私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾話 激闘の予感

 

少し遅くなってしまった朝食を食べ終えた私達は、狐2人と共に早速雲操童に乗って龍花さん達4人が任務へ行っている妖界の街にやって来た。

 

場所としては右京区、西京極の辺りだけど、そこは妖界でも治安が悪いのか、沢山のヤーさんっぽい妖怪が妖魔の群れと戦っている状況だ。

 

その一昔前の任侠物みたいな光景に、私も椿も驚きで目が丸くなる。

 

「うわぁ・・・なんですか、この状況は」

 

「ま、まるで暴力団の抗争みたいだぞ・・・」

 

『うむ。話には聞いていたが・・・ここまでとは』

 

出発前に椿の爺さんから知らされた話によると、龍花さん達は此処に大量発生した妖魔を退治して、その原因を突き止める任務に就いているそうな。

 

「とにかく、龍花さん達が心配です。何とかして見つけましょう」

 

「ひょっとしたら、運動公園の方に街の人達を避難させているかも。先ずは、そっちを――って、妖魔だらけじゃん!参ったな・・・」

 

しかも、公園の方は酷く地面が抉れてクレーターのようになっており、100体以上もの妖魔が群がっていて誰も居るような気配が無い。

 

ふと椿がスタジアムの方を見ていたので、そっちの方へ私も視線を向けると、どうやら大量の妖魔はそこを中心に群がってきているようだ。

う〜ん、激闘の予感。

 

「これは・・・確実に誰かが妖魔を操っているね」

 

「うん、綾ちゃん。スタジアムから聞こえてくる声、あれは間違いありません」

 

「あの頭にくる感じの子供っぽい声は、どう考えてもアイツだね」

 

そう私達が訝しんでいると、その様子を不思議に思った黒狐さんが話しかけてくる。

 

『椿に綾、どうした?』

 

「白狐さん、黒狐さん・・・あのスタジアムに、閃空が居ます」

 

『なっ――んじゃと!アイツが・・・!?』

 

『しかし、滅幻宗は事実上崩壊して無くなっているハズだ。とはいえ、例の5人と華陽だけは妖魔を操って暴れさせているから、手配書でSSランクが付けられているがな』

 

「じゃあ、これはもう実質SSランクの任務って事になる訳か。最もキツい仕事を龍花さん達に受けさせたとか、新センターは本気で何やってんだかね」

 

「でも、センターのSSランクの妖怪さんは今も2人共行方不明って事だし、Sランクの龍花さん達が受ける事になるのは仕方ないよ。でも、それで龍花さん達が苦戦しているかもしれないのに、僕達だけで力になれるのかな・・・」

 

椿は不安そうな表情を浮かべたけど、私が励ましの言葉をかける前に、すぐシッカリとした顔付きに戻る。

 

「ううん・・・僕も綾ちゃんも、ちゃんと修行したんだ。だから自分を信じないと、ね?」

 

「は、はは・・・そうだね、椿」

 

どうやら、私が心配するまでもなかったみたいだ。椿は私が思っていた以上に、心も身体も強く成長しているよ。

 

『とにかく2人共、今は一旦離れるぞ』

 

『うむ、そうだな黒狐。雲操童よ、此処から離れてあの駅に向かってくれ』

 

そう言って白狐さんは、雲操童へ駅にある広場の方を指差して指示する。あの場所なら妖魔が2、3体だけと少なくなっているので、降りるなら丁度良さそうな場所だ。

 

「白狐さん、黒狐さん。ひとまず私と椿で先に降りて、あの広場に居る妖魔達を倒しておくよ」

 

「了解です、綾ちゃん。確かに、何時妖魔が集まらないとも限らないもんね」

 

『なっ!?椿よ、待て!』

 

『綾だけならまだしも、お前まで先に行く必要は――!』

 

狐2人は慌てて私達・・・というか椿を止めようとしたけど、それよりも早く私と椿は雲操童から静かに飛び降りる。そして、向こうに気付かれないよう二手に分かれながら移動し、椿が熊のような妖魔を不意打ちで倒したと同時に、私も向かい合うように陣取っていた猿みたいな妖魔2体を麒麟甲の拳による両手の一撃ずつで殴り倒す。

 

倒された妖魔が身体から煙のように立ち上る消え方からして、どうやら熊と猿が例の寄生タイプに取り憑かれていたらしいけれど、それでも元の動物達は既に事切れてしまっていた。

 

辛い事に、今の所は私も椿も妖魔に寄生されてしまった存在そのものを、完全な元の姿に戻す手段を身に付けてはいない。

 

――それに、私の方は烏森に伝わるとされる"ある方法"をオジサンから教えてはもらったものの、それも簡単に使える方法じゃない。むしろ、私自身の命に関わる危険な手段だ。

 

でも、半年も経って完全に妖魔となってしまったかもしれない湯口先輩を救える、数少ない可能性である事も確かだ。

 

『全く、椿に綾よ。相手が油断しておったから良かったものの、そうでなければどうし――』

 

「えっ?普通に戦って、さっきと同じ事をするだけですけど」

 

「あ〜・・・動物に寄生した奴らくらいなら、戦闘力が大体Aランクの妖怪と同じだもんね」

 

『そ、そうか・・・強くなったな、椿よ』

 

『というか、綾の乱暴な所が似てきていないか?これでは俺達が要るかどうか・・・』

 

「ううん、黒狐さん。戦力は多い方が良いので、居てくれた方が助かります。それに、綾ちゃんもそこまで乱暴じゃないと思うけど?」

 

『『うぐ、ぬぅ・・・』』

 

うん、白狐さんも黒狐さんも恨めしそうな目で私を見るのは止めて?弁解させてもらうけど、椿がグイグイ前に出るようになったのは私のせいじゃないからね?

 

そんな気持ちを込めた眼差しを狐2人に返していると、今度はボロボロとなった駅の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「えっ?もしかして、椿様と綾様?」

 

「「あっ、龍花さん!」」

 

「ああ、やっぱり!こんな所で、2人共どうしたのですか?修行の方は、もう終わったのですか?」

 

「えっとね、僕の方は山篭りは終了です。修行は綾ちゃんと一緒に続行中ですけど・・・」

 

龍花さんは私と椿の姿を見てビックリしているけれど、顔付きは他の人から見たら普段とそれほど変わらないような様子だから、改めて考えてみると少し不思議な感じだ。

 

そのまま龍花さんは狐2人の方へ向き直って、申し訳なさそうにしながら頭を下げてくる。

 

「白狐様、黒狐様まで・・・こんな所へ来させてしまって、申し訳ありません。私達にしては時間をかけ過ぎてしまい、皆を心配させてしまったようですね」

 

『いや、我らは大丈夫だ。相手が閃空となると、今回は仕方がない』

 

『それと1つ尋ねたいが、この妖魔どもは閃空が?』

 

その黒狐さんの言葉に、龍花さんは忌まわしげに眉間にシワを寄せる。

 

「はい、皆さんの想像通りです。寄生する妖魔を大量に保持しており、その戦力差に大苦戦を強いられています」

 

「はぁ〜・・・まーた、むちゃくちゃなゴリ押しで来たもんだな。でも、この数で攻めてきたって事は、やっぱりさ・・・」

 

「僕と綾ちゃんを、おびき出そうとしているって事ですよね」

 

あんな数の妖魔達を暴れさせて騒ぎを起こせば、お人好しな私達は街の人々を助けに出てくる――と、向こうは考えている訳か。

まぁ・・・確かにアイツらの思惑通り、私達はこうして出てきちゃってるけど。

 

「椿様が修行に行ったその1ヶ月後には、もう華陽は様々な所で動いていました。同じく修行中の身であった綾様には黙っていたのですが、よっぽど彼らは2人の記憶を・・・妲己の身体の在処を知りたいようです」

 

「なるほど、私達が修行に集中出来るようにって事でね・・・そこまで気を遣ってくれて、ありがとう。それとごめん、龍花さん」

 

皆を守る為に修行をしていたのに、それで逆に皆に気を遣わせてしまった事・・・私は、それが申し訳なく思えてしまうよ。

 

だから、その代わりになるか分からないけど――

 

「あっ、しまった!椿様、綾様!また妖魔が・・・!」

 

この騒動も、閃空も――私達が止めてみせる。

 

「御剱、神威斬!」

「麒麟甲、星幽掌打(せいゆうしょうだ)!」

 

「ガッ!?ギィィ・・・!」

 

背後から攻撃してこようとした大蛇の妖魔を、椿が振り向き様に一閃して胴体を真っ二つにし、その瞬間へ合わせて上半身の回転を利用した勢いで加速させた私の拳の一発で完全に浄化した。

 

――もう私と椿に迷いは無い。今は前に進むだけだ。

 

「つ、椿様、綾様・・・今のを、一撃で?」

 

「うん?それがどうかしました?それより、虎羽さんや朱雀さん、あと玄葉さんも探さないと・・・」

 

「そうですね、綾ちゃん。3人の姿が見えないから心配だよ」

 

『ふ、2人共・・・気付いとらんのか?今の妖魔は少し、デカかったぞ・・・』

 

『しかも、恐らくSランクではないか?だいぶ濃い気をしていたぞ・・・』

 

「えっ?あ〜・・・マジか」

 

今更ながら、よく今の奴を倒せたな私達。

 

そんな事はさておき、キョトンとする狐2人と龍花さんを他所に、私と椿で他の3人を探そうとしていると、ふと今倒した妖魔の身体が消えきっていない事に気付いた。

 

「くっ、しぶとい妖魔だな!椿、アレお願い!」

 

「うん!天神招来、神風の禊!」

 

椿の浄化の風で吹き飛ばし、今度こそ大蛇の妖魔が煙となって消えたのを確認する。そして、私達は未だにポカーンとしてしまっている3人の方へ振り返った。

 

「ところで龍花さん、他の3人は?」

 

「えっ?あ、あぁ・・・その、玄葉が怪我をしたので、その看病を――」

 

「ちょっ、それ早く言ってくれません!?玄葉さん、大丈夫なの!?」

 

「え、えぇ・・・とりあえず、大した怪我ではありません。ですから綾様、そこまで慌てなくて良いですよ」

 

「そうだ、白狐さんなら治癒を――って、どうしたんですか白狐さんも黒狐さんも!?」

 

なんで狐2人はまだポカーンとしたままなんだよ!全くもう、椿の一声で我に返ったから良いけど。

 

『ぬぉ・・・!おぉ、そうか・・・そうじゃな。玄葉は何処じゃ?』

 

『椿が・・・いや、俺の嫁になるならばコレくらいは・・・だが、綾も強くなっているし・・・ぐぅ』

 

どうやら、2人共さっきの私達を見て結構なショックを受けていたみたいだ。気持ちは分からなくもないけどさ、このままだと少し心配――

 

「黒狐さん、黒狐さん?ほら・・・キュ〜ン」

 

『なっ・・・!!』

 

「ぐふぅぉ!ちょ・・・つつつつ、椿!?」

 

何いきなり可愛い鳴き声やっちゃってくれてるんですか!危うく、その場でバタンキューした黒狐さんみたく、私まで卒倒する所だったわ!!

 

「わ〜!!ごめんなさい黒狐さん!やり過ぎました〜!!」

 

「どんだけ効果てきめんなんだか・・・って、白狐さん?白狐さ〜ん!?」

 

嘘でしょ・・・白狐さんまでダウンしちゃってるよ!!龍花さんの前で黒狐さんと同じようにバタンキューしてるし!!

 

「この鳴き声は、ずっと封印しておきます!やってる僕も恥ずかしいし、何より効果あり過ぎですよ!!」

 

「う、うん・・・椿、そうしてくれ〜」

 

ヤダもう、この狐2人。というか、私まで鼻血出してブッ倒れそうになった辺り、そろそろ狐2人と同じレベルになりつつあるし・・・うぅ〜、何て可愛い事してくれたのさ、椿は!

 

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