私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾弐話 馬鹿は風邪ひかないって言うでしょ?

 

何とか夕飯の調理を間に合わせる事が出来た私達は、皆と一緒に夕飯を食べ終えてから、今度は寝込んでいる里子の方にも卵粥を作って持って行っていた。

 

夕飯を食べている時に、椿が少し恥ずかしそうに白狐さんから頭を撫でられていたけど、あんな顔をしていたのは多分、狐2人が神様なのを忘れて簡単な物を出しちゃったって感じだったのかな。

それでも、白狐さんも黒狐さんも「どんな供え物であれ、心がこもっていれば何でも大丈夫だ」と言っていたから、どっちも凄い懐は広い所があるよね。

 

・・・まぁ、椿の事になると喧嘩するけど。

 

「ところでさ、綾ちゃん。昨日、新センターが襲撃してきていた時に雷獣さんが言っていた事、覚えていますか?」

 

「ん?あぁ・・・それって、センターに私の情報があった事?」

 

「うん。僕、ついウッカリおじいちゃんに聞くのを忘れちゃってたんだけど・・・ひょっとして、おじいちゃん達から何か聞かされたりしたの?」

 

その椿の言葉に私は思わず足を止めてしまい、手に持った湯気立つ卵粥を少し見つめる。そして、椿にも全て知っていて欲しい"想い"で、再び私は彼女の顔へ真剣な眼差しを向けた。

 

「実はさ・・・今まで私を襲ってきてた、あの大鎌女・・・綾花っていう、私の妹だったんだよ。それに、昔に何があったかは爺さん達にも分からないみたいだけど、私も綾花も退魔師の家から逃げてきた生き残り・・・なんだってさ」

 

「そうなん、だ・・・」

 

すると、椿は"聞いたら不味かったかな"と言うかのように、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべる。

そんな椿の様子を見た私は、すぐさま普段と同じよう微かに笑ってみせた。

 

「大丈夫、大丈夫!きっと綾花は敵に利用されてるだけなんだし、華陽達の所から助けてみせるって!」

 

「でも、綾ちゃん。あの華陽に使われているって事は、多分――」

 

「何とかなるよ!絶対!」

 

すると、つい綾花も湯口先輩も助けられる、私とオジサンだけしか知らない"あの方法"の事を忘れて「何とかなる」と言ってしまった私に対して、椿は不安そうな眼差しを向けてくる。

 

「ねぇ、綾ちゃん・・・何で絶対って言えるの?もしかして、僕達に隠し事してないよね?僕、美亜ちゃんの時みたいに、誰かが傷ついている事に気づけないのは、もう嫌なんだ」

 

「うっ・・・」

 

「ほら、その人差し指で顎をつつく癖。綾ちゃんが嘘をついている時、必ずそれをやっているよね?」

 

確かに椿の言う通りだ。私は、大きな戦いを控えているかもしれない椿達に、余計な心配をさせないようにと何も知らせず、今ですら隠そうとしてしまっている。

 

だけど、それでも私は――

 

「上手く説明は出来ないけれど、前に椿のやった方法みたいに、もしかしたら綾花も先輩も助けられるかもしれないんだ。だから、今は先輩の事も綾花の事も全部私に任せてよ」

 

「・・・分かりました。でも綾ちゃん、無茶だけは絶対にしないでよね」

 

「うん、分かってるよ」

 

自分の抱える問題は、自分で解決したい。

 

――それから、里子の部屋にて

 

「全くもう・・・里子ちゃん!」

 

「きゃうん!椿ちゃん、尻尾動かさないで〜もっと触りたいのに〜」

 

「な〜にやってんだ、里子。一応は病人なんだから大人しく寝てろっての」

 

「こういう時じゃないと椿ちゃんに甘えられないんだも〜ん」

 

はい、案の定でしたよ案の定。

まだ熱っぽそうなのに、里子は椿の尻尾に抱きつこうとワタワタ必死に追いかけようとしてるよ。

 

「もう、椿ちゃんったら・・・私病人なんだから、もうちょっと優しく襲――」

 

「襲いません。あんまりふざけていると、お粥食べさせてあげないですよ」

 

「はぅ!?つ、椿ちゃんが・・・食べさせて、くれるの?」

 

「わぁ〜この子、めっちゃ目キラキラしてるよ。お粥作ったのは私なんだけどね」

 

「しかも綾ちゃんの手作り!?し、幸せ過ぎて死んじゃいそうだよ〜・・・」

 

しまった〜余計な事ボヤくんじゃなかったわ。

少しでも里子には体調が良くなって欲しいのに、あんな状態じゃ逆に熱が上がってるような気がするぞ。

 

「変な反応しないでください。ほら、熱いから冷ましてあげる・・・フー、フー」

 

「あ、ぁぁ・・・そ、そんな事まで。つ、椿ちゃんの吐息がかかった、お、お粥・・・!」

 

「おぅ少し落ち着こうな里子?今のお前、傍から見たら完全に危ない人だからな?」

 

デロ〜ンって大好物を目の前にしたワンコみたいな反応は非常に絵面ヤバいと思うんだ、ウン。

 

まぁ、それでも里子は病人なんだし普段からお世話になっている礼も含めて、今は甘えさせるだけ甘えさせときますか。

 

「はは、こんな時でも里子らしくて安心したよ」

 

「ふふ、そうですね綾ちゃん。はい里子ちゃん、あ〜ん」

 

「ふやぁぁ!?そ、そこまで!も、もう私、死んでも良――ふぐっ!?」

 

「いいから早く食べてください!」

 

な〜んて甘えさせてたら、椿が真っ赤になって里子の口にスプーンを突っ込んじゃったよ。

 

「んぅ!?」

 

「えっ、どうしたんですか里子ちゃん!?」

 

すると、何故か卵粥を食べた里子はバタンキューと倒れてしまった。

 

「ま、まさか私の作った奴が口に合わなかった・・・?」

 

「卵の味が活きてるのに出汁もシッカリしていて、とっても美味しい・・・綾ちゃん、いつの間に料理がこんなに上手に・・・?こ、これじゃ私のアイデンティティが・・・もう、もう椿ちゃんの犬としてしか、生きて――」

 

「お粥だけでアイデンティティ崩れないでください!」

 

「しかも最後サラッと爆弾発言しかけたよな!?」

 

それに、何だかんだ言っても里子は私や椿より美味しい料理を手際良く手早く作れるんだから、アイデンティティを失ったって嘆かなくても良いと思うんだ。

 

「ほら、里子。よく食べてシッカリ寝て、早く元気になれっての」

 

「そうです。その為に、ちゃんと付け合せに梅干しも――おっと!」

 

うわぁ、危ない。妖怪食の梅干しがスプーンで掬い上げようとした椿の手に噛み付く所だったわ。ガギン!って鋭い歯が生えてる赤いパッ〇マンみたいな梅干しとか、改めて考えると妖怪食は変なのが多い気がするよ。

 

「あっ、椿ちゃん・・・私、梅干しはいらないよ」

 

「えっ?でも、梅干しは風邪に良いですよ?」

 

すると、里子はイヤイヤといったジェスチャーで梅干しをスプーンに乗せた椿の手を拒否していた。

 

「もしかして里子ちゃん、梅干し嫌いなの?」

 

「んっ?いや・・・うん、ごめんね。酸っぱいのは私ちょっと・・・で、でも椿ちゃんが口移しで食べさせてくれるなら、頑張って――ふぐっ!?」

 

「僕に風邪を伝染す気ですか?ちゃんと食べて、ゆっくり休んでいてください」

 

まぁ、椿からグイグイと少し乱暴に食べさせられてるのに嬉しそうな様子を見せてるし、ひとまず大丈夫・・・なのかな、コレは?

 

◇◇◇

 

それから少しして、私お手製の卵粥を完食した里子は再び布団に潜っていた。さっきまで元気に椿や私に甘えてはいたけど、やっぱり身体の怠さがあったみたいだね。

 

スゥスゥと寝息を立て始めた里子を優しく見守っている中、ふと椿が不安そうな表情で私に話しかけてくる。

 

「綾ちゃん、本当に大丈夫なの?何だか、今日ずっと浮かないような顔をしているけれど・・・」

 

「そう、かもね・・・自分で大丈夫だって言ったのに、今更ちょっと先輩や綾花を助けられるのかって不安になってきちゃってさ」

 

それは私が椿に隠し事をしている、という後ろめたさもあったのだろう。

だけど、やはり私では2人を助けられないんじゃないかという不安も心の中に大きくなってきてしまっていたのも確かだ。

 

「綾ちゃんの気持ち、全部は分からないけれど・・・でも、前に僕も同じような気持ちになった事があるよ。"こんな僕に誰かを助けられるのかな"って」

 

「えっ・・・?」

 

「だけど、それでも「僕にしか出来ないんだ」って、そういう"想い"を持って行動するのが1番大事な事だと思うんだ」

 

そう言って、椿は優しく頭を撫でてくれた。

 

「だから、綾ちゃん。もし自分じゃどうしようも出来ないって思うなら、無理をしないで僕に相談してください。1人だったら駄目な事でも僕達と一緒なら、きっと上手くいくよ」

 

「は、ははは・・・椿にはかなわないや」

 

すると、その瞬間に布団からニュッ!と里子の両手が出てきたかと思ったら、私と椿の足首を掴んで布団の中に引きずり込もうとしてきたぞ!

 

「ん〜椿ちゃん・・・綾ちゃん・・・」

 

「わわわわ!さ、里子ちゃん離して〜!」

 

「び、病人だからって流石に添い寝は駄目だろ!」

 

下手なホラー映画より怖い状態になっちゃってるけど、そこで布団の中から心配そうな里子の顔が見えたので、私も椿も少し力づくで振りほどこうとするのを止める。

 

「えっ、里子ちゃん・・・?」

 

「私、怖いの・・・だって、椿ちゃんも綾ちゃんも1人で頑張り過ぎてるもん。それで2人が壊れちゃったら、私・・・」

 

「そんな、私と椿は皆を守りたくて――」

 

「あのね、ハッキリ言って2人はどっちも1人で抱え込み過ぎだと思うの。だから皆、2人の事を心配しちゃっているんだよ?」

 

「うっ・・・そ、そうなんですか」

 

「それで今日、龍花さん達は椿を遊びに誘ったって事だったんだね・・・」

 

そうして立ちぼうけていると、布団から出てきた里子がナマケモノみたく器用にノソリノソリと私と椿に引っ付いてきた。

 

「だから、このまま2人に風邪を伝染して無理やり休ませてあげる〜・・・」

 

「えっ、ちょちょちょっと里子さん?は、離れてくれ〜い!!」

 

「それに、Tシャツの肩の部分が!そこがズレて胸が・・・里子ちゃん!?」

 

おぅおぅおぅ、いきなりブッ飛んだ休ませ方させようとしてくる里子も里子だけど、椿も椿で落ち着いてってば!元々は男だったんだし、そういうのが気になっちゃうのは分からんでもないけれど!

 

「はぁ・・・はぁ、椿ちゃん・・・綾ちゃん・・・きゅぅ」

 

「あ、ダウンした――じゃなくて!あ〜もう、無理するから〜!!」

 

「里子ちゃん!?し、しっかりしてくださ〜い!」

 

そんな風邪の熱っぽさで私までアカン気持ちになりかけてた途端に、里子が私達へ乗りかかる形で倒れちゃったわ。

 

・・・うん、コレ無理やりにでも引き剥がして寝かしとくべきでしたわね。すまぬ、里子よ。

 

◇◇◇

 

余談ではあるけど・・・その翌日、里子は私や椿の代わりに看病してくれている氷雨さんに、うわ言のような懇願を続けていたよ。

 

「椿ちゃん、もしくは綾ちゃんに・・・看病・・・」

 

「駄目です、里子ちゃん。風邪が長引いていたら、看病の意味がありません!」

 

「うぅ・・・ごめんなさい」

 

ちなみに、里子の部屋の前で正座して待ってる私達2人は、どっちもピンピンして元気な状態です。

そういや私も椿も"浄化の力"を持っていたんだっけね・・・妖怪の風邪は普通のとは違うらしいけど、そりゃ伝染らない訳ですわ。だって浄化しちゃうんだもん。

 

「あれ?2人共・・・なんで、伝染ってないの・・・?」

 

「ウィルスなんて、僕の身体の中で浄化しちゃいますからね。それに綾ちゃんの方が無事なのも、馬鹿は風邪ひかないって言うでしょ?」

 

「あっ・・・そ、そうだった・・・そういえば、昔も同じ事が・・・忘れて、た・・・ガクッ」

 

そう言った里子はチーン・・・と擬音が聞こえそうな感じで力尽きて気絶しちゃいましたとさ、ちゃんちゃん。

 

それと椿、今シレッと私を馬鹿扱いしたよね・・・?

 

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