私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
龍花さんに案内され、私達はキュン死もとい気絶した狐2人を引きずって、駅から少し離れた所にあるボロ屋の多い所へやって来る。
全く、あんな事で卒倒してしまうなんて・・・この2人、椿と結婚したら何時か本当に胸キュンで死んでしまうんじゃないのか?
「さっ、こちらです2人共。今は、虎羽と朱雀が看ていますから」
そして龍花さんは、そこに立ち並ぶ中の1つのマンションに入っていく。それに続けて私達も進んでいくけど、壁はボロボロでツタやら草やら生え放題だ。だけどマンションの中へ入ると、それなりに綺麗でビックリしたよ。妖術とかで掃除していたのかな?
「3人共、戻りましたよ」
そのまま龍花さんは1階の最奥部へ進み、声をかけながら先にある部屋へ入っていく。
その部屋に入ると、角の方で玄葉さんが寝かされていて、それを守るようにして虎羽さんと朱雀さんが座っていた。その2人は龍花さんが戻ってきた声に反応して振り返り、そこで後ろに居る私と椿の姿を見つけて目を丸くする。
「「「椿様!?綾様!?」」」
でも、あまりにビックリしたからかアチコチに包帯を巻いてる玄葉さんまで立ち上がろうとしちゃっていたよ。今のを見た所は大丈夫そうだけど、そんないきなり動いたら傷が開いて危ないぞ。
「いっ・・・つぅ!」
「玄葉さん、無茶しちゃ駄目ですよ!」
「すみません・・・椿様」
あ〜ほら、椿にまで心配されちゃって。
でも、もしかして私達がたった半年で戻ってきたから、それで怪我してる事すら忘れるくらいにビックリさせちゃったかな。
「玄葉、貴方は寝ておきなさい。全く・・・私達を庇って、あんな攻撃を無理に受け止めるなんて」
「まぁまぁ。こっちには治癒の力が使える白狐さんも居る訳だし、大丈夫大丈夫」
「そうだね、綾ちゃん。それじゃあ、白狐さ――あっ」
椿と頷き合って、玄葉さんの怪我を治してもらおうと後ろを振り向いた私は、そこで狐2人が気絶したままだったのをスッカリ忘れてた事に気づいた。やっべぇ、そういえば今コイツらそんな状態だったわ。
「えっ、白狐様に黒狐様!?一体その姿はどうされたのですか!まさか、敵に・・・!?」
「すいません、虎羽さん。僕のせいです・・・」
「は・・・?」
「もっと詳しく言うと、この2人の平常運転が作動しただけなんで。多分、ちょっとすれば起きますよ」
「「「あぁ、なるほど・・・」」」
そう微妙に察したような表情をしてやらないでください、3人共。あれだけ椿に甘々な狐2人が、椿の可愛い行動1つで鼻血噴き出したり気絶したりって騒がない訳がないんだから。
「何とか起きないか、色々試してはみたんだけど・・・ほっぺ抓ったり頭殴ったり、椿の耳元囁きしてるのに起きないなんて、コレ絶対気絶したフリしてるよね?」
「う〜ん・・・確かに、何だか変だよ。感じる妖気の量からしても、妖気切れしているって訳じゃないもん」
「お2人の言う通り、その可能性はありますね」
「ですよね、龍花さん。それなら椿、アレお願い」
「あっ、うん」
私の言葉の意味を理解した椿は頷いて、部屋の壁に寄りかからせた狐2人の前にしゃがみこむ。
「ふぅ・・・大丈夫、1回はやってるんだ」
そして、そのまま彼女が白狐さんの頬近くへ顔を近づけていくと――
『何故白狐からだ、椿』
「はい、アウト。やっぱり2人共、起きてましたね」
『黒狐!!お主、もう少し我慢というものをせぬか!』
『うるさい!こういう時、いつもいつも白狐からじゃないか!!』
「こんな時なのに、2人はな〜にふざけてんだよ!?」
『『ふざけていない!!』』
うん、それでも時と場所は選んで欲しいけどな!
狐2人は叫びながらバッと飛び起きて私の方を睨むけれど、それと同時に椿からジトーッとした眼差しを向けられたから、2人共ちょっと咳払いしてから普段の調子に戻っていたよ。
「さてと・・・それじゃあ、白狐さん。後は分かっていますよね?」
『むっ・・・う、うむ。しかし、玄葉にしては珍しいな。お主程の者が、こんな怪我を負うとは』
そう椿に言われた白狐さんは玄葉さんの所に素早く動き、片手を握って治癒の力を発動して彼女の傷を治していく。
「申し訳ありません、白狐様。敵の妖魔に、あんな私の盾を突破するような者が居るとは思わなかったのです」
「マジか、あの玄葉さんの強力な防御を・・・そいつ、厄介そうな奴だね」
すると、私が玄葉さんの話に驚くより先に部屋の扉が勢い良く開かれ、そこから知らない妖怪の人が慌ただしい様子で叫んできたのだ。
「大変だぁ!あの妖魔が・・・レーザーを撃つ妖魔が、また妖気を充填しているみたいだぞ!」
「何ですって――うぐ、つぅ!」
『いかん玄葉、落ち着け。まだ治癒は済んでおらん』
それに対して玄葉さんは無理やり起き上がろうとするけれど、身体に受けたダメージの大きさが予想以上だったからか、白狐さんに抱えられる形で再び布団へ倒れ込んでしまった。
「し、しかし・・・私でなければ、あれは・・・」
『仕方ない。ここは俺の変異の力で、目視出来る所から迎撃を――』
「黒狐様。それをしても、攻撃の威力は変わらないでしょう?レーザーから変化させたとしても、その大きなエネルギーによるダメージがあるのでは?」
『うっ・・・』
動けない玄葉さんに代わって黒狐さんは妖魔の対処をしようとしたら、そう虎羽さんに言われて何も言えなくなってしまったよ。
これは・・・やっぱり、私と椿の出番かな。
そんな事を考えて椿の方を見ると、どうやら彼女も私と同じ結論だったようで、それを確認した私達は互いに自信のある目で頷き合う。
「こうなったら、あの妖魔の攻撃は私と椿で何とかしてみるよ」
「僕と綾ちゃんの力なら、きっと対処出来るハズです」
でも、その瞬間に4つ子も狐2人も鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして止めてくる。
「「「「椿様!?綾様!?しかし・・・!」」」」
『椿に綾よ、それは危険過ぎる。あの玄葉ですら、この大怪我なんじゃ。お主らだけでは――』
「大丈夫ですよ、白狐さん。一体、何の為に僕が修行してきたと思っているんですか?」
「皆に危険が及ぶような、こういう時の為に私も椿も修行してきたんだよ」
椿と共に立ち上がり、彼女をエスコートするように手を差し出した私だけど、"それは大丈夫だ"と言わんばかりに椿の尻尾でガードされちゃった。
それなのに、後ろで狐2人は椿の尻尾の動きに悶えてるのは何でなんだか・・・。
『いや、とはいえ・・・やはり危険だ。俺も行くぞ』
「と、とにかく急いでくれ!此処には他に対処出来る奴が居ないんだ!」
依然として慌ただしいまま、敵の襲撃を知らせてくれた一つ目の妖怪はそう言ってくる。椿はそんな彼を落ち着くように宥めながら、攻撃に対処する為の準備を始めた。
「とにかく、高い所に行きたいですね。此処のマンションの屋上には上がれますか?」
「そこは上がれるが・・・一体、何を?」
「今は急いでるんでしょ?それと、遠目の効く妖怪さんは居る?」
「それも、屋上で見張りをしているが・・・」
それらを一つ目の妖怪から聞いた椿は私の方へ振り返って、ウィンクしながら指で小さく丸を作って見せた。
「それじゃあ、屋上に行くだけで良いですね。綾ちゃん、早いところ準備しちゃいましょう」
「ん、OKだよ」
◇◇◇
それから私達は階段で急いで屋上まで駆け上がり、マンションの貯水槽に隠れながら様子を見ていた妖怪に話しかける。
「ほい、お待たせ」
「早速で悪いんですけれど、敵は何処から撃ってくるんですか?」
「あっ、えっ?君達は・・・?」
そう言って振り返った妖怪の姿は、なんというか外見は人間そっくりなのに目だけが望遠鏡みたいな形をしていた。なるほど、これなら確かに遠くを見通す事も出来る訳だ。
「――っと。聞くまでもなく、あっちの方向に例の妖魔が居たね。まるで戦車の砲台みたいな形してるな〜」
「うん、僕も見つけたよ。それにあの妖魔、見た目に違わず凄い妖気だね」
『2人共、良いか。もし無理なら、すぐ俺に言うんだぞ』
「椿様、綾様。最悪、私が盾に・・・」
「全く、黒狐さんも朱雀さんも心配性だな〜・・・椿だけだったら確かに心配だけど、今は私も居るんだからさ」
まぁ、実際ぶっつけ本番でやる事には違いないんだけど。さてはて、上手くいくかな・・・?
そして私と椿が妖魔の方を向いて屋上の端まで来た時、ちょうど大量の妖気が勢い良く放たれるのを感じた。その直後、凄まじいまでに眩しい光の束が私達の目の前へ迫ってくる。
すぐさま私は、少し手を前に出すのが遅れた椿の前に立って、頭の中に"何物よりも硬い盾"をイメージしながら両手を突き出して全力を込める。
その瞬間、私の脳裏には"新たな儀礼衣装"の名前がフッと浮かんできた。
「護れ――妖異変化、"悲愴天・玄武"!!」
すると、私の突き出した両手から私と椿を隠せるくらいに大きな盾が現れ、それと同時に私の姿も鴉鳩や朱雀の儀礼衣装より、手足がゴテゴテとした緑色のロボットみたいな形へと変化していたよ。
「よし、今だ!椿!」
「ありがとう綾ちゃん!これなら――術式吸収!」
そして、私が出した盾で減衰した光線を椿が吸収して、そのまま尻尾の先端を細めて撃ってきた妖魔の方向へと構える。
「そ〜れ、お返し〜!」
『待て、椿!!』
「ちょっ・・・それは威力を倍増しているのでしょう!?そのまま返したら駄目ですよ!!」
「「へっ・・・?」」
そう私と椿がキョトンとした時には既に吸収したレーザーを返してしまっており、次の瞬間にとんでもない光と衝撃を持った爆音波が私達を襲ってきた。
「どぅぇぇえ!?なんつ〜威力だぁ!!」
「きゃぁぁあ!!しまったぁ!!」
その結果、踏ん張り忘れていた私達は吹っ飛ばされてしまい、椿は黒狐さんの胸元へと飛ばされて抱きとめられ、私は誰に受け止められる事もなく大の字で貯水槽に顔面からめり込んでしまったよ。
トホホ・・・こんなに強くなってるなんて予想外だ。今しがた展開した儀礼衣装じゃなかったら、吹っ飛ばされた衝撃で危うく大怪我する所だったわ。