私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

285 / 390
第拾伍話 "第2の妖怪センター"

 

妖界から撤退してきた私達はすぐさま椿の爺さんに今回の事態を報告すると、爺さんは眉間にしわを寄せた難しい顔をしてポリポリと頭を掻く。

 

「ふむ・・・事態は思った以上に深刻じゃのぅ」

 

「相変わらず、とんでもない書類の山ですね・・・爺さん」

 

「まぁの、綾。新しいセンターが細かく任務を選んだりしとるお陰で、小さな案件なんぞ処理しきれなくなっとる皺寄せが儂らの方に来るのは、大方予想がついていたがの」

 

「でも、それが後で大きな案件に発展してしまった事を考えると、どうしても後手に回る新しいセンターじゃなくて僕達の所に来る理由も分かりました」

 

その椿の言葉に、私は椿の爺さんと同じタイミングでウンウンと深く頷いちゃったよ。そりゃあ、こっちに事実上Aランク以上の任務が溜まってく訳だ。

 

でも、今回の騒動とそれを起こした妖魔――妖魔人となった閃空と栄空の出現で新センターもようやく動いたけど、そいつらより私と椿を捕まえようとしてきたのは流石に厄介だぞ。

 

「こうなれば、翁。私達でセンターに忍び込み、情報を集めて他の妖怪と一緒に抗議を――」

 

「よさんか、龍花よ。奴らのバックには亰嗟がついとる。そんな程度では、逆に向こうに潰されるわ」

 

龍花さんの提案がアッサリ却下されたのを見て、ため息をつきながら私は頭をカリカリと掻いた。

 

「全く、横暴も良い所だよ・・・う〜ん、何とか上手く解決出来ないモンかな?」

 

「今のセンターは、相手が亰嗟みたいな物だからね。それは難しいかな、綾ちゃん・・・でも、龍花さんが少し穏やかな方法を言い出すなんて、何だか珍しいですね」

 

「お2人共、どうかしました?」

 

おお、いかんいかん。椿のウッカリで龍花さんがジッと、こっちを見てきちゃったぞ。

だけど、確かに椿の言うように、その私達を見てくる目は以前よりも穏やかで怒っているような感じじゃなくなっているよ。

 

やっぱり龍花さん達もかつての私と椿みたく、半年前に滅幻宗の本拠地で敗北した事を引きずっているのかな。

 

「じゃあよぉ、こっちで似たような組織を作れば良いだろぉうが〜」

 

「今のセンターが対応出来ない仕事を取り扱う、第2の妖怪センターとしてね」

 

そんな事を頭に思い浮かべていると、突然ガラガラと私達の居る部屋の扉から鬼2人が入って来て――

 

って、危ねぇ〜!!2人共、死角から酒の瓶を投げてくるなって!相変わらず、不意打ちに対する修行は容赦が無いな!

 

「酒呑童子さんに伊吹さん。それをするにしても、ほぼ間違いなくセンターが文句を付けてくるでしょう?」

 

「うむ、椿の言う通りじゃ。第一、そんな事をすれば連中へ直接喧嘩を売る事に――」

 

すると、そう言った椿と爺さんに対して酒呑童子は、フンスと腕を前で組んでニヤリとした笑みを浮かべてくる。

 

「別に良いだろうがよ、喧嘩上等だ。俺が一番、このデカい喧嘩をやりてぇんだよ」

 

「ついでに、亰嗟の奴らを引きずり出してボコしてしまえば、センターのやり方自体も元に戻せるかもしれないしね」

 

「お〜鬼丸と桃丸かっこいい!」

 

な〜んて鬼2人はカッコつけてたけど、酒呑童子の頭の上に美瑠がヒョコリって乗っかって角を引っ張ってたからカッコ良さ半減なんですよ。

美亜も必死で美瑠を酒呑童子の上から降ろそうとしているけど、やっぱりというか美瑠は鬼2人にベッタリしているみたいだ。あんな楽しそうな笑顔を浮かべているし、余程気に入られたんだな。

 

「それに、いつまでも綾さん達ばかりに負担をかけ続ける訳にもいきませんから・・・私だって、綾さんの力になりたいんです」

 

「美弥子・・・」

 

すると、今度はいつの間にやら私の後ろに居た美弥子がギュッと抱きついてきていた。

どうやら、"剥奪の妖術"で自分自身の存在感を薄めていたみたいだね。まさか、ここまで近づかれても気付かないなんて、まだまだ私も修行が足りないかな。

 

「鞍馬天狗よ。この酒呑童子の提案、受けて貰えないだろうか」

 

そして、酒呑童子の後ろから前センター長を勤めていた達磨百足さんも姿を現した。

 

「俺が長をやる。長年の付き合いのお前にも、こんな負担をかけ続けさせたくはないからな」

 

なるほど、どうやら達磨百足さんも酒呑童子の提案を聞いて、此処の皆の力になろうと立ち直ってきてくれたんだね。

 

「むぅ・・・しかし、危険過ぎる」

 

だけど、まだ椿の爺さんは提案を受け入れるといった様子ではなさそうだ。

 

「既に此処は、勝手に依頼を行っているという理由でセンターに目を付けられ、亰嗟から襲撃をされとる。椿が戻ってからは少なくなったが・・・」

 

「あっ、それなら家の近くに居た怪しい半妖の人達がそれだと思ったので、僕が倒しておきました」

 

「むっ、そうか――なぬっ!?」

 

「もっと言っておくと、私もちょくちょく家の周りをパトロールして怪しい奴らをブッ飛ばしてたんだけどね・・・」

 

「なんとっ!?」

 

やっぱり椿の爺さん、働き過ぎで疲れて反応が遅れちゃってるよねコレ。

それにしても、椿の方が私よりも怪しい奴への対応速度が早いのは、何というか守っていた立場からすると複雑な気分だよ。本当なら、私が椿に負担をかけないよう皆を守らないといけないのに・・・。

 

「鞍馬天狗、お前が無茶をしているのは分かっている。昔、一緒に仕事した仲を舐めるなよ。それに見ろ、この案件。ウッカリ見過ごしているだろう」

 

「うぬ・・・」

 

「お前は昔から、こういうのが苦手だったよな?だから、無茶はするな。もう俺は大丈夫だ、鞍馬天狗。お前は皆を纏める事に徹しろ。それが一番得意な事だろう?」

 

その達磨百足さんの言葉で、椿の爺さんは一瞬押し黙ってしまう。

古い付き合いだからこそ、正に対等に意見出来る間柄で話せるのは、爺さんにとっても色々助かる所があるハズだもんね。

 

「納得出来んが・・・確かに、受け身ばかりでは事が進まんのも事実か。やむを得ん・・・皆、すまぬ。更に危険な事になると思うが、酒呑童子の案を受け入れようと思う。他の者には今晩説明をするが、今この場に居る者で異論があるなら――」

 

「「「「「ある訳ない!!」」」」」

 

「むっ?何故全員、いつの間に此処に集まっとる?」

 

いやいや・・・本気で身体大丈夫ですか、爺さん?

達磨百足さんが部屋に入って来た時に、他の皆も一緒に来てましたよ・・・。

 

「大丈夫ですよ、翁!こっちには切り札的な2人が居るんですから!ねっ、椿ちゃん!綾ちゃん!」

 

「えっ、僕ぅ!?」

 

「そこ丸投げかよ里子!?いや確かに、というかとは言ってもさ・・・」

 

「そうね。椿も綾も狙われているから、簡単に切り札に出来るとは言い難いわよね。だけど、その点なら私の方が切り札になれるわよ」

 

そう言って美亜は、私と同じくらいに無い胸を張って自信満々な様子を見せる。でも、そろそろ家の周辺に仕掛けられてる呪術だけは解除して欲しいんだけど・・・アレ、家へ帰って来た時とか引っかかりそうになるから一苦労なんだよ。

 

「美亜の言う通り、椿と綾は切り札じゃない。本来だったら守られる側。つまり、こっちのお姫様だから・・・私が2人を守る。切り札と言うなら、それこそ私。全部凍らせるから」

 

「ちょ、雪もかよ!?」

 

「それに元から女の子の綾ちゃんは兎も角、僕はお姫様じゃないってば!」

 

「そうそう・・・って、えぇ!?」

 

椿も椿で私にお姫様を押し付けるなや!

雪みたいな事を言うつもりはないけど、私だって椿を妖怪の世界に関わる前から守ってきたんだぞ!

 

「む〜、椿ちゃんと綾ちゃんが切り札です!2人共むちゃくちゃ強くなっているんですよ?分からないんですか!」

 

「里子ちゃん、あの・・・ちょっと落ち着こう?」

 

里子も里子で私達を持ち上げちゃってるし・・・というか、わら子に頭を撫でられて尻尾振ってるのを見ると、何か飼い犬っぽい感じがするな。

 

「――はっ!椿ちゃん、綾ちゃん・・・こ、これは違うの!いつもご飯を持って行っていたら、お礼に頭を撫でられて、それで・・・あの、その〜・・・」

 

「いや、うん。別に私も椿も怒ってないけど」

 

「僕達に謝らなくても大丈夫ですよ、里子ちゃん。それに僕は、皆が仲良くしてくれていて良かったと思います」

 

すると、椿は何故かわざとらしい笑みを浮かべて尻尾をフリフリと動かし始める。

 

「椿ちゃん・・・そ、それなら何で尻尾を立ててるのかな?怒ってる、よね?」

 

「別に〜僕には"新しいペット"が居ますから〜」

 

「えっ?つ、椿姉さん?自分、ペットっすか!?」

「ちょっ・・・椿お姉ちゃん酷〜い!」

 

そして、そのまま椿は近くに居た楓と菜々子を抱き寄せて、フンスと少しむくれたような表情になっていたよ。うん、やっぱり怒ってますねコレ。

 

「つ、椿ちゃん・・・ぐすっ、ごめ・・・うぐっ」

 

「わ〜!!ごめんごめん!冗談だってば!里子ちゃんの方がペットっぽいし、君を嫌いになったりしてないですから!!」

 

あーあ、泣かせた〜・・・って、里子は何でニヤリとしながら懐から何かを取り出しているんデショウカ?

 

「じゃあ、はい。コレ、私に着けて♪」

 

「何かと思ったら隷属の首輪かよ!」

 

まさかと思った私は、椿と共にわら子の方へと振り返る。自然な流れにしちゃ随分と上手く出来過ぎてる気がしたからね。

 

「わ〜ら〜子〜ちゃ〜ん?」

 

「な、何の事かな・・・わ、私、知らないよ〜」

 

「オドオドしたってダメ!」

 

「誤魔化すの下手だな!その態度見ただけでバレバレだし、それに口笛吹いてるつもりでも全然吹けてないし!」

 

ま〜るで何処ぞの誰かさんみたいな誤魔化し方しよって・・・というか、多分じゃないけど間違い無く影響受けてるよね。これもやっぱり、椿とは長い付き合いだから〜という奴かな。

 

そんな事を考えていると――

 

「うむ!よし、決めたぞ!此処を今より、"第2の妖怪センター"とする。達磨百足、依頼の方を頼んだぞ!」

 

「おう、任せろ!」

 

うん、いきなり大声出すから何だと思ったわ。

私達があ〜だこ〜だと駄弁ってる内に、悩んでいた椿の爺さんも決意が固まっていたみたいだ。

 

まぁ、新しいセンターがやってる事は公的機関からしたら完全にブラックそのものだし、私達に敵対してくる以上は同じ組織を纏めあげてしまって、組織全体の力量で上回るのが的確かもね。きっと、新しいセンターに反発する妖怪達も結構居そうな事だし。

 

「そして、このセンターの要はお前達だ!椿、綾、里子、座敷わらし、美亜、雪、楓。お前達はチームを結成し、任務に当たれい!」

 

「「「「「「「え〜!?」」」」」」」

 

なんて思った矢先に椿達と一緒になってビックリしたわ!!

チームで動くのは良いとしても、あの狐2人とかが一緒じゃないなんて・・・別に不安って訳じゃないけれど、それでも不安な事は不安だよ。

 

それに里子までチームに入れるって、椿の爺さんは一体何を考えて言っているんだろう?

 

「翁!何で私まで!?私、お給仕が・・・」

 

「儂が気付かんとでも思ったか、里子。半年前の事件から、お前さんは夜遅くまで眠気を堪えながら、コッソリと必死に訓練をしていたじゃろう?」

 

「わぅっ!?お、翁・・・見ていたんですか!?」

 

なるほど、それなら椿の爺さんも里子を私達と一緒に任務をさせようって気になるよね。

 

皆それぞれが、椿も私も守ろうと努力してくれている事に、ついホロリと涙が出そうになっちゃったよ。

 

だから・・・皆にそんな心配をさせない為にも、私は今まで以上に椿や皆を守って頑張らないと。

 

「白狐に黒狐、良いか。以前のように、危機的な状況以外には手を出すな。出来る限り、椿達にやらせるんじゃ」

 

『うむ、分かった』

 

『今の椿なら、殆どの任務をこなせるだろう。だが・・・』

 

「言いたい事は分かっとるわい、黒狐。亰嗟が狙って来た時や華陽と下僕の4人が来た時には、シッカリと守ってやれ。しかし、お前さん達2人の命を犠牲にせずにじゃ。分かったな?」

 

その爺さんの言葉に、狐2人は「そんな難しい注文を」と言いたげな顔をしているけれど、それは当然と言えば当然な話だ。

 

なんせ、狐2人が目を覚まさなかった時でも椿は酷く落ち込んでいたと聞いているし、2人が死んでしまったとなれば、幾ら親友の私でも椿を立ち直らせられる事は出来ないかもしれない。

 

「白狐さん、黒狐さん。2人は絶対に無茶して椿を助けようとしないで。自分達を犠牲にして守られたら、残された椿が可哀想でしょ?」

 

「綾ちゃんの言う通りです、白狐さん黒狐さん。そこまでされて守ってもらっても、僕は嬉しくないって言ったよね。それに、2人は僕と結婚したいんでしょ?もし死んじゃったら、その楽しみが無くなっちゃうよ」

 

困り顔の狐2人に喝を入れるように、私と椿は彼らの目を真っ直ぐに見て注意の言葉を送った。

私からしたら悔しいけど、もう椿には2人がそれだけ大切な存在になっているって事を自覚して欲しいんだよ。

 

すると、2人共ビックリしたように目を見開いてからパチクリと椿を見てくる。

 

『つ、椿よ・・・正直に言うと、我らは既に半分程お主の事を諦めておったわ』

 

『う、うむ。少し色々と押し付け過ぎた。それに、お前は香苗という半妖の子をまだ――』

 

「そーいう時にこそ、椿に寄り添ってあげるべきだったと思うんだけど?まぁ、1人で引きこもってた私が言えた義理じゃないけどさ」

 

あの時、本当なら私が2人の代わりに椿を支えなきゃいけなかったのを思い出すと、今でも「何やってんだよ、私!」って自分で自分をブン殴りたくなるのに・・・まだまだ理解不足な狐2人には、椿の事を完全に任せきれませんっての。

 

「こんな事で僕を諦めるの?僕はもう、どっちと結婚するか決めているのにさ〜」

 

『なぬっ!?』

『何!?』

 

「へぇぁっ!?椿、い、いいい一体どっちだ!どっちと結婚するつもりなんだぁ〜!?」

 

「椿ちゃん!どういう事!?も、もう決めていたの〜!!」

 

「椿・・・やっぱり私じゃなくて、そっちなんだ。いや、私は綾の嫁だから良い。でも、やっぱり気になる・・・教えて!!」

 

ぎゃあ!ちゃっかり私の腕に抱きついて来るなって雪はさぁ!!今更ツッコむのも野暮だけど椿も椿で、他の皆も居る所で何でこんな告白染みた台詞を言っちゃうかな〜!?

 

私だって、まだ椿の事は――って、雪が私の婿宣言してるし、コレは二股になるのかな?

・・・いや、落ち着け私!今は混乱してるだけで、多分何か盛大に間違ってるぞ!

 

「皆、ちょっと落ち着いて!ちゃんと、全部の問題が片付いてから答えるから!」

 

『ふっ・・・よし。それならすぐに終わらせるぞ、黒狐よ』

 

『そうだな。いよいよ決着の時だぞ、白狐』

 

皆を引き離しながら椿が言った言葉ですら、今の狐2人には火にガソリンを・・・なんて思ってたら、何か椿が2人の耳元で囁いてから頬にキスをしていたよ。

 

『ふん、なるほどな・・・だが、まだ勝負は決していないという事か。良いだろう、俺は諦めんぞ!白狐!』

 

『やれやれ・・・このまま諦めよ、黒狐よ』

 

あ、黒狐さんが負け惜しみみたいな事を言ってる。

何となく白狐さんに対してのキスが長かったような気がしたけど、一体椿は2人に何を言ったんだろう?

 

少なくとも私から見ると、黒狐さんは妲己さんの事で何かありそうな雰囲気がするし、椿は白狐さん寄りな感じはするかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。