私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾話 既に滅んだ退魔の一族

 

その日の夕方は、椿と一緒に皆に持て囃されて珍しくオジサンからも褒められるわ、達磨百足さんからも「前のセンターのままなら、座敷わらしと同じ級に昇級しても良かった」と言われるだので大宴会状態だったよ。

 

その時は、私も椿も妖気を使い過ぎてヘットヘトだったから、沢山食べて風呂入って布団へダ〜イブだった――んだけど、まぁ今回は警戒し忘れてた訳でして。

 

翌朝になって、私と椿の布団がゴッチャになって合わさってたかと思ったら雪に楓、それに菜々子まで私達と一緒の布団で寝てましたわ!

 

「・・・なぁにこれぇ」

 

「うがぁ!こんな人数で布団に入れないって!!」

 

うん、こりゃ地味に暑いな〜と思った訳だわ。特に特に椿なんかモッフモフな妖狐だし、布団をバタバタさせて私ごと皆を追い出そうとしてるし。

 

・・・というか、何か私の尻の辺りが重い感じするんですけど?

 

「綾姉さ〜ん、まだ肌寒いっす〜。あっ、待って〜椿姉さんの尻尾も温かいっす〜」

 

「んぅ・・・本当だね〜楓お姉ちゃん。椿お姉ちゃんと綾お姉ちゃんの尻尾、お布団より温かくて気持ち良い〜」

 

「わーお、マジで尻尾生えてら・・・って、消えたけど」

 

「あ〜綾姉さんの尻尾が〜」

「もったいな〜い・・・」

 

なんと、"神妖の力"を使ってないのに私にも僅かな時間とはいえ、椿と同じような狐の尻尾が生えてしまっていたんですわ。

 

「雪ちゃん・・・いい加減、離れてくださ〜い」

 

「やだ。さぁ、ゆっくり二度寝を・・・」

 

でも、そんな事以上に椿はしがみついてくる雪を引き剥がそうと必死みたいだ。とりあえず尻尾が消えたから良かったけど、このままだったら色々と大騒ぎになる所だったかもね。

 

「僕は龍花さん達に呼ばれているので、今日は二度寝しません。だから雪ちゃん、尻尾から手を離して綾ちゃんの方に行ってください」

 

「なるほど、それなら仕方ない・・・綾、ゆっくり寝よう」

 

「ぎゃあ!私に負担を全部寄越すなって椿〜!」

 

その抜け出し方はズルいぞ!

というか「ごめんね♪」って感じで可愛らしく謝るジェスチャーしてからステテテーッ!で早足で行っちゃったし!

 

「それにしても、この状況どうしたら――ひゃうん!?」

 

「ん〜綾・・・胸の方も成長して、女の子らしくなってる」

 

「ちょ、ちょっと!何処触ってんだよ雪〜!」

 

「良いな〜私、全然育たない・・・妖気が増えれば、大人っぽくなるんでしょう?」

 

う〜ん・・・それは純粋な妖怪くらいで、妖気を扱えるだけの人間な私や半妖な雪は当てはまらないんじゃないか?

でもまぁ、こうして結果が出てきているから、毎日飲んでる牛乳は効果があったような気はするけど。

 

「ぐぬぬ・・・皆、とりあえず離れてくれって〜。それに、そんな引っ張られたら――げっ、パジャマが!」

 

「ちょっと、うるさいわよ〜綾・・・」

 

私が雪達にてんやわんやしていると、いきなり美亜が部屋の扉を開けてきて、そのパジャマをはだけた私の姿を見るなり真顔になった。

 

うん、嫌な予感しかしませんわ。

 

「ふ〜ん・・・まぁ、ほどほどにね〜。私は"そっちの気"は無いけど」

 

「あっ、ちょっ・・・!美亜、これは勘違いだって〜!」

 

完全に誤解されても不思議じゃない状況だけども!

というか、これ以上他の人に見られて誤解が広まったら大変だし、何とか3人を引き剥がさないと〜!

 

――それからしばらくして。

 

何とか雪達3人が羽織った布団お化けから抜け出した私は、椿と龍花さん達4人の居ない中で朝ご飯を食べ終えた。そういえば、今日は何か用事があるって椿が龍花さん達に呼ばれてたっけね。

 

そして、昨日の新センター襲撃で雷獣の言っていた事が気になって椿の爺さんの部屋を覗いたら、なんと私の考えている事を読まれていたのか、そこには椿の爺さん以外にオジサンや達磨百足さんも居たのだ。

 

「やはり、あの事が気になっとったようじゃな。ほれ綾よ、遠慮せず入って来い」

 

「えっ・・・あっ、はい」

 

その予想外の状況に私はカチコチに身体も態度も固まりながら、爺さんに促されるまま向かいの座布団へと正座する。

 

「さて、何処から話したら良いものか・・・」

 

「あの雷獣がここまで調べを進めていた以上、もう隠しておく必要も無いと思うぞ」

 

随分バッサリとした達磨百足さんの言葉に、爺さんがポリポリと頭を人差し指で掻いた。

 

何処からって言われても、私からしたら妖怪センターが私の事を昔から知っていたって話しか分かってないから、それについて分かりやすく説明してもらえれば良いだけなんだけど・・・。

 

「まぁ、仕方あるまい。この事は、いずれ知らせねばならなかった事じゃ。綾よ、お前さんは――既に滅んだ退魔の一族、その末裔たる人間なんじゃ」

 

「既に滅んだ・・・?それって、"烏森"って私とオジサンの苗字に関係が?」

 

すると、そこでオジサンが首を横に振りながら、申し訳なさそうな声で私に謝ってくる。

 

「すまん、綾。俺は義理の父親として悪意ある者から守る為、お前の苗字を騙ったに過ぎない。そして本当の事を言うならば、真に烏森の血を引いているのは綾と、お前の妹と呼べる"綾花(あやか)"だけだ」

 

「私に、妹――まさか!あの姿、私より歳上だよ!?」

 

「にわかには信じられんだろうが、それが真実だ。華陽や滅幻宗が"処刑人"と呼んでいた雇われの退魔師、それがお前の妹なんだ」

 

その瞬間に私の脳裏へ浮かんだのは、半年前に私達を守って味方だったハズの華陽へ大鎌を向けていた"処刑人"の姿だった。

 

「お前が烏森の家から逃げ延びた後、1人残された綾花は生き残った烏森の奴らから退魔師として、肉体の急成長を促す術などで徹底的な調教を受けさせられたらしい。そして、俺が再び綾花に会った時には既に「綾は烏森の裏切り者」として始末するよう洗脳されてしまっていたんだ」

 

初めて会った時から、アイツは何かと私に執着して"裏切り者"って攻撃してきていたけど、あの時はどうして私達を助けるような真似をしていたのか・・・それが、今ようやく理解出来た気がする。

 

「だが、お前と再会した事で綾花は洗脳から自力で徐々に目覚め、あの時には全力で綾を助けようとしてくれていたようだ」

 

「なんで・・・なんで逃げ出す時に、私の妹も一緒に連れて行ってくれなかったんだよ!オジサン!そうしてくれていれば私は、私は実の妹を・・・!」

 

「綾を脱出させる事しか、力が未熟だった頃の俺には限界だった・・・本当に、すまない」

 

分かっている。オジサンだって綾花を一緒に助けられなかった事が辛いのは、分かっているハズだった。

 

それでも、私は実の妹の存在を忘れさせられてしまっていた事に怒りを感じてしまう。

 

「それなら、私の情報が妖怪センターにある理由は!?烏森の家から私を守る為だったとかって言うのかよ!!」

 

その時、私の頬へバシン!という衝撃音と共に強い痛みが走る。視線を前に戻すと、椿の爺さんが複雑な表情をして怒鳴った。

 

「落ち着かんか、綾!お前さんの気持ちは全てとまではいかんが、それでも分からない訳ではない!それに大地とて、お前さんと同じかそれ以上に後悔をし続けておるのだ!」

 

「くっ・・・だけど――」

 

「翁の言う通りだ、綾。ここは少し、頭を冷やせ。それに、我々妖怪センターに関係している者でも、綾の事は不明瞭な所が多すぎるんだ」

 

そして、頬を押さえる私へ今度は達磨百足が間に入って説明を続ける。

 

「そもそも、妖怪センターに綾の情報が登録されているのは、大地が予め大規模な救出作戦の協力を我々に要請してきたからだったんだ。それでこちらも機会を見計らって、大地と共に行動を起こすハズだったんだが・・・」

 

「どういう訳なのか、綾がまだ向こうに居る時に烏森の方で、何らかの大きな騒ぎが起こってしまった。そのせいで、俺は準備不足のまま救出作戦を決行せざるを得なくなり、結果として茫然自失の状態で森を彷徨っていた綾だけしか、助ける事が出来なかったんだ」

 

「後日に儂らで烏森の方を調査した所、既に其奴らの本拠地であった山奥の屋敷は酷く破壊され、生存者も見つからんかった。それで、今後の綾の安全の為に身柄を隠す事に加えて、更には作戦に参加出来なかった儂らの責任を取る形で、当時の記憶も何もかも忘れてしまっていた綾を大地が養子として引き取った・・・というのが、儂と達磨百足、そして大地の3人が知る全てじゃ」

 

「そう、なんですか・・・」

 

これ以上、私は何も言う事が出来なかった。

 

他にも気になる事は沢山あったけれどオジサン達の話からは、私が既に壊滅してしまった退魔師の生き残りである事と、その他に私の血の繋がった妹がいる事しか分からなかった。

 

だけどもし、その烏森の力を持つ私達を華陽が狙ってたんだとしたら・・・?それなら辻褄は合う話だし、私から湯口先輩だけじゃなく実の妹まで奪った事になる。

 

そう考えると、私の中にある華陽への怒りが激しく膨れ上がっていく。

 

そして少しの沈黙の後に、私は1つの決心をする。

 

「・・・翁」

 

「ん?何じゃ、綾よ」

 

「もし出来るのなら、私は綾花を助けたいです。でも、仮に敵として戦わなきゃならないなら――その時は、私が決着を付けます。きっと、あの子は今も苦しんでいるハズですから」

 

「むぅ、しかし・・・」

 

すると、難しい顔をして止めようとする爺さんに対して、達磨百足さんが私へ微かに笑って頷いてきた。オジサンも私の方を向いて、心配するなといった様子で深く頷く。

 

「許してやれ、翁。綾も綾なりに頭を冷やして、自分の出来る事で妹を救おうとしているんだ。それを咎める理由は、今の俺達には無いだろう?」

 

「俺も、達磨百足の意見に賛成だ。綾だけしか助け出せなかった、あの時に止まってしまった綾自身の時間は自ら動き出そうとしている・・・いや、もう動き出しているのだろうな。ならば、それを後押ししてやるのが俺達のせめてもの思いやり、と言えるんじゃないのか」

 

その2人の言葉に、椿の爺さんは根負けしたようにため息をついた。

 

「達磨百足と大地がそこまで言うのなら、仕方あるまい。綾よ、お前さんの妹については任せるとしよう。しかし、あの女・・・雫と言う、お前さんに情報を提供していた奴には、特に注意するんじゃ。彼奴、どうにも単なる情報屋としては妙な怪しさがある。もしかしたら、華陽の側についているとはいえ一枚岩ではないかもしれん」

 

「はい、了解です翁。それでも、きっと私と綾花の事を知っているでしょうし、可能なら向こうが姿を晦ましたりする前に捕まえます」

 

味方のフリをしていた時の私に対する距離感の近さや、半年前に私の暴走へ拍車をかけた雫の言葉からすると、アイツも烏森に関する何かを知っているハズだ。

 

だから、もし綾花に酷い事をしていた奴だったりするなら、あの子の為に私は全てを投げ打ってでもアイツを倒す。

 

――それがきっと、椿の許してくれない事だとしても。

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