私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第捌話 カナの遺した"想い"

 

その日、昼飯を食べ終えた私と椿は"ある場所"へと出かける。本当なら、もっと早く行きたい所だったんだけど・・・彼女にとっては1番大切な椿が帰って来るのを待っていたから、結構遅くなってしまったね。

 

伏見区の寺にあるカナの墓の前で、私と椿は何も言う事なく墓石を見つめる。

 

私も椿も、どうしてもカナの死を受け入れられず葬式に顔を出す事もしなかったけど・・・色々と落ち着いてきた今となって、ようやく彼女が戻って来ない事を受け入れられた。

 

それでも椿の話によると、カナの魂の一部は椿が受け継いだ妖具に――彼女の遺品でもある火車輪にあるのだと言う。

立ち直る前、カナの形をした炎から励まされた私は、そんな椿の話を疑ったりなんかしなかった。

 

『椿に綾よ、本当に大丈夫なのか?』

 

因みに、何故か狐2人も私達に着いて来ていた。

あれだけ椿が"大丈夫"と言っていたのに、この2人は相変わらずというか椿に対して心配性のままだ。

 

「大丈夫だよ、白狐さん。あっ、供えられてるお花が・・・変えてあげないと」

 

「萎れてはいるけど、まだ枯れてないみたいだね。つい最近に、クラスの誰かが供えてくれたのかな」

 

「そっか、今は春休みだもんね。それにあの子、明るくてクラスでも結構人気になっていたし・・・よっこらせ、っと」

 

そんな会話をしながら、私と椿はカナの墓を綺麗にしていく。それにしても私も椿も妖気の感知能力が高いので、ひょっとしたらカナの霊がヒョッコと出てくるかと思っていたけど・・・今は、その気配も何も感じられない。

 

「ん〜・・・」

「はぁ・・・」

 

つい1人唸っている椿と一緒になって、私もため息をついてしまう。

 

こんな事になってしまうと知っていたなら、私達はちゃんと彼女の気持ちに向き合ってあげてから別れをしたかった。

 

『椿、手伝うぞ。綾も、無理はするな』

 

「あっ、大丈夫です。僕達2人にやらせてください」

 

「それに、これくらい私と椿でも何とかなるよ」

 

そうして気持ちを整理しながら、墓の手入れを続けていると――

 

「うひっ!?」

 

『ん?いきなり可愛い声を出して、どうした椿よ』

 

「白狐さん・・・まさか、椿の尻尾を!」

 

『いや、触っとらんぞ綾!?そりゃ、可愛くフリフリと振っておるから触りたくて仕方がないが・・・それでも我慢しとるぞ』

 

う〜ん?黒狐さんは椿の隣に居るから、ずっと私が目を付けてるし・・・まさか、霊になったカナがコッソリ――

 

「いっ!?にぅ!!ねぇ、誰か私のポニーテール引っ張った!?」

 

『い、いや・・・』

 

『綾の後ろには誰も居らんが・・・』

 

「こ、今度は綾ちゃんも?もしかして、カナちゃんに遊ばれてるのかな・・・?火車輪もちょっと熱いし」

 

「カナ〜!いい加減にしてくれよ〜・・・せっかく来たのに、これじゃ墓の手入れが進まないぞ!」

 

『綾、少し静かにした方が良いぞ?墓参りだろう?』

 

ぐぬぬ、こんな所で黒狐さんから注意されちゃうなんて。それにしても、カナは私達に"悲しまないで"って言いたいのか?励まし方がカナらしいというか、なんというか・・・。

 

そんな事を考えていると、ふと私達の後ろから女性の声が聞こえてくる。

 

「あら?貴方達は・・・」

 

流石に騒ぎ過ぎたと思って、謝る為に私と椿が振り返ると、そこには意外な人が居た。

 

「えっ・・・?」

「カナちゃんの、お母さん・・・?」

 

カナに良く似た顔立ちで、その半分程にある火傷の跡を長い髪で隠している女性。見覚えのある姿に、私と椿はそれぞれ目を丸くする。

 

「確か、あの子の親友の・・・椿ちゃんと綾ちゃん、でしたっけ?」

 

「あっ、はい」

「そう、です・・・」

 

この人が以前に、実の娘であるカナへ酷い事をしたのを思い出した私達は一瞬身構えそうになる。

 

だけど、カナの母親は以前までの憎しみや刺々しい雰囲気を私達に向ける事なく、少し苦笑いしてから墓の近くのゴミを拾い始めた。

 

それから少しして墓の手入れが終わると、カナの母親はぼうっとした様子でカナの墓を見渡している。

 

「綺麗にしてくれたのね。ありがとう、あの子も喜ぶわ」

 

「あっ、いえ・・・」

「そんな、別に・・・」

 

「あの時は、ごめんなさい・・・って、今更言っても遅いわよね。それに、貴方達にもキツくあたってしまったわ」

 

そう言って頭を深く下げてくるカナの母親に、私も椿も困惑の表情を浮かべてしまう。

 

「あ、えと・・・大丈夫です。そちらにも、事情があったんですよね?」

 

「あら?椿ちゃん、貴方・・・雰囲気が。そう、やっぱり妖狐は違うのね。私や綾ちゃんのような人間とは、感性が違うのかしら」

 

「そうじゃないです、一緒ですよ。僕がちょっと、無理しているだけです」

 

それでも、椿は60年以上生きている妖狐だと、そう自分に言い聞かせているような様子で対応していたよ。だけど下手に意地を張ったせいか、カナの母親に変な勘違いをされそうだったぞ。

 

全く、こういう時は相手も敵意を見せていないんだから普通にしていれば良いのに・・・。

 

「そう・・・そうなのよね。一緒なのよね・・・例え人間じゃなくても・・・あの子は私が心から信頼し、愛した人の子供。お腹を痛めて産んだ子。何も、変わらないのよ」

 

すると、カナの母親は物思いに耽るようにポツリ、ポツリと1人話し始めた。そして私達も、それに何も言う事なく黙って耳を傾ける。

 

「あの子が死んだと学校の校長から聞いて、真っ先に湧いたのは・・・悲しみだったわ。やっと、憎い妖怪が死んだ・・・と、清々すると思ったのに、そうじゃなかったわ。私の本心は・・・子を失い、とても悲しいと、そう言っていたのよ。あの子の小さい頃の姿が、脳裏に浮かんで・・・その時の、幸せな時間を思い出しちゃって・・・」

 

カナの母親は線香を取り出し、私と椿に半分ずつ手渡してからマッチで静かに火を点ける。

ふと、カナの母親は私と椿の顔を見てハッとした様子を見せた。

 

「貴方達・・・その目、既に前に進むと決めているわね。それにあの子の死が・・・あの子の"想い"が、貴方達の糧になってくれている。見たら分かるわ。私は、それだけ分かれば十分よ。だから、私からは何も言いません。許して欲しいとも、思っていないわ。だからーー」

 

「カナちゃんは、僕と一緒に居るよ。今もね・・・」

 

そう言って、椿は自身の腕に着けた火車輪をカナの母親に見せる。すると、その椿の声に応えるように火車輪はカナの遺した"想い"として小さな火を発した。

 

「そこに・・・香苗が?」

 

「うん。カナちゃんは死ぬ瞬間、最後の力を振り絞って、この火車輪に魂の一部を移したんだ。しかも、僕を守る為にって自分の力全てを、ここに込めて。だから・・・カナちゃんはここに居るよ」

 

「あっ・・」

 

そして私と椿の肩近くに暖かい感覚が現れて、振り向けばそこには、揺らめく炎と共に透けた身体のカナの姿があった。

ニッコリとした笑みから、カナの母親の為に出てきてくれた事は分かるけど・・・やっぱりというか、それぞれの手で椿の尻尾と私のポニーテールを握っていたよ。

 

「香苗・・・っ!ごめんなさい・・・ごめんなさい、私は・・・」

 

『良いよ、お母さん。謝らないで、私は幸せだったから。だから、ありがとう』

 

「えっ・・・?」

 

『私を産んでくれて、ありがとう』

 

「あっ・・・あぁ、香苗・・・貴方。馬鹿ね、私が謝らなきゃいけないのに。ううっ・・・」

 

そっとカナの母親は椿の腕にある火車輪に触れ、そして謝罪の言葉を呟きながら大粒の涙を零していた。

 

私と椿も霊体のカナへ話しかけようとしたけど、カナは照れ笑いしながら母親の頭を優しく撫でてからフッとロウソクの火を吹き消すように消えてしまった。

 

そんな、少しでも話をしたかったのに――って、んん?何か墓の台座の所に文字が・・・?

 

【槻本 香奈恵】

 

「って、おぉぉぉい!?椿の子供に生まれ変わる気なのかい!」

 

「カ〜ナ〜ちゃ〜ん・・・次の名前にして欲しいのは分かるけれど、漢字違うだけでそのまんまじゃないですか!」

 

「えっ?あらあら、あの子ったら・・・」

 

『ふっ、なるほど・・・それは良いな』

 

『問題は、白狐か俺の子。どっちになる気だ?』

 

「「もう結婚する気満々だし!」」

 

お、おのれカナめ・・・椿の子供になるって事は、つまり寿命の長い妖狐になって長く一緒に居るつもりか。

 

まぁ、お陰様で椿が狐2人のどっちかと結婚しなきゃいけない事を思い出せたから良かったけど・・・いや、全然良くないわ。

 

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