私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
それから2日後。
結局、今日も里子は寝込んだ状態だったので今回も私と椿で朝食を作った――んだけど、何故だか最近は皆が目をキラキラさせて期待しているんだよね。
う〜ん・・・私も椿も、里子の料理を手本にチョコっとしたアレンジしてるだけなんだけどな・・・。
「ほぅほぅ、これは美味そうではないか。今度は是非、本体の時にも作って貰おうかの」
と、そんな事を考えながら朝ご飯を食べていたら、食卓に見覚えのある小さな人物――というか神様が増えていましたわ。
そして、それを不思議そうに見つめるのは・・・
「ねぇねぇ、椿お姉ちゃ〜ん。これなぁに?」
「わぁ!!菜々子ちゃん!お箸で賀茂様をツンツンしないで!」
「はっは、別に気にするな。私は式神じゃ。本人の姿形や記憶を持っているだけで、紙きれで出来た人形にすぎん」
「あ〜、道理でデフォルメチックなサイズなんだ・・・」
丁度ゴールデンハムスターみたいな小ささのデフォルメ賀茂様は、そんな菜々子の行動を笑顔で許しながらフヨフヨ椿の膝元で浮いている。
まさか漫画とかで良くある物を目の前で実際に見る事になるなんて少しビックリだったけど、まぁ一先ず私と椿で皆に賀茂様について簡単に説明しておきましたよ。
『賀茂様、今日は一体どのようなご用件で?』
説明を終えたばかりの賀茂様に、そう白狐さんが姿勢をキッチリ正した座り方で尋ねると、デフォルメ賀茂様は「うーむ」と腕を組んで唸って答えた。
それにしても、相変わらず狐2人は賀茂様に対して物凄く低姿勢だね。神様に仕えている存在だから、そりゃあ当然と言われれば当然なのかもしれないけど。
「うむ・・・実はな、祇園四条の八坂神社方面で不可思議な出来事が起きておる。京都には様々な神が住んでいて、その領土を各々が守っているのは知っとるな。だから本来なら過干渉は良くないのじゃが、如何せん変な化け物やら九尾の悪巧みやらで、そうも言ってられん状況じゃ。後手に回ってしまう前に動かなくてはの」
すると、そんな賀茂様の話を聞いた椿は何でか知らないけど凹んだ様子になっている。
「えっ、どうしたのさ椿?尻尾も耳も垂らしちゃって・・・何か嫌な事でもあった?」
「い、いや・・・その、過去の自分自身の態度というか、神様を信じていなかった僕自身に反省しているんです」
「はっはっは、そう畏まらんでも良い。元より、人にとって我らの存在は"そういう物"なのが普通なんじゃからな」
賀茂様は軽く椿に笑ってみせ、それから先程までの話へと方向を戻した。
「さて、その祇園四条で起こっとる現象についてなのじゃが・・・何というか、大した被害ではないが妙な雰囲気を感じておってな。とりあえず、行けば分かる」
「んなアバウトな――こほん。すいません、それなら確認に行ってみますね」
「そ、そうですね。じゃあ・・・」
そう言って椿が狐2人の方を見ると――
「待て、椿よ。何故、白狐と黒狐を見とる?お前さんは、もう立派な妖狐じゃろう。よっぽどの事でない限りは2人を頼るでないぞ」
「あっ・・・うぅ〜」
その途端に爺さんから釘を刺されちゃいました。
狐2人も自身を頼ってくれる事が嬉しかったのか、どっちもニコニコしてるし。
でも、そんな状況で顔が真っ赤になっちゃった椿は慌てて1人で部屋を後にしようとして――
「こりゃ、椿!神様からの頼み事でもチームで動かんかい」
「「「「「えっ?」」」」」
「・・・へっ?」
いや、なんでチームの皆はビックリしてんの?
そうなる事は賀茂様の頼み事が来た時点でお察しだったでしょ〜が。
「なんじゃ、お前さん達。今日はゆっくり出来ると思っとったのか?甘いわ!!」
「だってさ。ほら椿、皆で一緒に行くよ〜」
「うむ、頼んだぞ――と、うん?今度は何じゃ?ふむふむ、全く・・・私は伝書鳩ではないぞ。しかし式神故に仕方ないか・・・あぁ、椿に綾よ。本体が"今度、こっちへ遊びに来い"と言っておる」
そう言った後、デフォルメ賀茂様は「ではの」と残してフワーッと家の窓から空へ飛んでいってしまったよ。
なんというか、そっちもそっちで式神として大変そうですね、ウン。
「ほりゃ!さっさと行ってこんかい!」
「「「「「「は〜い!!」」」」」」
まぁ、私達も爺さんから扱き使われてるような感じなんだけどね!いやぁ〜朝から忙しい忙しい!
◇◇◇
それから私達は雲操童に運んでもらって、デフォルメ賀茂様が話していた祇園四条の通りへとやって来た。
「久しぶりだな〜、此処に来るのは去年の祇園祭以来だよ」
「確かにそうだね、綾ちゃん。あの時は僕達、送り火を1番良い所で見れたくらいで、他の行事は混んでて上手く見れませんでしたし」
そう昨年の思い出に浸る私と椿の後ろで、美亜は不機嫌そうに上半身をダル〜ンと項垂れさせている。
「全くもう・・・今日は良い天気だったから、日向ぼっこしながら昼寝しようと思ったのに・・・」
「まぁまぁ美亜ちゃん、翁は昔から"あんな感じ"ですから〜」
それを宥める里子の様子を少し微笑ましいと思いながら眺めていたら、いつの間にやら私と椿を挟むようにして楓と雪が横に移動していたよ。
しかも、雪は私の腕にギュッと抱きついてきているし・・・って、待て待て。
今は夏も近いから、そんな近づかれたら暑く――ないや、あれ?
そっか、雪は雪女の半妖だから全然暑くないんだったわ。
「ふふ、無償の仕事は嫌。でも、その後に待つ綾と椿とのデートは、魅力的でワクワクする」
「椿姉さん!綾姉さん!目が青い人が居るっすよ!」
そして2人は案の定というか、私や椿と一緒に居るのが楽し過ぎているみたいだ。
それと、楓は向こうから見えて居ないとはいえ、ジーッと外国の人達を見つめないの。幾ら妖怪が人の目には見えにくい存在だからといっても、そういう常識はキチンとしときなさい。
「本当だね〜楓お姉ちゃん!この人達って、他の国の人達だよね?私、初めて見た〜!」
ついでに、菜々子も山姥さんからの頼みで一緒に着いて来ちゃってます。どうやら椿が向こうで修行していた時、一緒に都会を見る約束をしてたみたい。
まぁ、そんな訳で今は姿が見えているのは私と椿、そして雪の3人だけなんですね。
しかも私の格好がTシャツにジーンズで男モノっぽいせいで無論、引っ付いてきてる雪と合わせて傍から見たら本当にデートしてるみたいに見えてる状況なんだけど。ちなみに椿は普段の巫女服だから、それはそれで不思議な絵面に見えてると思うぞ。
それを知ってかしらずかは分からないけど、椿は私と雪から地味に距離を取らないでもらえます?
◇◇◇
そうして四条の通りを進んでいくと、私達はデフォルメ賀茂様の言っていた不可思議な現象を目の当たりにする。
それは――
「そうどすな〜」
「あらぁ、奇遇やわ〜」
「ほな、そちらさんも?」
「ぶぶ漬けどすえ〜」
うん、何か少し客を追い出してるような台詞も聞こえたけど・・・此処に居る日本人の女性方が、全員舞妓さんやら芸妓さんになってらっしゃるんですわ!!
舞妓さんとかの知識は全然分からないけど、それでも化粧や衣装のガチさからして誰かがイタズラでコスプレしてるって線は薄そうだ。
というか、道行く日本人の女の人達が皆そうなっているんだから、まずイタズラとか有り得ない状況ですよねコレ。
そんな事を考えながら、外国の人達が喜びながら舞妓さんや芸妓さんを写真に撮っている様子を見ていると、ふと楓が私と椿の服の裾を引っ張ってきた。
「椿姉さん、綾姉さん。この人達から妖気は感じられますか?」
「ん、妖気?・・・駄目だ、誰からも感じないよ」
「う〜ん、僕の方も同じです」
そして、もう1つ謎なのがコレだ。
何が原因で起こっている事態なのか分からないし、何より舞妓さん芸妓さんになっている本人達ですら楽しそうな様子なのだ。
「正直、こんな程度だったら無理に解決しなくても――いや、違うな。前言撤回、何か妙な妖気を向こうから感じたわ」
「うん、四条大橋の方だね。少量の妖気を感じる上に、もう1つ半妖みたいな妖気を感じるよ。という事は、その半妖が何か知っているか、もしくは・・・」
「そいつが原因を作ってるか、って事だよね。いずれにしても、油断せず慎重に向かおう」
「そうですね、綾ちゃん。ほら!上で寝てないで行きますよ、美亜ちゃん!」
そう言った椿は、影の妖術を発動して美亜をアーケード通りの上から引きずり降ろしていたよ。
「ちょっ!分かった、分かったから!ちゃんと真面目にやるから、尻尾は止めてぇ〜ふにゃぁあ!!」
真面目にって、美亜さんアンタはさぁ・・・とはいっても、こんなノホホンとした絵面見たら私でも仕事をゆったりやりたくなりますわ。
「綾ちゃん、何か変な事考えませんでした?」
「うんにゃ、何にも」
おぉう、また椿に心の中を読まれかかったぞ。
最近、何でか分かんないけど良く考えてる事がバレてるような気がするんだよな・・・読心術でも身に付けました?