私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
その翌朝――ブルッとくる寒気で目を覚ますと、私は狐2人から布団を奪われて1人、何も被さってない敷布団の上で寝ていたよ。
因みに布団を奪った狐2人は、ミノムシよろしく隣にある椿の布団と合わせて、3人でくるまって暖かそうに寝ています。
すると、椿がそのミノムシった布団の山の下から出てきて、ため息をつきながら自身の腰をさすっている。
「くっ、白狐さん黒狐さんの馬鹿野郎・・・」
『すまぬ・・・久々だったものだから、つい堪能してしまった』
『全く、白狐は加減を知らない奴だな』
『それはお主の方だろう!黒狐!』
「両方ともじゃい!私の布団勝手に取りやがって〜!!」
朝から早々に狐2人へツッコミを入れているのを見て、何故か椿はホンワカした様子になっていたけど、それが気になるよりも早く今度はスパーン!と部屋の襖が開かれた。
「おはようございます、姉さん達!朝からお盛んっすね〜!」
「椿お姉ちゃん、流石だね〜。それで、もう結婚式って上げてるの?まだなら菜々子、椿お姉ちゃんのお手伝いしたい!」
でも、その2人のぶっ飛び発言で椿はちょっと癪に触ったのか、次の言葉を言うより早く影の妖術で2人の口を押さえちゃってます。
「んんん〜!!ぷはっ!椿姉さん、酷いっすよ〜」
「ぷはっ、え・・・ふぇ?あれ?楓お姉ちゃん、すっご〜い!」
「って、嘘ぉ!?楓、いつの間に妖術が使えるようになったんだ?」
「ふっふ〜ん、妖術"鏡映し"っすよ綾姉さん。椿姉さんの妖気と妖術をそっくりそのまま写し取って、それを跳ね返す事で相殺したっす!」
そう言って楓は無い胸を張る。
なるほど、楓も修行して少しずつ成長してきているんだな〜・・・なんか私、お姉ちゃん的な感情が湧いてきて感動の涙が出そうだぞ。
椿は別な所を別な感じで見てる気がするけど。
「椿姉さんも綾姉さんも、どこ見てるっすか?」
「何でもないよ、楓ちゃん。それより、妖術を使ったって事は・・・」
「はい。自分はどんなに頑張っても妖怪なんだって、やっと受け入れたっす」
その椿の言葉に、楓は若干寂しそうにしながらもシッカリとした決意の眼差しを私達に向けている。
だけど、ここで私は楓が先程の妖術返しの反動で、強い妖気によって彼女自身の衣服が全部吹っ飛んでしまっている事に気付いたよ。
「楓お姉ちゃん・・・服」
「えっ?菜々子ちゃん――って、ぎゃぁぁあっす!!」
うん、椿が言いたかった事は何となく分かったわ。楓も顔を真っ赤にして自分の部屋に猛ダッシュしていっちゃったし、何か締まらないなぁ。
◇◇◇
それから私達は朝ご飯もとい昼飯を食べに大広間へ来たけれど、昨日から4つ子の人と椿の義姉である夏美さんはまだ帰って来ていないみたいだ。
ふと椿が、わら子に質問する。
「わら子ちゃん、龍花さん達は?」
「ん?任務だよ〜」
「ほーん、それなら数日したら帰って来そうだね。そうなると、後は夏美さんの方だけど――」
「ただいま〜」
そう私が言おうとした途端、丁度良く玄関から声がしてトタトタと足音を鳴らしながら、大広間へ夏美さん本人が帰って来た。夏美さんも此処へ来てから色々と落ち着いたのか、以前のようなギャルっぽい格好になっている事に、私も椿も思わず気の抜けた笑みを浮かべてしまったよ。
「お帰り、夏美お姉ちゃん。何処に行ってたの?」
「椿!アンタ・・・帰って来ていたのなら、SNSかメールくらい寄越しなさいよね!ついさっき、おじいちゃんから連絡が来たからビックリしたじゃないの!」
「あっ・・・色々やろうとしていたから、その事をスッカリ忘れていました。ごめんなさい」
椿がペコと頭を下げると、夏美さんは少しため息をついてから「大丈夫だから」と椿に軽いハンドジェスチャーをする。
「全く・・・私は、杉野さんの所に行っていたのよ。あの人が病院に通ってる時に、リハビリが夜通しになったりもするから、その後に色々とね・・・ふふ」
「あ、はい・・・そうですか」
まぁ、その様子だと杉野さんも一大事にはならなくて良かったみたいだ。犬吠崎さんも軽傷で少し通院していると聞いてたから、とりあえずは夏美さんに零課2人のリハビリを任せてても大丈夫そうだね。
――と、何故か椿が隣で困った顔をしてる。
「・・・はぁ」
「うん?いきなり頭抱えて、どうしたの椿?」
「いや、何でもないよ。それよりもお姉ちゃん・・・半年も経ったのに、杉野さんはまだ回復しないんですか?」
「それがね、椿。杉野さん、半年前のセンターが襲撃された時の怪我で、左脚が上手く動かせなくなっちゃってるのよ。普通なら、もう二度と動かせないってレベルね」
「「えっ・・・」」
「だけど、それでもアンタ達の下僕を務めるんだって、必死にリハビリしているのよ。だから私はそれを手伝っているんだけど、全く・・・あの頑張り様を見せられると、何だか妬けちゃうわ」
なるほど、それなら春休みが明ける前に1回は顔を見せに行った方が良いかもね。
そんな話を夏美さんとしながら、皆で朝ご飯を食べていると、今度は椿の爺さんが私達へ話しかけてきた。
「そうじゃ、椿に綾よ。任務へ就いとる4つ子の様子を見に行ってはくれんか?」
「へ?別に大丈夫ですけど・・・」
「あの人達が、どうかしたんですか?」
「いや、それがの・・・あの4つ子にしては、珍しく1週間もかかっとるんじゃ。じゃから、少し不安になっての。何せ奴らがセンターで受注した依頼は、難易度Sが付く程のものじゃからな」
「4人で一緒に行ってるのに、それは少し時間がかかってますね。確かに心配かな・・・」
「でも、おじいちゃん。あの4人は結構強いですから、僕達が行っても邪魔に――はっ!?」
「えっ?つば――うわっとぉ!?」
話の途中で椿が飛び上がって避け、その瞬間に酒呑童子の気配を後ろに感じたと同時に胸を触られそうになり、私も咄嗟に後方へ回し蹴りを出す。
すると、その私の蹴りは酒呑童子の左手でアッサリと受け止められる。
「酒呑童子さん、修行は続行なん――きゃぅっ!?」
「当然だろう。はい、アウトだ〜」
そして、飛び上がった椿もスコーン!という音と共に頭へ納豆を被りながら落ちてしまっていた。
「な、なんだなんだ突然!?」
そう私が言うよりも早く、今の様子を見た狐2人はブチ切れて、すぐさま酒呑童子の胸ぐらを掴んで持ち上げていたよ。
でも、さっき椿が修行が何とかって言ってたような・・・?
『酒呑童子!貴様・・・椿に何を!』
『椿に攻撃しやがって、何様のつもりだ!』
「あぁ?修行って聞こえなかったかぁ?これも修行なんだよ、お2人さん。何時、如何なる時でも油断しないようにってなぁ。それを何だぁ、お前らは。そぉ〜んなに、可愛い嫁が大事か?甘やかしてぇのか?それで椿と綾は、何を喪ったんだぁ?」
『ぬぅ・・・』
『しかし、俺達が・・・』
「守れてないから、酒呑はそう言っているのさ。皆の為に頑張ろうとする綾と比べて、椿の事も考えずに嫁だの何だのと・・・そういう君らの態度が、1番カンに障るんだよ」
そこへ何処からともなく現れた伊吹の言葉で、とうとう狐2人は何も言えなくなって黙り込んでしまった。
すると、そこへ椿が割って入り、酒呑童子の前に立って両手を広げた。
「4人共、喧嘩しないでください。2人や綾ちゃんに説明していなかったから、僕が悪いんです」
「説明したろうが、修行をしていたってよ。それで勝手に・・・ちっ、まぁ良い。とにかく椿も綾も、これからは気を緩めるなよ」
「ふぅん・・・酒呑だけじゃなく、僕も君達2人の事を見るようにするからね。様々な状況に対応出来るよう、身構えておく事だよ」
椿の真っ直ぐな眼差しに、酒呑童子も伊吹も少し納得しないながらも珍しく引き下がっていた。
ひょっとしたら、この鬼2人は真正面からグイと物を言ってくるタイプに弱いのかな?
そんな事を考えている後ろで、椿は狐2人に話しかけている。
「白狐さんも黒狐さんも、ありがとう。僕を心配してくれて。だけど、これは僕が望んだ事だし、まだまだ修行をしないといけないみたいだから、僕は頑張るよ。でもね・・・こういう時ってさ、良い旦那さんだったら否定するんじゃなくて、温かく見守ると思うけど?」
『ぬぅ、分かった・・・お主が望んだ事なら、何も言わん』
『そうだな。しかし、自分から強くなろうとするとは・・・成長したな、椿よ』
『そうだな・・・色々とな』
「おぅ、何処見て言ってんだ2人共」
目線が完全に椿のささやかな胸の方だったぞ。全く、この2人は本当に相変わらずなんだから・・・。
「あのさ・・・どうせなら綾ちゃんだけじゃなくて、白狐さん黒狐さんも一緒に修行する?精神修行とかさ。僕は朝ごはんが終わってから、いつもやっているんだ。一緒にやろうよ」
「ん、私は全然構わないよ。少しでも皆の力になりたいし」
だけど、そう言って首を縦に振る私の横で狐2人は何処か難しい顔をしている。
『ぬっ?いや、我々には・・・』
「ね?そうしないとーー潰すよ?」
『『やらせて頂きます』』
でも、それを見越してなのか椿は影の妖術を発動していて、既に狐2人の股下に影の手をワキワキさせていました。
「椿、あんた・・・もう白狐と黒狐を尻に敷いて・・・」
「美亜ちゃん、尻に敷いてはいません。僕は2人に、ちょっと注意と提案をしただけです」
うん。私から見ても、やる事がえげつないです・・・椿、恐妻家にならなきゃ良いけど。
「はっはっはっ!これは良い嫁になる。椿、大丈夫だ。お前さんは強くなっておる。ぜひ綾と共に、4つ子の援護に向かって来れんか?きっと、あいつ等も喜ぶだろう」
そして、椿の爺さんの言葉に私はウンと大きく腕を伸ばして立ち上がった。
「OK、爺さん!私達に任せてよ!」
「あっ、分かりました――って、綾ちゃんはいつの間に、おじいちゃんとそこまで呼び合えるようになってたの?」
「まぁ、家事を色々と手伝っていましたんで・・・たはは」
とはいっても、料理や家の掃除とか洗濯くらいなんだけどね。それでも皆からは結構感謝されているみたいだし、私も少しずつ自信を取り戻してきたんだよ。
そんな話は兎も角、龍花さん達とも早く再会したいし、助けになれるなら全力で援護に向かわないとね。