私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾肆話 自称ナンバー2のオカマ、再び

 

謎の2つの妖気を感じる四条大橋へと到着した私達は、早速目立たないよう通行人のフリをしながら妖気の正体を探し始める。

 

目立つ行動が出来ないのは向こうも同じだろう。

だけど何より問題だと思っているのは、この四条大橋はカップルが良く通るからか、それらを妬む"想い"が溜まり易い。そして、それに触れ続けた動植物が偶に妖怪化する事もあるんだとか。

 

ぶっちゃけ、この舞妓さん事件を解決しようとしてる最中で厄介な事になるのは避けたいんだよね。

 

「あっ、姉さん達!あそこに舞妓さんが居ますよ?」

 

すると、楓が大橋の中央辺りで私達の方を睨む舞妓さんらしきものを発見する。若干妖気が漏れて怒りの"想い"が溢れている様子からして、どうやら妖気の1つはアレで間違いなさそうだ。

 

「菜々子ちゃん、僕達の後ろに隠れていて」

 

「う、うん・・・でも、椿お姉ちゃん。あの人、別に襲って来ようとはしてないよ?」

 

「それは、そうなんだけどさ。ああいうのに限って、いきなり変貌する事もあるから下手に――」

 

「ちょっとアンタ、どうしたの?そんなに怒りのオーラなんか出して」

 

「って、うぉぉぉぉい!?」

 

「美亜ちゃ〜ん!!なんで普通に話しかけているんですか!?」

 

今ちょうど菜々子に危ないかもって説明してたばかりだろ〜が!その菜々子より年長者な美亜が油断してたら色々と駄目なんだってば、もう〜・・・。

 

だけど、そんな美亜の呼びかけにヤバそうな舞妓さんは反応していない。

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

「この妖気の感じ・・・まさか半妖じゃない?だとすると・・・ヤバい!!」

 

「美亜ちゃん!その人に触れちゃ駄目!!」

 

「えっ?――きゃあ!!」

 

その事に気付いて美亜を止めようとしたけど、既に一足遅かったよ。

 

「何この煙。あれ?舞妓さん?」

 

「えっ?いつの間に?こんな所で何やって・・・」

 

「いや、動かない?あれ、ただの人形か?」

 

しかも、その舞妓さんが人形だったというんだから驚き――じゃなくって!

 

美亜が反応が無い相手を心配し、そのまま肩へ手を置いた途端にモクモクとした煙に包まれてしまう。

そして、声を上げた私達の様子に周囲を通りがかっていた人達も不思議そうにして、煙に包まれた美亜の方を見ていた。

 

そして、煙が晴れるとそこには・・・。

 

「にゃ、にゃんどすか〜!?これは〜!!」

 

なんと、舞妓さん人形に触ってしまった美亜は可愛らしい黒い着物を纏ったネコミミ舞妓さんに変化してしまったではありませんか!

 

「おぉぉ!舞妓さんが!ネコミミに、猫の尻尾を――あっ、うん」

 

「えっと・・・」

 

「ん〜と・・・」

 

やっぱりというか、その美亜の姿に周りの人達も何とも言えない空気になっちゃってるし・・・って、ちょっと待てよ。

 

本来は妖怪だから普通の人に見えないハズの美亜が、あの人形に触って舞妓さんにされた途端に皆から姿が見えるようになったって事は、アレは何かの目的に妖怪もターゲットに含めている可能性もあるぞ。

 

「ちょっと!何どすか、その反応は〜!椿〜!綾〜!」

 

「あ〜よしよし、仕方ない奴だな〜美亜は」

 

「でも、こっちには来ないで欲しかったですね。せっかく目立たないように動いていたのに、これじゃ目立っちゃいます」

 

椿が狐2人からもらった勾玉で意識阻害の結界を貼って姿を人間に変えているとはいえ、妖異変化で自由に儀礼衣装へ変身出来る私と違って着ている巫女服はそのままな訳だからね。

 

もちろん、こんな格好を椿が普段からするようになったのは理由があって、妖蚕(ようかいこ)とか妖綿(ようめん)とか様々な妖気を含んだ素材で出来た特別な巫女服なのだ。

 

なので、椿は学校に行く時以外には多少なりとも身の守りが良いコレを着るようにしていた・・・訳なんだけど。

 

「おぉ!!巫女さん!?」

 

「ロリ巫女だと!」

 

「きゃぁ〜可愛い!!」

 

「この京都だと、あんまり違和感ない!」

 

「ネコミミ舞妓はんより、巫女さんの方が可愛い!」

 

通行人の視線は一瞬で椿へとターゲットチェンジしちゃいました。まぁ、こうなってしまったからには・・・もう、ね?

 

「「一旦撤退(だぁ)!!」」

 

咄嗟に私は怒髪天の姿へ妖異変化して雪と舞妓姿の美亜を両手でそれぞれ担ぎ、その場から大慌てで菜々子や楓達を連れた椿と分かれて離脱する。

 

それから地元の人しか知らないような裏道や屋根の上を利用して何とか振り切って、とりあえず四条大橋の見える建物の上へと再集合する事が出来たよ。

 

「ふぅ・・・全く、美亜ちゃんのバカ」

 

「ご、ごめんなさい・・・でも、呪術の気配が無かったのよ」

 

「なるほど、呪術のエキスパートな美亜が言うなら間違いないね。でも邪悪な気は感じられたから、浄化の力は効きそうかな・・・椿、お願い」

 

「はいはい、仕方ありませんね」

 

そうして椿が美亜の姿を元通りにした後に再び四条大橋の方を見てみると、橋にいた人達の興味は逃げた私達から舞妓さん人形に移っていたようで、気になって触った女の人達がどんどん舞妓さんへと変身させられまくっちゃっていたよ。

 

「な〜んで気味悪がりもせず、あんな物に軽々触れるんだか・・・自動着せ替え機とかじゃないっつーの、アレ」

 

「全くそうだよね、綾ちゃん。皆もうちょっと怖がったり怪しんだりしてよ、もう・・・」

 

そんな私や椿の想いとは真逆に、四条大橋を行く人達は次から次へと舞妓さん人形を触っていく。

だけど、舞妓さんに変化させられる人達を見ていると"ある事"に気がついた。

 

「ありゃ?気のせいかな・・・男の人とか外国の人とか、日本人でもあんまり美人じゃなかったりする人は触っても舞妓さんになってないような・・・」

 

「椿、これって・・・」

 

「あっ、本当ですね・・・綾ちゃん、雪ちゃん。綺麗な人や可愛い人、要するに美人さんしか舞妓さんになっていないよ」

 

「う〜わ〜、なんつー女性差別な人形だか」

 

ただでさえ女の人を舞妓さんに変化させてるだけな意味も分からないのに、尚更アレがどういう目的で行動してるのか訳分かんなくなったぞ。

 

「ふふ〜ん。まぁ確かに、私の美しさは皆から反応されても当然よね〜」

 

「いや、そこで自信を取り戻すなよ・・・っと、なぁ椿。半妖の妖気の方、あれは感じた事がある妖気だ。確か、コイツは――げっ!?」

 

「亰嗟の自称ナンバー2、丘魔阿さんですね――って、いつの間にか後ろに!?」

 

まさかの"自称ナンバー2のオカマ、再び"ってか。

咄嗟に私と椿は振り返って、巾着袋から取り出した御剱と麒麟甲で振り下ろされてきた大斧を受け止める。

 

「くっ!!」

「随分なご挨拶だことで!!」

 

「うふ、お久しぶり〜椿ちゃんに綾ちゃん」

 

「あっ、はい。お久しぶりですね」

 

「いやいや、椿は何普通に敵と話してんのさ。まぁ、良いけど・・・それで、そっちは相変わらずですか?」

 

ため息をつきながら大斧を弾き返した私達に対し、丘魔阿は肩にそれを背負い直しながらニコニコとした笑みを浮かべる。

 

「まぁね〜それよりも貴方達、2人共だいぶシッカリしてきた?うふ、姿を隠している間に何をしていたのかしら?どっちも美味しくなっちゃってぇ」

 

「うぇぇ・・・舐めるような視線で見ないでください。というか、貴方が居るって事は"あの人形"は亰嗟が仕掛けたと考えて良いんですね」

 

「あら、ご明察〜綾ちゃんの言う通りよ」

 

「あんな妖具を置いて、何を企んでいるんですか?」

 

すると、そう問いかけた椿に丘魔阿はやれやれと言いたげに首を横に振った。

 

「あら心外ね。あれは私達が置いたんじゃないわよ。寧ろ、回収しに来たと言った所かしらね」

 

「何ですって?」

 

「じゃあ、亰嗟以外の誰かが置いたって事?」

 

「違うわよぉ、綾ちゃん。2人共、付喪神って知らない?」

 

「「あっ・・・」」

 

その言葉を聞いた私と椿は、かつて妖怪について図書室で調べていた時にそれに似た記述を見つけた事を思い出した。

 

あの時に見た資料では、長く使われ続けていた道具には神や精霊の類が宿ると書かれていたけど、どうやら舞妓さん人形には悪霊か邪念が宿って付喪神という妖怪になってしまったらしい。

てっきり丘魔阿が居たから亰嗟の仕業だと思ってしまっていたけれど、実際は付喪神となった舞妓さん人形が勝手に動いていただけみたいだ。

 

「なるほどね。それで亰嗟はアレを回収して、何に使うつもり?」

 

「あら、分からない?あの人形、あぁ・・・マネキンなんだけどね。今は舞妓さんへの固執があるけれど、それを妖怪に変えたらどうなるかしらねぇ」

 

「ま、さか・・・」

 

「触れた人間を皆、妖怪にする道具へ変えるつもりか!」

 

「そそ、相変わらず察しが良くて面白いわ〜。確かに、亰嗟の狙いはそれよ」

 

そう言った丘魔阿は再び大斧を振りかぶって、今度は薙ぎ払うように低姿勢で構えてくる。

 

「まぁ、私はアンタ達2人と戦えればそれで良いのよ!!」

 

すると、更に丘魔阿の背中からは6本の長細い腕が生えて1つ1つの手に、振りかぶっている物と同じ大きさの斧を出現させてきた。

 

その腕も斧も妖具なのは感知能力で分かっているとはいえ、いきなりそれを使ってくるって事は向こうも本気モードという事だね。

 

それなら、私達だって――

 

「ふっ!」

 

椿が横薙ぎに振られた一撃目を受け流しつつ斧を弾き飛ばし、腕の火車輪へ妖気を充填させる。

 

「てやぁ!」

 

そこを狙った二撃目に私は右腕の麒麟甲で裏拳を放って逸らさせ、そのまま左手で氷霰剱を逆手に持って妖気を流し込んだ。

 

「あらっ、1本2本弾いても無駄よ!まだこっちには6本も斧があるし、もう2人は私の蜘蛛の糸に――って、えぇっ!?」

 

「ふふ、もうこの場所は私達にとって幸運の起きまくる場所に変わっているよ!」

 

丘魔阿が斧を失った腕で放ってきた大量の蜘蛛の糸は、わら子が咄嗟に扇子の舞いで作り上げた幸運の結界によって、その全てが突風に煽られて明後日の方向へ飛んでいった。

 

「くっ!それでも、この6本の斧は捌き切れるかしらねぇ!?」

 

「はっ、甘いな!」

 

「うん、遅いですよ」

 

すぐさま丘魔阿は斧での攻撃に全神経を集中させて振るってはきたものの、その時既に私と椿は奴の懐まで一気に潜り込んでいたのだ。

 

そして、火車輪から炎の輪を右腕に纏った椿と同時に、私も氷霰剱を持った手に冷気を纏い瞬間的にそれを腕の後ろへと噴射する。

 

「狐狼拳!!」

「細氷拳!!」

 

「ぐぶっ・・・!」

 

勢いのついた椿と私の拳は丘魔阿の鳩尾にクリーンヒットし、綺麗な虹と共に真っ直ぐ四条大橋の向こうまで吹っ飛んでいった・・・その虹の正体?すまん、聞くな。

 

「「美亜(ちゃん)!」」

 

「もうやってるわよ、2人共!そいつが登場してからね!」

 

そして、私と椿が叫んだより早く美亜は呪術で地面や建物の隙間から植物を呼び出し、その蔦や葉で吹き飛ばした丘魔阿をグルグル巻きにして捕まえる。

 

「うふふ、木が無くてもアスファルトの下や建物の壁なんかにも根強く生きる植物があるのよ。それに呪いをかければこの通り、大橋近くを丸ごと樹海に変える事だって出来るわ。まぁ、今回は騒ぎになるからやらなかったけどね」

 

それから更に、楓が木の根へ飛び乗って捕まっている丘魔阿の様子を確認した。

 

「姉さん達!念の為に雪さんと反撃の対策をしてたっすけど、もうとっくに気絶していたみたいっす!」

 

「マジか・・・報告ありがとう、楓!」

 

まぁ、仮に意識があって攻撃してきたとしても、楓の妖術を跳ね返せる術と雪の凍てつかせる妖術があれば動きは封じれる訳だし・・・って、ありゃ?

 

そう考えてみると、私達のチームって意外とバランス良い気がしてきたぞ。

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