私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾捌話 もうカチコミしてくるのかよ!?

 

その後、椿達の方も扉を占拠していた妖魔を倒したという報告がこっちにも入って、ようやく私達は大きく一息ついて清水寺の舞台で座っていた。

 

「どうやら報告によると、椿の方で戦ってた妖魔も寄生してた奴だったみたいだけど、寄生されてた妖怪が"負の感情"に囚われてたから、私達の方と同じように本体ごと浄化したらしいね」

 

「そっか・・・椿ちゃん、大丈夫かな?」

 

「椿も、綾みたいに他人を優先するから心配」

 

「里子も雪も、あんまり心配すんなって。自称1番最初の親友な私が言うのもアレだけど、椿はああ見えて自分の中でハッキリと善悪を見極められる所があるんだからさ」

 

そう言って2人に笑いかけていると、そこへわら子から電話がかかってくる。

 

「ほい、もしもし?」

 

『あっ、綾ちゃん!良かった〜そっちも無事そうで!ちょっと、こっちで捕まえた妖魔を巻物に封じるのを手伝って欲しいの!美亜ちゃんに呪術の罠を張ってもらっていたんだけれど、結構な数で人手が足りなくって〜!』

 

「ん、了解だよ。私達の方は殆ど虫に寄生した妖魔が相手だったから大体片付いているし、すぐそっちに向かうわ」

 

『ありがとう!後で良い感じに撮れた椿ちゃんの尻尾の写真を――』

 

わら子が言い終わらない内に、ピッ!とスマホの通話画面を閉じたわ。うん・・・見てない所で何やってるんですかね、あの子は?

 

「ほいじゃ、とりあえず椿達の仕事の後始末を手伝いに・・・って、これだと雪も里子もすぐには動けなさそうか」

 

「ふぃ〜ヘトヘトで立ち上がれないよ・・・ごめんね、綾ちゃ〜ん」

「わ、私も・・・こっちは放っといて大丈夫だから、綾だけでも行ってあげて」

 

「は〜、2人共・・・そんな事を言われて、私が"ハイそうですか"って置いていける訳ないでしょ〜が」

 

私はへたり込んだままの2人を子犬のように両腕で抱えて椿達の方へと走り出した。雪も里子も椿の事が心配なのは私でも分かるんだから、こういう時くらいは無理せず、私に"運んで"って言ってくれても良いんだぞ。

 

「は、はぅぅ・・・こんな風に綾ちゃんに抱っこされるのも良いかも・・・」

 

「お姫様抱っことは違うけど、これはこれで」

 

・・・おし、今のは聞かなかった事にしとく。

 

――それから数分後。

 

『黒狐よ。我らは・・・別に来なくても良かったのでは?』

 

『うっ・・・椿の方も綾の方も、物凄い妖気を感じてスマホで調べたら大妖の妖気だったから、これは2人共に助けが要るかと思ったのだが・・・この様子だと、もう解決してしまっていたよう・・・だな、うん』

 

「あっ、白狐さんも黒狐さんも来てたんだ」

 

「あれ?白狐さん黒狐さんだけじゃなくて、綾ちゃん達も来てくれたんですか?」

 

狐2人と同時に到着した私達へ、椿は忙しなさそうに巻物へ妖魔を封印しながら振り返ってきた。

 

『う、うむ。翁の家に居ても感じる程に強力な妖気だったのでな。翁から許可を得て、急いで飛んで来たのだが・・・椿に綾よ、まさか2人共に倒したのか?』

 

「あっ、はい。僕が倒した妖怪さんは、寄生する妖魔に取り憑かれていたのに抵抗する意思も無かったようなので、浄化する他ありませんでした」

 

「私の方も、同じくだね。こっちは虫に取り憑いてたのもあってか、単純に清水寺を自分達の縄張りにしようとしていたから全力で駆除してきたよ。そうだ、どうせなら2人も妖魔を巻物に封印するのを手伝ってよ。さっきの戦闘で、私も椿も妖魔を浄化出来るだけの妖気があんまり残っていないんだ」

 

『うむ、了解じゃ』

『よし、分かった』

 

それにしても、美亜の仕掛けた呪術で東寺の3分の1を覆い隠すくらいに大きくなった樹木のサイズにもビックリだけど、それ以上に樹木の蔦や根に捕まえられている妖魔の数も私達が担当した清水寺の数とは比にならない量なのが驚きだな。

 

「うっわ〜・・・なんつー数だよ、コレ。わら子、コイツらって半年の間に一気に増えたのか?」

 

「うん、そうだよ。椿ちゃんと綾ちゃんが修行をしている間に、どうやら目に見えない所で着実に数を増やしてたみたいなんだよね」

 

「やっぱり、そうでしたか・・・それでも皆は、今まで僕達が修行に集中出来るように頑張ってくれていたんですね。ありがとうございます」

 

「え、えへへ・・・」

 

椿に褒められて照れくさそうに笑うわら子にホンワカしながら妖魔を巻物へ封印していく私だけれど、椿は何故か何処か不満そうな表情をして狐2人を見ている。

 

「あの・・・白狐さん黒狐さん、それだけ?」

 

『ん?あぁ、驚いてはおる。だが、とりあえず妖魔の方を――』

 

「あっ・・・うん」

 

おーっと、椿は2人に褒めて欲しかった感じかしら。でもまぁ、まだ任務は完全に終わっていない訳だし、今はお預けといった状況になるよね。

私も椿を褒めたいけれど、実力のある狐2人とは立場が全然違う訳だから、互いに「大変だったね〜」で終わっちゃうのは間違いないんだよな。

 

「椿、可愛い・・・」

 

「うんうん、分かる〜」

 

「何がですか、雪ちゃんに里子ちゃん!?」

 

だけど、その椿の様子を見て雪も里子は普段通りにホッコリした笑顔を浮かべているよ。見るからに椿の気持ちはバレバレだし、これは弄られても仕方ないとは思うけどね。

 

『何はともあれ・・・良くやったな、椿。』

 

「あっ・・・」

 

そんな事を考えていると、黒狐さんが一足先に椿の気持ちに気付いたようで、後ろから彼女の頭をポフッと軽く撫でていた。

 

「良かったじゃん、椿。褒めて欲しかった内の1人に褒めてもらえてさ。私も、椿は良く頑張ったって思ってるよ」

 

「あぅ・・・黒狐さんも綾ちゃんも、ズルいですよ・・・」

 

『はっはっは、白狐には負けてられんからな。前にも言っただろ?俺はまだ、諦めないぞってな。それで・・・どうだ?俺の方に気持ちは傾いたか?』

 

そう言って、そのまま黒狐さんは椿に顔を近づけていく。椿も、そんな黒狐さんの行動に赤面しながら目を閉じちゃった時――

 

「黒狐さ〜ん?な〜んか、白狐さんが怒ってるみたいだけど?」

 

『離れんか、黒狐!!おのれ、我とした事が・・・横取りされる可能性を失念しとったわ!』

 

『おっと〜?自分に傾いているからって油断する方も悪いと思うぞ、白狐よ。こうして俺も綾も、椿を振り向かせようと日々努力をしているんだからな』

 

「そうそう、自分の大切な人は常に傍に――って、黒狐さんオイ!私まで巻き込まないでくれます!?」

 

そこへ更に白狐さんも椿と黒狐さんの間へ割って入って頭をなでなでし始めて、もう3人の空間はしっちゃかめっちゃかな糖分塗れになっちゃったぞ。

か、完全に私の入り込むタイミングを逃したわ・・・くそぅ。

 

「へぇ〜・・・まだ任務中なのに、よく3人でイチャイチャする暇があるわね〜」

 

「わぁ〜!?み、美亜ちゃん!後ろから蔦が、蔦が出てるって〜!!」

 

なんて思ってたら、美亜がジェラシー拗らせて暴走しそうになってたぞ。怒る気持ちは分かるけど、まだ妖魔を全部捕まえてないんだから我慢して欲しいよ〜トホホ。

 

『よし、椿に綾よ。とりあえず、今は妖魔を処理するぞ』

 

『待て、白狐。それは椿達にやらせろと、そう翁に言われただろ。俺達は見ているだけにするんだ』

 

「ちぇ〜白狐さんと黒狐さんのケチ〜」

 

「仕方ないよ、綾ちゃん。これ以上、美亜ちゃんが怒る前に早く任務を終わらせちゃいましょう」

 

――それから数十分後。

 

「白狐さん黒狐さん、終わった?」

 

『ん?あぁ、何とかな』

 

ようやく蔦に捕まっていた妖魔を全て封印した私達は、狐2人が妖魔の独自に開けた人間界と妖界を繋いでいた空間の穴を閉じたのを確認してから、椿の爺さんへ報告する為に帰る準備を整えていた。

 

だけど、その瞬間に私と椿は遠くの方から、4つの強く凶悪な妖気が向かって来ているのを感じ取る。

 

「この妖気は――滅幻宗の幹部だった4人だ!」

 

「ええ、そのようですね・・・白狐さん、黒狐さん!早くおじいちゃんの家に戻りましょう!」

 

『何!?』

 

『チッ・・・この騒動から、椿と綾がやったと断定したのか?』

 

まさかこんな時に連中が襲って来るなんて、これは早めに椿の方へ手伝いに来てて、私達はある意味ラッキーだったかもね。

 

『それなら丁度良い、ここで――うぉ!?』

 

「な〜に戦おうとしてんですか、狐2人は」

 

「まだ今の僕達じゃ勝てないんだから、このまま逃げますよ」

 

『ぬっ、そうなのか』

 

『くっ・・・感知能力の高い2人が言うなら、間違いは無いか』

 

「そうそう、椿の言う通り"三十六計逃げるに如かず"ってね」

 

「それを言うなら――って、あれ?嘘でしょう、綾ちゃんが諺(ことわざ)を間違えてないなんて!」

 

シレッと失礼な事を言わなかった、椿〜?

まぁそれは置いとくとして、こうして迫って来ているなら華陽も幹部4人も私達の居る妖界へ来ていたみたいだね。何の為に妖界に居たのかは知らないけど、きっとまた何か良くない事を企んでいてもおかしくないな・・・そうじゃなきゃ、わざわざこんな回りくどい手で私と椿を狙っては来ないだろうし。

 

でも、そこに湯口先輩もいるとするなら――

 

「綾ちゃん、馬鹿な真似をしようとは考えないで。気持ちは分かるけれど、今は皆が無事に帰る事が先だよ」

 

「くっ・・・分かったよ」

 

椿に厳しい声色で諭されて、私は悔しい想いを胸に押しとどめながら、皆の後に続いて爺さんの家に繋がる扉へと入る。

 

すぐに先輩を助けられないのは辛いけれど、それでも何時かは対峙する時が来る。その時になったら、私がオジサンとの修行の末に思い出す事が出来た"ある神術"で、絶対に先輩の心も身体も取り戻して見せるから・・・だから待っててね、先輩。

 

そう思いながら、椿や皆と共に家へ戻って来ると――

 

「おぉ!白狐に黒狐、椿と綾も戻ったか!戻って来て早々で悪いのじゃが、この家が現センターの襲撃を受けておる!すぐ対処に向かってくれ!」

 

「「嘘(だろ・でしょう)!?」」

 

何で大ホールに居る皆が騒々しくしてるのかと思ってたら、それが原因か!っていうか、もうカチコミしてくるのかよ!?

 

『おのれ・・・向こうにも、この強力な結界を破れる力を持つ妖怪がいるのか?翁、亰嗟の連中は!?』

 

「まだ確認しとらん!とにかく、お前さん達も急ぐんじゃ!敵の数が尋常じゃない!」

 

「一体どんだけ・・・うわ、100や200は軽く超えてるのかよ!」

 

感知能力で認識出来た奴らだけでもコレなんて、流石に普通に相手してたら数の暴力で勝ち目は無さそうだな。

 

「全く・・・酒呑童子も伊吹も、椿と綾が戻れば問題ないと言って何処かへ行きよって!2人だけではどうしようもなかろうが、あやつら!」

 

そして鬼2人も不在、と。なるほど・・・こうなったら、少し前に椿と特訓して新しく編み出した、対多数戦用の戦法を使うしかないね。

 

その事を直感した私は、同じ結論に至った表情をした椿と互いに頷き合う。

 

『おい、椿も綾も急いで――って、何しとるんじゃ2人共!?』

 

「ん・・・ちょっと静かにしてください、黒狐さん。これをするの、調整が難しいんです」

 

「う、ぐ・・・まだ1回しか成功してない手段を、こんな早く使う事になるなんてな。あの鬼2人、後でどんな説教食らわしてやろうかってんだ」

 

みるみる内に"神妖の力"で姿を変えていく私と椿に皆は勿論、椿の爺さんですら目を丸くして驚いている。

 

「つ、椿・・・お前さん、尾が2つに・・・!?それに綾も、その姿は・・・まるで妖狐のようではないか!」

 

確かに、こんな髪の毛と同じ銀色の狐の耳や尻尾が生えてきているなんて、初めて見る人からすれば今の私は妖狐そのものと言って良いように感じるだろうね。

 

そして椿も今までの"神妖の力"を解放した姿から、そこへ更に尻尾がもう一本生えている。

 

だけど、これも修行を続けて私達自身の妖気が高まってきたから出来るようになった姿だ。

この半年の修行で、私はカナを喪った時に暴走させた私自身の"神妖の力"――"鈍色の狐"の力を僅かだけど使えるようになったんだ。とはいえ、その僅かな力を出しているだけでも、身体の奥底にある"自分じゃない何か"に飲み込まれてしまいそうだけどね。

 

『椿の片方の尾が、金色に・・・これは、あの時の!?』

 

『綾の姿も、あの時に見たような姿に・・・よせ、2人共!それは――』

 

「ぼ、暴走の心配なら・・・無用だよ。ある方法で、何とか暴走しないように力を出せているから」

 

「そう、です。その力を出す瞬間に、"浄化の神妖の力"を間に挟んで・・・"繋ぎ"にしました」

 

ぶっちゃけた話、私も椿も自分自身の"神妖の力"を上手く発動するには、この"浄化の力"を橋渡しにする必要があると長い修行の中で分かったのだ。

それに半年前に暴走した原因も、その過程を怒りに任せてすっ飛ばしてしまったからだった事もね。

 

だけど、その正しく発動する方法を使っても私達の"神妖の力"は相当なものみたいで、少し使おうとするだけで炭酸飲料がペットボトルから吹き出すかのように膨れ上がってくるよ。

 

こんな状態だと私も椿も多分1回しか妖術は使えないから、その1回の妖術で襲撃して来ている奴らを撤退させられるようにしないと!

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