私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陀話 初めてのチーム分担作戦・・・ってコレ、ピンチ過ぎない?

 

――その翌朝。

 

私達は椿の爺さんから地下の大ホールへと呼び出され、そこでチームとして"ある依頼"を言い渡された。

 

内容としては、妖界と人間界を繋いでいるポータル的な扉の幾つかが何者かに占拠されたので、その内の2つを私達で奪還に向かって欲しいという事だそうな。

 

何者かについては最早見当も何もバレバレな感じだけれど、その任務で私達の担当する場所が2つって事は、初めてのチーム分担作戦・・・ってコレ、ピンチ過ぎない?

妖界と人間界が繋がってる扉が幾つも占拠されてるなんて、ファンタジー物なゲームとかで言ったら自軍の拠点の目の前まで敵が入り込んでるような状況じゃん。

 

そんな疑問どころじゃない話を口にしようとしたけど――

 

「上級ライセンス持ちが3人居る時点で、お前さん達はプロの奴らとほぼ同じレベルじゃ」

 

アッハイそうですか。プロの仕事だとか無理難題とか言う文句は受け付けそうにありませんわね、コレ。

 

「それと、昨日お前さん達はリーダーを誰にするかで揉めとったようじゃが・・・椿よ、リーダーはお前さんがやれ。そして、綾も副リーダーとして椿を支えてやるのじゃ。これは命令じゃ」

 

「や、やっぱりですか・・・」

 

「予想はしてたけど、私が副リーダーか・・・うん、何とか頑張ります」

 

私としては、椿の爺さんに文句を付ける理由も何も無いからね。副リーダーくらいなら、自分の出来る範囲で椿をサポートしていくつもりだよ。

 

美亜が「どうして副リーダーにもなれないんだ」って不満そうな目で、ジッと私の方をめっちゃ見てくるけど、これも椿の爺さんからの指示だからか文句を言ってくる様子は無い。

 

それから、私達は初めて来たばかりの大ホールから出て、早速ながら問題の現場へと向かうべく、センターの施設同様に達磨百足さん達が書類を捌いている、沢山の机が並べられた大ホールの中央を進んでいく。何となく構造的にもセンターと似ているし、もしかしたら昔は此処も妖怪センターとして使われていたのかもね。

 

「それにしても、椿の爺さん家の地下にあんなデカいホールがあったなんてな・・・初めて来たとはいえ、ちょっとビックリだわ」

 

「ずっと変な扉があったのは知ってたけれど、鍵が掛かってて"開かずの間"として家で有名だったからね。僕もまさか、あんな大ホールになってるなんて思いもしなかったよ」

 

そんな事を話し合いながら、私は途中で椿と美亜、そしてわら子の3人と別れて、そのまま雪と里子を連れて乗っ取られた場所の近くに繋がる扉の前へと立った。

 

「さて、と。じゃあ一丁いきますか!妖異変化、"怒髪天・朱雀"展開!!」

 

「うん!サポートは私と雪ちゃんに任せて!」

 

「綾が強い敵に集中出来るように、こっちも全力で頑張るから」

 

気合いを入れながら私達は扉から妖界へとワープし、妖魔がアチコチにひしめいている街中の物陰を素早くかつ慎重に進んでいく。

 

私達の来た場所は椿達の担当する東寺とは反対側にある、あの有名な清水寺の近くだ。

此処には今まで妖魔絡みの事件が起こった事は無かったらしいけど、こうして大量に妖魔が出てくるようになったって事は、何かしら華陽達が関わってきている可能性はあると思った方が良いだろうね。

 

妖界の方だと椿達の担当してる所とは違って、街中じゃないから交通は少ない方だ。

でも、此処は観光地として有名だから妖魔を放置すれば、いつ人間界の方に現れて人を襲うかも分からないし、なるべく早めに扉を取り戻して妖魔を殲滅しないといけないな。

 

「やっぱりというか、扉の前に1番強い奴が陣取ってるっぽいな」

 

ひとまず大まかに感知能力で見た感じは、高い所からの見晴らしが良い三重塔の周りに妖魔が1番集まっているみたいだから、そっちの方へ進むのは避けたい所だけど・・・

 

「下手に回り道して向こうで見つかったら、後ろから挟み撃ちにされそうだな・・・う〜ん、何か良い方法無いかな〜」

 

「それだったら、綾。私が、通る道の途中に氷の妖術で罠を仕掛けておく。こうしておけば、もし行く先で見つかっても後ろから来る増援の足止めにはなるハズ」

 

「じゃあ私は、先頭に立って綾ちゃんと雪ちゃんを見つからないよう案内するよ。この中だったら、綾ちゃんの感知能力より、狛犬としての私の嗅覚の方が良いと思うの」

 

確かに私の感知能力は、椿と同じくらい優れている。だけど里子の言う通り、そう簡単に敵の位置を特定出来る訳じゃない上、それに集中し続けるのもキツいのは事実だ。

2人がサポートしてくれると言ってくれているなら、今は彼女達に任せられる事は任せてしまうのが良い判断だろう。

 

「・・・了解だ。雪、里子。前と後ろは任せるよ」

 

「うん、ちゃんと頑張るね!」

「綾、私と里子を信じて」

 

「おう、当ったり前だい!」

 

――それから十数分後。

 

私達は里子の嗅覚で妖魔を避けつつ、通った道に雪の妖術による罠を仕掛けながら、ようやく1番強い妖魔の陣取る扉がある、清水寺の本堂を支える懸造り(かけづくり)の近くまでやって来た。

 

そこは案の定、清水の舞台にまで妖魔がウジャウジャしており、そのどれもが昆虫に寄生した妖魔のようだ。

 

「うわぁ〜・・・道中で会ってなかったから分からなかったけど、こんなキモイ奴らばっかり居たのかよ」

 

「ご、ごめんね、綾ちゃん。その事を伝えたら多分、綾ちゃんが気絶しちゃうかもと思ってたから」

 

「そういえば、綾は虫がダメだって言ってた。特に芋虫とか毛虫」

 

里子と雪が苦笑いするのを他所に、私は丁度良さそうな例えが近くにあったのを見つけて、それをポンポンと叩く。

 

「そうそう、例えばこ〜んな感じにモジャモジャしてるようなさ〜」

 

「ねぇ、綾ちゃん?そ、それってひょっとして・・・」

 

「その大きさ、多分"普通の"毛虫じゃないと、思う」

 

「えっ?・・・あ」

 

その瞬間、私の脳裏には自分が見てきた芋虫やら毛虫やらのワサワサウゴウゴしているイメージが走馬灯のように駆け巡り、そして――

 

「でぃぃぃぃぇぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

全身に鳥肌と恐怖を感じたと同時に、ほぼ反射的に私は叩いた方の手の平から最大出力で風の妖術を発動した。

 

「わぁぁ!綾ちゃん、ストップストップ〜!」

 

「というか、もうこれだと敵にバレバレ」

 

「――はっ!し、しまった〜!」

 

やっべー!こんな、声にもならない声で絶叫しながら巨大な毛虫を隠れてた森ごと吹っ飛ばしてしまった!!

 

うん、バカだ私!!なんで今のを妖魔だとかって疑問にも思わなかったのか自分でもツッコミたいわ!!

 

そのせいで清水の舞台に居た妖魔達も一斉に私達の方に振り返っちゃったし、これじゃあ隠密してきた意味無いじゃん・・・私のアホ。

 

「ギ、ギィィ?キサマラ、ナニモノ?」

 

すると、こっちに集まろうとする虫の妖魔達を制するようにして、大群の中から清水寺を覆い隠す程に大きなトンボの妖魔が姿を現した。

 

いや、待てよ・・・ここまで来といて今更だけど、妖魔は"負の感情"に縛られてて、意思疎通どころか人の言葉も理解出来ない奴が殆どだったハズだ。

そんな奴らが1箇所に集まってる上にアチコチを警備するような行動をしてるって事は・・・まさか。

 

「なーるほど、お前が此処の妖魔を取り仕切ってる親玉って訳か」

 

そう私が答えると、そのトンボの妖魔からは物凄い殺気が発せられた。雪が殺気に圧されて目を細め、里子は全身の毛を逆立てて威嚇するような素振りを見せている。

 

「コノバショ、ワレワレニトッテイチバンスゴシヤスイ。コウシテチカラヲエタコトデ、ヨウヤクイゴコチノヨイバショニデキル。ジャマヲスルナ」

 

「交渉の余地無し、って感じだね。妖魔に寄生された可哀想な虫だと思ってたけど、そんな危ない事するなら全力で叩き潰してやるよ。私達の方だって、此処は大切な場所なんだ!」

 

私は巾着袋から麒麟甲を呼び出しながら氷霰剱を取り出し、そのまま剱に妖気の砲身を作り出して、巨大なトンボ妖魔へ目掛けて妖術を発動する。

 

「堕ちろカトンボ!妖異顕現、火雷神の気砲(ほのいかずちのかみキャノン)!!」

 

妖気の砲身を呑み込むように極太の熱線が一直線にトンボ妖魔へと向かっていく。だけど――

 

「フン、オロカナ・・・オマエタチ、ワレヲマモレ!」

 

トンボ妖魔は虫の妖魔を大量に自身の前へと呼び寄せて私の妖術を防ぐ為の盾を作り出し、ジュッ!と一瞬だけ手持ち花火を水に浸けたような音と共に、私の撃った熱線を上空へ逸らしてしまった。

 

今のはマズったな・・・所詮は虫だからって効果バツグンな火の妖術で何とかなると思ってたけど、あんな風に虫の妖魔を操れられるなんて予想外だったぞ。

 

だけど、その程度で私は勝てると思ってないよ!

 

「ナント、バカゲタイリョクダ・・・ダガ、ムシヲスベルワレガイルイジョウ、キサマラニカチメハナイ」

 

「勝ち目だろうが何だろうが、そいつらも纏めて私が浄化してやるよ。私は爺さん――じゃなかった。鞍馬天狗の翁と、第2のセンター長である達磨百足さんから、捕まえるのが無理だと判断した"負の感情"を持つ邪悪な奴を、容赦なく浄化しても良いって言われてるんだからな!」

 

「ホザクカ、ニンゲンゴトキガ!!」

 

すると、トンボ妖魔は他の妖魔達を集めて砲身のような形にさせて、それに妖気を集中させ始めた。

これは・・・まさか、今さっき私がやったのと同じようにして、自分の身体にある大量の妖気で私達ごと清水寺を吹っ飛ばすつもりか!

 

「くっ・・・」

 

「綾ちゃん、落ち着いて」

「大丈夫、私と里子も居る。何の為のチーム?」

 

焦りそうになった私の手を里子と雪が優しく握ってくれた事で、私のスッと心の中にあった重い物が軽くなる感じがした。

 

そうだ、今は私1人で戦っているんじゃない。

雪も里子も、皆が自分に出来る事を全力でやって、それぞれがチームの一員として頑張っているんだ。

 

「よし、もう1発ブッ放す!雪!里子!私の腕に妖気を集中させて!」

 

「うん!」

「分かった!」

 

再び私は地面に突き立てた氷霰剱へ妖気を込め、2人が分けてくれた妖気も合わせて先程より大きな砲身を作り出す。

 

そして――トンボ妖魔の一撃と私達の一撃、それは同時に放たれた。

 

「ぐっ・・・くぅぅうう!!」

「く、うぅぅぅう!!」

 

上空でぶつかり合うトンボ妖魔の妖気砲と私達の火雷神の気砲。それでも、雪と里子は衝撃に呻きながらも私へと妖気を与えてくれた事で、勝敗はすぐに決した。

 

「シマッタ・・・ヨウキガ、モウ・・・」

 

「消し炭に、なりやがれぇぇええ!!」

 

トンボ妖魔の砲身から妖気が尽きた直後に私達の放っていた火雷神の気砲が競り勝ち、一瞬にして砲身となっていた虫の妖魔達ごとトンボ妖魔を跡形もなく焼き尽くした。

 

「か、勝った・・・やった〜!」

 

「凄い力だった・・・でも、やっぱり綾は強い」

 

「はぁ、はぁ・・・つ、疲れた〜・・・本当、2人のお陰で何とか勝てたよ・・・ありがとう」

 

その場にへたり込んだ私達は、花火のように弾けて残った妖魔を焼いていく火雷神の気砲を見ながら、ゴロンと横になって椿の爺さん達へと連絡を入れるのであった。

 

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