私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第玖話 第2の試験で椿が最大限目立った件について

 

「あんた、その妖魔に会った事あるの!?」

 

「あ、あの・・・その時の記憶はないんだけど、その単語だけは覚えていて。多分僕が他の妖怪を怖がっちゃうのはそれかなって思ってて・・・えと、言っちゃいけない事だった?」

 

「椿、散々白狐さんと黒狐さんが言ってた事覚えてたの・・・?」

 

椅子から振り返って身を乗り出す美亜。しかし椿がキョトンとしながら答えを返すと、記憶がないと言った事で周囲の妖怪達は興味を失ったのか離れていった。

 

そんな中で、美亜がどこか感心したように椿を見る。

 

「あんた、よく生きてたわね。そいつと会った奴は殺されているか、精神を壊されたりしているからね」

 

「そんなにヤバいのか、妖魔ってのは」

 

「まぁ、それとこれとは話が別よ。今度は完膚なきまでに叩きのめして、あんた達2人に実力の差を――って、あんた大丈夫?」

 

「あっ、うん。だ、大丈夫」

 

いつの間にか、また頭を押さえていた椿へ宣戦布告しかけた美亜が心配する。今の話をした事で、また過去の記憶について何か思い出しかけているのだろうか。

 

「さて、それでは皆様。これより第2の試験を開始します」

 

そんな事を考えていたら、執事が皆へ次なる試験の開始を宣言する。緊張して耳まで立てて身体を固くしてしまう椿に、隣で私も緊張で震えつつ背中を撫でてあげていると――正面に座る美亜が此方をバカにした様子で煽ってくる。

 

「あら、これくらいで緊張するとか・・・やっぱり最初のはマグレのようね。そんなんじゃ、第3の試験なんて突破出来ないわね。まぁ第2の試験すら無理でしょうけど」

 

だが、私はそうやって自信ありげにふんぞり返る美亜の薄い胸を見て――妙に親近感を覚えた。

やはり彼女も私と同様に胸のサイズが小さい事を気にしたりしているんだろうか。

 

「何か言いたそうね?」

 

「さあ?そっちの気のせいじゃないの?」

 

「な、なんでもないです」

 

椿が慌てて目を逸らす。それを怪しんだ美亜が彼女をジッと見ていると、執事が先を急ぐかのように話を続けた。

 

「さて・・・これだけ大量の妖怪を私1人で見ないといけませんので手っ取り早くいきましょう。次の試験は1人ずつとなります。そして、その順番は此処に到着した者順です」

 

「マジでか・・・流石に緊張でやばくなってきたぞ」

 

「えっ・・・という事は、ぼ・・・僕が一番最初!?」

 

顔を引き攣らせる私の横で、椿が執事に案内されてホール中央へと歩いていく。ぎこちない動きの彼女を見て、美亜が薄く笑った。私は椿が美亜のプレッシャーに負けないように声をかける。

 

「ほら、早く行きなさいよ。見ててあげるわ、あなたの脆弱っぷりをね。クスクス」

 

「はぁ・・・とりあえず椿、頑張れ〜!」

 

そして椿が執事の前へ立つと、彼が試験の内容について説明を始めた。

 

「さて、第2の試験は単純で妖気の強さを見せてもらいます。何でも構いません、妖術を使い私に攻撃をしてください。チャンスは1回なので、よく考えてくださいね」

 

椿に対する試験が始まり、彼女が悩んだ様子で立ち尽くしていると執事が怪訝な顔をする。

 

「どうしました?申し訳ないですが、他の妖怪達もいますので、攻撃用の妖術を用意されていないのであれば、残念ですが――」

 

「あっ、待って!待ってください!ありますから!」

 

私はなんとなく嫌な予感がした。

 

まさか、以前学校で黒い姿になっていた時に使った「アレ」を使う気ではないだろうか。その危険性を察し、私は少し後ろへ下がって出来るだけ攻撃の余波を受けないようにする。

 

そして、椿が手を狐の形にし――

 

「妖異顕現――黒焔狐火!!」

 

 

瞬間、私の目の前には漆黒の火炎が広がった。

 

それは明らかにあの時に見たものよりも大きな形で執事へと向かっていく。黒い炎が執事を飲み込んで見えなくなり、慌てた椿が叫んだ。

 

「あっ!へ、蛇さん!蛇さん、大丈夫ですか!?」

 

だが徐々に黒い炎が小さくなっていき、執事が姿を現すと彼の腕に巻かれた蛇がそれを丸呑みして消し去ってしまった。

 

「ふむ、驚きました。感知能力だけでなく、妖術もこれ程のものを放つとは・・・いやはや、正直面食らってしまいました。妖気も申し分ないですね――しかし容姿が変わる程の妖気とは、恐れ入りますね」

 

「へっ?容姿が!?」

 

「おや、もしかして妖気を使うのは初めてですか?先程の妖術も威力が制御出来ていませんでしたしね」

 

執事の言葉に私が椿の方を見ると、あの時とは色の濃さが違うものの彼女の髪から尻尾までが黒く変化していた。

 

「ほほう、なるほど。そうなると、先が楽しみですね。さて、椿様。一旦先程の席へお戻りください。お次は綾様、此方へどうぞ。」

 

そうして椿が席に戻る傍ら、彼女の放った妖術の凄さに圧倒されアングリと完全に口を開けて固まってしまった妖怪達を他所に私への試験が始まった。

 

他の妖怪達に見られる緊張感が無くなった私は、大きく一息ついてから両手をスナップさせて心の声と共に「彼」を呼び出した!

 

「お願い、力を貸して――小次郎!!」

 

私が手をかざした先に光の泡がどこからともなく湧き出し、それらが1つの光球となって地面へと落雷のように降り立つ。

激しい放電の音と眩い光に、先程まで呆然としていた妖怪達が我に返って振り向いた。美亜も、何事かといった様子で私のかざした手の先を見ている。

 

放電で発生した土煙が収まっていくと、そこには私の呼び出した「使い魔」――鉄烏(てつがらす)「佐々木小次郎」の姿がそこにあった。

 

「さて、今回はどんなやり方を御所望かな?我が主よ」

 

小次郎が私へ指示を仰ぐ。それに私は単純かつ大雑把な命令を言い放った。

 

「とりあえず、何でもいいからそこの蛇執事に切りかかってみて!」

 

「よし分かった。ではこの小次郎、不躾ながら斬らせていただこう――ヌゥッ!」

 

小次郎が刀を握った瞬間、

 

「なるほど・・・「使い魔」の召喚とは中々珍しいですね。それに与えられている妖気も人間にしては並外れている。ひとまず、彼を一旦退かせてはもらえませんか?」

 

「主よ、私が手を抜いたとはいえ此奴は面白いな。今の一太刀を防がれるとは思ってもみなかったぞ」

 

次に私の目の前に映ったのは既に刀を抜いていた彼の姿と、その一瞬の攻撃を片手の指で止めている執事の姿であった。

 

慌てて私は小次郎に消えるよう指示する。

 

「わぁぁぁああ!!すいませんすいません!今戻しますから!ちょっと小次郎、一旦消えて!」

 

「ふむ・・・もう少し愉しみたかったのだがな」

 

スゥと霧のように消えていった小次郎を見届けてから、執事が苦笑いをして私へ向き直った。

 

「やれやれ、此方も楽しみですね。綾様、今ので妖気は十分に伝わりましたよ。それと、使い魔の彼には今後私の名は蛇執事ではなくヘビスチャンであるとお伝えくださいね」

 

「すいませんでした、セバスチャンさん」

 

「ヘビスチャンです」

 

とても覚えにくそうな名前だな――

私はペコペコと必死に彼に頭を下げながら思った。

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