嫁にしてやる"ムーブはしてませんから〜!

だから、椿も雪も妙に圧のある笑顔で私を見ないでくれ〜!

 

「ズルいっす〜!自分も姉さん達にキスするっす〜!!」

 

「わぁ!?楓ちゃんは落ち着いて!」

「だぁぁ!!これ以上はキスされてたまるか!」

 

そこに更に楓まで飛びかかってきて、もうワチャワチャのてんてこ舞いに・・・な、何とか雪が楓と揉みくちゃになってる所で、椿と抜け出せたから良かったけど。

 

「へぇ〜綾お姉ちゃんって、旦那さんが沢山な椿お姉ちゃんみたいに、お嫁さん沢山いるんだ〜」

 

「ふぁい!?あの、えーっと・・・?椿、菜々子ちゃんが何か誤解してません?」

 

「ふふ〜ん、何の事でしょうか?僕も、綾ちゃんの所で特におかしいとは思いませんよ〜」

 

アカン、椿も変な誤解してらっしゃるかも。

 

しかも、菜々子ちゃんの勘違いを訂正しないくらいに、私が雪や楓に好かれてるのを嫉妬してらっしゃいません事?

そ、そんな有り得ませんよね〜・・・だって、椿は私の事を1番の親友として理解してくれてるハズですよ?

 

「ところで・・・椿姉さん、あれ誰っすか?」

 

「へっ、菜々子ちゃんの事?あの子は、酒呑童子さんの隠れ家の近所に住んでいる、山姥さんの子供です。酒呑童子さんが"戦力補強の為に"って山姥さんを誘ったんだけれど、無理やり着いて来ちゃったみたいです」

 

そう言って椿は大きくため息をついていたけど、さっきの酔っ払った2人を見た私からしたら、正直あの子が居なかったら色々駄目だったと思うぞ。

 

すると、菜々子は楓を見てペコリと頭を下げてきた。

 

「宜しくね!楓お姉ちゃん!」

 

「おね・・・えちゃん?い、今、何て言ったっすか?」

 

「ん?楓お姉ちゃんだけど?だって、私よりお姉ちゃんなんでしょ?」

 

その言葉に楓は身体を震わせる。まさか、今ので怒ったりとか――

 

「ね、姉さん達。この子、とっても良い子っすね」

 

してませんでした。というか、むしろ嬉しそう!

とりあえず、菜々子と楓の2人が仲良く出来そうで良かった良かった。

 

そう思っていると、椿の爺さんが大きく咳払いをしてくる。

 

「オホン!あ〜、再会の喜びは食卓でも良かろう。その前に、椿よ。先程の妖術、一部の者はお前さんが此処に来る前に使っていたのを見たと言うらしいが・・・もしや、記憶が?」

 

「おじいちゃん、ごめんなさい。記憶は、まだ戻っていません。ただ、僕はたまたま便利だったから使ってしまっただけなんです。修行のし過ぎで服が破けた時に、何とか直せないかってやぶれかぶれで」

 

椿は申し訳なさそうに頭を下げていたけど、確かに昔から彼女の事を知っていた人からすれば"ちょっとは記憶が戻ったかも?"って思っても仕方ないよね。私にも、そういう"昔は使っていた"系の妖術があったりするのかな?

 

「なんじゃ、そうか。てっきり、記憶が戻ったものかと・・・いや、良い。続きは昼飯でも食いながら、じゃな。里子に綾よ、飯の準備じゃ!」

 

「あっ、はい!今すぐに〜」

 

「は〜い、おじいちゃん!さっ、行こ!椿ちゃん!」

 

そうして里子に続いて昼飯の用意をしようと皆で一緒に玄関へ入ったけど、ふと後ろを見たら、いつの間にやら椿に"隷属の首輪"が着けられてて里子に引っ張られてたよ・・・おぅふ、マジでか。

 

でも、さっきの私への誤解騒ぎの事もあるし、ここはお相子で助けないからね〜だ。

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