私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
あの時とは違って、私も椿も格段に強くなっている。だから、今度こそ目の前に立つ閃空を・・・多くの人々に危害を与える敵を倒さないと。
何とかして華陽の情報も聞き出そうとか、そんな油断に繋がるこそは考えるな、私。
「ふん。力の加減も出来ない暴走車共が、たった半年で何が変わったと言うんだい?ほら、動かないなら・・・こっちから行くよ!」
そう言って閃空は肘から生えた黒い刃を降るって、私達に強い妖気の篭った真空刃を放ってくる。
だけど、やはり今の物言いからして閃空は"考えが成長していない"ようだ。
もしかすると、奴の精神は妖魔を寄生させられた頃から変わっていなくて、長い年月で培ってきた戦闘経験だけで補っているのかもしれない。
「――妖異顕現、泰焚・峯璃裂弩(タイフーン・ブリザード)【甲】!」
「へっ?えっ・・・な、何だって?軽々と、僕の攻撃を・・・くっ、この!!」
私が豪風と氷雪で形作った盾で真空刃を弾いたのを見た閃空は、まさかそれがアッサリ防がれるとは思っていなかったのか怒りの形相で更に真空刃を放ってきた。
「天神招来、神風の禊」
「なっ、そんな・・・馬鹿な!」
「どうしました、負なる者?そんなに意外ですか?それなら、もっともっと心を折ってあげましょうか」
「クソッ、こうなったら――」
そう言って閃空は、腕の刃を前に突き出して空中から椿へと突進してきたけど、私が守るまでもなくアッサリと彼女の人差し指で簡単に止められる。
「ぐっ・・・なっ、なんでだ・・・!?」
「何で?そんなもの、私と綾ちゃんが修行をしたからですよ。そして、受けなさい――華螺羅狗斬(かららくざん)!!」
「ぐぁぁあ!!」
そのまま椿が放った、螺旋状となった浄化の真空刃が閃空を切り裂いていく。だけど、相手も妖魔人になって戦闘力が上がったからか、咄嗟に守りの構えで攻撃を耐え切って、身体に出来た数々の切り傷を一瞥してから私達を睨みつけてきた。
「ふふ・・・あははは!!なぁ〜んだ、結局修行って妖術や剣術だけかよ!下らないね!そんなんじゃ僕は――」
「あっ、手ぇ滑ったわー」
「げふっ!?」
それなのに余裕そうに自信満々な態度を取ってきていたから、その隙だらけの土手っ腹に拳を入れちゃったよ。敵の目の前でアホみたいな事やってるから、今みたいにボコボコにされたというのにさ。
「そのまま吹っ飛べ!玄甲白蛇撃(げんこうはくだげき)!!」
「あぁぁぁあ!!」
そして私は拳に妖気を込めて、新たな儀礼衣装によるパワーのゴリ押しで閃空を遠くに見えなくなるくらい殴り飛ばしたけど、すぐに奴は私達の所へと戻って来たよ。相変わらず、スピードだけはとんでもないね。
「こぉのぉお!!雑魚ども――がぁっ!?」
「黒槌地龍撃(こくこんちりゅうげき)。いやいや・・・この状況で、良く僕達の事を雑魚と呼べますね。以前にも増して"負の感情"が増えていませんか、負なる者?」
その向かってきた閃空を、椿はダメ押しと言わんばかりにハンマー状にした尻尾をしならせて叩き落とした。しかし、それでも奴は頭に血が上り切っているらしく両手両足をやたらめったらに振り回して攻撃してくる。
だけど、酒呑童子の修行を受けていた私達からすれば、閃空の攻撃は酒呑童子の奇襲と比べても安直過ぎて簡単に予測して避けれる攻撃だ。
周りから見れば目にも止まらぬスピードだとしても、今の私と椿には全てが遅く感じられるよ。
「どうしました、負なる者?私にも綾ちゃんにも、一撃も当たっていませんよ?」
「ふん!僕がただ、めちゃくちゃに攻撃をしているだけだと思うなよ!」
「あっそ、どうせ周りに妖魔を集めてたんだろ?そんなモンはとっくに予想済みだし、それに――」
閃空がニヤリとしたのに合わせて、私は椿の方を見て互いに頷く。そして椿は尻尾を炎状に変化させ、私は儀礼衣装を朱雀へと変化させて両手に妖気を込めた。
「黒炎尾、槍華繚乱(こくえんび、そうかりょうらん)!!」
「張星柳、業焔凰翼(ちょうせいりゅう、ごうえんおうよく)!!」
その椿の尻尾の毛が変化した幾つもの炎の槍と、私が両腕から放った扇のような炎の翼は、一瞬にして周囲に迫っていた妖魔全てを焼き尽くして浄化する。
「なっ・・・なぁ!」
「さっきから、なぁ〜なぁ〜うるせぇぞ。そんなに私達が強い事にビックリしてんのか?」
「全く綾ちゃんの言う通りです。猫ですか、あなたは」
私達がアッサリと妖魔を燃やしていく姿が予想外だったのか閃空は呆然としてしまっている。
しかし、倒した妖魔の力がAランク相当だと認識した私と椿は、まだ奴が何かを隠している事をすぐに察知した。
「ふ、ふん!精々ザコ妖魔を倒して良い気に――あっ?」
「あ〜、やっぱりか。弱い妖魔を囮に、強い妖魔で死角から私達を不意打ちしようとしてたな」
「ですが、今の私と綾ちゃんには奇襲すら無意味ですよ。私達2人の妖気の感知能力の高さ、侮らないでもらいたいですね」
そう言って私と椿はそれぞれ氷や影の妖術で、Sランクほどの妖魔軍団を隠れていた所から引きずり出したり凍り付かせたりして身動きを封じた。
でも、閃空との戦闘が途中な私と椿ではコイツらの浄化まで出来る余裕は無いかもしれない。
だから、ここは――
「ごめん白狐さん、黒狐さん!後は任せた!」
「私と綾ちゃんは閃空に専念するので、2人はこの負なる者の捕獲をお願いします」
『うぉ?お、おぉ・・・わ、分かった』
『しかし椿。お前、その姿で捕獲するなんて言うとは・・・滅したりしないのか?』
「黒狐さん。今の私はもう、ただ無闇に負なる者を滅する存在ではないんです。浄化に時間がかかるのでマトモに相手をしていられないというのもありますけどね」
「だけど、アイツだけは・・・閃空は絶対に逃がす訳にはいかないよ」
そして私は、椿と共に再び閃空の方へと向き直る。
奴は自身の想定していた流れを裏切られまくったからか、フラフラと余裕の無さそうな顔をして立ち尽くしていた。
「あぁ〜なんで・・・こぉんな面倒くさい事に。なんで――」
だが、瞬きする間に閃空は物凄い速さで椿の目の前へと瞬間移動していた。
「なぁんで本気を出さなきゃいけないんだよ!!」
「なっ――ぐぅ!!」
「椿!!」
すぐさま私は左手から、ビーム光線のように細くした緊急祭繰龍を椿の太腿を切りつけた閃空へ放ったけど、再び瞬間移動するかのようなスピードで回避されてしまった。
「あんっの野郎・・・死にものぐるいのゴキブリかってくらい疾いな」
「なるほど、それが貴方の本気ですか・・・閃空」
「あはははは!!そうさ!だが、これでも絶対最強じゃないし、それならさっさと本気を出しているしさ〜!!」
そう閃空が言うという事は、恐らく奴はその速さに対する弱点を知っていて隠しているのだろう。
勿論、そんな弱点を閃空自身が教えてくれる訳は無いけれど、逆に言ってしまえば向こうもあのスピードを使いこなせているかは分からない。
何せ、私と椿の実力を読み違えていたくらいだからね。きっと閃空は直感的感覚だけを頼りにして動いている。
私と椿は深呼吸をして心を落ち着かせ、僅かな空気の流れを感じ取る!
「「そこ(だ・です)!!」」
「くっ!・・・ざ〜んね〜ん!直撃じゃないさ!」
でも、その攻撃は閃空にかすり傷を付ける事しか出来ず、逆に私達の方がカウンターでダメージをもらってしまった。だけど、今はもうこのくらいで怖気付くような私達じゃない。
「仕方ありません。綾ちゃん、次の策です」
「OK、椿!いっちょ派手にいきますか!」
「へぇ、まだ何かあるのかな?でも、させな――いっ!?」
椿の巻き起こした浄化の神風は、私の朱雀の力で爆発させるように一気に強烈な熱風で全方位へ広がって、周囲を高速移動していた閃空を吹き飛ばす。
思っていた通り、感覚を集中させても捉えきれない程に相手が疾いのなら、こうして全方位満遍なく攻撃してしまえば必ず当たるね。