私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
その翌日、私達は丘魔阿の協力で新センターの方へとやって来る。
とにかく、今回は潜入作戦だから皆でゾロゾロという訳にもいかないので、私と椿が携帯のストラップに変化する形で酒呑童子とオジサンに連れられているよ。"連れられる"というか"ぶら下げられている"って感じの方が正しいかな。
一応、オジサンは厳しい審査を何とかクリアして、 センターの清掃員として中に入れてもらえるようにはなっているけど、それでも地下の倉庫までは行けない身分だ。
だからこそ、丘魔阿の協力は必要不可欠だったんだよね。
「さて、これからセンターに潜入する訳だけれど・・・貴方達、そんな変化も出来るようになったのね」
「はい、酒呑童子さんとの修行で覚えました」
「ただ、まぁ・・・ストラップに変化するのって思ってた以上に、身体が固定されてる感じがしてキツいね」
ちなみに、椿はデフォルメされた狐の可愛らしいストラップに、そして私はリズムゲームのマスコットキャラみたいな2頭身タイプのストラップになっている状態だ。
とりあえず、椿の方は如何にもありきたりといった見た目だから特に問題は無さそうだけど、私の方は私自身をデフォルメしてて実際には存在しないキャラのストラップだから、センター内にゲームの詳しい妖怪が見たら首を傾げそうで不安なんだよな・・・。
でも、ここまで来てしまったからには前進するしかない。大丈夫大丈夫、きっと上手くいくハズ!
「さてと・・・そんじゃあ、行くか」
「ちょっと待て。酒呑童子、お前はそのままの格好で行くつもりなのか?」
「あぁ、問題ねぇよ大地。今もチマチマした方法でセンターと繋がりを持ってるお前と違って、とっておきの作戦があるからな」
「なるほど、それなら安心ね。それじゃあ、行くわよ〜」
え?あの〜、それ本当に大丈夫ですよね?
変化した私も椿も目に見えにくい場所へ隠してもらっているのに、酒呑童子が変装も何もせず正面からセンターに入ってきたら、それこそ中の職員達から注目されまくると思うんだけど。
・・・とか思ってたら、丘魔阿さんを先頭に3人共センターへ入って行っちゃったよ。
「お疲れ様〜、ちょ〜っと失礼するわ。亰嗟の丘魔阿なんだけど、調べたい事があるから奥へ進んでも良いかしら?」
「清掃員の大地だ。こちらも、奥の方の清掃へ向かいたい」
「これはこれは、2人共お疲れ様です。それと・・・後ろのそちらは?」
オジサンのバッグの中に居るから良く見えないけど、この丁寧な話し方は多分センターで受け付けをしてる妖怪かな。それより、早速もう怪しいんだけど。
「おぅ、俺は酒呑童子だ。ちょいと、雷獣に話があって来たんだ。コイツから話は聞いているだろう?亰嗟を設立した身として、ちょっくら警告にな」
「あぁ、なるほど。確かに話は伺っています。ですが、何故亰嗟のメンバーと一緒に?」
「そりゃお前、やり方が雑なんだよ。お前らを怪しんで、亰嗟が監視役として寄越してきたんだ。ったく、何で俺が行動を制限されなきゃならねぇんだ」
「あら、ごめんなさいね〜。これも茨木童子の命令だから〜」
でも、いきなりの酒呑童子と丘魔阿によるアドリブ劇場が上手くいったのか、職員の様子もそれ以上は怪しまれて――はい、前言撤回。
強い妖気を四方八方から感じるんですけど!?
「ほぅ・・・でしたら、酒呑童子さんと大地さんがコートやバッグに隠している物は何でしょうか?そこには、妖狐と霊能力者が化けたキーホルダーが入っていますよね?」
「なっ・・・!?くそ、しまった!コイツ"百々鬼"か!」
しかもバレたし!
確か百々鬼って、妖怪に詳しい椿の話じゃ身体中の至る所に目がある妖怪の一種だったっけか?見た目的に知ってる中だと変態の浮遊丸がいるし、まさかコイツも透視が出来るのか?
「あら、まぁ・・・腕を後ろにして目を隠しているなんて、意地悪ねぇ」
「申し訳ありません。しかし今は警備を強化しており、関係者以外は絶対に侵入を許す訳にはなりません。それに、海外の妖具には特殊な力を持つ物が沢山ありましてね。透視の力を持つ妖具もあるのですよ」
しまった、そういえばセンターは亰嗟と手を組んでいるんだった!
それなら海外の妖具で警備を強化していてもおかしくない話だし、そんな事情を私達が知らなかったのも情報漏洩しないように対策されていたって事で辻褄が合うぞ。
こうなると酒呑童子と丘魔阿、そしてオジサンによるアナログな侵入方法なんて、最初から到底上手くいくハズがなかったんだ。
「さて・・・そちらの亰嗟の方も、そんな輩と一緒に居るという事は、向こうの味方をしていると考えてよろしいですか?」
「えぇ、別にそれで良いわよ。何だかちょっと面白くなってきたわ〜。大地も酒呑童子も、貴方達どうせ最初から戦る気だったんでしょう?」
「俺からすれば、これは想定外に早すぎたがな。酒呑童子、この始末はどう付けてくれる?」
「ふん、あんな猿芝居で何とかなるとは思ってねぇよ。急場しのぎで、ちとシナリオにも無理があったしな。だから、無理やり侵入させてもらうぞ!」
あっ、コレな〜んか嫌な予感が――
「「行け、(椿・綾)!!」」
「へっ!?うわぁぁあ!!」
「ですよねぇぇえ!!」
酒呑童子もオジサンもキーホルダーになってるままな私と椿をブン投げよったわ!!
昨日も皆から作戦は不安視されてたけど、それを酒呑童子は"秘策がある"って言うから納得したのに、その秘策がコレとか最悪だ〜!
酒呑童子の鬼!悪魔!人でなし!
って、元から酒呑童子は人じゃなくて鬼か――じゃなくって!!
「くっ!」
「ぬぉりゃあ!」
すぐに私達はキーホルダーの変化を解除し、そこから狐の姿へ変化して奥に続く通路を進んでいく。だけど、今度は見覚えの無い分かれ道が私達の行く手を遮った。
「あれ!?こんな3つも道が分かれているなんて、私達が居た頃には無かったハズだぞ!」
「そんな、増築してる!?一体どっちに行けば良いんですか?」
「椿!綾!通路は変わっても、倉庫の場所は変わっていない!左の道へ進め!」
「そんで倉庫は『い』の保管庫、B63だ!パスは4桁、俺ゆかりの物だ!」
「よし、分かった!行くよ、椿!」
「ありがとう!酒呑童子さん、綾ちゃんのオジサン!」
2人のアドバイスで私達は左の通路に走り、そのまま真っ直ぐに通路を駆け抜ける。すると、それに反応したのかビー!ビー!と警報が鳴り始めて、壁やら天井の至る所からセンター職員の妖怪達が立ちはだかった。
「そこの妖狐と人間、止まれ!」
「止まりません!黒槌岩壊(こくこんがんかい)!!」
「死にたくなきゃ道空けろ!稲妻雷狼蹴(いなづまらいろうしゅう)!!」
椿が以前よりも硬く強力になった尻尾のハンマーで腕の長い妖怪"手長(てなが)"を吹っ飛ばし、激しさを増した雷を纏った私の前足による飛び蹴りが長い脚で道を塞ごうとする"足長(あしなが)"に直撃して一発で気絶させる。
その長い腕や脚は確かに私達の邪魔をするにはうってつけだろう。しかし、逆に手足が長すぎて動きがパターン化されてしまっていたら、攻撃を避けるのも隙を突くのも簡単だから世話ないね。
「あ〜もう、まだまだ出てくんのかよ!」
「酒呑童子さんが言っていた保管庫は多分、殆どが地下にあるハズだよ!でも、場所くらいは言って欲しかったです!酒呑童子さんのバカ!」
でも、他にも手長や足長はゾロゾロと目の前に現れて、私達を足止めして捕まえようとしてくる。そいつらを殴り、蹴り倒しながら止まる事なく先へ走っていくと――
「きゃぅ!?」
「椿!?」
なんと、走っている途中で床からバネのように縄の付いた鉄の輪が飛び出してきて椿を捕獲してきたのだ。
こんな仕掛けも、前のセンターには無かったハズだぞ!?
「よし!先週から設置した、新しい防犯システムが役に立ったな!」
「だ〜クソ!酒呑童子の奴、下調べガバガバじゃん!同時にいくよ、椿――」
「うん、綾ちゃん!こんなぶっつけ本番、後で文句言ってやります――」
「白雹暁固(はくひょうぎょうこ)!!」
「黒焔熔解(こくえんようかい)!!」
椿が黒狐さんの力を解放して全身から発した黒炎に合わせて私も右手の拳に白い冷気を纏って同時に攻撃し、その威力と熱疲労の力で鉄の輪を一瞬で破壊する。
「な、何!?」
「僕達の邪魔をしないで!」
捕獲用の仕掛けを壊された事が予想外だったのか、手長や足長達はビビってたじろぐ。しかし、それでも仕事を優先してか再び私達を捕まえようとしてきた。
「くっ・・・だが、炎や冷気を出される前ならば!」
「いや、2人共もう出てるぞ!」
「それでも捕まえるんだ!」
うわぁ・・・半泣きになりながらも向かわなきゃいけないなんて可哀想だなぁ。まぁ、こっちも退く訳にはいかないから容赦しないけど。
「黒槌岩連壊(こくこんがんれんかい)!!」
「稲妻雷球蹴(いなづまらいきゅうしゅう)!!」
「「「うぎゃぁぁあ!!」」」
椿が放った尻尾のハンマーによる連撃が相手の集団を浮かし、そこをサッカーボールの如く尻尾で蹴り放った私の雷球で次々と感電させて痺れさせていく。
やっぱり、こういう集団戦だと近接戦をする椿の強力なサポートになるし、この新しい雷の妖術は便利だね。
そうして向かってきた相手を全て戦闘不能にした後に椿が1人の手長から保管庫の事を聞いた時、センターの入り口方面からドガーン!!と物凄い爆音が響いてくる。
「うわっ!まさか・・・今の酒呑童子と丘魔阿とオジサンが!?だいぶ派手に暴れてるみたいだな〜」
「これ、潜入作戦でしたよね?これじゃ単なる突撃作戦になっちゃっていますよ!この後の事、ちゃんと考えているのかな・・・」
確かに椿の言う通り、潜入という名の突撃なんですけど、コレ。
そんな行き当たりばったりなプランBになってしまった私と椿は大きなため息を1つ吐いてから、再び先へ向かうべく走り出したのであった。