私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾肆話 ロクでもない事ばかり

 

「うわぁぁあ!!なっ・・・ち、力が・・・力が抜けていく!」

 

「当然です、私が起こしたのは浄化の風ですよ。そのまま消え去りなさい、負なる者」

 

私と椿の合体技でモロに浄化の風を受けた閃空は、それでも耐えきろうと踏ん張って対抗しているが、妖魔人といえどやはり妖魔なのか徐々に身体のアチコチが乾いた土のようにボロボロと崩れている。

 

酒呑童子から妖魔人となった幹部4人の詳しい情報は得ていたけど、こうして無差別に人や妖怪を襲っていた所を見たら憐れみを覚えてくる。

 

彼ら4人は元々、江戸時代の大飢饉の頃に生きていた人間で、その時に華陽から命を助けるだ何だといった口車に乗せられて寄生妖魔を植え付けられ、現在まで生き長らえているらしい。

 

――長い年月の間で、その人間だった意識や人格を妖魔化によってすり減らしながら。

 

そして、それによる弊害で暴走した玄空が、周辺の住宅地で暴れ回って甚大な被害を起こしたという記録からも、カナの家族を襲ったのは奴で間違いないだろう。

 

最終的に彼らは半年前、妖魔人となった瞬間に妖魔へ人格を乗っ取られてしまい、今では華陽の従順な手駒として動かされている。彼らの執念も勿論だが、その4人を人間社会に上手く隠して利用していた華陽の用意周到ぶりは、正に"吐き気を催す邪悪"と言っても過言ではないだろう。

 

「うぉぉぉお!!亜里砂様が・・・華陽様が、僕に力を与えてくれたんだぁ!環境を操り食物を奪い、あの悲劇を生み出した悪しき妖怪達を、必ず同じ事を繰り返す妖怪達を・・・皆殺しにしてやるんだ!」

 

だけど、そんな私の内心を嘲笑うかのように閃空は私達へと自身の行いと矛盾する恨み言を叫んでいた。

 

その閃空の言葉を聞いた椿は、呆れ気味にため息をつく。

 

「その貴方の慕う者が、恨んでいる妖怪なんですよ。全く、矛盾していませんか?」

 

「良いんだよ、力さえ手に入ればね!それにどうせ、最後には華陽だって殺してやる。それがあの時、4人で決めた事だからね!」

 

「チッ、どこまでも可哀想な奴だな・・・!」

 

「とっくに騙されているとも知らずに。それなら、その"想い"ごと私達が浄化してあげます」

 

かつて閃空の言っていた事が気になっていた私と椿は、酒呑童子から聞いた幹部4人の経験した飢饉が何か妖怪と関係しているのではないかと感じて独自に調べた。

 

しかし、いくら調べても判明した事実は、彼らの経験した飢饉は妖怪どころか何の超然的な物すら関わっていない、極めて不幸な出来事が重なって起こっただけの悲しい事実だけだったのだ。

 

つまるところ、あの4人は華陽に騙されて身体も魂も道具として使われてしまっている事を裏付けていた。

 

「この豪風に耐えるのは流石だな・・・だけど!」

 

「風が収まる前に、この一撃で全て終わりにさせてもらいます」

 

私と椿による風の塊が解けてきた瞬間に、椿は風の隙間を縫うような御剱の一閃を放って光波を飛ばす。

 

閃空と戦う前に椿から聞かされた、「これで取り憑いている妖魔だけを浄化出来れば、もしかしたら湯口先輩を助けられるかもしれない」と言っていた浄化の一撃だ。

 

「ふん!僕がこの暴風に耐えた瞬間、お前らの負けは決まって――」

 

閃空は咄嗟に自身の後ろから例の黒い球体を呼び出して身を守る為に前方へ構えるが、それすら椿の飛ばした斬撃は容易く切り裂く。

 

「な、何っ!?」

 

「あぁ、後ろにずっと隠していた球体を盾にしたんですか。それが切り札だったのでしょうけれど、その程度で防ぎ切れると考えるなんて私を甘く見過ぎです」

 

「あ――あぁぁぁ!!そんなぁぁあ!!」

 

そのまま斬撃は球体諸共に閃空を真っ二つにしたけれど、その瞬間に妙な妖気が奴の身体から霧散するように発したのを感じ取った私は思わず叫んだ。

 

「しまった!椿、コイツは閃空じゃない!あの時みたく、連中の妖具で作られた分身体だ!」

 

「やれやれ、この方法・・・彼らお得意の戦法ですか」

 

真っ二つとなった閃空の身体がヘドロのように溶けて消えた様を見て、私と椿は後ろから新たに感じ取った妖気の正体を確認するべく振り返る。

 

やはりというべきか、そこには大きな球体に乗った"本物の"閃空と、顔が2つとなった栄空が闇夜になりかかっている夕焼けの空に浮いていた。

どうやら、ずっと妖気を潜めて私達の戦闘を観察していたようだ。

 

「あ〜あ・・・何だよ、あの力は。どっちも半年前とは比べ物にならないね」

 

「ならば、殺してしまいましょう」「殺してしまいましょう」

 

「うるさいなぁ、亜里砂様から指令を忘れたの?騒ぎにしたら面倒な事になるから、時間がかかりそうなら撤退しろって言われてたじゃん」

 

その閃空の言葉に、栄空は一瞬だけ両方の顔でギロリと彼を睨み付けたが、すぐにため息をつきながら私達へ発していた殺気を収める。

 

「さ〜て、これ以上は本当にヤバいから今日は残念ながら撤退させてもらうよ。出来たら僕が直接やりたかったけど、君らを壊しちゃいそうだからね。楽しそうな戦いになると、僕は何でも壊したくなるんだ・・・だから、今度は"本当の"僕で本気で戦ってあげる」

 

そう閃空が言い残したのを最後に、奴は栄空と共に自らの影へと沈んで跡形も無く姿を消してしまった。

 

「クソッ・・・相変わらず、逃げ足も速いな」

 

「でも、正直撤退してくれて助かりました。あの妖気の大きさ・・・僕達が勝てると思っていたのは閃空の分身体で、閃空本体にはまだ勝てない気がします」

 

「確かに、ね。私も、自分が強くなったって気でいて少し調子に乗ってたよ」

 

それから私と椿は閃空の言っていた"面倒な事"に対処する為に、無駄な消耗をしないよう"神妖の力"を抑えていく。

 

「そんで、椿。遠くからこっちに向かって来てる集団はどうする?1人1人の妖気の強さからして、警察とかじゃなさそうなんだけど・・・」

 

「妖界での事件の管轄を考えれば、多分新しくなった妖怪センターの人達で間違いないですよね。でも、センターが亰嗟と協力している事を踏まえたら・・・これを理由に僕達を捕まえて、亰嗟に引き渡す気かもしれないね」

 

「なるほどな・・・あの閃空の物言いじゃ、我が物顔でアチコチ暴れ回ってる華陽も、亰嗟にとっちゃ邪魔な敵だよな」

 

――となると、今の私達が取るべき行動は1つだ。

 

「「よし、皆!逃げ(ますよ・るよ)!!」」

 

『うぉ!つ、椿・・・戻ったのか!?』

 

「何を言ってるんですか、白狐さん?そりゃ元の姿には戻れますよ。そうじゃなかったら、あの状態に自分からなろうとはしません」

 

「ぬ、ぬぅ・・・確かに、そうじゃが」

 

椿の言葉にキョトンとしちゃってる狐2人の姿でようやく気付いたけど、あんな派手な戦い方をしていた私達の戦いを見たら、そりゃ全員が静かになっちゃってる訳だ。

 

むしろ事前に何も知らずに、ぶっつけ本番で椿と何とかしちゃった私も私だけど。

 

「そんな事よりも!ほら、皆急いで!センターの連中にまで追いかけられたら、流石にたまったもんじゃないよ!」

 

「白狐さん黒狐さん!僕が捕まって、亰嗟の人達に渡されても良いんですか!?」

 

『それは駄目だ!よし、龍花。他の3人を連れて妖界から脱出し、そのまま翁の家へ向かうぞ!』

 

「は、はい!!」

 

龍花さん達へそう言った黒狐さんは、手早く懐から自身の勾玉を中空に放り投げて、人間界へと続く空間の裂け目を作り出す。

 

『よし、これで道は開いた。椿と綾、そして白狐は先に行け!人間界へ出たら直ぐに身を隠しながら移動しろ!』

 

『分かっとるわ!行くぞ、2人と・・・も?』

 

でも、その瞬間に私も椿も先程の戦闘で使った力の反動で体力が限界に達してしまって、その場にヘナヘナとへたりこんでしまった。

しまった、コレやると1時間くらい身体の疲れが凄くて動けなくなるのを忘れてたよ。

 

「白狐さん・・・おんぶ」

 

「ご、ごめん・・・私も」

 

新センターの妖怪達が迫って来ている状況でこれは不味いので、私は椿と一緒に仕方なく白狐さんへとウルウルとした目で訴えかける。

 

『つ、椿?はぁ、全く仕方ないの・・・』

 

「あっ、待って!お姫様抱っこじゃなくて、おんぶで良いってば!!」

 

「ごっふ・・・そして、やっぱり私はお米様抱っこかい」

 

やだ白狐さん、椿と私の扱いの差が露骨ですわよ。

 

椿の方は片手だけでも上手くお姫様抱っこになるよう大切に抱えてるのに、私の方はムンズと雑に掴んで肩に担いでるんだもん。

うぐぐ、こりゃ白狐さんに椿の好感度競走は1歩リードされちゃったかもな。

 

「センターの新しいクソ職員共なら、俺達が少しでも足止めしておくぜ」

 

「おう、だから気にせずに逃げな!」

 

妖界から脱出する直前、周りの妖怪達が私達を守るように各々の武器を構えだした。

 

「だ、駄目です!捕まっちゃうよ!」

 

「センターの職員が相手じゃ、妨害しても確実に勝てないって!無理しないで逃げて!」

 

すると、その妖怪達は全員ニッとした笑顔で私達に振り返ってサムズアップを向けてくる。

 

「心配するな、お嬢ちゃん達。そこは上手く捕まらないようにするさ!」

「此処を守ってくれたお礼だ!」

「せめて、俺達も何かしないと気が済まねぇよ!」

 

なんというか、この妖怪達もガラが悪そうに見えて実際は椿の爺さん家の妖怪と同じなようだ。

 

「ごめんなさい!あとで絶対、お礼しますから!」

 

「だから、全員無事に逃げ切ってくださいね!」

 

そう私と椿は妖怪達へ叫んで、白狐さんに抱えられた状態のまま勾玉で開けられた空間の扉へと入っていく。

 

「へっ・・・まぁ期待せずに待ってるぜ、2人のお姫様」

 

ぶっふぉお!?サラッと誰か私までお姫様扱いして――って、もう人間界に戻ってるから誰が言ったか分からないや。

 

何にせよ今回の事件で分かったのは、修行した私達と同じか、それ以上に妖魔人と化した幹部4人の戦闘力も上がっている事。そして、これは私と椿が修行のお陰で感知能力が上がった事で分かった事だけど、新しい妖怪センターの職員達から"悪の想い"を感じ取った事だ。

 

これはほぼ確実に、新妖怪センターの勢力は私達の敵になっていると考えて良さそうだね。うん、ロクでもない事ばかり続くな。

 

少し修行で篭もっている間でこんな事になっていたなんて・・・もっと強くならないと。今ですらこんな程度じゃ、きっと椿も皆も守れないよ。

 

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